測量に関するミニ知識

Ⅱ.地表の凸凹から分かること

 航空レーザ測量で得られるデータを使用することにより分かることや利用例を紹介します。

 航空レーザ測量によるデータを使用すると、樹木等の影響により、空中写真ではこれまで見つけられなかった、詳細な地形の状況が把握できます。

 三宅島の空中写真のオルソ画像と、航空レーザ測量データから作成した陰影図を比較してみましょう。図-1は、1983年噴火の際の火口列付近のオルソ画像と陰影図を並べたものです。空中写真の画像において、植生に覆われているところでも、陰影図では、一つひとつの火口が小さなものも含めてくっきりと見える様子が分かります。

三宅島火口付近のオルソ画像と、陰影図

図-1 三宅島河口付近の空中写真オルソ画像(左)と陰影図(右)


 
オルソ画像
 航空カメラで撮影された空中写真は、画像の中心から周縁部に向かうほど、画像に歪みが生じます。オルソ画像は、空中写真のこのような歪みをなくし、真上から見たような、傾きの無い画像に変換し、位置情報を付与したものです。
 詳細については、こちらをご参照下さい。

 同様に、三宅村営牧場付近を比較してみましょう(図-2)。陰影図では、小さな火口(赤い矢印)がいくつも認められ、火口列と思われる地形を観察することができます。空中写真では植生に覆われているため、これらの地形はこれまで知られていなかったものです。
 空中写真等では見えなかった火口状地形は、富士山や他の地域でも見つかっています。

三宅村営牧場付近のオルソ画像と、陰影図

図-2 三宅村営牧場付近の空中写真オルソ画像(左)と陰影図(右)


 山岳地帯の積雪深や融雪水量等の分布については、これまで、現地での直接計測を面的に実行することが出来なかったため、正確な把握が出来ませんでしたが、航空レーザ測量のメリット(人が入っていけないところでも計測が可能・地表面の高さを面的に把握可能)を活かすことにより、面的な測定が可能となります。
 平成16年度に国土地理院で行った、積雪深の計測例を紹介します。平成16年10月に発生した「平成16年(2004年)新潟県中越地震」で甚大な被害がみられた旧山古志村(長岡市)では、斜面崩壊や河道閉塞による湛水域ができ、その後の、「61豪雪」以来19年ぶりとなる大雪に伴い、雪崩の発生や春の融雪による土砂災害が懸念され、雪崩等に対する災害対策の基礎資料を得るため、新潟県山古志村の芋川流域を対象に、平成17年2月18日に計測した積雪期のレーザデータと前年12月上旬に計測した無積雪期のレーザデータの差分から、芋川流域の積雪深を面的に計測しました。
 図-3はその結果から作成した積雪面の標高と積雪深をそれぞれ陰影段彩で表したものです。積雪深は平均2.9m、積雪総量は約10,420万m3、この量が融雪した場合の水量は東京ドーム約38個分となりました。これらの積雪深の数値データ等は、関係する地方公共団体、地方整備局、(独)防災科学技術研究所長岡雪氷防災研究所等へ提供し、融雪対策等に活用されました。

デジタル標高地形図・積雪深図積雪面カラー陰影図(芋川流域)積雪深図(芋川流域)
図-3 積雪面カラー陰影段彩図(芋川流域)・積雪深図(芋川流域)

 基盤地図情報と航空レーザ測量データを組み合わせると、建物の高さを求めることができます。まず、DSMとDEMの高さの差分を求めます。この差分は、建物、樹木、高架橋等の高さになります。これから、建物のみの高さを求めるため、基盤地図情報の「建築物の外周線」を用いて、建物に該当する部分の差分を抽出します。こうして抽出した差分を「建築物の外周線」に付与することにより、建物の高さのデータを作成することができます。
 図-4は大垣市街の一部について、こうして作成されたデータを鳥瞰図として表したものです。
 また、この三次元建物データとDEMを組み合わせると、図-5のような図を作ることができ、都市部の三次元空間モデルの効率的な構築に非常に有効です。

三次元建物データを使用した鳥瞰図(大垣市街) DEMデータと三次元建物データを使用した鳥瞰図(皇居周辺)
図-4 三次元建物データから作成した、大垣市街の
一部の建物形状の鳥瞰図
図-5 DEMと三次元建物データから作成した
皇居周辺の鳥瞰図

 地震発生前後のDSMを比較し、建物倒壊による高さの変化を求めることで、倒壊家屋の特定作業が可能になります(図-6)。

倒壊建物等の検出

図-6 倒壊建物の特定


 東日本大震災において被害の大きかった地方公共団体では、震災後に航空レーザ測量が行われ、DSMとDEMとの差分をとる方法で、瓦礫量の算出に利用されました。
 また、地すべり等の災害発生の場合に、その前後のデータを比較することにより、地すべりの発生地点とその量を計測することも可能です。

地理院タイルの「色別標高図」及び地理院地図3D

 地理院タイルの「色別標高図」(図-7)や「地理院地図3D」(図-8)で航空レーザ測量データが利用されています。

 「色別標高図」は、基盤地図情報(数値地形モデル)と日本海洋データセンターが提供する500mメッシュ海底地形データから作成した陰影段彩図に、水涯線と湖沼の内水面を重ね合わせて地形を視覚的に表現したものです。

地理院地図による色別標高図の表示例
図-7  地理院地図による色別標高図の表示例

 地理院地図3Dでは、「誰でも・簡単に・日本全国どこでも」地理院地図を3次元表示で見ることができます。空中写真のオルソ画像や地形図等を標高データと組み合わせることにより三次元表示するので、地表の特徴をより立体的に視覚化することが出来ます(図-8)。

岐阜駅上空から金華山方向を見た鳥瞰図

図-8 空中写真のオルソ画像と組み合わせた3D表示例:
岐阜駅上空から金華山方向を見たもの


1:25,000 デジタル標高地形図

 1:25,000デジタル標高地形図は、「数値地図5mメッシュ(標高)」の標高データを用いて作成した陰影段彩図の上に、2万5千分1地形図を重ねた地図です。図-9は、その「名古屋」です。
 これらの地図は国土地理院技術資料に登録されています。使用する場合は、こちらをご覧ください。なお、紙地図は全国の地図取扱書店等で購入することもできます。

1:25,000デジタル標高地形図「名古屋」
図-9 1:25,000デジタル標高地形図「名古屋」

火山基本図「箱根山」

 基盤地図情報(数値標高モデル)を利用した事例として、火山基本図「箱根山」があります。
 図-10はその一つ「箱根山I(陰影段彩)」ですが、基盤地図情報(数値標高モデル)の5mメッシュから作成した等高線と陰影段彩図を、通常の火山基本図に追加したものです。陰影段彩に等高線を加えることで、より詳細な地形の状況がわかりやすくなるメリットがあります(図-11)。
 火山基本図「箱根山」は国土地理院技術資料に登録されています。使用する場合は、こちらをご覧ください。

火山基本図「箱根山」 火山基本図「箱根山」双子山
図-10 火山基本図「箱根山I(陰影段彩)」 図-11 火山基本図「箱根山II
(陰影段彩)」の一部を拡大