地理情報−描画(要約)

ISO/CD 19117.3(1999年12月2日)


序文

 この描画規格は、データセットの地物インスタンスを描画するのに必要な情報とメカニズムを、アプリケーションに提供する。描画メカニズムにより、全てのデータセットに対し有効な一般的な規則をもつことが可能になると同時に、ある地物属性のある特定の値にだけ有効な規則をもつことも可能になる。
 

適用範囲

 人間に理解可能な形式での地理情報の描画を記述する、スキーマの定義。この定義には、記号を記述するための方法論及び応用スキーマへそのスキーマを写像するための方法論を含む。この作業は、地図記号の標準化、並びに地図記号の幾何的記述及び機能面での記述を含まない。
 

描画メカニズム

 この規格は、地物に中心化された規則を基礎とする描画メカニズムを、定義する。地物は規則に基づき描画されるが、その規則は幾何及び地物属性情報を利用する。地物、属性、及び基礎的空間幾何、の間の関係は、ISO 19109に従った応用スキーマ中で規定される。空間幾何及び関連する位相関係はISO 10107で定義される。
 地理データを含むデータセットを描画するためには、描画情報が提示される必要がある。描画情報は、特定の描画規則に従って適用される描画仕様として扱われる。描画メカニズムによって、データセット自身を変えることなく、同じデータセットを異なる方法で描画することが可能となる。描画メカニズムは、図1に示されている。

 描画仕様及び描画規則は、データセットの一部であってはならない。描画規則は描画カタログ中に記憶されなければならない。描画仕様は描画規則とは別に記憶されなければならない。また描画仕様は、描画規則から参照されなければならない。描画規則は、それらの規則が適用される地物に対し、それぞれ規定されなければならない。描画仕様は、ネットワークを基礎とするURLのような、普遍的な参照規格を用いて、外部に記憶され、参照されてもよい。
 地物描画についての情報は、メタデータ(ISO 19115を参照のこと。)で提示されなければならない。描画情報は、データセットと併せて一つの描画カタログと複数の描画仕様を送信することで規定されてもよいし、既存の一つの描画カタログと複数の描画仕様をメタデータから参照することで規定されてもよい。
描画規則のメカニズムは、図面上にどのようにして自動的にテキストを配置するのかとか、例えば日時又は縮尺に従って地物を特殊に表現するとか、描画に係る解決すべき課題の発生時に、それに対処するために用いられてもよい。日時又は縮尺といった外部関数の値は、描画規則に含まれてもよい。
 描画カタログ中の描画規則は、データセット中の地物の属性に関し試されなければならない。描画規則は、真(TRUE)又は偽(FALSE)を返すような問い合わせ文として適用されなければならない。ある規則が真を返すまで、次々と新しい描画規則が適用されなければならない。このとき、真を返す描画規則に関連する特定の描画仕様が適用されなければならない。全ての描画規則が真を返さなかったならば、既定の描画仕様が用いられなければならない。
 

描画スキーマ

1 概要

 描画スキーマは、描画サービス、描画カタログパッケージ及び描画仕様パッケージの三つの主要な部分から構成される。描画サービスでは、描画演算が定義される。描画カタログパッケージでは、応用スキーマで定義された地物型のための、描画規則を定義している。描画仕様パッケージでは、描画サービスに必要となる基礎的なパラメータを定義している。
 

2 描画サービス

 描画サービスは、一つの地物又は複数の地物を描画するために用いられる、汎用サービスである。ISO 19107で定義された空間型、すなわち、点、曲線、曲面及び立体のために、複数の演算が定義されている。描画は、可視レンダリングに限定されてはならない。演算は一組の基礎的なレンダリング関数によって実装される。これらの関数のために必要なパラメータは描画仕様中で定義される。
 

3 描画カタログパッケージ

 描画カタログパッケージは、描画カタログ、地物描画、描画規則、外部関数及び属性定義の各クラスを定義する。このパッケージは、応用スキーマで定義された地物属性クラスに依存する。
 描画カタログは一組の描画規則を組織化する。地物描画は、特定の地物型に関連する描画規則を保持する。描画規則は、一つの問い合わせ文、及び描画動作によって構成される。描画動作は、描画サービスに関して呼び出されるべき演算を規定する。
 

4 描画仕様パッケージ

4.1 概要

 PF_PortrayalSpecification(描画仕様)パッケージは、PF_PortrayalSpecification(描画仕様)、PF_PortrayalOperation(描画演算)、PF_ParameterSet(パラメータセット)、及びPF_AttributeValue(属性値)の各クラスを定義する。このパッケージは、PF_PortrayalCatalogue(描画カタログ)パッケージ中で定義されたPF_AttributeDefinition(属性定義)クラスを利用する。これらのクラスは図2に示されている。
 PF_PortrayalSpecification(描画仕様)は、描画仕様のルートオブジェクトである。このクラスは、描画仕様に関する見出し情報を規定する。またこのクラスは、点描画、曲線描画、曲面描画及び立体描画に係る、描画仕様によってサポートされる各演算について、それぞれ一つのインスタンスから構成される。
 PF_PortrayalOperation(描画演算)は、+portrayGeometry(幾何描画)という描画演算の、名称及び記述を保持する。さらに、このクラスは、二つの重要な集約を含む。最初の集約は、演算への関連をもつ仮パラメータを含んでおり、属性定義のリストとなっている。二つ目の集約は、前もって定義されたパラメータセットのリストを含む。

 PF_ParameterSet(パラメータセット)は、実パラメータ値のリストを保持する責任があり、ラベルと記述によって識別される。PF_ParameterSet(パラメータセット)のインスタンスは、対応するPF_PortrayalOperation(描画演算)の仮パラメータリスト中で定義される実パラメータを含むだけでなければならない。
 PF_AttributeValue(属性値)は、一つの実パラメータ値を記憶する責任をもつ。このクラスは自身の属性型への関連をもつ。
 

5 複合記号

 外部関数は、線沿いの点記号若しくは曲面内部の点記号のように、他の幾何の範囲外で、計算された幾何を描画するのに用いることができるか、又は、計算された平行線に沿って複合線型を曲線として描くのに用いることができる。
 

6 テキストの描画

 テキストは、ある地物の一つの属性として処理されなければならない。テキスト地物が参照する幾何プリミティブは、当該テキストがどのようにして表示され得るかを決定する。
 

7 記号の表現

 パラメータセットは、記号を表現するのに用いられなければならない。記号は、当該記号がその一部をなす記号ライブラリの名称によって参照されなければならないとともに、記号ライブラリがそのライブラリ内で当該記号を識別するのに用いる識別子によって参照されなければならない。一つ又は多数の、記号の属性が、描画処理の一部(例えば、縮尺、回転度合い、色)として変更される場合は、その属性及び属性値が記述されなければならない。
 
 

[ もどる ]