地理情報 ― 品質評価手順(要約)

ISO/CD 19114.2(1999年11月30日)


適用範囲

 本国際規格は、数値地理情報データセットとデータセットシリーズへ適用可能な品質に関する評価のための枠組みを提供するものである。データ品質評価手順は、ISO 19113で規定されたデータ品質モデルに矛盾することなくデータ品質情報を決定・報告するために用いられる。本国際規格は、品質メタデータの一部として、あるいはそれに追加するデータ品質報告書としても、品質結果を評価・報告する枠組みをも確立する。
 本国際規格は、データ作成者にデータセットが製品仕様書といかに適合しているかという品質情報を提供しよういう場合や、データ利用者にデータセットが特別な応用のために使用に充分な品質のデータを含んでいるか否かを判断しようとする場合に適用可能である。
 本国際規格は、データ作成者が本文書に記されていないデータ品質評価手順を使用することを承認し、手順の記述、使用および報告を行う方法を規定する。
 

用語と定義

適合性品質レベル
データセットが、製品仕様書を如何に満たしているかを判断するために用いられたしきい値、あるいはしきい値のセット
データセット
識別可能なデータの集合
データセットシリーズ
同じ製品仕様書データを共有するデータセットの集合
直接評価手法
データセット中のアイテムの検査にもとづいてセータセットの品質を評価する手法
全数検査
データセット中、すべてのアイテムの検査(100%検査ともいう)
間接評価手法
外部知識にもとづいてデータセットの品質を評価する手法
アイテム
個々に記述、検討できるもの
母集団
検討対象となる全アイテム
標本
母集団に関する情報を提供するために抽出された一つ以上の標本単位

品質評価工程のフロー

 本国際規格は、データセットの全体または一部の用途は、データセット作成時に予期・計画されたものと異なることを承認する。また、新たな用途の品質要件が、データセットの製品仕様書に記載され、報告された要件と異なることを承認する。従って、本国際規格では、データ作成者およびデータ利用者という、品質評価者が果たす二つの役割を識別し、それぞれについて品質評価工程のフローを定義する。
製品仕様書の開発
利用者要件の公式化
データセット作成中の品質管理
― データセット更新中の品質管理
― 検査
― 仕様書への適合性の判断
 

品質評価工程

1 データ作成者の品質評価工程

 データ作成者は、定量的品質を評価・報告するために、データ作成者の品質評価工程を遂行すべきである。
適用可能なデータ品質要素の識別・・データ作成者は、ISO 19113の要件に従ったデータセットへの適用可能なデータ品質要素を識別すべきである。  データセットは、複数の適用可能なデータ品質要素を持つことができる。識別された適用可能な各品質要素について、データ作成者の品質評価フローチャートにおける残りすべての工程を遂行すべきである。
適用可能なデータ品質副要素の識別・・データ作成者は、ISO 19113の要件にしたがって適用可能な各データ品質要素についてデータ品質副要素を識別すべきである。適用可能なデータ品質要素は、適用可能なデータ品質副要素を複数もつことができる。識別された適用可能なデータ品質副要素は、データ作成者用品質評価のフローチャートの残り全工程について遂行すべきである。
データ品質適用範囲の識別・・データ作成者は、ISO 19113の要件にしたがって適用可能な各データ品質副要素について、少なくとも一つのデータ品質適用範囲を識別すべきである。適用可能なデータ品質副要素は、複数のデータ品質適用範囲をもつことができる。識別された適用可能な各データ品質適用範囲について、データ作成者の品質評価フローチャートの残りすべての工程を遂行すべきである。
データ品質指標の識別・・データ作成者は、ISO 19113の要件と製品仕様書にしたがって、識別された各データについてデータ品質指標を識別すべきである。
データ品質評価手法の選択と適用・・データ作成者は、製品仕様書に従って識別されたデータ品質指標によって、データ品質評価手法を選択すべきである。データ品質評価手法は、下記の中から使用すべきである。:
− 直接評価手法
− 間接評価手法
適合性品質水準を特定する・・データ作成者が、品質メタデータとして適合性あるデータ品質結果(合否)を判断する際に、データ作成者は、適用可能な製品仕様書に従って適合性品質水準を規定するべきである。
適合性品質水準として、非適合アイテムの割合、または計数値を規定する場合、データ作成者は、各アイテムの適合性を判断する限界値を規定する必要がある。
データ品質結果を判断する・・定量的なデータの品質結果(値または値のセット)は、副節 7.1.5.に必須工程によって得られた結果を記述してある。
データの適合性品質結果(合否)は、定量的品質結果と適合性ある品質水準との比較である。データ作成者が適合性ある品質結果(合否)がISO 19113の品質メタデータ報告要件を満たした適合性ある品質結果(合否)を選択する際に、この比較を行うべきである。
 

2 データ利用者の品質評価工程

 データの利用者は、データセットのデータ品質が利用者の要件を満たしているかどうかを一貫性のある標準手法を用いて、データ利用品質評価フローチャートに従って評価すべきである。
適用可能なデータ品質要素、副要素および適用範囲の識別・・データ利用者は、ISO 19113の要件にしたがって、データセットへ適用可能な複数のデータ品質要素および関連するデータ品質副要素を識別することができる。データ利用者は、ISO 19113の要件に従って、適用可能なデータ品質各副要素について複数のデータ品質適用範囲を識別できる。この工程においては、利用者の要件がデータセットの製品仕様書の代用となる。識別された適用可能なデータ品質要素について、データ利用者の品質評価フローチャートにおける残りのすべての工程を遂行する必要がある。
データ品質指標を選択する・・データ利用者は、利用者の要件への適合性が評価される品質指標を選択すべきである。
適合性品質水準を特定する・・データ利用者は、メタデータ、または品質評価報告書にある値と比較するための適合性品質水準をデータ利用者要件から特定すべきである。
利用者要件への適合性を評価する・・選択された要素の一つ以上の副要素について、データセットのデータ品質がデータ利用者の要件をいかに満たしているかを評価する必要がある。これは、当該データ品質副要素の報告されたデータ品質結果を、データ利用者が規定した適合性品質水準と比較することによって行うことが出来る。
 選択された副要素のデータ品質指標のためのデータ品質がデータ作成者によって報告されていない場合は、データ利用者はデータセット自身へデータ作成者の品質評価工程を適用して判断することができる。データ作成者の品質評価工程を適用することによって、利用者の要件がデータセットの製品仕様書の代用となる。
 

データ品質評価手法の分類

1 分類の手引き

 本節は、データ品質評価手順内で用いられている、データ品質評価手法分類のための構成を用意したものである。データ品質評価手法は直接および間接という二つの主要なクラスに分かれている。直接手法はデータの品質結果を判断するためのデータ品質適用範囲によって特定されたデータへ適用する。間接手法は、データ品質結果を判断する外部情報へ用いられる。これらの二つのクラスは、評価を行うために必要な情報源によってさらにサブクラスに分かれる。
直接評価手法・・直接評価手法は、内部および外部の基準にさらに細分化される。  内部直接データ品質評価手法をおこなうために必要なすべてのデータは、評価されるデータセットの内部にある。外部直接品質評価では、試験されるデータセットの外部にある参照データが必要である。
間接評価手法・・間接評価はデータセットに関する情報に基づいて行うが、データセット中のアイテム以外の情報源を用いる。情報源には、メタデータ品質説明要素やデータセットに報告されているかあるいはデータセット作成に用いられた
 

2 直接評価の戦略

直接評価の実施手法・・標本化と全数検査は、自動化手段または非自動化手段により行われる。誤差の種類にあっては、非自動化手段よりコンピュータプログラムによって自動的に検出する方が容易である。
標本化・・適合性を決定するために、ISO 2859 と ISO 3951 を適用してよい。
全数検査・・全数検査は、データ品質適用範囲によって規定されている母集団の中の全アイテムについて試験を必要とする。
 

品質評価情報の報告

1 メタデータとしての報告と品質評価報告書

 定量的な品質結果は、ISO 19113の第8節および関連するモデルとデータディクショナリィを含んだ本国際規格付属書(規定)にしたがって、メタデータとして報告する必要がある。
メタデータに報告された以上に詳細な報告を含んだ品質評価報告書を作成する場合もある。
 

2 品質評価報告書の作成条件

 品質評価報告書は、下記の条件にしたがって作成すべきである。
 a)結合データ品質結果がある場合、すなわち、データ品質要素が型「結合」として利用者定義がなされている場合、
 b)データ品質副要素が型「結合」として利用者定義がおこなわれている場合、
 c)データ品質要素または品質副要素が型「利用者定義」の場合。データ品質結果は、適合性品質水準への合否としてのみ、報告される。
しかし、品質評価報告書は、これ以外のにも随時作成できるが、メタデータとしての報告の代用にはならない。
 

結合データ品質結果の報告

 データセット全体へ適用可能な場合の結合データ品質結果は、メタデータまたは、データ品質報告書にて報告されるべきである。データ品質結果は、型「結合」として報告されるべきである。結合データ品質結果に対するデータ品質値および副要素は、型「利用者定義」として報告されるべきである。
 品質評価手順は、動的なデータセットへも適用可能である。動的データセットとは、連続的に変化するすべての実用的な目的にしたがって頻繁な更新を受けるデータセットである。
 
 

[ もどる ]