地理情報 ― 品質原理(要約)

ISO/CD 19113.3 (1999年11月30日)


適用範囲

 本国際規格は、地理データの品質を記述するための原理を定め、品質情報の報告内容を規定するものである。また、品質に関する知識を体系化する方法も提示する。
 本国際規格は、あるデータセットが、その製品仕様書で規定されたモデル化世界からの写像をいかに満たしているかを記述・評価するための品質情報を提供するデータ作成者に適用される。また、特定の地理データが特定の応用に対して十分な品質があるか否かを判断しようとしているデータ利用者に適用される。また付加的には、本規格はデータ利用者が品質要件を記述するためにも使える。
 本国際規格で定めた要件は、地理データセットに関する品質情報を識別、収集および報告するためのものであるが、その原理の適用範囲を、データセットのサブセットであるデータセットシリーズまたはより小さなデータグループに関する品質情報の識別、収集および報告にも拡張できる。
 

用語と定義

精度
試験結果が、受け入れられる基準値に一致する度合い
適合性
規定されたすべての要件を満たすこと
適合性品質レベル
データセットが製品仕様書をいかに満たしているかをデータ作成者が判断するための、品質結果のしきい値またはしきい値のセット
データ品質日付
データ品質の指標が適用される日付または日付範囲
データ品質要素
データセットの品質を記述する定量的構成要素
データ品質評価手順
評価方法の適用と報告に用いられる活動
データ品質指標
データに適用される試験の型であり、 品質範囲によって規定される
データ品質参考要素
データセットの品質を記述する非定量的構成要素
データ品質結果
データ品質指標を適用した結果得られる値またはそのセット。あるいは、規定された受容可能な品質レベルに対する得られた値または値のセットの評価結果
データ品質適用範囲
品質情報が報告されるデータの範囲または特性
データ品質副要素
データにおけるデータ品質要素の特定の側面を記述する、データ品質要素の構成要素
データの品質値の型
データの品質結果を報告するための値の型または単位
データセット
識別可能なデータの集合
データセットシリーズ
同じ製品を共有するデータセットの集合
地物
 実世界の事象の抽象
地物属性
地物の特性
アイテム 
個々に記述、考慮できるもの
メタデータ
データに関するデータ
製品仕様書
モデル化世界の記述と、モデル化世界からデータセットへの写像の仕様
品質
明示的および黙示的な要求を満たす上での製品特性の総和
レポーティンググループ
共通の特性を持つデータからなるデータセットのサブセット
モデル化世界
あらゆる関心対象を包含する実世界や仮想世界の概観

地理情報の品質記述原理

 データセットの品質は、下記の二つの構成要素を用いて記述するものとする。
― データ品質要素・・データ品質副要素およびそのデータ品質副要素の記述子とともに、データセットがその製品仕様書に明記されている基準をいかに満たしているかを記述し、定量的品質情報を提供する。
― データ品質参考要素・・総合的な非定量的情報を提供する。
 

1 データ品質要素

― 完全性・・完全性は、地物の存否、属性および関係を記述するものとする。
― 論理一貫性・・論理一貫性は、データの構造、属性および関係に関する論理的規則の遵守程度を記述するものとする。
― 位置精度・・地物の位置の精度を記述するものとする。
― 時間精度・・時間属性の精度と地物の時間関係を記述するものとする。
― 主題精度・・定量的および非定量的属性の精度と、地物の分類および関係の正しさを記述するものとする。
― 利用者定義・・本国際規格で取り扱われないデータセットの定量的品質の領域を記述するものとする。
 

2 データ品質副要素

― 完全性・・ 過剰、 漏れ
― 論理一貫性・・ 値域一貫性、 フォーマット一貫性、 位相一貫性
― 位置精度・・ 絶対または外部精度、 相対または内部精度、グリッドデータ位置精度
― 時間精度・・ 時間測定精度、 時間一貫性、時間妥当性
― 主題精度・・ 分類の正確性、 定性的属性の正確性、 定量的属性精度
― 利用者定義
 各データ品質副要素について、次の記述子を用いて品質情報を記録するものとする。
データ品質適用範囲、データ品質指標、データ品質評価手順、データ品質結果、データ品質値の型、データ品質日付
 

3 品質参考要素

 下記のデータ品質参考要素は、データセットの非定量的品質を記述するものである。
― 目的・・データセットを作成する根拠を記述し、意図される用途に関する情報を含むものとする。
― 用法・・ データセットが利用されている応用を記述するものとする。用法は、データ作成者やほかの主要なデータ利用者によるデータセットの用途を記述する。
― 履歴・・データセットの履歴をわかるかぎり記述し、データセットの収集・取得から編集および現形式への導出までのライフサイクルを詳述するものとする。
― 利用者定義・・本国際規格で取り扱われないデータセットの非定量的品質の領域を記述するものとする。
 

地理情報の品質の識別

適用可能なデータ品質要素の識別・・ データセットに適用できるすべてのデータ品質要素を識別する必要がある。一部のデータ品質要素は、特定タイプのデータセットには適用できない。データセットの製品仕様書を用いて適用可能性を判断するものとする。利用者定義用データ品質要素の名称および定義は、データセットの品質情報に含める必要がある。 本国際規格に記されたデータ品質要素が品質の構成要素を十分に記述しない場合、新しいデータ品質要素を命名・定義してもよい。
用可能なデータ品質副要素の識別・・各データ品質要素について、すべての適用可能なデータ品質副要素を識別する必要がある。適用可能なデータ品質要素のデータ品質副要素のなかには、特定タイプのデータセットに適用できないものがある。製品仕様書を用いて適用可能性を判断しなければならない。本国際規格に記されたデータ品質副要素が品質の一側面を十分に記述しない場合、新しいデータ品質副要素を命名・定義してもよい。
 

1 データ品質副要素の記述子の使用

データ品質適用範囲・・データ品質適用範囲は、データセットが属するデータセットシリーズ、データセット自体または識別されたレポーティンググループである、適用可能な各データ品質副要素のデータ品質適用範囲を決めるために、製品仕様書と品質参考要素を用いるものとする。 
データ品質指標・・データ品質指標では、データ品質適用範囲によって規定されるデータに適用される試験の型を概説し、名称が存在する場合は名称、境界または限界値パラメータについて記述する。
データ品質評価手順・・データ品質評価手順は、データ品質適用範囲によって規定されるデータにデータ品質指標を適用するための方法論を記述するか、またはその記述を含む文書を参照する必要がある。
データ品質結果・・データ品質指標を適用して得られた値または値のセットを、受容可能な特定の適合性品質レベルに対して評価した結果。本国際規格では、このようなデータ品質結果を合否と称する。
データ品質値の型・・各データ品質結果について、一つのデータ品質値の型を与えること。
データ品質日付・・ISO 19108の時間スキーマの要件に従って、各データ品質指標について一つのデータ品質日付を提供するものとする。時間が関連すると考えられる場合、データ品質日付の適用範囲を時間または時間範囲に拡張してもよい。
 

2 非定量的品質情報の識別

 データセットの目的、用法、履歴は、常に適用可能でなければならない。
 本国際規格で識別されたデータ品質参考要素が、一般的な非定量的品質のある領域を十分に記述しない場合、新しいデータ品質参考要素を命名・定義してもよい。利用者定義用データ品質参考要素の名称および定義は、その要素の品質情報に含める必要がある。
 

品質情報の報告

定量的品質情報の報告・・定量的品質情報は、メタデータとして報告するものとする。
 さらに、品質評価報告書を用いて、ISO 19114の要件に従って定量的品質情報を報告するものとする。
非定量的品質情報の報告・・ 非定量的品質情報は、メタデータとして報告するものとする。
 
 

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