地理情報−地理識別子による空間参照(要約)

ISO/CD 19112(1999年11月29日)


序文

 地理情報(Geographic information)は、データの中に表現された地物(features)を実世界(real world)の位置(position)に関連付ける(relate)空間参照(spatial reference)を含む。空間参照は、2つのカテゴリーに分けられる。
a)座標を用いるもの
b)地理識別子(geographic identifiers)を用いるもの
 この国際規格(International Standard)は地理識別子による空間参照のみを扱う。このタイプの空間参照は、しばしば「間接(indirect)」といわれる。座標(coordinates)による空間参照は、ISO19111の主題(subject)である。
 地理識別子を用いた空間参照システムは、明示的に座標に基づくものではなく、地理的地物(geographic features)により定義される場所(location)との関連に基づくものである。位置の地物への関連は、次のものであろう。
a)包含:例えばある国の内部と言うように、位置が地理的地物の内部にある場合。
b)局所的測定に基づく:位置が、地理的地物内の固定された点に対して相対的に定義されているもの。例えば、道路に沿って、他の道路との交差点から与えられた一定距離だけ離れた場合。
c)緩やかな関係:位置が、地理的地物とファジーな関連をもつもの。例えば、ビルに隣接したり2つのビルの中間の場合。
 この国際規格の目的は、地理識別子を用いた空間参照システムの定義と記述システム(describe system)の方法を規定する(specify)ことである。
 

適用範囲(Scope)

 この国際規格は、地理識別子に基づいた空間参照のための概念スキーマ(conceptual schema)を定義する。それは、地理識別子を用いた空間参照の一般モデルを確立し、空間参照システムの構成要素(components)を定義するとともに、地名集(gazetteer)の重要な構成要素を定義する。
 座標による空間参照は、ISO19111で扱われている。しかしながら、地理識別子を用いた空間参照の座標を用いた空間参照への連携方法は、この中で扱われている。
 この国際規格は、データ生産者(producer)が地理識別子を用いた空間参照システムを定義することを可能とし、利用者がデータセットの中で使われている空間参照を理解する助けとなる。また、地名集が一貫した方法で構築できることを可能とし、地理情報の分野の他の規格の開発を支援する。
 この国際規格は、数値地理データに適用可能であるが、その原理(principle)は、地図、海図及び文字文書等、他の形式の地理データに拡張できるであろう。
 

用語と定義(Terms and definitions)

地名集(gazetteer)
位置に関する何らかの情報を含む実世界の現象のクラス(class)のインスタンス(instance)の辞書(directory)
例:自治体の道路の地名集
地理識別子(geographic identifier)
地物を一意に識別するラベルまたはコードの形式の空間参照
例:「スペイン」は国名の例、「SW1P3AD」は郵便番号(postcode)の例

地理識別子を用いた空間参照の概念

1 地理識別子を用いた空間参照

 地物の位置は空間参照により識別される。地理識別子がこの空間参照として使われるとき、それは、一つ又は複数の地理的地物で定められる場所を一意に識別する。

1.1 地理識別子を用いた空間参照システム

 地理識別子を用いた空間参照システムは、各々の対応する地理識別子と一緒になった場所の型(location type)の構造化された集合からなる。これらの場所の型は、集約(aggregation)や分割(disaggregation)により多分に階層構造を作りながら、相互に関連付けられるであろう。
備考:地理識別子を用いた空間参照システムの例は、次のようなものである。
a)ISO3166-2で定義される、国とその分割領域。場所の型は、国と国の分割領域。これらの場所の型は、2種類の地理識別子を有する。
−場所の型「国」、地理識別子は、「国名」と「国コード」
−場所の型「国の分割領域」、地理識別子は、「国の分割領域名」と「国の分割領域コード」
b)地域の人口中心の集合
c)町内の不動産の住所
河口、河川、水源の水理的階層

1.2 地名集

 地名集は、ある特定の場所の型について、すべての場所インスタンス(location instance)のマスターレコードを規定する。それはまた、各場所インスタンスの位置に関する付加情報を含むだろうし、座標参照を含むかもしれない。どのような場所の型についても、複数の地名集が存在するかもしれない。
 

地理識別子による空間参照システムの要件

1 地理識別子を用いた空間参照システムの属性

 地理識別子を用いた空間参照システムは、一つ又は複数の場所の型(それらは関係があるかもしれない)を含まねばならない。それぞれの場所の型は、一つ又は複数の地理識別子により、一意に識別されねばならない。
 地理識別子を用いた空間参照システムは、次の属性で表現されねばならない。
−名称 −主題 −全体所有者(overall owner) −利用地域(domain of use) −場所の型
 

2 場所の型の属性

空間参照システムのそれぞれの場所の型には、次の属性が必要である。
−名称 −主題 −ラベル付け規則(labelling convention) −定義 −利用地域 −所有者
これらに加えて、次の属性があるかも知れない。
−親 −子
 

地名集の要件

1 地名集の特性

 空間参照システムの各場所の型のすべてのインスタンスは、地名集で記述されねばならない。
備考:同一場所の型に対し、複数の異なる地名集が存在するかも知れない。異なる方法で記述された場所インスタンスの場合などである。
 地名集は、次の属性を有さねばならない
−名称 −利用地域 −管理人(custodian) −場所の型
 また、次のものも記録されるかも知れない。
−内容(scope) −座標参照系
 いかなる場所インスタンスが作られたり廃止されたり、あるいは場所インスタンスの新しい版が作られたときは、地名集の新しい版が生成されねばならない。

2 場所インスタンスの属性

  各場所インスタンスの属性は、次のものでなければならない。
−地理識別子 −管理者

次のものも記録されているかも知れない。
−基準日(version date) −代替地理識別子(alternative geographic identifier)
−地理的範囲(geographic extent) −位置 −親場所インスタンス
  場所インスタンスの属性にいかなる変化が起こっても、場所インスタンスの新版を生成しなければならない。場所インスタンスの変化の例としては、境界変更により地方自治体の行政区域が変わった時がある。
 

備考1:一層広い地理定義域で地理識別子が一意であることを確かなものとするため、親の場所の型のインスタンスの識別子を含むことが必要かも知れない。例えば、「テキサスのパリ」。
備考2:基準日は、たいていはこの版の生成日になるであろう。
備考3:地理的範囲は、次のどれかで定義されねばならない。
a)より小さな地物の集まり:例えば、構成国のリストで定義する「欧州連合」
b)次のどれかで記述された多角形
−(それぞれが地理的地物で定義された)境界セグメント(segment)の閉じた集まり:例えば、取り囲む道路で定義された街区
−座標一式:例えば、境界の座標で定義した筆
備考4:地理識別子が(住所のような)位置情報を含まない場合や、代替地理識別子がない場合は、位置は無ければならない。

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