地理情報 ― 座標による空間参照(要約)

ISO/CD 19111.2(1999年11月23日)


序文

 地球表面における位置は空間参照のシステムによって記述することができる。これらには以下の2つの基本的なタイプがある。
− 座標を用いるもの
− 地理識別子(例えば、住居表示、行政区域、道路距離・オフセット)に基づくもの
 座標は、その座標が関連付けられる座標参照系が完全に定義されたとき初めてあいまいでないものとなる。座標参照系とは地球に対してひとつの参照を持つ座標系である。この規格は、地理情報に適用できる様々なタイプの座標系と座標参照系を完全に定義するのに必要な要素を記述し、また、座標参照系に不可欠ではない情報も含有する。
 座標参照系を記述することに加えて、この規格は二つの異なる座標参照系の間の変換や換算についての記述を与える。このような情報により、異なる座標参照系を適用する地理データが統合的な操作のために融合できる。もうひとつには、座標参照系操作の監査・追跡が維持できる。
 

適用範囲

 この国際規格は座標による空間参照の記述についての概念スキーマを定義する。この規格は、1、2、3次元の座標参照系を定義するのに必要な最小限のデータを記述する。この規格は、情報を追加、記述することを許容している。この規格はまた、座標値をある座標参照系から他の座標参照系に変えるのに必要な情報を記述する。
 

用語と定義(抜粋)

 
座標参照系(coordinate reference system)
原子(datum)によって地球に関連付けられた座標系
座標系(coordinate system)
点にどのように座標を割り当てるかを規定するための(数学的)規則の集合
原子(datum)
他の数量の計算の基準または基礎として使ってもよい数量または数量の集合
備考 原子は、ある座標系の地球に対する原点位置、スケールおよび軸の方向を定義する。
演算(operation)
ある座標参照系から他の座標参照系への1対1の関係に基づく座標の変更

座標参照系の概念スキーマの定義

1 序文

 座標は、すべての座標が同一の座標参照系に属するデータセットとして与えるものとする。各々のデータセットは、そのデータセットにおけるすべての座標に適用されるひとつの系の記述を含むものとする。空間データが二つ以上の系に準拠するときは、そのデータは二つ以上の記録グループに分けてそれぞれの系の定義をつけるものとする。
 

2 座標参照系

2.1 座標参照系の種類

 この国際規格においては2種類の座標参照系、すなわち座標参照系の一般の場合と複合座標参照系の特別な場合は区別されている。

2.2 一般の場合

 座標参照系はひとつの原子とひとつの座標系によって定義するものとする。
この国際規格の目的には、座標参照系は時間に伴い変化してはならない。

2.3 複合座標参照系

 高さが海水面に関連付けられるような場合は、三次元の位置の記述での水平成分および高低成分は異なる座標参照系に由来する。このような場合は、利用される二つの(水平成分用と高低成分用の)座標参照系を識別する複合座標参照系によって扱うものとする。
 

3 原子

3.1 原子の型

 この国際規格においては‘原子’は座標系の地球への固定を含む。
 原子は、測地、標高基準面または施工基準面のいずれかであるものとする。測地原子は座標系の地球への関連付けを与え、2ないし3次元の系の基礎として用いられる。測地は楕円体の定義を含むものとする。標高基準面は重力補正をした高さのジオイドとして知られる面への関連付けを与える。この国際規格においては原子はもしそれが測地でも標高基準面でもなければ施工基準面とする。施工基準面の地球への関連付けは指定されない。

3.2 本初子午線

 本初子午線は、経度値を規定するための原点を定義する。ほとんどの測地原子はその本初子午線としてグリニッジを用いる。

3.3 楕円体

 原子型が測地ならば、楕円体を記述するものとする。原子型が標高基準面または施工基準面ならば楕円体記述は必要ない。
 

4 座標系

 座標系は名称、単位、軸の方向及び順番を定義する。一組の座標はこの順番に従って並べられる。座標系の型として有効な入力値は、デカルト、測地、投影、極、重力(注:標高を指す)である。座標系の軸については、個々に記述するものとし、各々の座標記述の順はデータセットの座標の順にならう。
 

5 演算・換算と変換

5.1 一般論

 この国際規格においては、次の2つの型の演算を認めるものとする。
 − 換算は、同じ原子範囲内の座標系を別の座標系に変更する。換算においてはパラメータ値は厳密である。
 − 変換は、座標をある1つの原子に基づく座標参照系から第2の原子に基づく座標参照系に変更する。変換は、変換パラメータ値が経験的に導かれるという点で換算とは異なり、したがって数多くの異なる推定値(または実現形)があってもよい。

5.2 換算 (地図投影を含む)

 換算は、楕円体座標の2次元デカルト座標への地図投影に広く用いられる。他の換算としては、計測単位の換算や局所グリッドを作るための平面の原点の移動がある。換算には、楕円体座標(楕円体高を含む)の3次元デカルト座標への換算およびその逆の換算を含む。

5.3 変換

 変換はあるアルゴリズムを持つ手法によって行われる。それぞれのアルゴリズムは関連パラメータの値を持つ。これらの値は経験的に導かれるので、二つの原子の間の変換に複数のバージョンを生じることとなる。

5.4 連結演算

 ある座標参照系から他の座標参照系への座標の変更は、1つ以上の変換及び/または1つ以上の換算からなる一連の演算に従ってもよい。連結演算は、数個の変換及び/または換算による座標の変更を記録する。
 

6 座標、演算及びパラメータの正確度と精度

 座標あるいは演算及び演算パラメータの正確度または精度についての情報は、品質情報であり、ISO 19113「地理情報―品質原理」とISO 19114「地理情報―品質評価手順」にしたがって記録するものとする。
 

7 メタデータ要件

 この国際規格の全てのエンティティ(entities)と要素は、ISO 19115「地理情報―メタデータ」におけるメタデータエンティティとメタデータ要素である。
 
 

附属書 A :適合性

1 抽象試験スイート

 この抽象試験スイートは、座標参照系と演算の2つのケースに対して適用する。

1.1 試験事項識別子:完全性試験

試験目的:必須であると規定されるか、あるいは指定された条件下で必須であると規定される全ての関連するエンティティと要素が記述に与えられたかどうかを決定すること。
試験方法:この規格の要件と対象となる座標参照系または演算の記述との間で比較を行うものとする。座標参照系記述が完全となるには、必須と指示された最小限全ての要素を含んでいなければならない。演算が完全となるには、記述は必須と指示された最小限全ての要素を含んでいなければならない。

1.2 試験事項識別子:最大記述回数試験

試験目的:座標参照系または演算の各々の要素の記述が規格に規定された回数よりも多く現れないことを保証すること。
試験方法:データセットにおける対象となる座標参照系または演算に関して、与えられた各々のエンティティと要素の記述回数を検査する。それぞれについての記述回数は規定された「最大記述回数」属性と比較するものとする。

1.3 試験事項識別子:データ型試験

試験目的:データセットにおける座標参照系または演算の各々の要素が規定されたデータ型を用いているかどうかを決定すること。
試験方法:座標参照系または演算の各々の要素のデータ型が規定されたデータ型に忠実であることを保証するよう試験を行う。
 
 

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