地理情報 − プロファイル(要約)

ISO/CD 19106 (1999年12月2日)


 プロファイルは、規格及び規格の構成要素の論理的なサブセットであり得るし、ISO 19100シリーズ規格の中で定義された規則に従った具体例でも良い。また、場合によって、プロファイルは外部規格を引用することができる。また、ISO 19100シリーズ規格のうちの、1つの規格、または複数の規格のサブセットでもよい。製品仕様が、ISO 19100シリーズ規格から選んだオプションのアイテムで構成されるような場合、製品仕様はプロファイルの一種である。実装仕様はビヘービアの集合を実装するのに必要な全ての情報を完全に定義する、別のタイプのプロファイルである。本規格は、製品仕様と実装仕様を、プロファイルのクラスとして国際的なレベルで取り扱う。ISO 19100シリーズ規格から選ばれる地理情報の機能をサポートするのに必要とされる開発規模を見極めるために、ソフトウェア開発者と地理情報システムによってプロファイルを使用される。プロファイルと製品仕様そして実装仕様は、本規格に記述された機構を経て制定され、国際的に標準化される。本規格は、プロファイル、製品仕様又は実装仕様の登録や管理、及びプロファイルの作成に必要とされる手続きを定義しているという点で手続きの規格であると言える。
 

プロファイルと製品仕様の関係

 ある特定の役割を実現するために、基本規格の中から選び出された節、クラス、サブセット、オプション、及びパラメータを、その役割を満たすように設定したものの集まりがプロファイルである。
 製品仕様は、データ製品を記述するのに必要な全ての情報を完全に定義するという点で特別な種類のプロファイルである。そして、製品仕様は「応用スキーマのための規則」との間で、強い共通性を持っていて、応用スキーマを自然言語で文書化したものが製品仕様であると考えることができる。データ製品の性質をある特定のものに限定した場合、製品仕様は比較的狭い定義となることがある。
 実装仕様もまた、プロファイルの特別のクラスである。ISO 19100シリーズ規格はオブジェクト(object:対象)とビヘービア(behaviour:振る舞い)の両方を定義している。実装仕様は、ビヘービアの集合を実装するのに必要な全ての情報を完全に定義しているプロファイルであり、実装仕様もまた、定義において比較的狭義のものである場合がある。
 TC211一連の規格はオブジェクトのクラスとこれらのオブジェクトのビへービアを定義し、具体的に情報のオブジェクトとビヘービアを定義するために使用する規則を定義する。すなわち、これら、規則に基づいた規格はメタオブジェクトを定義するのである。これらのメタオブジェクトのインスタンスは、プロファイルの中で実装可能である。ISO 19100シリーズ規格は、抽象仕様を、形作り、この抽象仕様を実体化する事で製品仕様と実装仕様を作成する。
 

プロファイルの目的

 プロファイルは以下の目的のために基本規格の連携の組み合わせを定義する。
− 相互運用性を確保するため、「適切なクラス、クラスのインスタンス、サブセット、オプション、パラメータとともにそれら基本規格を明らかにする。」
− 使用者と作成者両方にとって利便を図るため「基本規格の多様な利用を参照する分類系を提供する。」
− 実際の利用システムのため「実用的に定義された基本規格のグループの、一貫性のある実装の利用可能性を高めるような手段を提供する。」
− 「プロファイルの機能性を実装するシステムのための適合性試験の開発において、均一性を提供する。」
 

基本規格との関係

 与えられている環境の機能にふさわしい基本規格の利用の組み合わせ方法を定義することで、プロファイルは基本規格の統合を行なう。
 

参照の活用

1 引用規格

 規格プロファイルSPは、基本規格及び、本規格と、JTC 1の規則の下で標準化されたISPの下で、国際的に標準化された他のSPに対してのみ、引用を行なうことができる。
 

2 参考規格

 プロファイルにおいて参考引用を作成し利用してもよい。その際には本規格で定められる規則に則って行われなければいけない。
 

プロファイルの内容

1 プロファイルの内容の一般原則

 プロファイルは、一緒に使用される基本規格それぞれの間どのような関係があるかを明らかにし、そして、使用される各々の基本規格について、その詳細の特徴づけを念入りに行うものである。プロファイルは、他の規格プロファイル又はSPによって定義されているインタフェースや機能を参照するために、その規格プロファイル又はSPを引用することがある。そのため、プロファイルによる基本規格への直接参照が制限される場合もある。
 

2 プロファイルの要素

 プロファイルの定義は以下の要素により構成される。
a) プロファイルが提供する機能の範囲の簡潔な定義と、十分満足のいく使用者要件。
b) プロファイルが適用される状況の記述。
c) 基本規格のセットやSPへの引用。
d) 各々引用されている基本規格又は、SPのアプリケーションの仕様。
e) プロファイルへの適合性を要求するシステム又はデータセットによって守られる要件を定義している記述。
f) 適切な場合、プロファイルのための適合性試験の仕様の引用。
g) プロファイルの中で引用される基本規格の全ての修正や技術的正誤表に対する参考扱いの参照。
 ISO 19100シリーズ地理情報規格に対するプロファイルもまた以下のことを要求する。
a) プロファイルは地理情報参照モデルISO 19101によって定義されている枠組みを使って作られるべきである。
b) プロファイルはISO 19109「応用スキーマのための規則」に従って作られるべきである。
c) ISO 19100シリーズ構成要素規格の節や副節に対する引用は、解りやすくなければならない。つまり、引用は、モジュールの中において任意選択要件を含んでいるパラメータとともに機能上の要素を定義している、特定のモジュールに対する引用でなければならないということである。
 

3 プロファイルの適合性要件

 プロファイルの適合性要件は以下のとおり、基本規格の適合性要件と関係が有るものとする。
a) 基本規格の無条件の必須要件は、プロファイルの中にも必須の形で残るものとする。
b) 基本規格の無条件の任意選択要件は、任意選択の形で残っても良いし、プロファイルの中で変えられてもよい。
c) 基本規格の条件付要件における条件を、プロファイルの文脈において完全に評価することができるならば、そのとき、これらの要件は、無条件の必須要件または、無条件の任意選択要件になる。もしくは、範囲外になるか、禁止になるかである。もしそうでなければ、条件は条件付のままで、適切に、たぶん部分的に、評価された条件として残る。[ISO/IEC TR 10000-1]
 

プロファイル分類系

 プロファイル分類系は複数のプロファイルが当てはまるような体系とクラス分けである。体系はプロファイルをクラス分けし、そして、プロファイル間のたくさんの関係を明確にする。プロファイル分類系は、一つのプロファイルと他のプロファイルとの関係を定義し、登録機関を通してのプロファイルの正式な文書化を考慮している。規格プロファイルのための登録は、国際的レベルで行なうことができる。各国の登録機関は、産業又は民間のプロファイルと国家のプロファイルのために存在する。国際的に標準化された規格プロファイルは、この分類系の中に含まれることになる。
 

プロファイル登録機関の階層

 階層は規格プロファイルを頂点に置いている。この下に、国家プロファイルや民間プロファイルがある。規格プロファイルはTC211が責任を持つ(または、Multi-TC ISPの場合、他のISO/IEC TCとともに)。国家プロファイルは個々の国家団体が責任を持つことになる。国家団体は、TC211登録ネームドメインの中の自分自身のサブドメインを管理するために、国家登録機関を設立することができる。民間や産業のサブサブドメインは個々の国内の問題として個々が対応する。
 

製品仕様

1 概覧

 製品仕様はアプリケーションと空間スキーマ、メタデータ、品質情報、参照系、地物コードカタログ(もし利用できるならば)そしてコード化(データセットの転送のために)を明らかにするのが望ましい。製品仕様はデータセットのインスタンスの狭いクラスを具体的に述べている。いくつかの任意選択は許容されることがあるが、その任意選択の範囲は制限されるのが望ましい。
 

2 製品のタイプ

 製品仕様の内容は異なるタイプの製品の間でそれぞれ異なる。−ラスタデータ製品のための製品仕様は、ベクタデータの製品のそれとは必然的にまったく異なる。
 − 製品仕様は、規格プロファイル(SP)又は、国家プロファイル(又は、産業の又は民間のプロファイル)のうち1つとして記録される。
 

3 共通要素

 ISO 19100シリーズ規格は、製品仕様を記述するために組み合わせて使うための要素を用意している。そして、これらの要素は「モジュール」としてグループ化されている。
 モジュール化の概念は、製品仕様間の共通性を獲得することの手助けとなる。なぜなら、製品仕様において選ばれた基本規格の要素は、全て機能上の部品であることを保証するからである。
 

4 テンプレート製品仕様

 なお一層の普遍性は、製品の、異なるクラスのテンプレート製品仕様を作成することによって、達成することができる。そのようなテンプレート製品仕様は、本来、ISO 19100シリーズ規格のプロファイルである。特定の製品仕様は、そのとき、テンプレート製品仕様プロファイルのプロファイルとなる。つまり、テンプレート製品仕様プロファイルは、可能な任意選択要件の数を少なくし、そして、製品の特定のクラスに対応する適合性要件を増加させる。このテンプレート製品仕様は規格プロファイル(SP)であることがある。特定の製品に対する国家の製品仕様はテンプレートに従い、そして、国家製品仕様として登録されることができる。
 

プロファイルの文書構造

1 原則

 プロファイルの内容や形式に対する要件は、以下の原則に基づいている。
a) プロファイルは基本規格と直接に関係するものとする。また、プロファイルへの適合性は基本規格への適合性を暗示するものとする。
b) SPはISO「指示書」で与えられる、ISO/IEC「国際規格の原案作成と提出のための規則」に、従うものとする。
c) SPは簡潔な文章にするべきである。これは、使用者や実装者がプロファイルを読みやすくするのに必要なことがある。
d) ある特定の基本規格をまったく同じに利用しているプロファイルは、一致していなければならないし、同じ要件なので用語のレベルも同じにしなければいけない。
e) 一つのプロファイルの定義が、別のプロファイルの定義の全体を参照することがある。
 

2 多重パートSP

 二つ以上のプロファイル間に密接な関係が存在する場合、多重パートSPが定義されることがある。適切な場合、このプロファイルのセットは、共通の文書を共有することができる。多重パートSPの各々の部分は十分に独立していなければならない。
 

3 SPのフォーマットと構造

 SPはISO/IEC「指示書、パート3、国際規格の原案作成と提出」に従うものとする。
SP の作成と採用
 SPの作成と公表のための手続きは、用語を除き規格のものと同じである。プロファイル、製品仕様、又は実装仕様の作成は新作業項目提案の付託が必要となる。そして、プロファイル作成のステップは規格の作成の場合と同じである。独立型の規格や基本規格の要件の上にさらに、プロファイルの作成にあたっては付加的な要件が3つあり、それを守らねばならない。
 

登録

1 概覧

 地理情報システム間の相互運用性の確保のため、プロファイルと他の構成要素(オブジェクト)の明白な識別が必要である。そのため、プロファイルは、明白な名前が、プロファイル及び潜在的にプロファイルの要素と正式に関連づけられるような登録構造を必要とする。国際規格プロファイルは規格なので、それらはISOの中央事務局によってISO規格番号を付与される。国家プロファイルや産業、民間プロファイルは、国レベルで付与される識別番号を持つことになる。
 

2 登録機関

 技術規格を作成している技術グループは、自らがTC211登録機関の設立や登録をしなくてもいいように、あらゆる手段を行なうべきであるが、これが不可能な場合、既存の登録過程の使用を通して、自らの要件を満たせるようにすることができる。
 

3 関連規格の登録と公表

 登録機関に関係する全ての種類の登録に対して、二つの異なる規格が必要である。一つ目は登録されるオブジェクトを定義する技術規格である。二つ目は、登録機関が機能し、そしてその義務と責務を明らかにするための手続き規格を定義するものとする。また手続き規格は、訴えの手続きも明らかにするものとする。
 新しいTC211登録機関が必要な場合、登録されるオブジェクトを定義している技術規格に対して責任のある、技術グループは、技術規格と対になる手続き規格を作成するものとする。手続き規格の原案は、技術規格のDIS投票の時点でCD投票で登録されるものとする。
 

4 TC211登録機関

 ISの実装にTC211登録機関の指定が必要となるような場合、附属書Eの規則が適用されるものとする。以下の規則は、TC211登録機関(TC211の国際レベルでの登録の役割を果たす組織)に適用されるものとする。

4.1 取り決め

 ある組織がTC211登録機関に認証されることは、決められた手順に従って行われるものとする。

4.2 資格付与

 TC211登録機関としての指名に適するとみなすためには、当該組織は明示するべき事がある。

4.3 協定

 もし取り決めがなされたならば、TC211登録機関はISOとの協定に基づき運営されるものとする。12ヶ月間の予告の後、TC211登録機関とISOのどちらからでも協定を終わらせることができる。

4.4 任務

 TC211登録機関は、技術規格と関連手続き規格の両方そして以下の規則に従いオブジェクトを登録することについて責任がある。
TC211登録機関にはしなければいけない条件がある。
 

5 文化及び言語への適応

 登録された識別子のリストは、すべて、異なった文化、言語の要件に対する容易な適応性を考慮した方法で定義されるべきである。これは中立な識別子の定義又は、対応表(equivalency table)の維持管理のいずれかを含むことができる。
 
 

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