地理情報 − 適合性と試験(要約)

ISO/DIS 15046-5(1999年8月5日)


序文

 データ及びシステムが地理情報規格に適合するかどうかを決定するための試験が、実施できないのであれば、デジタル地理情報の分野の標準化の目標は、完全に達成可能だとはいえない。適合性試験とは、試験の対象となる製品の、実装の適合の度合の程度を決めるために、その製品に対して規格が要求する特定の性質を備えているかどうかを調べる試験である。この試験は、実装されているとうたわれている機能が、規格の要求する適合性要件を満たしているかどうかを調べることで行われる。
 

適用範囲

 ISO 15046のこの部は、この一連の規格への適合を主張するために必要な、試験と基準のための枠組み、概念及び方法論を規定する。この部は、抽象試験スイートを規定する枠組み及び適合性試験中に従わなければならない手続きの定義についての枠組みを規定する。
 地理情報規格への適合のための試験法及び適合の基準について標準化することによって、これらの規格への適合性の検証が可能になるであろう。検証可能な適合性は、地理情報の利用者がデータ転送及びデータ共有を達成するために重要である。
 

適合性の一般的枠組み

1 適合性の節

 ISO 15046の全ての試験可能な部は適合性の節を含む。この節は、その部への適合を主張するために満たされなければならない全ての要件を規定する。適合性の節は適合性試験の入口としての役割を果たす。
 

2 適合性要件

 適合性要件は次のように分類できる。
a) 必須要件: 全ての場合に、遵守しなければならない要件。
b) 条件付き要件: 仕様で定めた条件に該当する場合には、遵守しなければならない要件。
c) 任意選択要件: 任意選択機能に適用可能な要件がある場合には、実装に合わせて選択できる要件。
 

3 任意実現要件書

 特定の実装の適合性を評価するために、実装された任意選択機能の記述が必要となる。これによって、実装された機能に関する要件についてだけ適合性を試験できるようになるであろう。このような記述は任意実現要件書と呼ばれる。この記述は、ISO 15046で規定された要件のうち任意選択機能だけを含まなければならない。この記述は、この枠組みを超える任意選択機能を含んではならない。
 

4 適合実装

 適合実装は、任意実現要件書に合致し、ISO 15046の適用可能な部の適合性要件を満たさなければならない。このような実装は、実装がサポートしていると任意実現要件書中に記述されている任意選択要件も含め、全ての対象となる試験に合格していなければならない。
 

適合性試験の方法論

1 適合性試験の種類

1.1 概要

 適合性試験は、試験対象の実装がこの規格の部で規定された要件に適合しているかどうかを定めることを目的とする。適合性の度合いを示す程度に応じて、2種類の試験に区別する。
a) 基本試験、この試験によって、試験対象が適合していることの予備的な証拠が得られる。標準の抽象試験スイートで基本試験を採用することにした場合、この試験は、適合性評価過程の最初に用いられなければならない。この試験は規格で定める。(2)
b) 機能試験、この試験は、試験対象の観察できる機能が任意実現要件書に記述されている機能に合致しているかどうかを検査する。この試験では、規格に規定された適合性要件の全ての範囲について、できるだけ包括的に試験を行うように努める。この試験は、規格で定める。

1.2 基本試験

 基本試験は、試験対象について全体を通した試験を行うのが適切であるかどうかを判断するために行う、限定された試験である。基本試験は、抽象形式又は実行可能形式のいずれでもよい。基本試験は、機能試験を実行すべきかどうかを決断する前に、適合の程度を決定するために用いられてもよい。基本試験は単純な機能試験である。適合性の節は、どの試験項目が基本試験として用いられてもよいのかを識別することが望ましい。

1.3 機能試験

 機能試験は、抽象形式又は実行可能形式のいずれでもよい。機能試験では、規格が規定した適合性要件の全ての範囲について、実装を実際に可能な限り全体を通して調べることが望ましい。機能試験は、必須の機能及び試験対象がサポートしていると任意実現要件書に記述されている任意選択機能を検査するために規定されることが望ましい。
2 システム情報記述書
 実装を試験するために、試験機関は、試験対象及び試験環境に関係する情報を必要とする。試験のために実装を提出する依頼者は、この情報をシステム情報記述書として提出しなければならない。システム情報記述書は システム情報記述書様式による質疑応答の過程を用いて完成させてもよい。
 

3 適合性評価

3.1 過程の概要

 適合性評価過程は、ISO15046の関連する部に対する実装の適合性を決定するために必要な適合性試験の全ての活動を含む。
 適合性評価過程は、a)試験の準備、b)試験実施過程、c)結果の解析、d)適合性試験報告書、の四つの段階からなる。この過程を図1に示す

3.2 試験実施過程

 試験実施過程は、実行可能試験スイートを実行し、観測された試験結果、その他の関連する情報を適合性ログに記録する過程とする。試験対象への入力及び試験項目の実行によって観測された試験結果は、適合性ログに記録しなければならない。試験実施過程の間に試験対象から得られる全ての情報及びその維持は、解析段階及び監査目的で必要不可欠となる。

3.3 結果の解析

 結果の解析は、抽象試験項目で指定された判定基準に照らして、観測された試験結果を評価することによって行われなければならない。試験実施過程段階と解析段階とは明確な区分があるが、この二つの段階は時間的に重なってもよい。

3.4 適合性試験報告書

 適合性試験の結果は、適合性試験報告書中に文書化しなければならない。この報告書は、概要及び詳細情報の2部から構成されなければならない。
 

4 適合性評価過程の性質

4.1 結果の再現

 信頼性の高い適合性試験の目的を達成するためには、与えられた試験対象システムに実行可能試験項目を実行した結果は、いつでも同じになることが望ましい。

4.2 結果の比較

 適合性試験の目的を達成するためには、試験対象の適合性に関する全体概要は、試験を行った試験機関によって変わらないことが望ましい。

4.3 結果の監査

 全ての手続きに正しく従ったことを確認するために、実行可能試験スイートを実行して観測された試験結果を見直すことが必要になる場合もある。結果の解析を手動で行ったか、自動で行ったかにかかわらず、実行した試験項目毎に全ての入力と出力を記録しなければならない。それぞれの試験実施過程で適合性ログを作成するのは、試験機関の責任である。
 

試験法

1 適合性試験のための手法

1.1 序文

 適合性試験のための二つの一般的手法が存在する: (1)検証試験、実装の適合性を決定的、徹底的に証明することを目的とした厳密な正しさの証明を含む方法の利用、及び(2)不具合試験を含む方法の利用。

1.2 自動試験

 自動試験は、検証試験又は不具合試験のいずれかを用いて、要求される試験を、ソフトウェアシステムとして、実現してもよい。(データフォーマットの試験のような)情報技術に特定な試験のほかに、幾つかの試験が地理情報に特定である。幾何構造試験などがこのような種類のものである。

1.3 手動試験

 手動試験は、自動試験が複雑すぎるか、及び/又は、人間による判断が要求される場合に、必要となることがある。手動試験では、依頼者と適合性試験の担当者が共同で出力結果を調査し、入力と比較してもよい。
 

抽象試験スイート及び実行可能試験スイート

1 序文

 適合性の節における抽象試験スイートは、抽象試験モジュールと抽象試験項目からなる階層構造をもつ。抽象試験項目が階層構造の最も低いレベルを形成する。抽象試験モジュールは抽象試験項目と他の抽象試験モジュールをまとめるために用いられる。この階層構造の例を図2に示す。

 それぞれの抽象試験項目は、適切な規格の試験目的を少なくとも一つ果たさなければならない。抽象試験スイートの階層構造の中では、抽象試験項目の論理的な順序付けのために、入れ子になった抽象試験モジュールを用いてもよい。抽象試験モジュールは、任意の深さで入れ子になってもよい。これらは、抽象試験スイートの計画、開発又は理解の助けとして用いられてもよい。それぞれの抽象試験モジュールは、0個以上の抽象試験項目から構成される。実行可能試験スイートは、抽象試験スイートのインスタンス化であり、そこでは全ての実装従属パラメータが特定の値を割り当てられる。
 

2 試験目的

 各抽象試験モジュール又は各抽象試験項目には、それらが意図するところを正確に記述するため、試験目的が含まれなければならない。
 

3 抽象試験項目

 抽象試験項目は、一つ以上の試験目的の要件を満たさなければならない。抽象試験項目は、実行可能試験項目を生成するための基礎として用いられ、試験対象から独立したものである。
 抽象試験項目は、a)試験項目の識別子、b)一つ以上の試験目的、c)試験法(試験判定基準を含む)、d)規格(群)の一つ以上の特定の部・部分に対する参照、e)試験種類(基本試験又は機能試験のいずれか)の事項を含まなければならない。
 

4 実行可能試験項目

 実行可能試験項目は、a)試験項目の識別子、b)一つ以上の試験目的、c)試験法(試験判定基準を含む)、d)抽象試験スイートの特定の部分に対する参照、e)パラメータ値の事項を含まなければならない。
 
 

[ もどる ]