地理情報 − 概覧(要約)

ISO/CD 15046-2(1999年4月10日)


序文

 ISO 15046は、地球に関係する場所に直接的又は間接的に関連する、オブジェクト又は現象に関する情報のために、構造化された一組の規格を制定することを目的とする。この一組の規格の目的、構造及び利用について理解するために、概覧を提供する。概覧を参照することによって、これらの規格について、一層の理解及び普及の促進が図られることを期待する。
 

適用範囲

 この国際規格はISO 15046の一連の規格の概覧を規定する。この概覧は、ISO TC211によって開発された一連の地理情報規格への参照を規定する。この概覧は、一連の規格を構成する各規格の目的、及びそれら各規格が互いにどう関連しているかを、潜在的な利用者に理解させる。これにより、全ての地理情報利用者が、自分のアプリケーションに関して、必要なISO/TC211規格を、素早く識別することが可能となる。
 

ISO 15046の目的

 ISO 15046の目的は、デジタル地理情報の分野における標準化の基礎を規定することにある。ISO 15046は、地球に関係する場所に直接的又は間接的に関連する、オブジェクト又は現象に関する情報のために構造化された一組の規格である。
 これらの規格は、定義と記述を含むデータ管理の方法、ツール、及びサービスを規定するとともに、それらデータの処理、分析、呼び出し、表示、そして利用者、システム及び記憶場所の間のデジタル/電子形式でのデータ転送を規定する。
 この一組の規格は、可能な限り、情報技術分野及びデータに関する相補形一連の規格と連携し、地理データを用いるアプリケーションの開発のための枠組みを規定する。これらの関係を図1に示す。

ISO 15046の構造

 ISO 15046は、枠組みと参照モデル、データモデルと演算子、データ管理、地理情報サービス、地理情報サービス及びプロファイルと既存規格、の五つの規格グループからなる構造をもつ。
 

ISO 15046の適用

 ISO 15046は、汎用であるとともに、実利用のための構成要素を規定する。ISO 15046のプロファイルは、特定の応用領域のために用いられる構成要素を規定する。ISO 15046は、特定の応用領域を対象とした規格を構築するために用いられる。応用スキーマのための規則は、この目的のための指針を規定する。
 ISO 15046は、一貫性を保証しあいまいさを避けるため、概念スキーマ言語を用いる。これらの規格の自動解釈は、ISO 15046に適合するコンピュータアプリケーションの開発を可能にする。
 検証に必要となる、適合性と試験に関する情報は、一組の規格の中で規定する。
 

15046の各部の概要

1 15046-1参照モデル

 参照モデルは、15046の一連の規格の枠組みを規定する。提示する参照モデルは、(1)基礎的な原理と要件についての一般的な理解を必要としている読者、(2)情報システム分析者・プログラム計画立案者・プログラム開発者、を意図した二つのレベルがある。
 

2 15046-2概覧

 概覧は、ISO TC211によって開発された一連の規格の地理情報規格への参照を規定する。これは、潜在的な利用者が、規格郡中の各規格の目的、及びそれら各規格が互いにどう関係しているかについて、理解することを可能にする。
 

3 15046-3概念スキーマ言語

 コンピュータによる解釈が可能な、地理情報のモデルつまりスキーマの開発のための、概念スキーマ言語(conceptual schema language: CSL)の、採用と利用を規定する。この部には、(1)地理情報の正確な表現のための要件を満たすCSLの選択、(2)相互運用性という目標達成の基礎となるような、標準化された地理情報のスキーマを作成するために、CSLとして選択したUMLの用法のガイドラインを規定する二つの側面がある。
 

4 15046-4用語

 15046の一連の規格の中で用いられている用語の定義を与える。
 

5 15046-5適合性と試験

 この一連の規格への適合を主張するために必要な、試験及び基準のための枠組み、概念並びに方法論を規定する。試験の推進のため、15046の試験可能な全ての部は、適合性の節をもっており、そこでは、適合を主張するために満たされなければならない全ての要件を明確に規定している。
 

6 15046-6プロファイル

 この部は、プロファイルと製品仕様の作成のためのガイドラインを規定する。プロファイルは、任意選択された一組の汎用規格である。プロファイルは、専門家による効率的なデータ及びシステムの実装に対応するため、限定された適用範囲及び限定された機能性を規定する。
 

7 15046-7空間スキーマ

 地理地物の空間特性の側面を記述するための概念スキーマを規定する。このスキーマの構成要素は、特定の地物型を記述する応用スキーマの中で特殊化されてもよい。また、このスキーマに関し、一貫性を保証するような演算子が正しく実装されているならば、それ
も記述する。
 

8 15046-8時間スキーマ

 時間スキーマは、地理情報の時間特性の記述に必要な標準的な概念を定義する。これらの概念は、データセットの時間特性を記述するメタデータ要素及び地物の時間特性を記述する地物属性の両方を含む。この部は、空間からは独立して、地物の時間特性の記述に限定している。
 

9 15046-9応用スキーマのための規則

 応用スキーマのための規則は、特定の応用領域へこの規格の様々な部を適用する方法を識別するスキーマの開発の方法を示す。応用スキーマの利用によって、特定の物理アプリケーションによる相互運用及びデータ共有を可能にする。
 

10 15046-10地物カタログ化法

 一組の地理データにおける現実世界の現象の分類を、体系化し報告するための、標準的な枠組みを規定する。地理地物は、地球に関係する場所によって関連づけられた現実世界の現象を、表現したものであり、その地物に関し、データの収集・維持管理・配布が行われる。地理データ中で表現される地物の、型を定義している地物カタログによって、データの内容と意味についての理解が深まり、地理データの配布・共有・利用が可能になる。
 

11 15046-11座標による空間参照

 座標を基礎とする地理情報の用法は、基礎となる参照系を一意に定義することを必要とする。アプリケーション間での地理情報の共有には、座標を基礎とする参照系のための標準化された概念スキーマが必要である。このスキーマは、座標参照系に基づくデータを必要とする、地理情報システム及びその他のアプリケーションの開発者に役に立つ。
 

12 15046-12地理識別子による空間参照

 空間参照は、座標に代え、既知の地理地物に関連付けがなされた地理識別子を用いることで規定されてもよい。その関連は、ある国の内部といった包含関係でもよいし、街路沿いに与えられた距離といった局地座標に基づいてもよいし、建物への隣接又は近接といった緩い関係でもよい。
 

13 15046-13品質原理

 この一連の規格の主目的の一つは、応用領域の内部で、また複数の応用領域をまたがって、地理データが共有され、広く利用可能となることである。この目的の現実化につれて、データ利用者に対しての利用の適性を決定することが益々重要になっていくであろう。この部は、データ作成者に対して、それらデータの品質を記述するためのガイドラインを規定する。
 

14 15046-14品質評価手順

 この部は、データ作成者が自身の製品が当該製品仕様をどれだけよく満たすかを定義できるように、また利用者が自身の要件とその要件がどれだけよく満たされるかを定義できるように、地空間データのデータセットのための品質評価手順の枠組みを制定する。製品仕様又は利用者要件は、それぞれの品質指標に対応して決定される受容可能な品質レベルを認めることが望ましい。
 

15 15046-15メタデータ

 この部の目的は、利用者が、データが自分にとって役立つかどうか及びデータへのアクセス方法を決定できるようにするため、デジタル地理データセットの記述のための明瞭な手続きを規定することである。メタデータの用語集、定義、及び拡張手続きの共通の一組を制定することによって、この規格は地理データの適正な利用と効果的な検索を促進する。
 

16 15046-16測位サービス

 最新の電子測位技術は、地球上の又は地球に近接した場所の座標を、高速度・高正確度でしかも動的に測定できる広範囲の測位機器及び測位装置の利用を可能にしつつある。この部は、測位装置と地理情報応用システムとの間で用いられる標準的インタフェースの、データ構造を定義する。
 

17 15046-17描画

 この部は、記号記述の方法論を含め、人間に理解可能な画像としての地理情報の描画を規定する。描画規格は、サポートされた標準的記号の集合への共通インタフェースをもつアプリケーションを規定する。このためこの規格は、地図記号の標準化を含まないが、それら標準的記号集合のための標準的インタフェースを規定する。
 

18 15046-18コード化

 この部は、データ交換目的に用いられなければならないコード化規則を規定する。コード化規則は、応用スキーマで定義された地理情報を移送又は記憶に適するシステムから独立したデータ構造へコード化することを可能にする。コード化規則は、データ構造中で用いられるコード化されるデータの型、構文、構造及びコード化体系を規定する。
 

19 15046-19サービス

 この部は、地理情報のために用いられるサービスインタフェースの識別及び定義を規定するとともに、オープンシステム環境モデルとの関係の定義を規定する。この作業は、オープンシステム環境モデルと調和がとられている。
 

ISO 15046の利用

 ISO 15046規格は、a)商業ベースの又は所有権を主張できるGIS製品の開発者、b) システムインテグレータ、システム購入者、データインテグレータ及びデータ管理者を含むGIS応用システムの開発者、c)地理データの作成者、供給者、及び開発者、d)地理データ(及びGIS)の利用者、e)特定の地理情報アプリケーション及び情報技術(IT)規格の開発者、のような異なるクラスの利用者に用いられる。下の表1は、上掲の各利用者型に応じたISO 15046の推奨される利用部を示す。

表1−ISO 15046の利用
ISO 15046 の各部
ISO 15046 の利用者の型
GIS開発者 アプリケーション
開発者
データ提供者 データ及び
GISの利用者
規格開発者
枠組みと参照モデル
15046-1 参照モデル
N
I
I
I
N
15046-2 概覧
I
I
I
I
I
15046-3 概念スキーマ言語
N
N
 
 
N
15046-4 用語
N
N
N
N
N
15046-5 適合性と試験
N
N
N
N
N
プロファイルと既存規格
15046-6 プロファイル
 
N
 
 
N
データモデルと演算子
15046-7 空間スキーマ
N
N
 
N
I
15046-8 時間スキーマ
N
N
 
N
I
15046-9 応用スキーマのための規則
N
N
 
 
N
データ管理
15046-10 地物カタログ化法
 
 
N
N
 
15046-11 座標による空間参照
 
 
N
N
 
15046-12 地理識別子による空間参照
 
 
N
N
 
15046-13 品質原理
 
 
N
N
 
15046-14 品質評価手順
 
 
N
N
 
15046-15 メタデータ
 
 
N
N
 
地理情報サービス
15046-16 測位サービス
N
 
 
 
 
15046-17 描画
N
N
N
N
 
15046-18 コード化
N
N
 
 
 
15046-19 サービス
N
N
 
N
 
N - 与えられた利用者型にとって、当該部が必要な読み物であることを示す。
I -与えられた利用者型にとって、当該部が参考扱いの読み物であることを示す。

 

[ もどる ]