測量に関するミニ知識

Ⅰ.地表の凸凹を地図にする技術

 中部地方測量部ウェブサイトに掲載している「デジタル標高地形図で見る東海地方の凸凹」はどのように作られているのでしょうか。
 地表の凸凹を地図にする技術はいくつかありますが、そのうちの技術の一つである、航空レーザ測量で凸凹を測り、それを立体的に表す地図について紹介します。

 航空レーザ測量は、航空機に搭載したレーザスキャナから地上にレーザを照射し、地上で反射して帰ってくるまでの時間差により得られる地上までの距離と、GNSS測量機(衛星測位装置)、IMU(慣性計測装置)から得られる航空機の位置情報により、地上の標高や地形の形状を計測します。

 航空レーザ測量では、「レーザスキャナ」「GNSS」「IMU」という3つの技術を利用することにより、地上の座標や高さを求めています。そこで、 この3つの技術について説明したいと思います(図-1)。

航空レーザ測量の仕組み

図-1 航空レーザ測量の仕組み


レーザスキャナ

(航空機から地表までの、航空機を基準とした方向と距離を計測)

 航空機の進行方向と垂直な向きにレーザを放射状に照射し、地表で反射して帰ってくるまでの時間差を求めて、航空機から地表までの距離を計測する装置です。レーザは、その1点ごとの距離を1cm単位で計測します(図-2)。


レーザ計測点
    図-2 地上に到達したレーザの反射位置

GNSS受信機(衛星測位装置)

(航空機の位置を計測)

 地上の電子基準点を基準局としてGNSSによる測量を行い、1秒ごとに航空機の位置を測定します。

IMU(慣性計測装置)

(航空機の姿勢・加速度を計測)

 1/50~1/200秒ごとに航空機の姿勢や加速度を計測します。この計測値を用いて、GNSSで計測される1秒ごとの間の飛行機の位置を補完して求め、また、レーザの発射された方向を地上の座標等に基づく方向に補正することが可能になります。


 この3つの計測値を組み合わせることにより、レーザ反射点1点毎の地上の座標(x,y)、高さ(z)を求めることができます。

メリット

  •   地表面の高さを高密度(面的)に把握できる。
  •  人が入っていけないところでも計測が可能。
  •  反射強度も計測しているため、強度の違いからどんな地物(建物・アスファルト道路・樹林帯等)によって反射したのかを推定できる。
  •  レーザは円形に広がり、1レーザは、樹冠に当たって反射する信号(ファーストパルス)だけでなく、いろいろなところで反射し、最後に地表で反射(ラストパルス)した信号まで帰ってくる(図-3)。そのため、レーザが樹間を通り抜けることが出来れば、林地では、樹上と地盤のそれぞれの高さを計測できる(図-4)。
パルスモードの違い レーザ計測による断面図
図-3 異なるところでの反射によるパルスモードの違い 図-4 各パルスモードによる
反射点の標高

デメリット

  •  レーザは雨や雲により散乱・反射の影響を受ける。
  •  求めたい点をピンポイントで計測できない(狙った地点にレーザを照射することは出来ない)。
  •  照葉常緑樹(シイ、カシ、ツバキなどの密林)では、レーザは地面まで到達しづらい。
  •  水中、地下は不可能(レーザの種類によっては、浅い水深で計測可能なものもある)。
  •  費用が高い。

 航空レーザ測量では、オリジナルデータ、グラウンドデータ、メッシュデータなどが取得できます。

オリジナルデータ

 レーザは、地盤の上ばかりでなく、建物や樹木の上などいろいろなところで反射して戻ってくるため、航空レーザ測量で計測したデータには、地盤の高さだけでなく建物や樹木の高さの情報も含まれています。
 このような建物や樹木を含んだ地球表面の高さのモデルを数値表層モデル、通称DSM(Digital Surface Model)といい、これが「オリジナルデータ」にあたります(図-5)。

DSM
  図-5 最初に計測した地表の高さ(赤い太線

グラウンドデータ

 一般の地図のように地盤の高さを求めたい場合には、オリジナルデータから建物や樹木等の高さを取り除くことが必要です。この建物や樹木の高さを取り除く作業を「フィルタリング」といいます。
 フィルタリングを行って得た地盤の高さのモデルを数値標高モデル、通称DEM(Digital Elevation Model)といい、これが「グラウンドデータ」にあたります(図-6)。

DEM
図-6 樹木や建物の高さを取り除いた地盤の高さ(赤い太線

 それでは、オリジナルデータとグラウンドデータによるモデルの違いを見てみましょう。
 図-7は、山地部(上段)と都市部(下段)の、オリジナルデータ(左)とグラウンドデータ(右)を使用して作成した「陰影段彩による鳥瞰図」です。
 左のオリジナルデータで作成した鳥瞰図は、凸凹の細かな樹木(上)や建物(下)が表現されているのがわかります。一方、右のグラウンドデータで作成した鳥瞰図は、樹木や建物を除いた、滑らかな地盤の形が表現されています。

陰影段彩による鳥瞰図  山地部
 都市部
オリジナルデータ グラウンドデータ  
図-7 陰影段彩による鳥瞰図

メッシュデータ

 DSMやDEMのデータは、非常に多くの点からなるデータの集まりです。これらを使って、普通のパソコンで処理させようとすると、データ量が大きすぎて、処理に非常に多くの時間がかかってしまいます。そこで、利用しやすくなるように、データをメッシュ化して、容量を小さくしたデータを作成しています。
 国土地理院で作成しているメッシュデータには、10mメッシュ、5mメッシュ等がありますが、ここでは、5mメッシュを例にとりましょう。
 図-2に示す赤い点は地上に届いたレーザの計測点であり、フットプリントといいます。この点1つひとつについて、地上のx、y、z(水平位置、高さ)のデータを持っています

 このデータから、地表を5m間隔で区切った方眼(メッシュ)中心点の標高を、TIN(Triangulated Irregular Network:不規則三角形網) と呼ばれる方法で、計算(内挿補間)により求めています(図-8)。
 内挿補間には、TIN以外にも、「最近接法Nearest neighbor interpolation」や「IDW(Inverse Distance Weighted:逆距離加重法)」等の方法もあります。

メッシュ中心の標高
 図-8 TINによる内挿補間で求めた、
メッシュ中心の標高

 地表の凸凹を分かりやすく表現する地図として、陰影段彩図を取り上げます。この地図では地表の凸凹の高さに応じて色や陰をつけています。

陰影段彩図

陰影段彩図GIFアニメ

 航空レーザ測量から作成された高さのデータを基に、地形を立体的に表現するため、高さ毎に異なる色(段彩)を付けます。この彩色した地図を「段彩図」といい、色で高さの様子が分かります。また、一定方向から光を当てたと仮定した場合に出来る影をつけたものを「陰影図」といい、地形の起伏(立体感)が分かります。この「段彩図」と「陰影図」を重ねたものを「陰影段彩図」といい、地形の立体感や高さの変化がさらによく分かるようになります。
 岐阜市金華山周辺を例に、地形図、段彩図、陰影図及び陰影段彩図のそれぞれの違いを見てみましょう。陰影段彩図では、高さの情報もつかめるのに加え、陰影によって地形の変化がよく分かるようになっています(図-9)。


地形図「金華山」   
2万5千分1地形図
段彩図「金華山」 陰影段彩図「金華山」
段彩図 陰影段彩図
陰影図「金華山」   
陰影図
                         図-9 異なる表現による地形の立体感の違い(岐阜市金華山周辺)