測量に関するミニ知識

第17回 地図、空中写真等の個人情報の取り扱いと二次利用 その2

はじめに

 国や地方公共団体が保有する地理空間情報は、提供・流通が促進されることにより、国民が地理空間情報を活用した多様な公益的サービスを享受することが可能となります。さらに、その二次利用を促進することにより、便利で豊かなサービス等の創造が期待できるなど、幅広い分野において大きな便益をもたらす可能性のある貴重な資産です。
 これら地理空間情報は、自ら整備するもののほか、外部委託や民間等との共同、民間等からの購入など、多様な整備形態が存在しており、著作権など知的財産に係る権利の有無や所在が不明確あるいは複雑になっている場合も少なくありません。
 地理空間情報を安心して提供・流通させ、社会的ニーズに応じた二次利用を行うことができるようにするためには、著作権等の知的財産権に関する的確な認識と、それらが存する場合における権利処理を適切に行うことが必要です。

 今回は、国や地方公共団体が保有する地理空間情報のうち代表的な測量成果(地図や空中写真等)について、二次利用(知的財産権等の取扱い)の留意点等を紹介します。

 ※ 国や地方公共団体から提供される地理空間情報を活用し、より使いやすい情報に加工したり別の情報を付加して利用又は提供したりすること。

1.著作物ってどんなもの?

 著作権法上、著作物として認められるためには、1)思想又は感情を、2)創作的に表現し、3)文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する、という3 つの要件を満たす必要があります(著作権法第2条第1項第1号)。測量成果等のうち、地図は「地図又は図形の著作物」に、空中写真は「写真の著作物」に、データベースとして地図データが記録されているものは「データベースの著作物」に、それぞれ該当する可能性があります。著作権法によって保護されるのは「創作性のある表現」であり、事実は保護の対象とはならないと解されています。単なる事実を示す情報はその保護の対象とはならず、その表現のうち創作性の認められる箇所が著作物として保護されることになります。また、「思想」には技術的思想を含むとされていますが、著作権法は表現を保護するものであり、技術的思想そのものや技術的思想に基づく「アイデア」については保護の対象とされていません。

2.著作物性の有無はどう判断するの?

 著作物性の有無については、最終的には司法の判断を仰ぐ必要がありますが、一般に「創作性」の有無が重要な判断要件になるとされています。過去の裁判例からみると、測量成果等について、1)地図又は図形の場合は、「素材の取捨選択」、「素材の配列」、「素材の表現」、「レイアウト」が、2)写真の場合は、「主題の決定」、「被写体・構図等の選択」が、3)データベースの場合は、「情報の選択」、「体系的な構成」が、それぞれに創作的な表現を判断するポイントになります。

 地図の判断ポイントについて、都市計画基本図と2万5千分1地形図を例に見てみましょう(表1)。
表1 都市計画基本図と2万5千分1地形図の創作性の比較
判断ポイント 都市計画基本図(縮尺1/2500で描画) 2万5千分1地形図
素材の取捨選択(地物の取捨選択の例) 都市計画基本図 2万5千分1地形図
 都市計画基本図では、一定の決まりに基づく全ての建物を忠実に描きますが、2万5千分1地形図では一定の決まりに基づき、描く建物を取捨選択している場合があります。
素材の配列(地物の転位の例) 都市計画基本図 2万5千分1地形図
 都市計画基本図では、道路や鉄道等が混み合っている場合でも、ほぼ真位置に描くことが可能ですが、2万5千分1地形図では、道路や鉄道など、一定の太さを持っている地図記号で描くため、重ならないように一定の決まりに基づき転位している場合があります。
素材の表現(地物の総描の例) 都市計画基本図 2万5千分1地形図
 都市計画基本図では、建物が混み合っている場合でも、一定の決まりに基づく全ての建物を忠実に描きますが、2万5千分1地形図では一定の大きさの記号で描くことから建物の配置等の表現ができないため、一定の決まりに基づき建物をまとめて表現(総描)する場合があります。
レイアウト(地図の整飾やサイズの例) 都市計画基本図
 一般的に地図はその整備目的に応じて、地図のサイズや図名、凡例、スケール等をどこに配置するかなど、レイアウトが決められています。
 

 以上のように、都市計画基本図では、作業者の創作性を発揮する余地がなく、著作物性が認められる可能性は低いといえます。一方、2万5千分1地形図では創作性を発揮する余地は大幅に制限されるものの、作業者の個性(思想又は感情)を表現した創作性が認められる可能性が少なからずあります。

図1 空中写真の撮影イメージ

 空中写真の場合はどうでしょう。
 測量作業としての空中写真の撮影(図1)では、地形や地物の忠実な表現、表示を目的として作業方法を詳細に規定した仕様書や作業規程に則して作業が行われます。このため、作業者(撮影士)が「主題の決定」や「被写体・構図の選択」に創作性を発揮するような判断を行う余地は極めて少なく、空中写真に著作物性が認められる可能性は低いといえます。
 なお、固定式監視カメラで撮影した写真や自動証明写真、絵画を忠実に写し撮った写真等のように、被写体を単純に写し撮っただけという場合には、著作物性は認められないとされています。

図2 数値地形図(左)と基盤地図情報(右)

 では、地図をデータベースの観点から見た場合はどうでしょう。
 データベースとは「論文、数値、図形その他の情報の集合物」です。測量成果等では、情報を集約して電磁的に記録されている、数値地形図や基盤地図情報(図2)などがデータベースの著作物に該当する可能性があります。
 一般に、ベクタ形式の地図データファイルでは、公共測量作業規程準則や製品仕様書等により地物の選択基準、データベース構成、表現方法(凡例や色など)等についての仕様が決められています。これらがより詳細に決められるほど、創作性を発揮する余地は小さくなり、著作物性が否定される可能性は高まると考えられます。

3.整備・更新段階において、どういうところに留意すればいいの?

 著作権は、原始的には著作物を創作した著作者に帰属します。そのため、国や地方公共団体等が民間事業者等に外部委託して地理空間情報を整備した場合、受託者である民間事業者等が著作者になるのが一般的です。ただし、発注者が、数多くの資料を提供して枝葉末節に至るまでこと細かく具体的に指示した場合には、整備を行った者として著作者になります。このため、外部委託の場合、著作権等の帰属先や行使等の権利処理について、仕様書・契約書にあらかじめ明確に規定しておくことが望ましいとされています。

図3 財産の処分の制限

 地方公共団体が測量成果等を整備する際には、その財源により、地方単独事業と補助金等を活用する場合とに区分されます。このうち、補助金を活用する場合においては、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)」の関連条項について留意する必要があります。具体的には、同法第22条では、補助金等を活用して整備した財産を本来の目的ではない他の用途へ使用することを禁じています(図3)。
 しかし、地方公共団体が補助金等を活用し、特定の目的のために整備した測量成果等であっても、その本来の目的を既に満たし、他の用途へ使用しても本来の目的に支障を及ぼさないものについては、行政投資の多重投資を回避する観点から、地方公共団体は積極的かつ有効に利活用を進めることが望まれます。

4.提供・流通段階において、どういうところに留意すればいいの?

 国、地方公共団体等が測量成果等の提供と二次利用を促進するためには、その利用の秩序・公平を確保しつつ、当初の利用目的を達成したものについては、極力利用制限を設けずに(著作権を有する場合でもその権利を行使しない等)自由な利用を促進することが望ましいとされています。なお、これらは、本来、行政目的のために整備されたものであり、情報の品質等については当初の目的の要請する品質以上のものを保証するものではありません。そのため、提供・流通に当たっては、提供目的、利用上の留意・手続き及び著作権等の帰属先等を利用約款等により明示しておくことが必要です(図4、表2)。

図4 測量成果等の外部提供の際の留意点


 
表2 利用約款に記載すべき主な事項とその必要性
事項 記載の必要性
提供目的 提供目的を示し、利用者の誤認識を未然に防止。
著作権の帰属 権利関係や利用範囲を明示することにより、著作権侵害を未然に回避。
利用上の注意 利用者が利用目的を果たすことが出来るかの判断事項として、作成年月、内容、精度等を示す。
禁止事項 法令や公序良俗に反する行為の禁止。
免責事項 提供情報によって利用者側に被害が発生した場合、賠償責任問題の免責。
提供システムの運用 システム障害等による提供の予告なしの停止、変更、中断などを行うことの注意やシステム操作時の推奨環境等を示す。
個人情報の取り扱い 個人情報を提供する必要がある場合、個人情報保護条例等による適正な取扱い等に同意を求める。

5.二次利用促進に関するガイドラインを公開しています!


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