測量に関するミニ知識
中部地方測量部
|
第13回 測量用航空機「くにかぜ」の変遷 -時代と共に進化する搭載機材- その1 国土地理院本院(茨城県つくば市)に行かれた事がある方はご存知かと思いますが、本院の構内に1機の飛行機が展示されています(写真1)。この飛行機は、国土地理院が使用していた測量用航空機の初代「くにかぜ」です。「くにかぜ」は、初代「くにかぜ」のあと「くにかぜII」に引き継がれ、現在は三代目になる「くにかぜIII」が国土の変化の把握、保全・管理のための空中写真撮影、災害時における迅速な被災状況把握のための緊急撮影等を行っています。
このコーナーでは、今回から3回にわたり「くにかぜ」の変遷についてご紹介します。今回は初代「くにかぜ」です。 ![]() 写真1:国土地理院に展示されている初代「くにかぜ」 左写真を拡大 1.測量用航空機、初代「くにかぜ」について 初代「くにかぜ」(ビーチクラフト・クイーンエアB-65P)は昭和35年に導入され、海上自衛隊により運航・整備が行われました(写真2)。主に2万5千分1地形図整備のための空中写真撮影、航空磁気測量に使われ、昭和58年度に後続機「くにかぜII」に任務を譲り退役するまで、空中写真撮影の総面積は282,000km2、撮影延長距離は79,000km、航空磁気測量の延長距離は155,700kmとなり、運航時間は延べ7,600時間に及びました。
初代「くにかぜ」は非与圧式のため、高度12,500ft(約3,800m)以上での撮影時には酸素吸入装置(酸素マスク)が必要でした。当時2万5千分1地形図作成のための空中写真の撮影高度は、6,000~7,000mでしたので、撮影士は、酸素マスクを装着して撮影を行っていました。酸素マスクをつけていると航空カメラの操作が非常にやりにくいうえ、気圧差による肉体的疲労度も高かったそうです。初代「くにかぜ」の主な諸元は表1のとおりです。
![]() 写真2:測量用航空機初代「くにかぜ」 2.初代「くにかぜ」に搭載された測量用航空カメラ 初代「くにかぜ」に搭載された測量用航空カメラについてご紹介します。
最初に使用したのはツァイス社製のRMK21/18で、その後モデルの更新はあるものの、ツァイス社製の航空カメラを使用して撮影を実施してきました(表2、写真3~写真6)。現在は、事前に作成した撮影計画のデータをコンピュータに入力すればGPSによるナビゲーションによって自動的にデジタルカメラで撮影を行うことができますが、当時はすべてフィルムによる航空カメラで、図上で設計された撮影計画に基づきパイロットと撮影士が連携して手動で撮影を行っていました。撮影の技術はすべて職人技の域だったようです。
表2:初代「くにかぜ」に搭載した測量用航空カメラの変遷
3.初代「くにかぜ」による航空磁気測量 航空磁気測量とは、飛行機に磁気センサーを搭載し、面的にデータを取得することで磁場分布を明らかにする測量です。観測された磁場から標準的な地球磁場を差し引くことで、局地的な磁気異常を表わす磁気異常図が作成されます。
初代「くにかぜ」は高度3,000mで昭和37年度から昭和56年度まで観測を実施しました。観測は全磁力を測定するプロトン磁力計(写真7)を搭載して行われ、観測の成果は「航空磁気図(1975.0)」としてまとめられました(図1)。 ![]() 写真7:プロトン磁力計のセンサー部 ![]() 図1:「航空磁気図(1975.0)」 ※航空磁気測量について詳しく知りたい方はこちら
退役後の初代「くにかぜ」は、前述のとおり、国土地理院本院構内の「地図と測量の科学館」の地球ひろば横に展示しています。「測量の日」や夏休みには内部を公開していますので、是非、足を運んでいただければと思います。 次回は後続機「くにかぜII」についてご紹介します。 |