最終更新日:2023年3月27日

国土地理院時報(2022,135集)要旨

The Airborne Gravity Survey for Development of a New Precise Gravimetric Geoid Model in Japan (Interim Report)
— Aiming for the Society Where the Reliable Orthometric Height Is Available to Everyone —
測地部  栗原忍・大森秀一・兒玉篤郎・畔柳将人・半田優実・吉樂絵里香・飯尾研人・中島正寛・飯塚康裕
地理地殻活動研究センター  松尾功二
北陸地方測量部  冨山顕

【要 旨】

 航空重力測量は,航空機に搭載した相対重力計(以下「航空重力計」という.)を用いて,陸海あらゆる領域の重力データを面的に均質かつ効率的に取得するものである.国土地理院は,平成 30 年度に航空重力計その他の観測に必要な装置を調達し,令和元年度から4年間の航空重力測量を行っている.令和元年7月22日に調布飛行場(東京都)にて出発式を挙行し,以降航空機を用いた観測を行っているところである.
 本稿では,4 年間の事業期間の折り返し時点における中間報告として,事業の概要,進捗,これまで に得られた技術的知見,事業後半への展望等について報告する.なお,本稿に含まれる情報は令和3年3月末現在のものであり,同年4月以降に行われた測線計画の変更等は含まない.
  本文 [PDF:4,497KB]
Research on Natural Disaster Monument based on Historical Materials
四国地方測量部  小枝登

【要 旨】

 国土地理院では,過去に起きた自然災害の様相や被害の状況を伝える石碑やモニュメントである自然災害伝承碑を地形図等に掲載することにより,過去の自然災害の教訓を地域の方々に適切に伝えるとともに,教訓を踏まえた的確な防災行動による被害の軽減を目指している.
 高知県の室戸岬周辺における自然災害伝承碑を発掘する手立てとして,土佐藩士の奥宮正明が江戸時代中期に発生した宝永地震・津波(1707)の様相や被害状況を記録した史料である「谷陵記」を解読し,記載されている集落のうち位置を特定できた190か所の地図データを作成した.谷陵記に記載された被害状況については,壊滅から被害なしまでの6段階に分類し,地理院地図上で分類別にアイコン表示できるようにして,新たな自然災害伝承碑を見つけるための内部資料とした.
 本調査の結果,室戸岬周辺では周辺地域と比較して,宝永地震による被害が少ないことが明らかとなった.また,その後発生した昭和南海地震(1946)の被害状況についても室戸市の市史上巻で確認でき,「地盤の関係から他市町村より被害の程度は軽かった」と記述されている.これらがこの地域において自然災害伝承碑の登録数が少ない原因ではないかと考えている.谷陵記オリジナルは,国立国会図書館デジタルコレクションから閲覧できる.
  本文[PDF:3,548KB]
GSI’s Response Activities to the Heavy Rain Events of July and August 2021
企画部  防災推進室
地理空間情報部  災害対策班
基本図情報部  災害対策班
応用地理部  災害対策班
中部地方測量部
中国地方測量部
九州地方測量部

【要 旨】

 国土地理院は,災害対策基本法に基づく指定行政機関であり,同法に基づく防災基本計画において,航空機等の撮影等による情報収集を行うとともに,画像情報の利用による被害規模の把握を行うものとされている.この責務を果たすために,測量・地図分野の最新技術を活用することで災害時に被害状況の把握を行い,災害対策に必要な地理空間情報を府省庁,地方公共団体等の関係機関及び国民に提供することで救命・救助活動及び復旧・復興に寄与している.
 本稿では,「令和3年7月1日からの大雨」及び「令和3年8月の大雨」における国土地理院の主な対応について報告する.
  本文[PDF:2,769KB]
Investigation of Acid Gas Generated from Aerial Photographic Films and Examination of the Countermeasures
地理空間情報部  岩下沙綾・織部珠代・森今日子・中田昌吾・下地恒明・藤村英範

【要 旨】
 国土地理院が保有する空中写真フィルムは,フィルム劣化現象の一種であるビネガーシンドロームが進行している可能性があり,適切に保管するためにこれまでも空調機器による温湿度環境の管理を実施していたところである.
 保有する空中写真フィルムの種類が不明であったため,ビネガーシンドロームが発生する種類のフィルムがどれくらいあるのかを把握する調査を実施した.さらに,ビネガーシンドロームがどの程度進行しているかを把握するため,ビネガーシンドロームにより発生する酸性ガスの濃度を測定する調査を実施した.
 調査の結果,ビネガーシンドロームが発生する可能性があるトリアセチルセルロースフィルムは保有する空中写真フィルム全体の約 13%であった.また,それらの約 86%において,ビネガーシンドロームが急速に進行する濃度の酸性ガスが発生していることが明らかになった.さらに,本調査を実施する中で酸性ガスの発生以外にも変形や結晶化などの劣化現象が進んでいることも把握した.これらの劣化現象が進むと空中写真フィルムの利用が困難になる可能性があり,その具体例を示した.そのほか,一般的な対策方法を整理し,今後の対策についても検討した.その結果に基づき,酸性ガスを吸着する性能を持つ対策剤を投入した.
  本文[PDF:1,954KB]
Basic Plan for the Advancement of Utilizing Geospatial Information (Cabinet Decision 18th March 2022)
企画部  芹澤由尚・荒井静香・佐藤壮紀

【要 旨】
 令和4年3月18日,「地理空間情報活用推進基本法」に基づく地理空間情報の活用推進に関する政府の基本的な計画である「地理空間情報活用推進基本計画(第4期)」が閣議決定された.
 第4期地理空間情報活用推進基本計画は,令和4年度から令和8年度を計画期間として,第3期までの計画での課題や,激甚化する災害や環境問題への取組,社会のデジタル化の加速,地理空間情報に関する技術の進化等を踏まえ,防災,経済,生活など様々な分野における地理空間情報のポテンシャルを最大限に活用した多様なサービスの創出と,官民連携による自律的・安定的かつ適切な提供の実現を目指し,全体指針とそれに基づいた具体的施策を定めるものである.また,具体的施策のうち特に重点的に取り組むべき施策として位置付ける10の「シンボルプロジェクト」を中心に,各施策の計画的な推進を図ることとしている.
 国土地理院は,シンボルプロジェクトのうち「高精度測位時代に不可欠な位置情報の共通基盤「国家座標」の推進」に取り組み,位置情報,地図情報の基盤の整備により,i-Construction,スマート農業,自動運転,スマートシティ等のG空間技術を用いたプロジェクトの社会実装に貢献し,地理空間情報高度活用社会(G空間社会)の実現を目指していく.
  本文[PDF:3,605KB]
Aggregation of Quarter Grid Square (Divided Grid Square) Data for Locations of Ground Disasters Caused by Past Earthquakes
地理地殻活動研究センター  岩橋純子・遠藤涼
応用地理部  中埜貴元


【要 旨】
 地震時地盤災害の推計手法の開発あるいは向上のためには,過去の様々な地震で起きた斜面崩壊・地すべり・液状化発生箇所に関する正解データが必要である.しかし地盤災害の状況図には,面(ポリゴン)・線(ライン)・点(ポイント),様々な規格で発生箇所が描画されたものが存在する.筆者らは,それらを4分の1地域メッシュ(約250m)で統一的に取りまとめる手法を考案し,GISデータを作成した.
  本文[PDF:1,334KB]
Utilization Survey of Three-dimensional Point cloud Data
基本図情報部  佐々木励起・石塚麻奈・下野隆洋・岸本紀子・小野里正明・菅野秀秋・髙橋英尚

【要 旨】
 3次元点群データは用途に応じた3次元地図の作成が可能な価値の高いデータであり,多様な分野で活用可能である.地方公共団体においては,その価値に着目し,業務の最終成果として整備・提供を図る動きが出てきている.国土地理院では,3次元点群データの流通促進に資するため,将来の3次元点群データの整備・提供を見据え,適切な提供形態やその効果等について各種検討を進めており,この一環として3次元点群データ利活用調査を行った.
 まず,国土地理院が整備した3次元点群データを公募形式で試験提供し,提供先となる団体の利用実証を通して利活用事例を得るとともに,提供効果,仕様に関する意見等を収集した.また,3次元点群データの利活用状況についてその全体像を捉えるため,社会で使用されている3次元点群データの利活用事例を各種公開資料により調査した.資料だけでは調査しきれない情報については,必要に応じて聞き取りを行った.さらに,3次元点群データの利用実績のある団体に対して,3次元点群データの利活用事例や仕様等のヒアリングを実施した.3次元点群データの要求仕様やデータ利用時の課題,データ提供・公開に係るニーズについても確認した.これらの調査等により把握した3次元点群データの利活用事例,提供効果及び仕様に関する意見等の整理・分析を行った.
 調査の結果,地表面の様子が判読しやすい色付きかつ間引き無しの高密度生データと,地形解析に利用しやすい1mメッシュDSM(Digital Surface Model,数値表層モデル)・DTM(Digital Terrain Model,数値地形モデル)に対するニーズが多かった.提供に関する技術的課題としては,3次元点群データの容量の大きさに起因するデータの保管や提供手段としての通信の困難さが挙げられ,ファイルへの適切なメタデータの付与・小容量となるような分割や,クラウド等を利用したインターネット通信による提供方法の整備への要望があった.3次元点群データの普及の観点では,データの閲覧・処理が可能なオープンソースソフトウェアやブラウザ上で稼働するWebアプリ等の必要性が指摘された.
  本文[PDF:1,204KB]

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