最終更新日:2021年3月19日

国土地理院時報(2020,133集)要旨

小特集:令和元年東日本台風への対応

Responses of Geospatial Information Authority of Japan to the Typhoon Hagibis(1919)
企画部  防災推進室
【要 旨】
 国土地理院は,大規模自然災害の発生時において救命・救助活動及び復旧・復興に寄与するため,各府省庁,地方公共団体等の関係機関へ地理空間情報を提供することと災害対策基本法で定められている.令和元年東日本台風においても,内閣官房をはじめとする関係行政機関へ地理空間情報を提供した.本稿では災害の概要と国土地理院の主な対応について報告する.
 
Responses of Geospatial Information Department to the Typhoon Hagibis(1919)
地理空間情報部  災害対策班
【要 旨】
 令和元年東日本台風に関して,国土地理院が取得,作成した様々な地理空間情報の公開等,地理空間情報部が実施した災害対応について報告する.
 
Urgent Aerial-photography in Response to the Typhoon Hagibis(1919)
基本図情報部  災害対策班
【要 旨】
 本稿では,令和元年東日本台風災害において国土地理院が行った緊急災害活動,特に空中写真の早期提供に向けた各種取組について,効果及び今後の課題を交えて報告する.
 
Responses of Geographic Department to the Typhoon Hagibis(1919)
応用地理部  災害対策班
【要 旨】
 応用地理部では,発災前には,治水地形分類図等を国土地理院ウェブサイトから公開し,発災直後からは,災害対策班を編成し災害対応として,令和元年10 月下旬までの間に,浸水推定図(令和元年12月改称,旧称は浸水推定段彩図)をはじめ各種主題図を作成し関係機関へ提供すると共に,国土地理院ウェブサイトから公開した.このほか,政府調査団へ職員派遣を行った.これら応用地理部の対応について報告する.
 
Responses of Regional Survey Department to the Heavy Rain Event by Typhoon Hagibis (1919)
東北地方測量部
関東地方測量部
北陸地方測量部
【要 旨】
 令和元年東日本台風に伴う大雨は,東日本を中心に甚大な被害をもたらした.国土地理院本院,各地方測量部は災害対策基本法に基づく指定行政機関,指定地方行政機関として,災害発生時に被害状況の把握等,災害応急対策に必要な情報を関係省庁,地方公共団体及び国民に提供を行った.
 東北地方測量部,関東地方測量部及び北陸地方測量部は,国土地理院本院と連携して災害時に地理空間情報を提供するとともに,提供された情報の利活用について災害後に聞き取り調査を行った.本稿ではこれらの地方測量部の対応について報告する.
 



A Prototype System for FEM-based Crustal Deformation Analysis
地理地殻活動研究センター  小林知勝・山田晋也・佐藤雄大
【要 旨】
 火山地域のように急峻な地形や複雑な地下構造をもつ地域において,正確な地殻変動解析を行えることを目指して,地形・地下構造を考慮した計算を可能とする三次元有限要素法を適用した地殻変動解析システムのプロトタイプを開発した.解析システムはグラフィカルユーザインタフェース操作により,有限要素法による地殻変動計算から力源推定までの一連の処理を統合的に実行可能である.システムには全国の数値標高モデルや地下構造データを標準装備しており,国内の任意の陸地において実地形や不均質な地下構造を考慮した変動計算が可能となっている.本研究開発では,有限要素法による変動計算の高速化に関する技術開発にも着手し,計算領域の要素数を効果的に削減できる無限要素や要素細密化処理を実装することで,計算精度を維持しつつも計算速度を向上させることを実現した.本システムの開発により,従来の解析法では困難であった山体の浅部に貫入する力源による変動計算や地震波探査による火山体内の詳細な地下構造データを組み込んだ変動計算が可能となった.
 
How to Calculate the Flood Water Volumes?
- Verifications Using the Inundation Simulation Data -
地理地殻活動研究センター  岩橋純子・中埜貴元・大野裕幸
【要 旨】
 洪水時の河川氾濫による湛水量(浸水体積)を,水際の位置に相当する浸水領域の外周点のGIS データ(浸水の水際の位置を示す点群)と基盤地図情報の数値標高モデル(Digital Elevation Model: DEM.以下「DEM」という.)から自動計算して求める手法について考察した.浸水発生時に実際の正確な湛水量を把握することはできないため,「国土交通省地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)」で公開されている浸水シミュレーションデータから計算した湛水量を正解値として,複数の計算手法による湛水量計算結果の精度を検た.湛水量は,浸水領域の外周点のGIS データのみを用いて数パターンの手法で水面標高を計算し,それと基盤地図情報の5m メッシュ標高データ(以下「5mDEM」という.)との差分によって求めた.その結果,水面標高の計算手法が結果に与える影響について,次のことがわかった.(1)浸水領域外周の標高点群を全て用いる場合は,Natural Neighbor 法を用いた内挿補間を用いると,一次傾向面を用いたケースや,点群の標高の平均値・最低値・中央値による水平面を水面標高としたケースより正解値に近い湛水量となった.水平面を用いたケースの中では,平均値による手法が比較的良かった.(2)水際の位置を一部しか与えないケースでは,内挿補間による水面を使えないため傾いた水面の水面標高の生成は難しく,また,一次傾向面を用いたケースの誤差が非常に大きくなった.点群の標高の平均値・最低値・中央値による水平面を比較すると,比較的安定した結果が得られるのは平均値による水平面であった.
 また,浸水領域のGIS データとして手動で描画されたデータを用いた場合の位置ずれの影響(主として急勾配の線状盛土との接地によるもの)を除外する方法について補足的に検討したところ,隣接点間の移動平均からの偏差によって外れ値を識別・除外することが有効であった.
 
Revision of Map Use Procedure
地理空間情報部  福島忍・島田久嗣・村上尚正・東浦方紀
【要 旨】
 国土地理院が刊行,提供している基本測量成果を複製して刊行,あるいは使用して新たな地図を作成する場合は,測量法(昭和24年法律第188号)第29条,第30条に基づき国土地理院長の承認が必要になる場合があり,予めこれらの申請が行われている.
 近年,デジタルデータが普及し,オープンデータ化が推進されている状況を考慮し,国土地理院長の私的諮問機関である測量行政懇談会(委員長 清水英範東京大学大学院教授(当時))の下で,地図の利用手続のあり方について検討が実施され,平成30年12月,報告書(提言)(測量行政懇談会, 2018)が同懇談会の委員長から国土地理院長に提出された.
 このような背景から,測量成果の一層の活用促進のため,「測量法第29条の規定に基づく承認取扱要領」等が改正され,令和元年12月10日に施行された.
 改正により,国土地理院が刊行,提供している基本測量成果の利用にかかる申請不要の範囲が広がることから,利用者がより簡便に利用できるようになり,地図の活用促進が期待される.
 
Creation of 1:10000 scale “CENTRAL TOKYO” Map Commemorating the Enthronement of His Majesty the Emperor
基本図情報部  小西大介・藤本和彦・佐藤勝・吉成秀勝
【要 旨】
 国土地理院は,天皇陛下の御即位を記念して,1万分1地形図「東京中心部」(御即位記念地図)を,令和元年10月22日に行われた即位の礼(即位礼正殿の儀)に合わせて刊行した.
 本稿では御即位記念地図の作成に関して配慮した点,その他特徴について報告する.
 
Experimental Release of “Japan Map in Multilingual Notation” Using Vector Tile Data
基本図情報部  須賀正樹・沼田佳典・中南清晃
【要 旨】
 国土地理院では,地理空間情報の多言語化のため,2016年3月に「地名等の英語表記規程」を定め,これに基づき地名等の英語表記データを整備した.2019年3月には,英語表記データが格納された注記ベクトルタイルを用いたウェブ地図「英語表記の地図」を試験公開した.さらに,この注記ベクトルタイルからフランス語,韓国語,中国語(簡体字),中国語(繁体字),日本語(ローマ字)の各々の注記をウェブブラウザ上で自動変換して表示させるプログラムを構築し,2020 年 2 月には,このプログラムを実装したウェブ地図「多言語表記の地図」を試験公開した.本稿では,これらの取組について報告する.
 
Disseminating Lessons about Natural Disaster Monument
応用地理部  安喰靖
【要 旨】
 自然災害伝承碑とは過去に起きた自然災害の規模や被害の情報を伝える石碑やモニュメントで,災害の教訓を後世の私たちに伝えたいという先人の思いが込められている.国土地理院では,この伝承碑の情報をわかりやすく取りまとめ,ウェブ地図「地理院地図」上で2019年6月から公開を開始した.
 この取組を通じて,地域住民の防災意識向上に貢献していく.
 
Development of a GNSS Routine Analysis System using Precise Point Positioning (PPP-AR)
地理地殻活動研究センター  中川弘之・宮原伐折羅・宗包浩志
【要 旨】
 国土地理院が現在運用しているGEONET 定常解析の結果は,我が国の地殻変動の基礎的な情報として防災関係の各種会議に活用されているが,迅速性や時間分解能の面で不十分な場合がある.そこで,整数不確定性を推定する精密単独測位法(PPP-AR 法)を用いて現在の解析より迅速に,1 秒間隔で電子基準点の24 時間の座標時系列を算出する手法を開発し,それを実装したプロトタイプシステムを構築した.本システムでは,データ取得後およそ2 時間半で電子基準点全点の座標時系列を得られた.
 システムで得られた座標時系列の安定性を評価するため,外的要因による観測データの品質劣化が明確な点を除いた全電子基準点について,1 年の試験期間の時系列解の水平成分で日々の標準偏差を求めたところ,平均値は約1cm となった.この精度は国土地理院が現在運用するRTK 法による電子基準点リアルタイム解析システム(REGARD)よりも高く,GEONET 定常解析で最も迅速なQ3 解における座標のばらつきの代表的な値にほぼ等しいことから、従来よりもばらつきの少ない座標値をより迅速に算出できることが示された.また,標準偏差には季節変化があり,夏期に大きく冬期に小さくなることを示した.
 次に,地殻変動監視への有効性の評価として,平成28 年(2016 年)熊本地震に伴う地殻変動の検出を試みた.地殻変動の水平成分は,本震(M7.3)では,概ね10cm よりも大きな地殻変動の水平成分は従来の解析と整合的であり,10cm より小さな地殻変動では,従来のRTK 法(REGARD)よりもGEONET定常解析と高い整合性を示した.また,本震の2 日前に発生した最初の前震(M6.5)とその2 時間半後に発生した同等規模の前震(M6.4)では,GEONET定常解析では時間分解能が足りずに分離できなかった地殻変動が,本システムでは分離できることが示された.さらに,この二つの地震を含む4 時間程度の期間内では,本システムがREGARD よりも安定した座標時系列を算出することが示された.
 

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