国土地理院時報(2009,119集)要旨

Investigation of Actual Conditions for Advancement of Utilizing Geospatial Information in Local Government and Private Company, etc.
企画部 南雲吉久・佐藤 剛・門脇利広
中部地方測量部 大木章一
【要 旨】
 平成19年8月に地理空間情報活用推進基本法(平成19年法律第63号.以下,「基本法」という.)が施行され,これに基づき平成20年4月には地理空間情報活用推進基本計画(以下,「基本計画」という.)が閣議決定された.国土地理院においても,基本計画の主要施策である基盤地図情報の整備を推進し,平成20年4月に,インターネットによる無償提供を開始した.
 基盤地図情報の整備・提供をはじめとした地理空間情報の活用の推進に関する施策を実施していくためには,国と地方公共団体の連携が必要不可欠である.また,基盤地図情報をはじめとする地理空間情報が国民生活に広く流通・浸透していくためには民間企業等の協力も不可欠である.
 そのため,企画部地理空間情報企画室では平成20年度に,地方公共団体や民間の企業・団体の地理空間情報の活用推進に関する実態調査を行った.
 本調査により,地理空間情報の活用推進について,地方公共団体や民間の企業・団体の実態が把握できた.
 特に,基本法や基本計画について認知度が高いにも関わらず活用が進んでいないことから,早急な基盤地図情報の普及や個人情報保護や知的財産権に関するガイドラインの策定が必要であることがわかった.
 また,民間の企業・団体では,産学官の連携に期待していることも明確になった.
 今後は,これらの状況を踏まえて,基盤地図情報の整備・更新・提供などをはじめとした地理空間情報の活用推進に関する施策の立案や効率的な実施を図ることとするとともに,地方公共団体や民間の企業・団体等の協力・連携を積極的に推進していきたい.
  本文[PDF:1,364KB]
The Advancement of Utilizing Geospatial Information in European Countries
企画部 門脇利広・下地恒明
中部地方測量部 大木章一
【要 旨】
 平成19年8月に地理空間情報活用推進基本法(以下,「基本法」という.)が施行された.また,基本法に基づき平成20年4月には地理空間情報活用推進基本計画(以下,「基本計画」という.)が閣議決定された.平成20年4月からは国土地理院から基盤地図情報のインターネット提供を開始している.
 一方,欧州では,欧州連合(EU)において,2007年(平成19年)に環境政策に関する地理空間情報構築のための一般的規則を定める「欧州共同体における空間情報基盤(INSPIRE)を構築する2007年3月14日の欧州会議及び理事会(Council)の2007/02/EC指令」(以下,「INSPIRE指令」という.)が欧州委員会から出され,同年発効し,加盟国においては,国内法の整備など地理空間情報の活用推進のための施策を実施している.
 このような状況を踏まえ,INSPIRE指令に基づき進んでいる欧州の地理空間情報の活用推進に関する動向を把握し,日本の地理空間情報の整備・提供や今後の活用推進のための具体的な施策の参考にするため,EUの欧州委員会本部環境総局(DG-Environment),フランス国の国家地理情報委員会(CNIG),ドイツ国の連邦地図測量庁(BKG)及びブランデンブルク州測量地理情報局(LGB)を訪問し,地理空間情報の施策に基づいた共通基盤情報となる地図情報の整備・提供の状況について調査を行ったので,その調査内容について報告する.
  本文[PDF:1,995KB]
Land Condition Map of Satsuma-Io Jima Volcano
地理調査部 木村佳織
【要 旨】
 国土地理院では,2008年度に火山土地条件図1:10,000「薩摩硫黄島」作成作業を行った.現地調査は2008年7月19日~27日及び10月1日~8日の合計17日間にわたって実施した.原稿図作成は,2008年5月~2009年3月にかけて行った.本図は2010年中に刊行される予定である.
 火山土地条件図は,空中写真判読を基に,現地調査や文献を参考にして地形を分類し,多色刷りの地図にまとめたものである.本稿は,火山土地条件図「薩摩硫黄島」について,図の解説の補足・地形分類に関する知見について述べたものである.
  本文[PDF:2,422KB]
Development of Metadata Editor for Public Survey
地理空間情報部 吉田健一・橘悠希子・飯田洋
企画部 白井宏樹
【要 旨】
 国土地理院では,公共測量成果等のメタデータの作成を支援するため,公共測量用メタデータエディタを作成した.これまでメタデータ作成支援のためにJMP2.0メタデータエディタを無償提供しているが,パソコンや日本版メタデータプロファイル(JMP2.0)について一定の知識を有する利用者を対象としたものであった.そのため,公共測量用メタデータエディタでは,メタデータ入力の手間を最小限にするための項目設計や,ウィザード方式のユーザインタフェースの採用,ヘルプの充実,入力チェックなど,各種機能の追加を行い,パソコンに不慣れな利用者やJMP2.0について十分な知識を有しない利用者にも分かりやすい操作で公共測量成果等のメタデータを容易に作成できるものとしている.
  本文[PDF:2,541KB]
A General Formula for Meridional Distance from the Equator to Given Latitude
企画部 河瀬和重
【要 旨】
 任意の測地緯度に対し,赤道から当該緯度までの子午線弧長を求める計算式については,我が国においては地球楕円体の第一離心率による冪級数展開式が提案されている例が圧倒的に多く,第一離心率の二乗よりも小さい量で展開した式は,一世紀以上も前に提案されているにもかかわらず我が国では認知度も薄く,ほとんど使われていないのが現状である.
 この式が第一離心率による展開式よりも収束が速く,簡潔に表現されるにもかかわらず我が国で用いられてこなかったのは,式の導出過程が必ずしも明確でなく,あまり理解しやすいものになっていないということが原因の一つとして推測される.
 本論では,従来から使われてきた式よりも収束が速く,かつ一般項が与えられて任意の精度まで子午線弧長の計算を実行することが容易にできる式を明確な方法論で導出することを試みる.
 提案する式は簡潔かつ完全な一般項を与え,計算機へのプログラミングが非常に簡便に行うことができるとともに,現行我が国で一般的に使われている式よりも格段に収束が速いものであり,今回この有用な計算式の導出過程を明確化させたことで,今後懸念材料が払拭された形での測量業務への適用が期待されるところである.
  本文[PDF:1,399KB]
The Report of Lake and Wetland Survey of “Komatsu-Kaga-Awara” Area, Ishikawa-Fukui, Japan
地理調査部 木村幸一・齋藤俊信・三谷麻衣・新西正昭
【要 旨】
 湖沼・湿原は,重要な生態系となるとともに,観光資源,漁業利用,水上交通,洪水調整等様々な役割を有している.国土地理院では,自然環境保全,水面利用,災害対策が適切かつ整合性をもって進められるよう,2002(平成14)年から湖沼湿原調査を実施し,湖沼図等基盤となる地理空間情報を整備・提供している.湖沼湿原調査は,湖沼の湖底地形・底質・水中植物,湿原とその周辺地域の地形及び複数時期の土地利用を調査するもので,その成果を報告書,地図(報告書付図)及びGIS用のデータとしてとりまとめ提供している.
 本編では,2007(平成19)~2008(平成20)年にかけて石川県小松市と加賀市から福井県あわら市にわたる小松・加賀・あわら地区で行った湖沼湿原調査の概要と調査結果について報告する.
  本文-1[PDF:2,510KB]  本文-2[PDF:2,064KB]
VLBI-GPS Co-location Survey
測地部 三浦優司・栗原 忍
測地観測センター 吉田賢司・川元智司
企画部 小谷京湖
【要 旨】
 国際地球基準座標系ITRF(InternationalTerrestrialReferenceFrame)は,複数の宇宙測地技術(VLBI・GPS・SLR・DORIS)に基づいて構築されている.ITRFは,各宇宙測地技術の長所を生かした形で構築されており,例えば,地球のスケールではVLBIの成果を,地球の重心位置決定にはSLRの成果を主に採用している.コロケーション測量で直接計測した宇宙測地技術間の相対位置関係は,各技術で構築された測地網を結びつけることに利用され,複数の宇宙測地技術によるデータを統合解析するITRFにとって,重要なデータとなっている.
 国土地理院は,つくば・新十津川・父島・姶良の国内4カ所において,VLBI局とIGS(InternationalGNSSService:国際GNSS事業)点であるGPS軌道追跡局(電子基準点)を併設しており,VLBI-GPSコロケーション測量をこれまでに実施してきた(石原ほか,1999;Matsuzakaetal.,2002;Matsuzakaetal.,2004).本稿では,2007年から2008年にかけて実施したつくば,姶良でのVLBI-GPSコロケーション測量の算出手法をまとめ,結果を報告する.
  本文[PDF:2,561KB]
Crustal Deformation of the Io To Island Detected by Control Point Survey
測地部 平岡喜文・三森庸里江・瀬川秀樹・根本盛行
測地観測センター 矢来博司
硫黄島測量班
【要 旨】
 硫黄島において2009年2月に基準点測量を実施し,水平位置については7年ぶり,標高については41年ぶりに位置情報を更新した.島内の基準点においてGPS測量を実施し,水平位置を求めた.また,標高基準を求めるため簡易験潮を実施し,その点を基点としてトータルステーション等による多角測量により各基準点の標高を求めた.そのほか,面的な上下変動の検出を目的として,1968年の設置以後に道路拡幅工事により亡失となった簡易水準点が設置されていた地点において,GPS測量を実施した.
 本測量により,新たな位置情報のほか,最近41年間に積み重ねられた地殻変動を得ることができた.それによると,電子基準点において捉えられている最近12年間の隆起速度は,揺らぎを伴うものの,最近41年間の隆起速度とほぼ同程度である.また,最近7年間と最近41年間の上下変動の速度の分布から,硫黄島では地域的に速度が違う隆起現象が,速度に揺らぎを伴いながら継続してきたことがうかがえる.
 摺鉢山は,現在,二等多角点や電子基準点が設置されている場所よりも山頂部のほうが隆起速度は速く,これまでも同様であった可能性がある.
  本文[PDF:1,943KB]
Study of Methods of Making Topographic Data of Fills
地理調査部 星野 実・吉武勝宏・木村幸一
【要 旨】
 平成19年度~21年度の期間で,国土交通省総合技術開発プロジェクト「高度な画像処理による減災を目指した国土の監視技術の開発」に係る「地盤の脆弱性把握のための開発」において盛土地の危険度評価システムを開発した.このシステムは,地震により盛土地が崩壊などの被害を受ける箇所を危険度の高い順に抽出を行い,地震が起きる前に対策を行う優先順位をつけるためのものである.
 本稿はこの危険度評価システムで使用する盛土地形データ作成手法について,空中写真測量(メッシュ法,ブレークライン法,ステレオマッチング法)及びマップデジタイズ法を用いて丘陵地及び低地でそれぞれ2km2の試験計測を行い,この中で計測精度,均質性,効率性について比較した.また,最近行われている航空レーザによる標高データ作成手法との比較を行った結果についても報告する.
  本文-1[PDF:2,443KB]  本文-2[PDF:2,283KB]
The Long-Term Plan for Basic Survey and GSI Research and Development Basic Plan
企画部 下山泰志・田村栄一
地理調査部 乙井康成
【要 旨】
 国土地理院では,基本測量の今後のあり方を定める「基本測量に関する長期計画」,及び今後の研究開発の方向性を定める「国土地理院研究開発基本計画」の改定を行った.これらは,地理空間情報活用推進基本法の制定,測量法の一部改正等を踏まえつつ,時代に対応した計画として策定したものである.
 以下,これらの概要について紹介する.
  本文[PDF:1,603KB]
Utilizing Satellite Image of Collection for Imagery Information
測図部 雪下勝典・岡谷隆基
【要 旨】
 国土地理院では基盤地図情報整備に合わせ,オルソ画像及び標高データ整備を進めている.都市計画区域については基盤地図情報の要求精度レベルが2千5百分1地形図相当であるため,地図作成のベースは空中写真によらざるを得ないが,中山間地域,離島地域等については,要求される精度レベルが2万5千分1地形図相当となるため,「だいち」等の衛星画像の活用も可能であり,機動性等から衛星画像の方が有利な点もある.
 こうした背景を受け,画像情報整備を空中写真及び衛星画像双方に対して行っているが,その効率的整備に資するため,高分解能衛星画像の判読性等についての評価を空中写真との比較に基づいて実施したので報告する.
  本文[PDF:2,660KB]
Report on the 25th United Nations Group of Experts of Geographical Names
測図部 竹谷千春・金子純一
【要 旨】
 2009年5月,ケニア国ナイロビ市にある国連施設において第25回国連地名専門家グループ会合が開催された.会合には,世界各国から主に地名を取り扱う機関の専門家らが一同に会し,各ワーキンググループあるいは各国からの報告をもとに第9回の決議の履行状況を確認するとともに,特にアフリカにおける地名標準化に対する取り組みについて議論が行われた.
 国土地理院は,本会合に参加したので,その概要を報告する.
  本文[PDF:1,526KB]