最終更新日:2021年9月17日

採用担当Facebookアーカイブス~災害対応・防災業務~

のぞいてみよう!国土地理院の防災に関する仕事

こんにちは!リクサポです。
 国土地理院では災害に関する情報を国民の皆さんに発信するため、多種多様な業務を行っています。そこで、近年特に国土地理院が力を入れて発信している「自然災害伝承碑」と「浸水推定図」の業務に携わる2人の職員にインタビューしてみました!

  

国土地理院の「伝える」仕事 ~自然災害伝承碑編~

応用地理部 地理情報処理課 森田さん

2021年9月3日公開→Facebookで見る
 こんにちは、入省3年目の森田(H30年入省、一般職土木区分)です。

 就活生の皆さん、「自然災害伝承碑」をご存じでしょうか?自然災害伝承碑とは、過去に発生した自然災害(地震、津波、高潮、洪水、土砂災害、火山災害等)の教訓を後世に伝えようと先人たちが残した恒久的な石碑やモニュメントで、自然災害に関する発生年月日、災害の種別や範囲、被害の内容や規模、教訓等が記載されたものです。

 私の所属する応用地理部地理情報処理課災害対策地理情報係では、全国の市区町村と連携し、この「自然災害伝承碑」の情報を収集し、位置特定、写真撮影、碑文内容の要約(碑文だけでなく、文献や公的機関のウェブサイト等で内容を補足)、市区町村との手続きを経て、地理院地図への掲載を行っています(写真1枚目)。仕事は基本的にデスクワークですが、現地調査を行うこともあります。昨年度は滋賀県の琵琶湖周辺の碑について調査を行いました(写真2枚目)。琵琶湖周辺には明治29年琵琶湖洪水の際の浸水位が刻まれた碑がいくつも建立されていたことが印象的で、先人の残した教訓を埋もれさせてはいけないと痛感しました。
 また、外部機関への発表機会もあります(写真3枚目)。国土地理院では防災に役立つ地理空間情報の普及啓発の一環として平成28年から教科書・教材出版社を対象とした説明会を開催しており、昨年度は自然災害伝承碑の取組について私が発表しました(詳しくはPDFの2ページ目を参照 https://www.gsi.go.jp/common/000231112.pdf)。
 ここで少し、独り言。私は今の係の配属になって2年目なのですが、ついに職業病になってしまいました(笑)。仕事で石碑ばかり見ていたので、普段から何気ない石碑にも目がいくようになってしまったなあ...

 最後に就活生へのメッセージです。国土地理院の仕事には、私の係のように成果物を世に出し「伝える」仕事があり、自身で作成した成果物が世の中の役に立つよういかに工夫して提供できるか日々試行錯誤しています。私は新聞記事やテレビのニュースで自然災害伝承碑が紹介されているのを見た時に特にやりがいを感じます。このような「伝える」仕事に携われることも国土地理院の魅力の1つだと思いますので、「伝える」仕事に興味のある方、是非一緒に働きましょう!

(参考)  試しに地理院地図で「自然災害伝承碑」を見てみましょう↓※8/6(金)時点で1014基を公開。 https://maps.gsi.go.jp/…
 URLをタップすると地図が表示されます。地図上中央の緑色のアイコンをタップすると、ポップアップが表示され写真と碑名、災害名が表示されます。さらに写真をタップすると災害種別や所在地、伝承内容等の詳細情報が表示されます。
 ウェブ地図「地理院地図」で公開している情報は月1回程度の頻度で更新しています。 https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi.html

自然災害伝承碑の分布図

【写真1枚目:自然災害伝承碑の分布図】
地図と測量の科学館で展示するパネルを作成した際の一枚。
やはり実際に成果物を印刷すると満足感があり、本人もニンマリ(笑)。

現地調査(琵琶湖周辺の碑)

【写真2枚目:現地調査(琵琶湖周辺の碑)】
昨年度は琵琶湖周辺の碑を調査。
碑の位置特定や掲載用の碑の写真撮影を実施。
明治29年琵琶湖洪水についての碑(現在未掲載)がいくつも建立されていたのが印象的でした。
気が付いたら琵琶湖1周(約200km)を達成していました(笑)。

教科書・教材出版社を対象とした説明会

【写真3枚目:教科書・教材出版社を対象とした説明会】
写真は昨年度の様子。コロナの影響でオンライン開催。本人はとても緊張しています(汗)
このような外部機関への発表機会もあります。

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国土地理院の「守る」仕事 ~浸水推定図編~

応用地理部 地理情報処理課 吉田さん

2021年9月10日公開→Facebookで見る
 こんにちは、入省7年目の吉田(H27年入省、一般職林学区分)です。
 
 「浸水推定図」は、浸水の被害を伝える写真や映像をもとに、どの範囲に、どのくらいの深さまで、水があふれたかを表した地図です。早ければ災害発生の当日に作成・提供し、排水ポンプ車の配備計画などの復旧・救護活動で活用されています。ここでは、この地図を作ったきっかけや経緯についてお話しします。
 
 私がこの地図を作ろうと思いついたのは、平成30年7月豪雨が発生している最中でした。当日は土曜日で、自宅に待機していました。出身地である岡山県の被害状況が気になり、SNSなどで浸水を伝える写真や映像を見ていました。屋根まで浸かった住宅をみて、浸水の深さは5mくらいありそうだ、と思いながら、その場所を地図で確認していきました。
 当時の国土地理院では、航空機から撮影した写真をもとに、浸水の範囲を示した地図を作っていました。航空機であれば、広い範囲の情報が一度に得られますが、SNSの写真や映像に写っている範囲は狭く、限られた情報しかありません。それだけの情報から広範囲の地図を作るには、情報がない範囲の浸水状況を推定する必要がありました。そこで、SNSの写真や映像から浸水面の高さを求め、浸水面を静水面と仮定して、周辺も同じ高さまで浸水したことにしました。この仮定は、流れのある浸水では通用しませんが、このときのSNSの写真や映像からは、ほとんど流れがないように見えたため静水面としました。
 はじめは、浸水面と同じ高さに沿って浸水範囲を描きました。しばらくして、浸水面の高さから地面の高さ(標高)を差し引けば、浸水の深さを算出できると思いつき、国土地理院の標高データを解析して、浸水の深さを示した「浸水推定図」ができました。  

 「浸水推定図」を思いついて作成できたのは、学生時代からの経験・習慣や、職場で身についた知識のおかげです。思い返すと、次の3項目が浮かびました。
 1つ目は、自然災害の写真や映像を見る習慣です。きっかけは、中学生のときに地元で発生した平成16年台風23号での倒木被害と土砂災害です。その状況を毎日見ながら通学するうちに、どのような場所で災害が起きるのか関心をもつようになりました。いまでもニュースやSNSの写真や映像をみて、どこでどのくらいの災害が発生したのか確認するようにしています。
 2つ目は、大学の卒論・修論で、川の模型実験をした経験です。砂と泥を敷き詰めた水槽に水を流して、川のかたちが変化する様子を観察しました。今思うと、浸水の場所を想像するのに、良いトレーニングになったと思います。
 3つ目は、国土地理院に入省した後、地形の解析ソフトの操作を習得したことです。自宅でも色々な地図の表現を試して、綺麗だと思う地図を試行錯誤して作って遊べるようになりました。
 どの項目も「浸水推定図」を作るために始めたことではありません。その時々で、自分の関心や興味のあることに、素直に取り組んできた結果だと思います。仕事上での目標達成に向けて努力することが重要な場面も多いですが、これからも直接的な意味にとらわれず、好きなことに手を動かす時間も大切にしていきたいです。

 国土地理院の仕事は、一見すると、特定の専門的な知識ばかり使っていると感じるかもしれません。しかし、求められる情報や得られる情報は、時代の流れによって変化するので、そのたびに新しい知識とアイデアが大事になります。そのときには、いま皆さんが取り組んでいる課題や研究を活かせられる場面が、思いもよらない形で出てくると思います。皆さんも興味・関心のあることに楽しく取り組んでみてください。これからの測量や地図を一緒につくる日を楽しみにしています。

(参考) 地理院地図で平成30年7月豪雨の「浸水推定図」(当時は「浸水推定段彩図」)を見てみましょう↓
 https://maps.gsi.go.jp/… URLをタップすると地図が表示されます。陰影起伏図などと重ね合わせて見ることで、浸水状況と地形との関係を捉えやすくなります。     

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【業務紹介:防災業務】防災演習参加

関東地方測量部 防災課 畠山さん

2018年6月13日公開→Facebookで見る

こんにちは!リクサポです。
国土地理院には防災や災害対応を主務とする係もあります。
通常業務に加え、災害に備えて演習に参加し関係機関との連携を深めているとのこと。
詳しく伺いましょう。

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関東地方測量部防災課の畠山です。

国土地理院は、「地図を作る機関」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、災害対策基本法などの法律に基づく「指定行政機関(※1)」として、測量・地図分野の最新技術を活用して防災・減災に役立てています。

主な防災業務としては、平時には地殻変動の監視や防災地理情報の整備・提供、災害発生時には空中写真撮影(※2)や干渉SAR(※3)などによる被害規模や被災状況の把握と情報提供を行っています。また防災関係機関同士の連携、災害対応能力の向上および防災教育・啓発のため、防災訓練にも積極的に参加しています。

「利根川水系連合・総合水防演習」は、1947(昭和22)年のカスリーン台風による未曾有の被害を教訓として1952(昭和27)年から始められ、国土交通省、関東1都6県および開催市町村が主催し、毎年利根川水系の河川沿いで開催されています。

今回は千葉県印旛郡栄町の利根川河川敷が会場となり、全体で約12,000名の来場者がありました。国土地理院は測量用航空機「くにかぜ3)」による空中写真撮影部隊とUAV(ドローン)専門技術部隊「国土地理院ランドバード」が、決壊した利根川の被災状況の調査のために撮影を実施するという設定で訓練に参加しました。当日、会場上空は曇りで視界不良のため「くにかぜ3)」は飛行を取りやめましたが、UAVは低高度のため影響を受けず、川面を飛行し撮影した映像は、リアルタイムに会場の大型スクリーンに映し出され注目を集めました。

今回の演習では私がUAVの操縦を行いました。多くの観衆が見守るなか緊張しましたが、無事終了させることができました。

また、関東地方測量部では会場に防災啓発ブースを出展しました。ブースでは、「平成27年9月関東・東北豪雨(※4)」における茨城県常総市周辺での浸水被害を示す地図、地形図や空中写真による会場周辺の変遷、最新のオルソ画像などのパネル、パソコンをもちいた「地理院地図(※5)」や「国土交通省ハザードマップポータルサイト(※6)」の展示、災害時にUAVで撮影した動画、測量用UAVの展示を行い、多くの方にご覧頂くことができました。

※1 http://www.bousai.go.jp/taisaku/soshiki/s_gyousei.html

※2 http://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa41007.html

※3 http://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/gsi_sar.html

※4 http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/H27.taihuu18gou.html

※5 https://maps.gsi.go.jp/

※6 https://disaportal.gsi.go.jp/

UAV操縦中の筆者

UAV飛行準備
飛行ルートや飛行高度を確認しています。

UAV離陸前右側の職員が持っている機体が、これから飛びます。

UAV離陸前
右側の職員が持っている機体が、これから飛びます。

UAVから撮影した訓練の様子
川の中に浮いているのは浸水地の建物を模した台船です。
被災者役の方々はこのあと自衛隊に”救出”されました。

会場にリアルタイムで映し出されるUAV動画。

 

#国土地理院_業務紹介

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【国土地理院の災害対応~平成28年熊本地震を例にして~】

【国土地理院の災害対応~平成28年熊本地震を例にして~】干渉SAR

地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室 森下さん

2016年10月28日公開→Facebookで見る

こんにちは、リクサポです。
今回から5回に分けて国土地理院における災害対応について、平成28年熊本地震を例にしてご紹介していきます。
第1回は、宇宙からの観測データを使った災害対応について、地殻変動研究室の森下さんに紹介してもらいます!

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入省9年目、地殻変動研究室の森下です。

私は人工衛星のデータを使用してわずか数cm程度の地面の変動を面的に計測できる「干渉SAR」という技術の研究をしています。(以前もご紹介しました。https://www.facebook.com/gsi.saiyo/posts/1027122617360937

2016年4月に発生した熊本地震では、地表に現れた断層が地震の大きさを物語っていましたが、宇宙からも干渉SARによってその動きが捉えられていました。

地震から4日後には、干渉SARによって、断層沿いで1m以上の沈降があったことが明らかになりました(写真1)。

地震発生当初は断層の大きな水平方向のずれ動きのみが注目されていましたが、上下方向にも大きな変動があったことがこの結果によって初めて明らかとなり、多くのメディアで報じられました。

今回の解析は通常の干渉SARより発展的な解析手法を用いており、高度な技術を必要としましたが、日頃の研究・技術開発のおかげで、迅速に対応することができました。

人工衛星の性能や解析技術はどんどんと進歩しています。

今回の熊本地震でも、数年前の技術では捉えられなかったような変動が次々と発見され、地震の研究や被害状況把握などに役立てられています。

これからも国土地理院は災害対応にもっと貢献できるよう、新しいことに挑戦していきます。

写真1:干渉SARによって計測された熊本地震に伴う上下変動量の分布です。これにより断層の北側で1m以上の沈降があったことが初めて明らかになりました。

写真2:人工衛星「だいち2号」のデータを使用した干渉SARにより変動が明らかになりました。(画像提供:JAXA)

 

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【国土地理院の災害対応~平成28年熊本地震を例にして~】地殻変動の把握・基準点の位置情報修正

測地部 測地基準課 山下さん

2016年11月06日公開→Facebookで見る

こんにちは、リクサポです。
国土地理院における災害対応についてご紹介する第2回(全5回)。
今回は、平成28年熊本地震での、地殻変動の把握・基準点の位置情報修正業務について、測地部の山下さんに紹介してもらいます!

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お初にお目にかかります。

測地部測地基準課の山下(3年目、総合職、数理科学・物理・地球科学区分)と申す者です。

私は主に緯度・経度の基準となる三角点(写真1)、高さの基準となる水準点(写真2)の位置情報を管理する業務に従事しています。

私からは、地殻変動の把握・基準点の位置情報修正に関する業務についてご紹介します。

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(1) 地殻変動の全体像の把握

電子基準点や干渉SARによる解析(※1)で地殻変動の概要を把握できましたが、どれほどの変動があったのかは掴みきれない場所もありました。そのため、5月3日~5日に現地で緊急GNSS観測(※2)を実施し(写真3)、水平・上下ともに最大で約2mの変動が生じていたことを突き止めました。

http://www.gsi.go.jp/BO…/H27-kumamoto-earthquake-index.html…

(2) 変動が生じた三角点・水準点の位置情報修正

熊本地震に際しては、地震の影響を受け変動が生じた三角点が約4000点存在し、全部を測り直すのは人員や予算の面から非効率でした。そこで断層周辺の変動が複雑な領域以外では部分的に測り直し、それをもとに変動分布を推定し(写真4)、9月に位置情報を修正・公表しました。

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私は大学時代火星の雲について研究しており、現在の業務とは遠くかけ離れた世界で生きていました。

しかし研究生活で得た地学・数理的知見は、変動分布の推定等の業務において大いに役立っていると確信しています。

修正した三角点・水準点の位置情報が、被災地の今後の防災計画や、住宅等の復旧の基礎データとして用いられ、生活再建が進むことを心から願っています。

以下、熊本での現地作業を思い出して詠んだ歌。

 なゐふるの 過ぎにし原ぞ あさましき 青々と立つ 麦穂なりけり

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※1 本シリーズ第1回「干渉SAR」:https://www.facebook.com/gsi.saiyo/posts/1240444606028736

※2 GNSS:Global Navigation Satellite Systemsの略。GPS(米)、準天頂衛星(日本)、GLONASS(露)、Galileo(EU)など衛星測位システムの総称

写真1:三角点の例

写真2:水準点の例

写真3:緊急観測風景

写真4:推定した水平変動の大きさの空間分布

 

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【国土地理院の災害対応~平成28年熊本地震を例にして~】UAVによる被災地の情報収集

基本図情報部 早坂さん

2016年11月14日公開→Facebookで見る

こんにちは、リクサポです。
国土地理院における災害対応についてご紹介する第3回(全5回)。
今回は、平成28年熊本地震でのUAVを用いた災害対応について、基本図情報部の早坂さんに紹介してもらいます!

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こんにちは

基本図情報部の早坂です(H26総合職工学採用:元リクサポ)。

国土地理院では、災害時の対応の一つとして、UAV(ドローン)を用いた現地情報の収集を行っています。

今日は、熊本へ派遣された時の記憶を辿ります。

(1)地震発災直後の対応(4月)

https://youtu.be/C52Niq2jNdI

14日夜の前震時、職場で「かなり大きい地震だ。」と上司と話していたところ、翌日には急遽九州へ派遣となり、立ち入りが困難な場所の被災状況について情報収集を行ってまいりました。

上記URLの動画は阿蘇大橋付近の土砂崩落箇所をUAVで撮影したものです。

その他の土砂災害箇所なども試行錯誤しながら撮影し、迅速な情報提供に努めました。これらの撮影データは、関係機関による被災状況の把握や復旧、断層の確認などに活用されました。

私自身も一部の撮影を行いましたが、普段と比べかなり緊張し、一つ一つ確認しながら丁寧に操縦したことを鮮明に覚えています。

(2)熊本城の空撮(5月)

https://youtu.be/BcWlJN9lnHs

復興に向けた支援の一環として、熊本市から要請を受けて熊本城の被災箇所の撮影を実施しました。

現地は、石垣・櫓など多くが崩れ、人が近づけない状況で、細心の注意を払いながらの作業でしたが、 熊本市の担当者と綿密に打合せを行い、無事撮影を終えることができました。

撮影データは、石垣の解体・修復などの検討の基礎資料や被災状況の記録として活用するとのことでした。

入省前、私自身は災害の経験はあまりありませんでした。

今回の派遣を経て、災害時の情報の重要性等々について考えさせられましたので、今後の職務等に活かしていきたく思います。

P.S. 添付URLの動画のほかにYouTube上の国土地理院動画チャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCJY_QJ1IuHO8j_WvPqNEK6g

で災害時に取得した情報を公開しておりますので、ご興味がありましたらご覧くださいませ。

阿蘇大橋の崩落箇所(UAV)

地震に伴い発生した断層の様子(UAV)

土砂災害状況の調査を行う筆者

熊本城の被災状況撮影(UAV)

石垣等被災箇所の調査風景

 

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【国土地理院の災害対応~平成28年度熊本地震を例にして~】電子基準点による地殻変動監視

測地観測センター 電子基準点課 高松さん

2016年11月28日公開→Facebookで見る

こんにちは、リクサポです。
国土地理院における災害対応についてご紹介する第4回(全5回)。
今回は、電子基準点を活用した地殻変動監視について、測地観測センターの高松さんに紹介してもらいます!

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測地観測センター電子基準点課の高松(入省2年目、総合職数理科学・物理・地球科学採用)です。3月に沖ノ鳥島の電子基準点保守業務について紹介しましたが、今回は電子基準点を使った地殻変動監視について紹介します。

国土地理院では東北大学との共同研究により、REGARDというシステムを開発しました。これは、電子基準点のリアルタイムのデータから、地震に伴う地殻変動と地震規模(マグニチュード(M))をおよそ3分以内に推定するシステムです。

今年4月の熊本地震では、M7.3の大きな地震が発生しましたが、REGARDによってリアルタイムで適切な地殻変動を推定することができました(図1、図2)。この地震は真夜中に発生したため、職場からの電話で飛び起きて急いで向かった記憶があります。私はデータの解析と図1、図2のような地殻変動図の作成を担当しました。その後、作成した図が本当に地殻変動を表しているか院内で検討した上で、即日HPで公開しました。国土地理院は測量を所管している機関ですので、地面がどの程度変動したかという情報は、測量の基準点の精度管理を行う上で大変重要です。また、REGARDでは地殻変動のデータから、地震を発生させた断層の位置や大きさも推定することができるため、地震発生のメカニズムや被害状況の把握にも役立ちます。

REGARDの強みは、このような情報が地震発生後速やかに得られるというところにあります。この強みを生かすために、他の職員でもすぐに解析や描画ができるように、プログラムの改良を行っています。

また、地震規模や揺れなどの即時推定は技術的にも注目を集めている話題です。学会や研究集会に参加する機会に恵まれており、私も10月の地震学会に参加しました。私は大学時代、気象学を専攻しており地震にはあまり詳しくなかったのですが、データの解析手法には似た部分があり、大変興味深かったです。また、対象としているものが大気か地面かの違いはありますが、発生する現象を簡単にモデル化して、本質的な現象の理解に努めるというプロセスは同じですので、学生時代に学んだことが役に立っていると実感しています。今後は、学会で得られた知見も活かし、REGARDの精度をさらに高めていきたいと思っています。

(図1) REGARDで推定された熊本地震(4月16日M7.3)の地殻変動

(図2) REGARDで推定された電子基準点「長陽」(熊本県南阿蘇村)における地殻変動

 

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【国土地理院の災害対応~平成28年熊本地震を例にして~】写真判読と現地調査

応用地理部 防災地理課 吉田さん

2016年12月06日公開→Facebookで見る

こんにちは、リクサポです。
国土地理院における災害対応についてご紹介する第5回(全5回)。
最後は、平成28年熊本地震によって生じた亀裂の分布図の作成について、応用地理部の吉田さんに紹介してもらいます!

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 応用地理部防災地理課の吉田(入省2年目、一般職林学採用)です。

 熊本地震では多数の亀裂が生じました。これらの亀裂は断層のずれや液状化、地すべりなどのさまざまな成因によって生じています。国土地理院では地震発生後に撮影した空中写真(航空写真)を使用して、地表に生じた亀裂の分布図を作成しました。亀裂分布図は被害状況の把握や復旧・復興計画などに役立てていただくため被災地の県や市町村などへ速やかに提供し、地理院地図や「平成28年熊本地震に関する情報」サイトに公開しました。

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(1)空中写真判読による亀裂分布図の作成

 撮影された空中写真をみながら、亀裂の生じた箇所をひとつひとつ自分の目で確認し、GISソフトを使って亀裂がある場所のデータを取得していきます(判読作業)。亀裂は写真に黒く線状に写っているため、誤って電柱の影などを取得しないよう注意します。今回活動した布田川・日奈久断層の周辺を中心に、長さ50 km 以上の範囲にわたって亀裂が分布することがわかりました。

(2)地表変位の確認のための現地調査

 空中写真判読で抽出した亀裂の箇所について、現地調査を行って実際の状況を確認し、亀裂分布図の精度を高めました。

 また、干渉SAR(https://www.facebook.com/gsi.saiyo/posts/1240444606028736)により検出された多数の地面の変動箇所の調査も併せて行いました。その結果、干渉SARで観測された変動量と方向は実際のそれと整合しており、新技術の精度が改めて確認できました。

・地理院地図で亀裂分布図をみる

http://maps.gsi.go.jp/...

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 私は大学時代に地球科学(主に地質学)を専攻していたこともあり、空中写真判読のなかで、「亀裂がどのような場所にどういった作用によって生じうるか」を考えて作業することができ、災害発生後に効率よく詳細な分布図を作ることができました。災害時においても業務の内容は幅広く、皆さんの専攻してきた学問や今までの経験も必ずどこかで(ときには思いがけなく)役に立てることができるはずです。

図1 航空写真からみた地表の亀裂(黒矢印:ずれの方向、黄矢印:写真1の撮影位置)

図2 地表の亀裂の判読結果(赤線)(黄四角:図1の範囲)
  

写真1 地表に現れた断層による亀裂の現地確認作業(図1の黄矢印の位置)

写真2 阿蘇カルデラ内部に生じた開口亀裂の調査
  
  

写真3 地表に現れた断層による亀裂のずれの計測作業

図3 航空写真判読による布田川断層帯周辺の地表の亀裂分布図

 

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