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セミ・ダイナミック補正

1.導入の背景

地殻変動の激しい日本列島

 日本列島は4つのプレートがぶつかり合うプレート境界に位置しているため、 複雑な地殻変動が観測されています。 下の図は 電子基準点高度地域基準点測量 の結果から計算した、 1997年1月から2009年1月までの地殻変動の様子を表しています。
この図から、

  1. 12年間で数10cmの動きがみられること

  2. 地殻変動(向きと大きさ)が一様ではなく地域によって異なること

が分かります。 南西諸島などではこれまでに1m程度の変動が見られます。

 また、地殻変動による平均のひずみ速度は約0.2ppm/yearであることが 分かっています。

1997年から2009年までの地殻変動の様子
1997年から2009年までの地殻変動の様子
(赤い矢印は地殻変動の向きと大きさを表す。)

地殻変動が測量成果に及ぼす影響

現在一般に公開されている測量成果(測地成果2011)は、 次の基準日の位置情報に基づいて算出されています。地殻変動によりひずみが蓄積する
  1. 2011年5月24日が基準日の地域
    青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都(島しょを除く。)、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県及び岐阜県

  2. 1997年1月1日が基準日の地域
    上記以外の地域
セミ・ダイナミック補正では、 測地成果2011の基準日を測量成果の「元期(げんき)」 と呼んでいます。

 元期において高い精度で求められた基準点の座標値は、 地殻変動のために年々その精度が劣化していると考えられます。 2つの既知点を結ぶ基線長のひずみ量は次式で与えられ、 時間の経過や基線長に比例して大きくなることが分かります。

歪み量の計算式

 一方、元期に対して観測を行った時点を「今期(こんき)」と呼びます (今期は「年度単位」としています。)。

 測量成果(元期の基準点の位置座標)と今期の基準点の位置座標の乖離(かいり)が進み 地殻変動によるひずみが蓄積すると、 測量計算に影響を及ぼすと懸念されます。
 
 

地殻変動によるひずみの影響

三角点を既知点とする測量の場合

参加各店を使用した測量 作業規程の準則 第22条 では、1級基準点測量における既知点間距離は4000mを標準と しています。 このため右図で示されるような三角点を既知点とする 狭い範囲の測量を行う場合、地殻変動によるひずみの影響はそれほど問題になりませんでした。 既知点間の距離が短い場合、既知点間の相対的な変動量も小さいため ほぼ「平行移動」と見なすことができるからです。

右図は、三角点A、Bを既知点として新点Cを求める場合を表しています。 約0.2ppm/yearのひずみ速度を仮定すると、既知点間距離が4000mの場合、元期から 10年経過したときの既知点間距離の相対的な変動量は約8mmです。 これは、許容されている測量誤差(※)と比べて小さいため、 測量計算に与える影響は比較的少ないと考えられます。

(※参考:作業規程の準則 第42条より)
作業規程の準則 第42条より

電子基準点を既知点とする測量の場合

 電子基準点を使用した測量世界測地系への移行後、1級基準点測量では電子基準点のみを既知点として 測量を行うことができるようになりました。 この場合、既知点間距離の制限は適用されません。 電子基準点の平均的な間隔を25km程度とすると、 地殻変動による平均のひずみ速度は約0.2ppm/yearなので、 電子基準点間には10年間で約50mmの相対変動が蓄積することになります。

 右図は、電子基準点A、Bを既知点として新点Cを求める場合を表しています。 この場合、電子基準点間の閉合差の許容範囲(※)は88mmです。 現在のところ地殻変動による相対変動は許容範囲内ですが、 このままひずみが累積すると、やがて良好な観測を行っても 閉合差が許容範囲を超えると考えられます。 このような状況で網平均計算を行っても、精度の良い結果は得られません。


(※参考:作業規程の準則 第42条 より)
電子基準点のみの場合の許容範囲

セミ・ダイナミック補正の導入

 これまで見てきたように、地殻変動に伴うひずみは 電子基準点のみを既知点とする測量等(広い範囲で行う測量)の精度に影響を及ぼします。 さらにその影響は、年々大きくなっていくと考えられます。
 以上のような問題を解決する方法はないでしょうか。

現状を整理すると

 現状では、一度求めた測量成果を頻繁に改定することはありません。
 しかし激しい地殻変動のため、時間が経つにつれて 測量成果の精度は劣化していきます。

もし測量成果を時間とともに変えたら

 そこで、定期的に測量を行い基準点の測量成果をその都度改定すれば、 測量成果と観測結果が常に整合すると考えられます。
 ただし測量成果を改定するとなれば、今あるすべての測量成果を一斉に 改定しなければなりません。 現在国家基準点だけでも約12万5千点、さらにこれを上回る数の公共基準点が存在しています。 それらをもとに測量して得られた地図(都市計画図等)や境界標識まで含めると、 現在世の中に流通している測量成果は莫大な数に上ります。 定期的に成果改定を行うことになれば膨大な手間と費用がかかるため、 今のところ現実的ではありません。

解決策として

 「測量成果を改定せずに、既存の測量成果と観測結果の間に生じる地殻変動の ひずみの影響を補正する」ことを 目的に導入されるのがセミ・ダイナミック補正です。
 セミ・ダイナミック補正を行うことにより、 測量を実施した今期の観測結果から、測地成果2011の元期において得られたであろう 測量成果を高精度に求めることができます。
 既存の基準点の成果を改定する必要がないので、現行の成果をそのまま安定して 利用することができます。 また、測量計算の際に地殻変動の影響を補正することにより、 測量計算の精度を確保できます。

 
セミ・ダイナミック補正のイメージ
セミ・ダイナミック補正のイメージ
(今期の観測から、元期において得られたであろう成果を得る)

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