樹木の繁茂が座標変化に影響した例(千丁の事例)

2016年4~5月頃の日々の座標値に異常が見られた電子基準点「千丁」(940093)の事例

日々の座標値に見られる座標変化の特徴

 電子基準点「千丁」の座標変化の傾向を把握するため、基線変化グラフ(図1)を確認したところ、2016年4月頃からばらつきが大きくなっていたことが分かります。また、2015年の4月頃から9月頃までも同様の変化が見られていることも分かりました。このような現象が特に夏頃に見られる場合、樹木の繁茂の影響が疑われます。

千丁の時系列図
図1 電子基準点千丁の時系列図(1年4ヶ月間)

観測点の周囲の状況の確認

 マルチパス指標のスカイプロット(図2上)を確認したところ、南側のGPS信号の受信状況が悪化していました。また、2016年5月に直接現地を確認したところ、南側の樹木が電子基準点の高さ以上に生長していたことが分かりました(図2下)。

伐採前のスカイプロット

伐採前の周辺写真
図2 電子基準点「千丁」の伐採前のスカイプロット(上)、伐採前の周辺写真(下)

結論

 上記のことから、電子基準点「千丁」の座標値の変化は、南側の樹木が生長し、2016年4月頃からの葉が生い茂る時期にGPSの信号に影響を与えたことが原因と判断されます。
 国土地理院では電子基準点「千丁」において、電子基準点近傍の樹木について2016年5月18日に伐採を行い、観測環境の改善を図りました。(図3中)。その結果、伐採を行った5月18日を境に、南北成分が南側に、比高成分が沈降する側に変化するとともに、日々の座標値のばらつきが小さくなりました(図3下)。

伐採後のスカイプロット

伐採後の周辺写真

伐採前後の時系列図
図3 電子基準点「千丁」の伐採後のスカイプロット(上)、伐採後の周辺写真(中)、伐採前後の時系列図(2ヶ月間)(下)