GEONETを活用した測量

測量の基準点としての電子基準点

 GNSSからの測位信号を利用する測量のことを、GNSS測量といいます。全国に設置された電子基準点は、GNSS測量の基準点として、公共測量等に使用できます。通常、GNSS測量を行う際は、最低2つの観測点で同時に観測する必要があり、その片方を基準点標石等の座標の分かっている点(既知点)にGNSS測量機を設置する必要があります。しかし、電子基準点があることで、既知点の観測を電子基準点で代替できるため、作業や測量機器の配置を効率化することができます。
測量の基準点としての電子基準点

測量成果におけるGEONETの役割

 日本列島は、プレートの沈み込みや地震・火山活動に伴う地殻変動によって、その形が日々変化しています。一方、測量成果や地図上の位置は、過去のある時点(元期)における位置を表しています。このため、その後に測量する任意の時点(今期)での位置は、時間経過とともにズレてしまいます。
 国土地理院では電子基準点の日々の座標値の変化を用いて,元期と今期の差を補正し現在の測量結果を測量成果や地図に整合させて、様々な用途に利用できるようにするための仕組みを提供しています。この仕組みについて詳しくは、地殻変動補正のページを御覧ください。

GEONETがとらえた地殻変動

 日本周辺はプレートの沈み込みや、火山活動、地震に伴う地殻変動(地球内部の活動によって生じる地表の変形・変位)が活発であり、それに伴う災害も発生しています。 国土地理院は全国を網羅する電子基準点の観測データを解析することで、この変動を監視しています。観測された地殻変動は、地震のメカニズムの解明や火山活動の予測等に活用されるとともに、電子基準点の座標値の改定を通じて国土地理院の地図の更新に反映されます。そして、これらを元に民間企業のカーナビ用、Web用の地図が更新され、被災地の復興等に役立てられています。
 日本の地殻変動について詳しくは、日本列島の地殻変動のページを御覧ください。

電子基準点リアルタイム解析システム REGARD(リガード)

 国土地理院では、地震発生時の地殻変動の即時把握や地震規模の即時推定を目的として、電子基準点リアルタイム解析システムを運用しています。このシステムは、REGARD(Real-time GEONET Analysis system for Rapid Deformation monitoring)と呼ばれ、電子基準点の観測データをリアルタイムに解析し、得られた地震時地殻変動から巨大地震の規模(M:マグニチュー ド)等をわずか数分で推定します。推定された地震の地殻変動と規模の情報は、政府機関における初動対応に活用されています。また、今後は鉄道の運行計画策定への活用を目指し、情報提供を開始する予定です。
平成 23 年東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0)の検証結果

平成 23 年東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0)の検証結果: 地震発生時に即時に地殻変動を推定し、地震の規模を推定します。


さまざまな分野でのGEONETの利活用

リアルタイム高精度測位に不可欠な電子基準点

 GNSS衛星からの測位信号には電離圏や対流圏での信号遅延等、測位に影響を及ぼす誤差要因が含まれていますが、電子基準点のリアルタイムデータから推定される補正情報を用いることで誤差を補正し、より高精度なリアルタイム測位が可能になります。この補正情報は、位置情報サービス事業者から配信されているほか、2018年11月から準天頂衛星システム「みちびき」の衛星からも配信が開始されています。
 近年、このようなリアルタイムで高精度に位置を決定できる仕組みは、測量以外にも建設や農業等様々な分野で活用され、作業の効率化や人手不足の解消に貢献しています。このような高精度測位社会を支えるインフラとして、GEONETの重要性はますます高まっています。
リアルタイム高精度測位に不可欠な電子基準点

GEONETデータによる気象予報の精度改善

 GNSS衛星から出される電波が電子基準点に到達するまでに要する時間は、大気中に含まれる水蒸気の量が多くなるほど長くなるという性質があります。この性質を利用して、電子基準点の観測データから大気中の水蒸気の総量を推定し、気象予報の降水に関する予測の精度を向上させることができます。2009年10月28日から、気象庁が気象警報・注意報等の防災気象情報を発表する際の基礎資料となる数値予報モデルに、電子基準点の観測データが利用されています。