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地理院ホーム  > 研究開発  > 地理地殻活動研究センター  > 地理情報解析研究室  > 航空レーザ測量データを用いた樹高等のデータ作成 最終更新日:2015年2月1日

航空レーザ測量データを用いた樹高等のデータ作成

航空レーザ測量データを用いた樹高等のデータ作成

はじめに

 

本ページは、特別研究「航空レーザーデータを用いた土地の脆弱性に関する新たな土地被覆分類の研究(H23~25年度)を進める中で得られた樹高等のデータ作成手順をまとめたものです。

樹木の根は、表土を保持して表層崩壊を防ぐ効果があるとされています(阿部,1998 等)。根株の引き抜き抵抗力は根株直径と正の相関があり(上村ほか,2002;山場・佐野,2008 等)、胸高直径(根株直径と相関)は樹高と正の相関がある事がわかっています(島田,2011 等)。
従って、樹高は間接的に、根株の引き抜き強度を表していると考えられ、表層崩壊の研究を進めるにあたって、意味のあるパラメータと考えられます。

本特別研究(H23~25年度)では、2004年~2013年に撮影された、新潟県出雲崎地区、愛媛県新居浜地区、広島県庄原地区、山口県防府地区、熊本県阿蘇一の宮地区の航空レーザ測量データを用い、現地の樹高等の実測値と比較して、最適なデータ作成手順を検討しました。
 

 

国土交通省撮影の航空レーザ測量データの一般的なファイル構成

国土交通省関係機関が撮影した航空レーザ測量データは、国土基本図図郭の地図情報レベル2500を1ファイルとして、2015年2月現在、一般的に、下記のようなフォルダ構成で保存されています。

・*m_CSV、*m_DEM:メッシュ標高データ(CSV形式、lem形式)。アスタリスク(*)はメッシュ間隔。通常1~5m。
・ORIGINAL:ランダムポイントのオリジナルデータ(CSV形式)。
・GROUND:ランダムポイントのグラウンドデータ(CSV形式)。
・WATER:水部ポリゴン(shape形式)。
・PHOTO:簡易オルソ画像(ワールドファイル付のTIFF形式)。解像度は通常20~50cm。
  ※フォルダ構成は発注目的により異なっている場合がある。ファイル形式(括弧内)は、2015年2月現在、主流となっている形式。

樹高等、植生に関するデータを作成するためには、これらのうち、主にオリジナルデータを使用します。

オリジナルデータについて

CSV形式のオリジナルデータは、下記のような内容です。
行番号,X,Y,Z,コード

X・Y座標は平面直角座標系で、m単位で記載されています。
Zはm単位の標高値で、多くは、小数点以下2桁まで記載されています。
コードは基本的にパルス番号ですが、記載されていないデータもかなりあります。

注意点および補足

【本ページを参考として研究成果・報告書等を公表される場合は、URLと、下記の参考文献を引用してください。】
Junko IWAHASHI, Takaki OKATANI, Takayuki NAKANO, Mamoru KOARAI, and Kosei OTOI(2014):Landslide susceptibility analysis by terrain and vegetation attributes derived from pre-event LiDAR data: a case study of granitic mountain slopes in Hofu, Japan. INTERPRAENENT2014 Proceedings [全文(PDF:1.7MB)]
岡谷隆基・乙井康成・中埜貴元・小荒井 衛(2013): 新潟県出雲崎地区における航空レーザ計測データによる森林の3次元要素の抽出. 写真測量とリモートセンシング, vol.52, no.2, pp.56-68.
※なお、本ページによる手法(1~3)は、CSV形式の、比較的粗い航空レーザデータを想定したものです。
最新のウェーブフォームによるデータ、LAS形式のデータでは、また他の新たな手法が想定されます。

1.樹高データの作り方

1-1.DCM(Digital Canopy Model)の作成


DCMとDSMの違いを示した図
まず、オリジナルデータからDSM(Digital Surface Model)を作成し、地上標高値との引き算によってDCM(Digital Canopy Model)を作成します。詳細は下のフローチャートの通りです。

DCMデータ作成のフローチャート
 ※1 DSMデータの作成について詳しくはこちら

1-2.DCMの補正

樹高等のデータと比較したいイベントの発生時期に、航空レーザ測量の時期と乖離がある場合は、経年変化の補正が必要です。さらに、急斜面で斜上して成長する樹種もあるため、地形による補正も必要です。
補正済みDCMデータの作り方
 ※1 樹高成長曲線は、スギ・ヒノキ・コナラ等の樹種に付いて、都道府県の林業センターから公表されているケースが多い。
   Iwahashi et al.(2014)では、地位級は中庸と仮定して成長量を見積もった。資料が見つからない場合は近県のグラフを利用した。
   広葉樹はほとんど作成されていないが、同じ樹種の資料が見つからなければコナラのグラフ(椎茸ほだ木のため作成されている)を利用した。
   なお、厳密には個別の樹種と林齢から成長量を推定する必要がある。また、崩壊地との比較等で、トレンドが出れば良いのであれば成長量の補正は必要ない。
 ※2 斜面傾斜による樹高補正について詳しくはこちら

1-3.樹高データ作成

航空レーザ測量による樹高データは、点群密度が高い常緑針葉樹林のデータを除き、一般的には、個々の樹木の実測値とはあまり合いません。しかし、30m四方程度の範囲で平均値を取ると、相関が良くなります。
下図は新潟県出雲崎地区の例です(各方形区面積は1000m2)。
落葉樹林や、放棄され荒れているスギ林(方形区6)では、個々の樹高の実測値と推定値のばらつきが大きいですが(樹冠位置の誤差も含まれるため)、方形区単位の平均値は、概ね良い対応を示します。

木の高さと航空レーザによる推定値を比較した物
従って、樹高データは、下記のフローチャートの通り、30mメッシュの平均値として作成するのが適当と
考えられます。
補正済みDCMデータから木の高さの求め方
 ※1 厳密には手動で建物ポリゴンを作成、除去。簡易的にはDSM、人工衛星画像や環境省の1/2.5万植生分類図
    shapeファイル等を利用して市街地等の値を0とする。
 ※2 DCMが2mメッシュならばセルサイズ15x15の移動平均。

2.樹木疎密度データの作り方

2-1.DCM利用の場合

DCMデータを画像処理することによって、DCMのピークを抽出する事が可能です。
一般的な画像処理フィルタ(3×3最大値フィルタ)を用いて計算します(岡谷ほか,2013)。
理論的に、ウィンドウサイズ(解像度1mなら3m四方)を超える幅の樹冠のピークはすべて拾います。

DCMを画像処理することで求めたDCMのピーク

詳細は下のフローチャートの通りです。

ピークを求めるためのフローチャート

この手法の長所・短所は下記の通りです。
【長所】
・計算が速い。
・汎用のラスタ画像処理ソフトに機能がある。
・落葉期の広葉樹林でも、大まかな樹冠を抽出可能。
【短所】
・拾えるピークの数がウィンドウサイズ(計算範囲)の大きさに依存する(下図)。
ウィンドウサイズに依存することを示した図 

2-2.簡易オルソ画像利用の場合

国土交通省撮影の航空レーザ測量データには、多くの場合、付属のカメラで撮影された簡易オルソ画像も保存されています。
非常に条件の良いケースに限りますが、簡易オルソ画像からも樹木密度を求める事が可能です。

簡易オルソ画像から求めた樹冠範囲とその重心
解像度30cmのオルソ画像から求めた樹冠範囲およびその重心点(阿蘇一の宮地区)
※本研究ではAdobe PhotoshopとArcGIS Spatial Analystを使用

オルソ画像をグレイスケールに変換し、継ぎ目の補正やフィルタリングを行った後、階調を白黒反転して水文分析のツールで分水嶺を求める事によって、樹冠範囲を推定することができます(上図)。
詳細は下のフローチャートの通りです。

オルソでの樹冠密度の求め方

この手法の長所・短所は下記の通りです。
【長所】
・DCMから求める方法(2-1)より高解像度な画像を用いるため、より細い樹冠を識別できる。
【短所】
・直上から樹冠のはっきり見える樹木(スギ林等)を撮っている限られたケースでのみ計測可能。
・分水嶺を計算するためカラーの情報を落とすので、樹種が違う場合も、輝度の低下方向がなめらかに
 つながっていればひとまとめのポリゴンにされる。※カラー画像の閾値処理等を併用することによって解決可能と思われる
・落葉期の落葉樹は、オルソ画像からは樹冠範囲が求められない。

3.(仮称)根系強度指数データの作成

樹木の引き抜き強度は胸高直径÷樹間距離にも比例すると報告されています(栃本ほか,2010)。
樹間距離の二乗は樹木本数密度に反比例します。  したがって

根系強度の求め方
と推定できます。

樹高データと樹木疎密度データから、(仮称)根系強度指数データを求めるフローチャートは下図の通りです。

根系強度の求め方を示したフロー

下図は、山口県防府地区の2009年7月豪雨被害域について、発災前の2005年のLiDARデータから求めた(仮称)根系強度指数(横軸)と、実際に2009年7月豪雨で斜面崩壊が起きた割合(縦軸)を示したものです。このように、防府地区の(仮称)根系強度指数データは、崩壊地の分布と相関が見られます。さらに、防府地区では、傾斜・凹凸の地形量のみで崩壊地の多変量解析を行った結果より、(仮称)根系強度指数データを加えた方が、特に谷筋の急斜面で正答率が改善する事が分かっています(Iwahashi et al., 2014)。
山口県防府市の豪雨被害について
ただし、植生が斜面崩壊に及ぼす影響の大きさは、地形ほど絶対的なものではなく、表土の状態や崩壊の規模によって、すなわち地域や対象によって大きく異なると考えられます。 植生データを崩壊のアセスメントに使用するかどうかは、状況を考慮して選択する事になると考えられます。

4.参考文献

阿部和時(1998) 樹木根系の斜面崩壊防止機能, 森林科学, 22, 23-29.
Iwahashi, J., Okatani, T., Nakano, T., Koarai, M., and Otoi, K.(2014):Landslide susceptibility analysis by terrain and vegetation attributes derived from pre-event LiDAR data: a case study of granitic mountain slopes in Hofu, Japan. INTERPRAENENT2014 Proceedings [全文(PDF:1.7MB)]
岡谷隆基・乙井康成・中埜貴元・小荒井 衛(2013): 新潟県出雲崎地区における航空レーザ計測データによる森林の3次元要素の抽出. 写真測量とリモートセンシング, vol.52, no.2, pp.56-68.
島田博匡(2011):三重県の高齢人工林における胸高直径、樹高、樹冠幅の関係, 三重県林業研報, 3, 19-26.
栃本泰浩・山本育夫・星野久史(2010):六甲山系における樹木根系調査と斜面崩壊抑止効果の定量的評価.平成22年度近畿地方整備局研究発表会論文集. http://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2010/pdf05/01.pdf
上村巧・伊藤崇之・広部伸二・田中良明・毛綱昌弘・飯田富士雄(2002):小径木の根株強度について, 森林総合研究所研究報告, 1(3), 181-184.
山場淳史・佐野俊和(2008):根系引抜抵抗力による林野火災跡地植栽樹種の土壌緊縛作用の評価. 日緑工誌, 34(1),3-8.


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