地理院ホーム  > 広報誌  > 月刊GSIテクノニュース  > 月刊GSIテクノニュース No.166  

月刊GSIテクノニュース No.166

第 166 号          平成18年7月10日 発行
 主な記事

・スポットライト --- 湖沼湿原調査
・トピックス ----- 第4回日中測量・地図協力会議を開催 ほか

研究開発の動向

沖縄県中城村【なかぐすくそん】地すべりの地形的特徴について

はじめに  
 沖縄県中城村北上原地内で、6月10日(土)16時頃、大規模な地すべりが発生しました。国土交通省河川局砂防部によると、幅200m、長さ150mにわたって崩壊し、流動部の先端まで含めると長さは約450mに達し、比高100mを考えると見透し角は12.4°になります。移動土塊の末端は流動化し下方の集落に迫り、沖縄県等において土のうを置くなど必要な対策が採られています。今回の地すべりは、島尻層群に属する新第三系鮮新統の泥岩の分布域で発生しています。この泥岩は、風化に対する抵抗性が弱く、軟質化、土壌化しやすい性質を持っています。
 図-1は地すべり発生前、図-2は発生後の空中写真です。図-1には、図-2から判読した今回の地すべりの滑落崖(赤の破線)及び移動土塊と流動部の先端(白の破線)を重ねて示しています。

図-1 地すべり前の空中写真(国土地理院 昭和47年撮影)

図-1 地すべり前の空中写真(国土地理院 昭和47年撮影)

図-2 地すべり後の空中写真(国土地理院 平成18年6月21日撮影)

図-2 地すべり後の空中写真(国土地理院 平成18年6月21日撮影)
   
 図-3は、ソフトウェア「カシミール 3D」を使って、国土地理院の数値地図50mメッシュ(標高)に5万分の1地形分類図と今回の地すべりの範囲(赤線:滑落崖、白線:移動土塊及び流動土塊)を示したものです。この地形分類図には地すべり地形(滑落崖)が多数示されており、今回の地すべり発生場所はその一つと一致しています。つまり、今回の地すべりは、古い地すべりが再活動したものと考えられます。

図-3 今回の地すべり地周辺の鳥瞰図。

図-3 今回の地すべり地周辺の鳥瞰図。
 
沖縄県の土地分類基本調査(昭和58年)による5万分の1地形分類図「沖縄本島中南部地域」を重ねて表示した(カシミール3Dを使用)。紫色の崩壊地記号は、地すべり地形を示す。Pv:谷底低地、Hs:小起伏丘陵、Vs:丘陵上を刻む浅谷(盆状谷)、Pc:海岸低地。赤と白の線が今回の地すべりの位置。

  
図-4は、陸軍参謀本部が大正10年に発行した2万5千分の1地形図「泡瀬」の一部ですが、今回の地すべりとその南西に位置する地すべり地形の箇所が崩壊地の記号で記載されており、当時から、土砂移動の跡地と認識されていたことがうかがえます。
図-4 今回の地すべり地周辺の旧版地形図
凡例

図-4 今回の地すべり地周辺の旧版地形図
     縮尺 1:25,000(大正10年6月25日発行)

(地理地殻活動研究センター)

湖沼湿原調査

 
概要
 国土地理院は、昭和30年以来、琵琶湖を始めとする日本の主な湖沼を対象として湖沼調査を実施してきました。平成14年以降これを発展させ、湖沼・湿原の保全や、環境と調和した利用の促進に必要な基礎情報を整備・提供することを目的に湖沼湿原調査を実施しています。湖沼湿原調査では、湖沼の地形・底質・水中植物ならびに湿原とその周辺の地形及び土地利用の変化を調査し、報告書、地図(報告書付図)及びGISデータ(GISで扱える数値地理情報)を成果としてとりまとめています(図-1)。

図-1 調査実施済の湖沼・湿原等

図-1 調査実施済の湖沼・湿原等

 
北海道霧多布地区の湖沼湿原調査のとりまとめ
 平成15年から平成16年にかけては、北海道根釧台地南部に位置する霧多布きりたっぷ地区(霧多布湿原・火散布沼ひちりっぷぬま及びその周辺地域の約160km2)について調査し、今回以下の成果をとりまとめました。
1.湖沼調査(図-2)
  火散布沼(面積3.58km2)を対象に1万分の1湖沼図とGISデータを作成しました。この結果、次の点が明らかになりました。
  1)火散布沼の大半は、水深1m前後で、最大水深は5.7mであること
  2)底質は、中央部や南部の河口付近では砂で、周辺の湖岸近くには泥が分布していること
  3)水中植物は、アマモ、コアマモ群落が主体であること

図-2 火散布沼 湖沼図(一部)

図-2 火散布沼 湖沼図(一部)

 
2.土地利用調査(図-3)
  昭和26年前後、昭和56年前後及び平成12年前後の3時期の土地利用を調査し、5万分の1土地利用変化図と3時期のGISデータをとりまとめ、次の点が明らかになりました。
  1)調査地区の5割強を森林が占めること
  2)霧多布湿原を中心とする湿地の減少は、大半が昭和26年から昭和56年にかけて進行し、森林化、次いで都市化の割合が大きいこと

図-3 霧多布地区 土地利用図(一部)(一部)

図-3 霧多布地区 土地利用図(一部)
(1):昭和26年前後、(2):昭和56年前後、(3):平成12年前後、(4):(1)→(3)の変化図

 
3.地形調査(図-4)
  調査地区内の段丘、丘陵、低地、湖沼・湿原などの地形の分布や特徴を調査し、2万5千分の1地形分類図とGISデータを作成しました。

図-4 霧多布地区 地形分類図(一部)

図-4 霧多布地区 地形分類図(一部)

(地理調査部)

平成18年5月~6月の地殻変動

この間、全国を通じて、注目すべき地殻変動は特に見られませんでした。
 地殻変動の詳しい内容は、国土地理院ホームページ(http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/index.html)の「平成18年5月~6月の地殻変動について」を参照してください。 
 
 
 

トピックス

第4回日中測量・地図協力会議を開催

 国土地理院と中国国家測絵局は6月13日(火)、国土地理院において、第4回日中測量・地図協力会議を開催し、日本側からは熊谷参事官ほか4名、中国側からはルオ副局長ほか3名が出席しました。
 会議では、両機関の近年の重点業務等の紹介のあと、今後の技術協力の具体的内容が討議されました。日本側からは地球地図の応用に関する協力、アジア太平洋GIS基盤整備常置委員会(PCGIAP)に関する協力、ISO/TC211に関する活動の情報交換、NSDI(国土空間データ基盤)の現状と将来計画に関する情報交換を提案しました。中国側からはLBS(位置情報サービス)に関する協力、空間データ設計と管理に関する共同研究についての提案があり、これらの技術協力について推進する方向で、基本的な合意が得られました。
 第5回会議は、来年後半に中国で開催する予定です。

国土地理院研究評価委員会を開催

国土地理院は6月14日(水)、関東地方測量部において、平成18年度第1回国土地理院研究評価委員会(委員長:大森博雄東京大学大学院教授)を開催しました。
 本委員会は、国土地理院が実施する研究開発課題について、厳正な評価を得るために開催しているもので、委員は学識経験者及び有識者の計9名で構成されています。
 委員会では、「関東地方周辺における地殻変動特性に関する研究」他の新規特別研究経費による提案4課題についての事前評価が行われ、「より目的を明確にしながら進めるべき」、「実用化を早期に果たすべき」等の意見とともに「4課題とも研究を進めるべきである」という評価を得ました。また、研究課題全体については「各々の研究が、国土地理院の防災施策のどこに位置付けられるか明確にすることが必要」と講評を受けました。国土地理院では今後とも、国土地理院研究開発五箇年計画に沿った研究課題を推進していきます。
 研究評価委員会における主な意見は、国土地理院ホームページ(http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2006/0621.htm)に掲載しています。

学会等で発表

◇電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会
 6月21日・22日 宇宙航空研究開発機構(茨城県つくば市)
 ・藤原 智(測地部):衛星搭載SARによる地殻変動観測 -PALSARへの期待-
◇ISPRS Technical Commission VI Symposium“E-LEARNING AND THE NEXT STEPS FOR EDUCATION”
 6月27日~30日 東京大学駒場第2キャンパス(東京都目黒区)
 ・小清水 寛(地理調査部):APPLICATION OF GLOBAL GEOGRAPHIC FRAMEWORK DATA FOR EDUCATION -GLOBAL MAP-(地球地図の教育分野への適正事例)
◇MYRES 2(第2回地球科学若手研究者集会)
 7月2日~6日 イタリア ベルバニア市
 ・西村 卓也(地理地殻活動研究センター):Comparison of slip distribution of the 1952 and 2003 Tokachi-oki earthquakes estimated from the geodetic data.(測地データによる1952年と2003年十勝沖地震のすべり分布比較)
◇日本写真測量学会平成18年度年次学術講演会
 7月6日・7日 パシフィコ横浜(横浜市西区)
 ・笹川 啓(測図部):SPOT5ステレオ画像を用いた等高線図化の精度検証
 ・柴田 光博(同上):航空機搭載型マルチスペクトルスキャナによる都市熱環境調査
 ・小井土 今朝己(同上):Kuバンド航空機SAR画像による判読調査
 ・永山 透(地理調査部):ヒートアイランド現象の解明・対策に資する土地被覆整備の試み
 ・小荒井 衛(地理地殻活動研究センター):災害判読特性の視点から見た各種衛星画像の比較検証-パキスタン北部地震の事例-
 ・佐藤 浩(同上):航空レーザ測量データを用いた葉面積指数マッピングの試み
 ・佐藤 浩(同上):白神山地における航空ハイパースペクトルセンサを用いたブナとサワグルミの判別について
 ・長谷川 裕之(同上):LIDARデータを用いた建物と樹木の抽出と判別
 ・長谷川 裕之(同上):旧版地図・航空写真による地形変化(盛土・切土)の把握

Q&A

 正射写真(オルソ画像)とは何ですか?
一般的な空中写真は、被写体で反射した光がレンズ中心を直進して中心投影(図-1 左)されるため、地物の位置関係には必然的に歪みが生じます。これに対し、正射写真は、数値地形モデル等を用いて、空中写真の画像を正射投影(図-1 右)の位置に再配列し、図形的な歪みを除去したものです。そのため、地図と重ね合わせた利用が可能となります。

図-1 中心投影(左)と正射投影(右)

図-1 中心投影(左)と正射投影(右)


図-2 空中写真(左)と正射写真(右)

図-2 空中写真(左)と正射写真(右)
編集: 月刊GSIテクノニュース編集委員会
発行: 国土交通省 国土地理院 企画部
〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
連絡先: 企画部 企画調整課 研究調整係
Tel 029-864-4584 Fax 029-864-1658
e-mail kenkyu@gsi.go.jp

ページトップへ


サイトマップ