地理院ホーム  > 広報誌  > 月刊GSIテクノニュース バックナンバー  > 月刊GSIテクノニュース No.71  

月刊GSIテクノニュース No.71

第 71 号        平成10年 8月10日 発行

主な記事 

研究開発の動向---測地成果2000 -世界共通の経緯度決定に向けて-

つくば便り------「江戸切絵図」展を開催

「岩手山の火山活動に関する緊急研究」の実施決定

7月23日、国土地理院を含む 4省庁 4機関が共同で行う平成10年度科学技術振興調整費による「岩手山の火山活動に関する緊急研究」の実施が決定した。
 本年2月から岩手山直下を震源とする地震活動が活発となり、6月末には低周波の地震および微動が観測され、盛岡地方気象台から臨時火山情報が発表された。地下のマグマや熱水の動きの詳細を把握し、活動の推移を推定するとともに、これまで噴火に至らない段階からの基礎的データの取得事例がほとんどないことから、噴火予知研究の貴重なデータを得るために、観測を強化する必要があることから本緊急研究が行われることになった。
 国土地理院は、太陽電池および衛星通信を用いたGPS連続観測システムを山頂部および山腹部に設置するとともに、APS(測角・測距自動連続観測システム)を用いてGPS観測の補完を行い、火山変動のリモート観測を行う。また、地下でのマグマの供給量の変化を捉えるために、山体近くでFG 5 絶対重力計による絶対重力観測を繰り返し行う。

岩手山周辺のカラー航空写真を撮影・提供

国土地理院では、岩手山における火山活動の活発化に対応して、地元をはじめ関係各機関における防災対策用資料とするため、7月14日から18日にかけて岩手山およびその周辺地域約800km2について、縮尺約3万分1カラー航空写真(11コース、145枚)を撮影した。 これらの航空写真は、7月28日から(財)日本地図センターにおいて一般販売を行っているほか、本院、関東地方測量部、東北地方測量部の3ヶ所で閲覧・公開している。

アジア太平洋測地ネットワークのワークショップへ出席

JICA集団研修・一般特設「環境地図」コースの閉講式が8月6日に行われ、野々村院長より各研修員に修了証書が授与された。
 この研修は6月1日より、約2ヶ月間にわたり国土地理院で実施したもので、バングラデシュ、ブラジル、エストニア、フィジー、インドネシア、パラオ、フィリピンの7ヶ国7名が、GISやリモートセンシングについての講義・実習を通じて技術の修得を行うとともに、地球地図についての理解を深めてきた。
 また、閉講式に先立ち、同日、研修員によるテクニカルレポートの発表が多数の国土地理院職員の参加のもとに行われた。レポートは、地球地図について得た知識をもとにしたもので、各研修員の努力の跡がうかがえるものであった。研修員の今後の活躍が期待される。

JICA集団研修「環境地図」コースが閉講

JICA集団研修・一般特設「環境地図」コースの閉講式が8月6日に行われ、野々村院長より各研修員に修了証書が授与された。
 この研修は6月1日より、約2ヶ月間にわたり国土地理院で実施したもので、バングラデシュ、ブラジル、エストニア、フィジー、インドネシア、パラオ、フィリピンの7ヶ国7名が、GISやリモートセンシングについての講義・実習を通じて技術の修得を行うとともに、地球地図についての理解を深めてきた。
 また、閉講式に先立ち、同日、研修員によるテクニカルレポートの発表が多数の国土地理院職員の参加のもとに行われた。レポートは、地球地図について得た知識をもとにしたもので、各研修員の努力の跡がうかがえるものであった。研修員の今後の活躍が期待される。
 
  

 

測地成果2000 -世界共通の経緯度決定に向けて-

はじめに 
国土地理院では、21世紀に対応できる新しい測地基準系(以下、測地系という)として、電子基準点を骨格とした日本測地系の再構築を行っている。この新たな測地系を「測地成果2000」と呼んで、西暦2000年に公表することを目標に準備を進めている。

 
 
1 国ごとに定められた測地系
緯度・経度の決め方は世界共通ではないため、国境を接する地点では、それぞれの国によって値が異なり、不連続になることがある。これは、緯度・経度を決めるための基準である測地系が、歴史的にそれぞれの国、地域により独自に定められてきたためである。

 
 
2 日本測地系と世界測地系
日本測地系における緯度・経度の補正量
図-1 日本測地系における緯度・経度の補正量

世界測地系と日本測地系の違い
図-2 世界測地系と日本測地系の違い

 

 

 日本では、明治政府によって、全国の正確な5万分1地形図を作成するため、東京都麻布台において天文観測によって緯度・経度を決定し、ここを出発点として全国の基準点を整備した。測量結果は、当時採用された地球楕円体であるベッセル楕円体上に投影して、全国の基準点の緯度・経度を定めた。これを「日本測地系」と呼んで、現在も使用している。
 これに対し、近年、人工衛星を利用した地球全体の観測に基づき、世界が共通に適用できる測地系が構築されてきた。GPSで採用しているWGS-84は、米国が構築した世界測地系の一つである。これよりもさらに精度のよい世界測地系として、ITRF(地球基準座標系)が1987年にIERS(国際地球回転観測事業)によって構築された。このような経緯により、現在は二つの世界測地系が存在しているが、両者は実用上同一と見なして差し支えないため、今後はITRFに準拠しようというのが世界的な動向である。
 この世界測地系と日本測地系にはズレがある。東京付近のある地点の世界測地系における緯度・経度の値を求めるためには、日本測地系における緯度の数値に約+12秒、経度の数値に約-12秒の補正量を加える必要がある。この補正量は、図-1のように地域によって異なる。また、図-2のように等緯度、等経度の目盛線に着目すると、世界測地系の目盛線は日本測地系の目盛線に対して南東方向へ約 450 メートル動くことになる。このズレの量も地域によって異なる。
 このようなズレは、測量の基準の決め方が現代の決め方と異なることと、現代の測量精度が飛躍的に向上したために、この差異が見えるようになったということであり、我が国だけでなく、世界中の全ての国が直面している問題である。
3 日本測地系のひずみ
日本測地系のひずみ
図-3 日本測地系のひずみ
日本測地系と世界測地系の差異は、GPSなどの測量機器の発達があって明らかになってきたが、このほかに、日本の三角網の持つひずみも明らかになってきた。
 明治時代の測量は、主に経緯儀を用いた角観測と基線尺を用いた距離測定により行われ、計算はそろばんと対数表を使った。日本測地系は、当時の測量方法と計算が基になって構築されているため、現在の高精度測量の結果と比較すると、ひずみが見えてきた。このひずみには、測量や計算の誤差のほかに、明治以来約100年間の地殻変動の影響も加わっている。図-3では、日本測地系において、東京を固定した場合、札幌の位置が西へ約9メートルひずみ、福岡の位置が南へ約4メートルひずんでいることを示している。

 
4 電子基準点網の構築  
一方、国土地理院は、GPSを利用した基準点網として、全国にわたる電子基準点網の構築を進めている。
電子基準点は1994年から運用を開始し、現在では約1000点が稼働しており、このデータは、毎日電話回線を介して国土地理院に集められて解析されている。解析結果からは、多くの地球科学的な現象が捉えられている。たとえば、従来は何カ月もかかって初めて捉えることができた地震後の地殻変動が、地震発生の数日後にはより高い精度で捉えられるようになった。また、日本列島がプレート運動により年間数センチメートルの割合で動いている様子も見事に捉えられている。

 
5 測地成果2000
高精度な宇宙測地技術により、日本測地系と世界測地系の差異や日本測地系のひずみが明らかになってきた。一方、位置情報を扱う新技術としてGPSとGIS(地理情報システム)が急速に普及する兆しを見せている。GPSとGISにより位置情報を効果的に処理するためには、位置の基準に対して、世界測地系と整合していること、広域にわたって高精度であること、という二つの条件が要求される。日本測地系は、GPS/GIS時代に要求されるこの条件を満たしていない。従って、GPSとGISが爆発的に利用される前のできるだけ早い時期に、世界測地系と完全に整合し、ひずみのない精度の高い成果である測地成果2000を構築し、円滑に適用できるようにする必要がある。
 現在、測地成果2000は計算作業中であり、1999年中に完了する予定である。また、測地系の変更には測量法の改正が必要となるため、2000年の公表にあわせて、法改正の準備を進めている。

6 測地成果2000により何が変わるか
 測地成果2000が適用されると、自治体などが設置した既存の基準点について、位置座標を測地成果2000に整合するように変換する必要がある。
 新規に地図を作成する際には、新しい座標を表記することとなる。既存の地図で、新規に作成した地図と接合や照合をする場合は、座標値を新しいものに改訂する必要があるが、座標値が変わっても図形が変わるほどの大きな変化は生じないため、地図の内容まで変える必要はない。
 GISなどに用いられる地図データを作成する際は、新しい座標値による表示となる。新規データを既存のデータベースとあわせて利用する場合は、両者の座標値の整合性をとるために、既存データベースの座標変換が必要である。
 土地の面積表示は、測地系が変わると計算上は面積値も変化する。しかし、変化は10万分 1 程度で台帳や登記簿に記載されている面積値に含まれる測量誤差の範囲内であり、既存の面積値を書き換える必要はない。
 このほか、法令や告示などでの位置の表示、各地の緯度・経度の表示のあるモニュメントなども、測地成果2000による表示への変更やモニュメントの移転が必要になる場合がある。
 このように、現行成果から測地成果2000へ移行するには、緯度・経度の座標値の変換などの負担が生じるが、一度測地成果2000へ移行すれば、世界標準に準拠していること、高精度であることからさまざまなメリットが得られる。
 たとえば、GPSによる測位結果はそのまま地図あるいはGIS上に表示できるようになる。国家基準点の位置精度及び信頼性が向上するため、公共測量などにおいて国家基準点の利用が促進されるようになる。都市基準点網との間で生じていたギャップも解消される。電子基準点を測量の既知点として利用することにより、測量作業の効率化が図られ、測量コストの縮減が期待される。 
 
おわりに
測地成果2000が導入されると、測量は非常に高精度で効率的に行われるようになる。21世紀には、測地成果2000と電子基準点は、世界標準に基づく位置決定を行うためのインフラストラクチャとしての機能を果たすことが期待される。

  

「江戸切絵図」展を開催

国土地理院では、8月5日から28日までの間、地図と測量の科学館特別展示室において、当院所蔵の古地図の中から江戸に関する絵図を選び、企画展示「江戸切絵図展」を開催している。
 「江戸切絵図」は、江戸末期(19世紀)に作られた市街図で、当時の大名屋敷や武家屋敷、番所などのほか、著名な料理屋、蕎麦屋などの最新情報を盛り込んだ詳細なガイドマップである。
 江戸切絵図には、近吾堂版と近鱗堂版の二種類があり、両者から改訂版が競い合って次々に出版され、明治に至るまで広く使われていた。
 淡い色合いの絵図と色鮮やかな絵図の違いもあり、地図のすばらしさ、おもしろさなど、地図が私たちの生活に広く利用されてきたことを知って頂きたいと期待している。

IGARSS'98へ参加

 1998年国際地球科学及びリモートセンシングシンポジウム(IGARSS'98)が、7月 6 日から10日まで、米国シアトルで開催され、国土地理院から宇宙測地研究室の中川研究員が参加した。
 このシンポジウムは、地球科学的な面から見たリモートセンシングについての学際的シンポジウムで、例年世界中から多くの研究者が参加している。本年は、98の口頭発表セッションとポスターセッションが設けられ、口頭、ポスターあわせて1,200あまりの発表が行われた。
 内容は、センサの工学的な側面から地球科学への応用まで多岐にわたり、特に近年注目を集めている合成開口レーダについては多くのセッションが持たれ、活発な発表、討論が行われた。中川研究員は、「『ふよう 1 号』L-バンド干渉SARによる地殻変動検出」の口頭発表を行った。

バングラデシュ国測量局地図作成機材整備計画基本設計調査団に参加

 国土地理院は、バングラデシュ人民共和国測量局(SOB)から要請のあった地図作成機材に関する無償資金協力について、要請内容の確認、必要性、妥当性などを調査するため、JICAの基本設計調査団の技術参与として、乙井地理第三課長補佐を 7 月13日から24日まで、同国に派遣した。
 同調査団は、SOBと要請内容に関する協議を行い、MINUTES OF DISCUSSION(M/D)をとりまとめた。

発表済み課題
◇国際写真測量リモートセンシング学会実時間画像取得及び動的解析に関する国際シンポジウム 6月2日~5日 函館市
・村上広史(企画部):航空機搭載レーザスキャナシステムの3次元計測精度と建物変化抽出への応用
◇都市の3次元・マルチメディアマッピングに関する国際ワークショップ 6月8日~9日 東京大学生産技術研究所
・村上広史(企画部):航空機搭載レーザスキャナシステムの都市地物の変化抽出の可能性
◇日本国際地図学会平成10年度定期大会 7月29日 日本大学資源科学部湘南校舎
・折笠幸平(測図部):数値地図2500を使用したGISソフトウェアの試作について
・安喰 靖(地理調査部):沿岸海域土地条件図「島原」における流れ山地形について
・丹羽俊二(地理調査部):日本の典型的な地形一覧について
・星野 実(地理調査部):1997年5月八幡平澄川地すべり災害地形分類図(1/2,000)について

 

発表予定の課題
◇国際写真測量リモートセンシング学会GIS-ビジョンと応用の間-に関する国際シンポジウム 9月7日~10日
・村上広史(企画部):航空機搭載レーザスキャナシステムの建物変化抽出及びオルソ画像作成への応用
◇1998年度日本地理学会秋季学術大会 9月26日~28日 北海道大学
・黒木貴一(地理地殻活動研究センター):活断層起源の線状模型と断層の位置関係の検討
※発表者は、登壇者のみを記載し、6月1日以降の発表を掲載

 

○来 院
 7月23日    田中正章建設大学校校長
 8月12~15日 Dr.Richard E Witmer(米国内務省地質調査所地図局長)

○行事予定
 8月17日 第129回地震予知連絡会
 8月24日 平成10年度JICA集団研修「測量技術2)」開講式
 8月25日 UJNR国内委員会
 9月 1日 防災訓練・災害対策訓練
 9月17日 官民連帯共同研究GIS交換標準作業部会

○海外出張
 乙井康成(地理調査部):8月30日~9月10日 ハンガリー 広域国際環境防災地理情報整備に関する交流育成
 政春尋志(地理地殻活動研究センター):9月6日~12日 マレイシア 生物多様性データベースの構築についての研究交流
 黒木貴一(地理地殻活動研究センター):同 上

 

 編集 国土地理院ニュースレター編集委員会
 発行 建設省国土地理院企画部
     〒305 茨城県つくば市北郷1番
     TEL 0298-64-1111 FAX 0298-64-1658
     連絡先:企画調整課 研究調整係

ページトップへ


サイトマップ