衛星画像、空中写真の判読等による1999年台湾集集地震に伴う地形変化の抽出

Geomorphological Phenomena with Chichi(Taiwan) Earthquake in 1999
based on Satellite Image and Airphoto Interpretation

地理調査部  坂井尚登・小田切聡子・関崎賢一・安藤暁史
Geographic Department Hisato SAKAI, Satoko ODAGIRI, Kenichi SEKIZAKI, Akifumi ANDO
企画部  根本正美
Planning Department Masami NEMOTO
横浜国立大学名誉教授  太田陽子
Yokohama National University, Professor Emeritus Yoko OTA

要旨

 1999年台湾集集(チーチー)地震において地形学的影響が及んだ台湾中部地域を対象に、衛星画像(SPOT等)、数値標高モデル及び空中写真を活用してリニアメント抽出や崩壊地判読などを試みた。また、鳥瞰図、陰影図、傾斜量図など各種画像を作成し、判読の支援資料としてその効果を検討した。地震後の衛星画像を用いた立体視判読により、車籠埔(シャロンポー)断層などの活断層と思われるリニアメント、大規模崩壊、表層崩壊を明瞭に抽出・把握できたが、地震断層の抽出は困難であった。地震断層については、地震以前の空中写真判読等により、草屯地区において、1/2.5万の縮尺の詳細活断層分布図を作成して検討した結果、今回の地震断層は、既存の活断層上に生じ、変位の累積も見られることが明らかになった。また、草嶺の大規模崩壊地における崩壊前後の精密な地形分類図(1/2.5万)をそれぞれ作成し、崩壊発生時の時系列な段階に対応した地形変化の詳細を明らかにした。
 以上のことから、台湾集集地震クラスの地震に関する地形解析に対して、SPOTクラスの地上分解能を持つ衛星画像が効果的であり、さらに、数値標高モデル(=DEM:Digital Elevation Model、以下、「DEM」という。)を併用することでその効果が向上することもわかった。
 これらの衛星データは、踏査が困難な人口が少ない地域や、政治経済的な理由により空中写真等の情報の入手が期待できない地域での地震発生予測及び大地震発生に際して、活断層分布の把握、地震による地形変化の把握等を行うための有効な手段になると考えられる。今後は、より解像度の高い衛星データの利用が可能となることから、地震断層の抽出を含め、いっそう有効性が高まることが期待できる。