国土地理院時報(1996,85集)目次

日本の測地測量における統合処理の考察(II)

Study of Combinied Adjustment in Geodetic Network of japan(2)

 地殻調査部  中根勝見

 Crustal Dynamics Depaartment Katsumi NAKANE

 企画部  黒石裕樹

 Planninng Departoment Yuki KUROISHI


可搬型絶対重力形FG5による南極における重力測定

Gravity Measurements with the Portable Absolute Gravimeter FG5 at Antarrctica

測地部  山本宏章

Geodetic Department   Hiroaki YAMAMOTO


要旨


1994年11月に日本を出発した第36次日本南極地域観測隊に参加し、南極・昭和基地において第3回目となる絶対重力測定を行った。
測定に使用したのは国土地理院の絶対重力計の一つであるFG5絶対重力計(FG5#104/GSI 1994.09)である。
測定は昭和基地にある重力計室内で、1995年1月20日から2月11日の間に実施した。
ハードウエアに大きなトラブルが発生したが、修理のうえ429時間の連続測定に成功した。
昭和基地は地盤の振動が少なく、数多くの良質のデータを取得して、10-9精度で重力値を決定することができた。
同時に振幅±0.005mgal(1mgal=10-5m/s-2)の海洋潮汐による荷重変化に対応すると考えられる重力の時間変化を検出することに成功した。
これらは極地域では初めての絶対重力連続測定である。


GPS異機種間解析における系統誤差の補正方法について

Calibration of error in solutions of baselines observed with mixed GPS receiver types

 測地部  越智久巳一・畑中雄樹

 Geodetic Department   Kumikazu OCHI,Yuki HATANAKA


要旨

異機種間の解析での問題点を調べるため、調査実験を行った。
その結果、異機種間の解析ではL1解及びL2解の水平方向は数mm以内で一致するが、鉛直方向は系統的なオフセットが生じ、特に大気遅延量を推定する際にそのオフセット量も大きく変化することが解った。
原因を追求するため、シュミレーションを行い、位相中心のずれやアンテナの位相パターンの違いがオフセットを生じる重要な原因であることを確認した。
オフセットは各位相の解によって異なっているが、基線長には依存せず、異機種の組合せによってほぼ定量(一定時間以上の観測)で、その組合せの間には、整合性がある。
この特徴を利用し、試験観測からオフセット分を補正量として求めて、解析結果に補正量を加えることによるキャリブレーションが可能である。
ただし、解のバラツキを小さくするためにはアンテナの位相パターン全体の特性を反映させるためにできるだけ長い観測時間を必要とする。

ディジタルマッピングデータの自治体業務への利用に関する研究

Researches on the Usability of Digital Mapping Data for Local Governments

 測図部  鵜野沢茂・松本栄

 Topographic Department  Sigeru UNOZAWA,Sakae MATSUMOTO

 地図部  寺林敏之

 Cartographic Department  Toshiyuki TERABAYASHI


要旨

近年GISは地方自治体を中心として浸透しつつあるが、必要不可欠な数値地図データについてはユーザー側から様々な要望がある。
これらの要望を明らかにするため、GIS導入を予定している地方自治体への聞き取り調査及びGISに関する文献調査等を通じて、必要な数値地図データのデータ項目、データ構造、精度等について検討した。
また一般に提供されている数値地図データとして数値地図1000(総合)を例にとり、ユーザに対するアンケート調査を行った。
この結果、国土基本図の表示事項のうちで、地方自治体の業務で必要とされるデータ項目は、建物、道路、行政界等の基本的な項目に限られることがわかった。
一方、数値地図データ作成の主要な方法であるディジタルマッピングについては、国土地理院がデータフォーマットを定めるなどして標準化がしてきたが、その普及は必ずしも順調ではない。
この原因の一つとして、アナログ法に比べて経費が割高となっていることが挙げられる。
そこで数値化する項目を必要性の高いものに絞って経費削減を図るハイブリッド法を考案した。
これは、ディジタルマッピングにアナログ図化やアナログ編集を部分的に取り入れる方法で、作業時間の短縮を意図したのもである。
ハイブリッド法の有効性を検証するため、地方自治体の都市計画業務を想定して、データ作成実験及びデータ加工実験を行った。
その結果、ハイブリッド法が現状においては有効なこと、基本項目のみ数値化で都市計画業務には十分対応可能できることが確認された。
また、ディジタルマッピングの普及を図るため、地方自治体の業務を想定したモデルとして、簡易型ディジタルマッピング表示・検索システムを開発した。

数値地図情報を利用した触地図作成システムの開発について( II )

Development of Producing System of Tactile Map using Digital Geographic Data( II )

 地図部  大塚義則・藤咲淳一

 Cartographic Department  Yoshinori OHTSUKA,Junichi FUJISAKI

 測図部  中島最郎

 Topographic Department  Sairou NAKAJIMA


要旨

現在、視覚障害者用地図(以下、触地図という)の作成は、その殆どがハンドメイドであり、作成される種類、範囲、部数は非常に限られたものである。また提供は一部の自治体、社会福祉団体、ボランティアに依存しており、個人で利用できる触地図は全くないといってよい。
そこで地図部では、パソコンの普及と数値地図データの整備が進む今日、これらを利用した触地図を作成するシステム(以下、触地図作成システムという)の研究を平成5年度から始めた(時報82集参照)。
具体的には、視覚障害者を取り巻く現状及び触地図のニーズなどに、関する実態調査を実施し、有識者による触地図作成システム図式検討委員会(以下、委員会という)を設置して、現在あげられる触地図に関する様々な問題点、特に縮尺概念、触地図記号、提供方法等について様々な角度から検討を頂き、ほぼ解消できる目途がついた。

地球科学技術研究のための共通基本地図の作成研究

Studies for Production of Fundamental Base Map for Earth Science and Technology Researches

 地図部  村上真幸・田中庸夫・山田義隆

 Cartographic Department  Masaki MURAKAMI,Tsuneo TANAKA,Yoshitaka YAMADA

 測図部  政春尋志・勝田啓介・大塚健二・田村栄一

 Topographic Department  Hirosi MASAHARU,Keisuke KATUTA,Kenji OTSUKA,Eiichi TAMURA

 地理調査部  村上広史

 Geographic Department  Hiroshi MURAKAMI


要旨

科学技術庁科学技術振興調整費グローバル・リサーチ・ネットワーク制度による「地球科学技術研究のための基礎的データセット作成研究」の概要を説明するとともに、そのなかで国土地理院が担当したJERS-1/OPSデータの前方視・直下視から5秒メッシュのディジタル標高モデル作成手法の研究開発及び Digital Chart of the Worldデータベースを対象とした地物編集ソフトウェアに関する研究開発について報告する。

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