50mメッシュ標高データの精度検証に関する研究

Verification of the 50m grid DEM data's accuracy

地図部  下山泰志・飯田 繁・河瀬和重
Cartographic Department Yasushi SHIMOYAMA, Shigeru IIDA, Kazushige KAWASE
測図部  松本浩明
Topographic Department Hiroaki MATSUMOTO


本文[PDF:615KB]

要 旨

 数値地図50mメッシュ標高データの精度は、理論的には7m程度であると推定されているが、実証的には明らかにされていなかった。本稿は、大縮尺の都市計画図及び解析図化機から取得した標高データと数値地図標高データとを比較することで、数値地図の精度を実証的に明らかにしたものである。その結果、実際の精度は理論的に求められた精度より良好であることが明らかになった。
 また、数値化された空中写真のステレオマッチングによるデータ整備の可能性を検討するため、数値地図データとステレオマッチングにより取得された標高値との比較を行った。その結果、植生や構造物のない地域ではステレオマッチングにより取得された標高データも実用上十分であることがわかった。
 今後は、メッシュ毎の比較だけではなく、傾斜方向の違いや平坦地における起伏等を考慮した評価方法を検討していく必要があろう。
    目  次

主な図

1.はじめに
2.標高データ作成方法の概要
3.精度検証方法の考え方
4.1/2,500都市計画図から作成した標高データとの比較
  4.1 都市計画図からの標高データ作成
  4.2 比較方法
  4.3 比較結果
5.解析図化機から取得された標高データとの比較
  5.1 標高値による比較結果
  5.2 傾斜量による比較結果
  5.3 土地被覆による比較結果
6.ステレオマッチングによる標高値との比較
  6.1 数値地図データとステレオマッチングによるデータの比較結果
  6.2 解析図化機による取得データとステレオマッチングによる標高データの比較結果
7.比較結果の考察
  7.1 大縮尺地形図との比較
  7.2 解析図化機による標高値との比較
8.結論
謝辞
参考文献

1.はじめに

 国土地理院では,平成5年6月より数値地図50mメッシュ標高データを刊行しており,平成7年7月現  在,東北・関東地域の全域,中部・近畿地方の一部等約 40%が刊行済である。
 この標高データの精度は数値化の手法等から理論的に推定することが可能ではある(村上,1995)が,10m(場所によっては5mあるいは2.5m)間隔で描写されている等高線から算出した標高データが,実際の地形とどの程度の誤差があるかについては実証的には十分明らかにされていなかった。
 そこで本研究では,50mメッシュ標高データを1/2,500都市計画図から取得した標高データ及び空中写真を図化機にかけて取得した標高データと比較し,精度を実証的に把握した。また,数値化された空中写真からステレオマッチングにより自動的に取得された標高データと比較することで,ステレオマッチングによるデータ整備の可能性を検討した。

2.標高データ作成方法の概要

 50mメッシュ標高データ作成方法の概要は次の通りである。
a.計測基図の作成
1/25,000地形図の等高線(褐)版のネガフィルム上であらかじめ標高数値・崖記号等を削除した上で,ホワイトベースに焼き付けた計測基図を作成する。
b.スキャナによる読み取り
計測基図を50μm以下のピッチのスキャナで読み込み,数値化する。
c.ベクタ化
スキャナで読み込んだデータについてまず輪郭線抽出を行う。その輪郭線から,等高線の中心線をベクタデータとして自動的に取得する。
d.編集
中心線がうまく得られなかった部分を修正したり,崖記号の削除等で中心線が発生しなかった部分を対話的に接続する。
e.標高データの算出(社会調査研究所,1993)
標高データを約50mに区切られたメッシュの格子点ごとに10cm単位で算出する。
 算出方法は,
 1)格子点同士を結ぶ線分(縦・横・斜めの8方向)と中心線の交点を求める。
 2)補間の対象となる各格子点から,上記8方向についてそれぞれ最大2メッシュまでの中心線との交差位置を記録する。
 3)各方向及びその反対方向の最も近接した中心線各1点の組み合わせのうち,最大傾斜をもつ方向を決定する。
   a)(最大傾斜方向が見つかった場合)
   最大傾斜方向の4点の関係から,最適な補間方法を,1次補間・エルミー
   ト補間・スプライン補間の中から選択し,当該格子点の標高値を補間する。
   b)(最大傾斜方向が見つからなかった場合)
   近傍を最小2乗法によって2次曲面で近似して補間する。
f.点検・修正
算出された標高データから等高線を発生させ,計測基図と重ね合わせることにより,不合理な標高値をもつメッシュがないかどうかを点検し,必要に応じて修正する。

3.精度検証方法の考え方

 50m標高データの精度は,地形図の高さの精度を5m以内,スキャナ読み取りの際の平面位置の誤差による高さの誤差を1.25m以内,標高データ作成ルーチンに伴う誤差を5m以内と仮定した場合,7.2m以内であると考えられる(村上,1995) 。しかし,実際のところどの程度の精度を有するかは,必ずしも明確ではない。
 そこで本研究では,次の2つの方法により標高データの精度を実証的に求めた。
1)1/2,500都市計画図から作成した標高データとの比較
1/25,000地形図の標高の精度は5m以内である一方,1/2,500都市計画図の精度は1m以内であり,より正確なデータが得られる。そこで,1/2,500都市計画図の等高線から1/25,000地形図と同様な方法で標高データを求め,既成の数値地図標高データと比較する。
2)図化機を用いて取得された標高データとの比較
地形図だけを用いた評価では,細かな地形の起伏が十分反映されない。また,同一のルーチンを用いて標高データを作成するため,等高線の形状が相似的である場合等は,ルーチンに伴う誤差が相殺され,見かけ上良好な精度となる可能性もある。
そこで,空中写真及び解析図化機を用いて50mメッシュの各点における標高を直接取得し,50mメッシュ標高データと比較することで,精度を把握する。さらに,ステレオマッチングにより得られた標高データと50mメッシュ標高データ及び解析図化機により取得した標高データを比較し,ステレオマッチングによる標高取得時の精度を把握する。
 なお,50mメッシュ標高データ及びそれを評価するための都市計画図の等高線データと解析図化機のデータは,いずれも空中写真測量により得られる。今回は,検証に同一の空中写真を用いることができなかったため,各々のデータは標定結果に伴う誤差を有しているものと考えられるが,通常この誤差は数十cm~1m 程度であり,精度の検証に大きな影響はないと考えられる。

4.1/2,500都市計画図から作成した標高データとの比較

4.1 都市計画図からの標高データ作成

 比較に使用したデータは,名古屋市が平成3年に作成した1/2,500都市計画図で,同市がこれを数値化したデータである。このデータでは,1/25,000 地形図「名古屋南部」(名古屋2号-1,メッシュコード5236-57)に該当する全域が網羅されており,この範囲を比較対象地域とした。
 標高データ作成の方法は,基本的には50mメッシュ標高データと同じ方法であるが,特に以下の点に留意した。

1)データの接合と抽出
 都市計画図のデータから1/25,000地形図の範囲内の等高線のみのデータを抽出するため,あらかじめ1/2,500都市計画図49面分の全ての図葉の等高線データのみをマージさせた。また,都市計画図には,全ての情報が平面直角座標で格納されているため,1/25,000地形図の四隅の経緯度座標を平面直角座標に変換させて2次メッシュを正規化し,正規化領域に該当する等高線データのみを抽出した。
2)編集
 編集においては,同一のコンクリート被覆や,川の堤等に含まれる複数の等高線が重なりあっている ことから,これらを等高線の並びに合うようずらしたり,マージさせた都市計画図間の接合が合わない箇所を修正した。また,部分的にデータが抜けている箇所は,印刷図を参照し結線を行った。このため,名古屋市作成のものとは若干の差異が生じている( 図-1(164k))。
 1/25,000地形図から標高データを作成するにあたっては,図郭付近の精度を高めるため,隣接図の等高線データも参照している。しかし1/2,500都市計画図においては作成範囲が限定されており,この対象地域では隣接図が得られなかった。そのため,作成された標高データの図郭付近においては,多少の影響があると考えられる。

4.2 比較方法

 比較は以下に示す,較差の平均・較差の標準偏差・ヒストグラムを用いて行った。
 ただし,1/25,000地形図からの標高データについては,  a.ベクトルデータから算出しただけのもの。
 baのデータを地形図から判断して地形的に不自然な箇所(特に河口付近の埋め立て地等の人工地形の部分及び等高線の密度が非常に小さい平地部分)を修正したもの。 の,2種類と比較している。  1)較差の平均μ

1図葉40,000(200×200)点ごとのデータの差を加算し,その平均を算出したもの。ただし,1/25,000地形図の標高値:M,1/2・500都市計画図の標高値:Hとした。

 2)較差の標準偏差σ


 1図葉40,000(200×200)点ごとのデータの差の2乗を加算し,その平均から1)のデータを2乗した値を減算し,その平方根を算出したもの。  3)ヒストグラム
 1図葉40,000(200×200)点の差の値を,1mごとに分けたエリアに件数として加算したもの。ただし,±10m以上・以下のものは,それぞれ一括している。 4.3 比較結果(61k)  全般的に,都市計画図を真値とした場合の標高データの精度は非常に良好であった。まず,較差の平均については,abとも1/25,000 の方が約0.5m高くなっている。 図-2(165k)は 2.5m以上の較差がある地点を示したも のであり,全般的に平地部より丘陵部の較差が大きい。これは,平地部においては2.5mの補助曲線が描画され,かつ等高線間隔も比較的広いことから,大きな誤差が生じていないためである。一方,丘陵部においては,5~10mの等高線間隔となっていることで,線の描写位置が多少でも異なっていると,波及する値にもそれに比例して影響を及ぼしているためと考えられる。
 次に,較差の標準偏差については,abとも±1.7m以内に収まっている。これはヒストグラムを参照してもわかるように,平均値の部分を中心にかなり突出した曲線を描いている。
 また結果として,補間計算の生の標高値と,地形的に不自然な箇所を人間が手を加えたデータとの差は,この比較方法では現れなかった。

5.解析図化機から取得された標高データとの比較

 名古屋市における標高データは,高低差・傾斜量ともにあまり大きくなかったため,あるいは地形図どうしの比較であったため,良好な結果が得られたものと考えられる。そこで対象地域をかえ,1/25,000地形図「天城山」(横須賀15号-2・4,メッシュコード5239-20・21)の北東部分( 第VIII座標系の(-120800,54200),(-125200,56600)を対角点とする矩形領域)において,解析図化機を用いて標高データを取得し,数値地図データと比較することにした( 図-3(175k))。具体的には,数値地図50mメッシュの中心位置を 平面直角座標に変換し,解析図化機(WILD社製アビオリットBC2)にその座標値を入力してメスマークをその位置に合わせ,真値としての標高データを取得した。取得したデータは,東西40メッシュ分,南北90メッシュ分,計3600メッシュ分であり,各メッシュの土地被覆種別(森林・笹地,市街地,ゴルフ場・裸地・草地等)を同時に取得した。
 比較方法は数値地図データからこのデータを引いたものを標高値の較差として算出し,標高別,傾斜量別,及び土地被覆別に集計した。あわせて,数値地図と自動取得による標高値との比較も試みた。以下の図表では,平均・標準偏差の記述はそれぞれ較差のそれを示すものとし,単位はmとする。
 比較結果は,較差の分布が平均値を中心としたほぼ対称な形状をしている。全体の標準偏差は約3.7mで,5m(等高線間隔の半分)の範囲には収まっている。 5.1 標高値に よる比較結果(83k)  標高が100m以上の地域では較差の平均・標準偏差ともそれほどの差はないものの,標高が100m以下の平地では,較差の平均値が大きくなっている傾向がある。この理由として,平地では単位面積当たりの等高線の情報が少ないといった理由が考えられる。 5.2 傾斜量によ る比較結果(81k) この分類による集計結果では,傾斜量により,較差の平均値はさほど変わらないが,較差の標準偏差が傾斜量の増大に応じて大きくなっていることがわかる。これは,傾斜量が大きいほど,位置誤差が及ぼす標高値の誤差が大きくなることを示唆している。 5.3 土地被覆に よる比較結果(68k)  解析図化機による標高データの取得は目視で行うため,森林等では個人差による誤差が生じる可能性が ある。その確認を行うため土地被覆別の集計を行った。この結果,土地被覆別に大きな特徴は見られず,解析図化機による取得データと数値地図データとは大きな矛盾はないと考えられる。

6.ステレオマッチングによる標高値との比較

 50mメッシュ標高データは地形図がある地域でしか作成することができない。地形図がすぐに入手できない場合,すなわち開発等により限られた地域で地形が変化し,その標高データを迅速かつ効率的に修正する必要がある場合や,途上国等で新たに標高データを作成する場合には,数値化された空中写真からステレオマッチングにより自動的に標高値を計測する方法が有効である。
 そこで本研究では,5と同一の地域で,ステレオマッチングにより求められた標高値を数値地図データ及び解析図化機により取得された標高データと比較し,ステレオマッチングによる標高データ整備の可能性について検討した。
 なお,ステレオマッチングに用いたソフトウェアは,Stuttgart大学で開発されたMatch-T,ハードウェアはZeiss-Intergraph社製のPhotoscanである。 6.1 数値地図データとステレオマッチングによるデータの比較結果  比較にあたり,ステレオマッチングによるデータから数値地図データを引いたものを較差として算出した。 6.1.1 標高値 による比較結果(79k)  ステレオマッチングによる標高値の自動取得は,樹高や,構造物の屋根などを標高値として取得するため,どうしても較差が高めに出てしまうが,分布の形状は,そのかさ上げされた標高値を平均として,ほぼ対称形である。
 なお,標高値が400m以上の部分は精度が若干良いが,これは,ほとんどが大室山の低木の笹地で占められているためであると考えられる。 6.1.2 傾斜量に よる比較結果(76k)  傾斜量の違いによる較差の平均は有意な傾向は見られないが,標準偏差は傾斜量が大きくなるほど大きくなっている。 6.1.3 土地被覆 による比較結果(47k)  ステレオマッチングによる方法は,樹高や建物の高さを考慮して標高を取得するため,森林や市街地で は実際より高くなる傾向がある。一方,ゴルフ場等の平地では,ほとんど数値地図データと変わらず,標準偏差も小さい。 6.2 解析図化機による取得データとステレオマッチングによる標高データの比較結果  参考として,解析図化機による取得データとステレオマッチングによるデータとを比較した。
 比較にあたり,ステレオマッチングによるデータから解析図化機による取得データを引いたものを較差として算出した。 6.2.1 標高値 による比較結果(84k)  数値地図との比較の場合とほぼ同じ分布をしているが,標準偏差はやや小さくなっている。しかし,数値地図データと解析図化機のデータとの標準偏差よりは若干大きい。 6.2.2 傾斜量 による比較結果(76k)  傾斜量の増大により,標準偏差が大きくなるという特徴は数値地図と変わらないが,等高線の情報から標高値を得るのではなく,両方の方法とも空中写真から直接標高値を得るので,数値地図ほどこの特徴が顕著には現れないものと考えられる。 6.2.3 土地被 覆による比較結果(73k)  対称形の分布も,数値地図との比較の場合と殆ど変わらない。この結果から,ステレオマッチングでも,ゴルフ場・裸地・草値では,他の2種類の土地被覆に比べかなりの精度で標高値を取得できていることがわかる。

7.比較結果の考察

7.1 大縮尺地形図との比較  比較した結果,較差が生じる最大の原因は,等高線の位置が異なっている点である。較差で最大のものは20mを超えている。これは古墳や神社のある凸地で,1/25,000地形図上では盛土記号のみが描写されている箇所であった。しかも,高い地点に基準点(独立標高点)が無いことから,等高線が存在しておらず,平地として認識してしまったことに原因がある。また,他に較差の大きいものとしては,等高線が表示されていない川面,特に土手やコンクリート被覆によって等高線が,実際にどこに位置しているかが不明な箇所である。較差の分布図からもわかるように,較差の大きい部分が川に沿って現れているが,川面の標高は地形図には表示されていないことから,正確な高さは,実際には判断できない。これらを総合的に判断すると,いわば地形図による読み取りの方法の限界により誤差が生じているということができる。
 今回比較した図は,平地部の比率が大きく,等高線の位置誤差による標高誤差への寄与が少ないという恵まれた地形ではあったが,そのことを勘案しても,計算上明らかになっているものより,かなり良い精度に収まっているといえる。しかし,未修正と修正済とでは結果がそれほど変わっておらず,今回の比較方法では,人間が感じる地形の不自然さは,計算の上では現れにくいことがわかった。また比較結果が解析図化機で取得したデータと比較した場合より良い結果となったことは,都市計画図では細かい起伏がわからないこと,等高線から標高データを計算するという同一の方法をとっていることにより双方の誤差の発生過程に相関があり,誤差が相殺してしまっていること等の理由が考えられる。 7.2 解析図化機による標高値との比較  この比較方法においては,都市計画図との比較のものより,サンプル数が10分の1以下ではあったが,全般的な傾向は十分把握することができた。またこの比較結果と7.1の比較結果から,数値地図データの精度は,理論上よりも良好であるといえそうである。
 解析図化機で取得したデータ,数値地図データ,ステレオマッチングによるデータをそれぞれ 図-4(47k)図-5(45k)図-6(49k) (口絵参照)に示す。これらのデータは, 全般的に類似した傾向を示しているが,ステレオマッチングによるデータは,多少ノイズがあるように感じられる。また,数値地図データから解析図化機で取得したデータを引いたものを 図-7(55k) に,ステレオマッチングによるデータから数値 地図データを引いたものを 図-8(53k) に,ステレオマッチングによるデータから解析 図化機で取得したデータを引いたものを 図-9(53k) (口絵参照)に示す。図-7では ,5で述べた通り,傾斜が大きく,複雑に変化する山地で,誤差が大きくなっていることがわかる。また図-7が地形の特徴を反映しているのに比べ,図-8及び図-9では地形の特徴はあまり見られず,特に図-9では較差がほとんどランダムに発生するように見うけられた。そこで,解析図化機のデータに対する,数値地図データの較差(xとする)及びステレオマッチングによるデータの較差(yとする)の相関係数(すなわち図-7と図-9の相関係数)r:

を計算したところ,その値は0.115であった。つまり,解析図化機による取得データを基準とした場合,ステレオマッチングにより取得したデータの較差と数値地図データの較差はほとんど関連がないことがわかった。
 これらのことから,ステレオマッチングによるデータは,植生や構造物のない平地については精度が良好なため,較差のばらつきはあっても十分数値地図データの代替データとして利用できるが,森林等では樹高を計測し,かつ較差のばらつきも大きくなるため,十分吟味して利用する必要があるものと考えられる。

8.結論

 都市計画図との比較においては,未修正と修正済とで較差の平均・標準偏差共にほとんど変わらないという結果を得た。現在,数値地図標高データの点検・修正の作業で大きなウェイトを占めるのは,埋め立て地など平坦な地形であるにもかかわらず,データ上で起伏が生じている場合であり,山間部などの,単位面積当たりの等高線の情報が多い地域では論理的におかしい部分は少なく,ほとんど手直しを行っていない。本研究では,精度の比較を標高値そのものの比較という観点から行ってきたが,データの利用者からみれば標高値そのものが正確であるのみならず,周囲の標高値から傾斜量・傾斜方向が正確に求められるかどうかも重要な点であり,これを考慮するため,例えば隣接メッシュとの標高値の差分を比較し,精度検証の1つの指標にする方法を検討することも必要になってこよう。
 ステレオマッチングによる標高値取得は,全体的に較差が高めに出るものの,森林や建物のない平地においては数値地図データと比較してもよい結果を得た。そのため,地形的な特徴の少ない地域では,従来の標高データの作成方法よりも,かえってステレオマッチングの方法による直接的な標高値取得のほうが,効率的である可能性がある。しかしながら,単にこれら2つの方法を使い分けて一地域の標高値を同一精度で得ることにはまだ検討の余地が残されている。

謝辞

 本研究を進めるにあたり,測図部写真測量技術開発室からはステレオマッチングによる標高データの提供を受けた。

参 考 文 献

村上広史(1995):情報地質第6巻第2号  p59.
社会調査研究所(1993):図面自動入力システムユーザーリファレンス.

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