阪神・淡路大震災に伴う緊急撮影及び地形図緊急修正等

Immediate Air-photographing and Immediate Revision of Topographic Maps
Relating to the Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster

測図部 長壁正幸・寺林敏之
Topographic Department
Masayuki OSAKABE,Toshiyuki TERABAYASHI

本文[PDF:1,202KB]

要旨

 測図部では,被害状況を緊急に調査・把握するため,地震発生後直ちに被災地域の空中写真を撮影することを決定し,同時に防衛庁の協力を得て航空機「くにかぜ2)」を徳島基地から下総基地に回航し,撮影班が急行して,早速17日の地震発生当日の午後には空中写真の撮影を開始した。その後も18日から21日までに,神戸市及び宝塚市とその周辺地域並びに淡路島北部地域について,合せて4回の撮影チャンスを得,被災地域を対象とした1000枚を超える縮尺1万分1前後のカラー空中写真を撮影した。さらにその後も,被災地域の変化状況を把握するとともに,被災地域の復旧・復興に資するための空中写真撮影を,2月11日より3月末まで約3週間毎に3回実施した。
 また,震災直後の空中写真を用いて,建物・家屋の焼失倒壊,道路・鉄道の損壊,液状化等災害の現況を判読し,地理調査部,地図管理部と共同作業により,1万分1及び2万5千分1災害現況図を作成・印刷した。
 さらにまた,被災地域の復旧・復興に資するため,平成6年度第2次補正予算により,1万分1の地形図及び2万5千分1の地形図を緊急修正した。
 これらのものは,いずれも早急な公開・提供が求められていることから,空中写真は,いずれも撮影当日夜に空輸して徹夜で現像・焼き付けを行い,翌日朝には公開して関係機関に配布するとともに,一般への閲覧と,(財)日本地図センターを通じての刊行を開始した。また,1万分1及び2万5千分1災害現況図は,1月26日には政府の対策本部や地元の地方公共団体などの関係機関に配布するとともに,一般に公開した。さらに,緊急修正した1万分1地形図及び2万5千分1地形図は,5月1日に刊行するよう作業を進めている。

 

目次
主な図
  口絵-5 北淡町舟木・長畠付近の地震断層(実体視可能) (166k)
  口絵-6 「数値地図10000(災害現況版)」出力図 (145k)
  被災前後の図
    仁川地区(地すべり) (281k)
    長田地区(家屋倒壊及び火災) (374k)
    芦屋地区(高速道路損壊) (303k)
  撮影実施区域図 (158k)
1,空中写真撮影
 1)空中写真の緊急撮影
 2)空中写真の関係機関への提供
2.1万分1及び2万5千分1災害現況図の作成
3.1万分1地形図及び2万5千分1地形図の緊急修正
 1)1万分1地形図緊急修正版
 2)2万5千分1地形図緊急修正版
4.その他
 1)測図部が実施したその他の調査・解析等
 2)記者発表(測図部関連事項のみ)
 3)次期修正刊行計画
むすびに

1,空中写真撮影

1)空中写真の緊急撮影

 (1)被災直後の空中写真の撮影状況は,以下のとおりである。


  ア)1月17日 明石~大阪市,神戸市中心部
    ・縮尺:1/9,000(写真1枚に写っている範囲約2km×2km)
    ・枚数:明石市~大阪市 5コース 200枚,神戸市の災害地中心部23枚
  イ)1月18日 淡路島周辺部
    ・縮尺:1/10,000
    ・枚数:7コース 220枚
  ウ)1月19日 神戸市の一部
    ・縮尺:1/7,000
    ・枚数:1コース 30枚(雲が多く不採用)
  エ)1月20日 六甲山地南部とこれに沿う市街地,伊丹市・宝塚市の一部,淡路島の一部
    ・縮尺:1/10,000及び1/9,000
    ・枚数:明石市~神戸市~西宮市
          1/10,000 6コース 241枚
        宝塚市~西宮市
          1/10,000 6コース 123枚
        淡路島野島断層周辺
          1/9,000 3コース 88枚
  オ)1月21日 六甲付近及び宝塚付近
    ・縮尺:1/12,000及び1/10,000
    ・枚数:明石市~神戸市~西宮市
          1/12,000 3コース 110枚
        宝塚市付近
          1/10,000 3コース 62枚
  カ)合計   34コース1,097枚


	

 これらの空中写真は,撮影翌日には関係機関に配布するとともに,同時に,(財)日本地図センターから一般に刊行を開始した。また,本院,関東地方測量部,近畿地方測量部,四国地方測量部において一般公開した。この公開に当たっての記者発表で,閲覧が可能なことや空中写真の利用方法等について説明した内容がマスコミ報道された関係で,家族や親戚等が居住している家屋や街区の被災状況を知るため,多数の人が閲覧に訪れた。

 (2)国土庁の要請による,被災地域の変化状況把握と復旧・復興のための撮影作業の状況は,以下のとおりである。


  ア)2月11日 神戸・六甲付近,淡路島付近
    ・縮尺:1/7,000及び1/20,000
    ・枚数:神戸・淡路島付近 1/7,000
           29コース 1,445枚
        六甲山      1/20,000
           2コース  60枚
  イ)3月2日 神戸,淡路
    ・ 縮尺:1/7,000
    ・ 枚数:神戸 10コース  410枚
         淡路 2コース  56枚
    ・ 2月28日から鹿児島県鹿屋基地をベースに6年度事業計画による九州地方の撮影作業
     を実施のしたところ,3月2日午前中に国分,宮崎地区の撮影作業を実施中に阪神地区の天候回
     復の情報を得たため,急遽被災地区へ急行して撮影を実施し,再び鹿屋基地へ帰投するという強
     行日程であった。
  ウ)3月26日 神戸,淡路
    ・縮尺:1/7,000
    ・枚数:神戸 10コース  426枚
        淡路 2コース  53枚

	
 2)空中写真の関係機関への提供

 緊急撮影した空中写真は,以下の関係機関へ提供するとともに,一般刊行した。なお,現地では輸送機関が混乱していたため,近畿及び四国地方測量部職員が被災地の各自治体等に直接届けた。

(1)カラー密着印画
 建設本省災害対策室,同技術調査室,同建築指導課,国土庁震災対策課,防衛庁,近畿地方建設局
(2)カラー密着印画複写
 兵庫県,神戸市,芦屋市,西宮市,尼崎市,伊丹市,明石市,宝塚市,洲本市,淡路町,東浦町,北淡町,津名町,一宮町,五色町
(3)2~8倍引伸し写真
 被害状況が鮮明に写っている地域の2~8倍引伸し写真を関係機関に提供した。
(4)カラー写真モザイク等
 これらの写真は,建設本省玄関ロビーや国土庁災害対策本部等に展示され,災害担当の関係者だけではなく,多くの一般の方々の高い関心を得,好評であった。

  ア)地震前(H06.5.8撮影)
          1/10,000カラー空中写真モザイク
  イ)地震当日(H07.1.17撮影)
                  〃
  ウ)火災鎮火後(H07.1.20撮影)
                  〃
  エ)被害状況がはっきり読み取れる地域について
    ・地震前空中写真及び引き伸ばし空中写真パネル
    ・地震後       〃


	

撮影実施区域図

2.1万分1及び2万5千分1災害現況図の作成

 被害の状況(特にその分布状態)を把握するため,測図部及び地理調査部の共同作業により,1月20日撮影の空中写真を用いて,(1)家屋・建物の倒壊及び大きな破損,(2)火災(焼失範囲)(3)道路・高速道路・鉄道の破損,(4)斜面崩壊・地すべり,(5)地盤の液状化,(6)海岸堤防の破損の各項目を判読解析し,災害現況図を作成した。
 なお,使用した基図は,阪神地域については1万分1地形図に,また,淡路地域については,1万分1地形図が整備されていないため,2万5千分1地形図上に上記の6項目と地震断層を記入した。
 この作業は,測図部及び地理調査部の多数の職員を動員して突貫作業で行われ,「平成7年兵庫県南部地震災害現況図」として,阪神地域は1万分1図17面と,これを2万5千分1に縮小モザイクした2面,淡路地域の2万5千分1図をモザイクした1面を印刷した。これらは,1月26日には政府の対策本部や地元の地方公共団体などの関係機関に配布するとともに,一般にも公開した。
 この図面は,あくまでも空中写真の判読のみによって作成されたため,例えば建物の一階部分が完全に潰れていても,上から見た状態で破損の程度が著しくない建物は被災建物として表示されていない。このため ,「家屋・建物の倒壊及び大きな破損」として表示されたのは実際の被害建物のごく一部にすぎないが,広範囲にわたって被害が集中した地域をきわめて迅速に把握したものとして,高い評価を受けた。

3.1万分1地形図及び2万5千分1地形図の緊急修正

 測図部では,1万分1地形図及び2万5千分1地形図の緊急修正を実施することが決定されると同時に「地形図緊急修正作業実施本部(本部長:測図部長,現地作業本部長:近畿地方測量部長)」を設置し,緊急修正作業の具体的な計画に着手した。

 1)1万分1地形図緊急修正版

 

 補正予算により,図-2の21面について1万分1地形図の緊急修正を行い,「1万分1地形図緊急修正版」を作成した。なお,同地形図の刊行は5月1日の予定である。

 

(1) 本作業は,補正予算の成立を待って外注作業で行う関係から,限られた短期間に実施することが必要であった。このため,予算成立前に現地調査作業を直営で実施することとなった。
 現地調査作業は,測図部職員を中心に,地理調査部及び地図管理部並びに北海道から九州までの全ての地方測量部からも援助を得て,総員46名が東部班と西部班の2班に分かれて,以下の調査を実施した。
ア)被災程度が低い地域については,予察結果に基づいて,経年変化している建物に関する副記号と建物注記の名称等を調査・確認した。
イ)被災程度の激しい地域については,表示されている建物の副記号や建物注記について,それが現存(機能)しているか否かについて調査・確認した。
 なお,現地調査に先立ち,詳細な現地の状況を把握するため,先発隊による事前調査を実施した。また,作業時の緊急事態に備え,作業者の血液型を調査するとともに,作業者全員が携帯電話を所持して緊急連絡網による1日3回の定時交信を徹底した。

 

(2)図化から製図原図作成及び製版フイルム作成まで,一連の作業は外注により実施した。なお,地理調査部の災害現況図作成も合せて発注した。また,フイルム作成までの一連の作業を1物件として外注したのは今回が初めての試みである。

 

(3)緊急修正版の色や表示内容等は,次のとおりである。
ア)使用する図式は,緊急修正であることを考慮し,「平成3年図式」によった。
(新図式では,表紙に当該図面の内容の一部が取り込まれることになるが,新たに表紙の設計を行うことが期間的に無理であると予想された。)
イ)基本的な事項は従来の1万分1地形図と同様であり,先ず,平成6年5月撮影の空中写真及び住宅地図等を用いて,従来の定期修正の手法により震災前の状態に基図を復元した。
ウ)地震災害に伴い表示の必要となる事項については,以下のとおりとした。


 

 
・ 表紙には,緊急修正であることを表すために「緊急修正版」と明記した。
・ 災害による変状の著しい地域は,墨で「網掛け(133 15# 20%)」表示した。
・ 災害により機能を停止している副記号及び建物注記は,墨で「網掛け(バイアングル 60%)」表示した。

 

エ)道路の損壊箇所は,「道路マスク」を消去して工事中の記号により表示し,不通区間のほぼ中央部に,「道路名(復旧中)」と説明注記した。なお,同一図葉内に同じ路線で通行可能区間がある場合には,その通行可能区間のほぼ中央に道路名のみ(「復旧中」の説明注記を付けない)を注記した。
オ)鉄道の不通区間(6月1日現在)は,「休止中の鉄道」で表示した。


 

 
・ 地下鉄の不通区間は,不通区間のほぼ中央部に,「鉄道名(復旧中)」と説明注記した。なお,同一図葉内に同じ地下鉄路線で運行区間がある場合には,その運行区間のほぼ中央に鉄道名のみ(「復旧中」の説明注記を付けない)を注記した。
・ 運行休止中のロープウェイは,復旧の見込みがはっきりしていないため,「ロープウェイ名(運休中)」と説明注記した。
・ 地下鉄の駅で機能していないものは,近い将来に仮復旧の見込みなので,現行のままとした。

 

カ)仮設建物は,通常の「普通建物」として表示した。
キ)仁川の斜面崩壊等の地形変状は,墨で「網掛け(133L 15# 20%)」表示した。
ク)震災後の基準点の標高値の変更は,必要なものについて修正した。
ケ)図歴には,平成7年緊急修正と記載し,現地調査の期間及び使用した空中写真の撮影時期を明記した。
コ)裏表紙に次の説明注記を行なった。
 この地図は,阪神・淡路大震災に伴い緊急に修正したもので,次のような表示方法を行なっています。


 

 
1.は,震災による変状の著しい範囲(広範に変状がある地域を概ね街区単位で表示)
2.薄い黒色で表示した建物記号及び注記は,震災により本来の機能を有しなくなったもの
 

サ)図歴及び使用した資料は以下のとおりとした。


 

 
・図歴
   昭和61年編集
   平成3年修正
   平成7年緊急修正
     現地調査は平成7年3月実施
・資料
  1.使用した空中写真は平成6年5月,平成7年2月,平成7年3月撮影
  2.使用した都市計画基図等  平成2年測量神戸市作成1:2,500都市計画図
  3.関係官公庁の資料

 

(4)緊急修正に使用した資料等
ア)空中写真


 

 
・ 被災前  平成6年5月撮影のカラー写真
・ 被災後  平成7年2月11日,3月2日撮影のカラー写真

 

イ)住宅地図(1994年版)
ウ)平成7年兵庫県南部地震災害現況図(国土地理院作成)
エ)仮設住宅リスト(各自治体作成)
オ)建物被災現況図


 

 
・ 被災度別建物分布図(都市計画学会作成)
・ 建物被災現況図(各自治体作成)

 

カ)阪神大震災(兵庫県南部地震)による被害状況図(国際航業(株)作成)

 

(5)緊急修正対象図面
 1万分1地形図緊急修正対象図面 (82k)

 2)2万5千分1地形図緊急修正版

 

 図-3の10面について2万5千分1地形図の緊急修正を行い,「2万5千分1地形図緊急修正版」を作成した。なお,同地形図の刊行は5月1日の予定である。

 

(1)現地調査作業は近畿,中国,四国の各地方測量部が,また,編集作業については,近畿,中国,四国,関東の各地方測量部が地形図ディジタル編集システムを用いて,直営で実施した。

 

(2)1万分1地形図の緊急修正対象地区と重複する地区については,1万分1の地形図の修正の結果を利用して行った。また,これ以外の地域については,従来の2万5千分1地形図修正の方法により実施した。

 

(3)緊急修正版の表示内容等は,概ね1万分1地形図緊急修正版の表現方法に準じ,次のとおりである。
ア) 図式は,昭和61年図式によった。
イ) 地震災害に伴い,表示を必要とする事項。


 

 
・ 緊急修正であることを表すため,地形図の右上に「緊急修正版」と明記した。
・ 災害によって変状が著しい地域は,原則として1万分1地形図の表現方法に準じて褐で「網掛け」(120L 40%)表示とし,整飾欄には,震災による変状の著しい範囲』と明記した。但し,最少範囲は図上2×2mmとし,郊外等で散在する場合は多少誇張して表示した。
・ 被災地の建物記号及び建物注記で,機能が停止しているものについては,神社・寺院を除く全てのものを削除した。
・ 道路の損壊個所は,建設中の記号によって表示し,区間全体(IC間)に「復旧中」と説明注記した。例:阪神高速道路(復旧中)
・ 鉄道及び索道の損壊箇所は,復旧が6月1日以降のもの,又は未定のものは,「休止中」の記号及び説明注記によって表示した。
  例(復旧中のもの):阪神電鉄○○線  地下鉄○○線(復旧中)  ○○ケーブルカー(復旧中)
  例(復旧未定のもの):○○ロープウェイ(運休中)
・ 仮設住宅は,通常の建物として黒マツで表示した。
・ 三角点・水準点の改測は,国家基準点の成果として公開されたものについて,数値のみを訂正した。
・ 図歴は,平成○○年修正測量の下に,平成7年緊急修正測量と記載し,使用した空中写真の撮影年月及び現地調査の年月を明記した。

 

(4)緊急修正対象図面
 2万5千分1地形図緊急修正対象図面 (76k)

4.その他

 1)測図部が実施したその他の調査・解析等

 

(1)「数値地図10000(災害現況版)」の作成
 上記2の1万分1災害現況図に表示した各被災項目を数値化して「数値地図10000」に入力し, 「数値地図10000(災害現況版)」を作成した。
 なお,これらは,要望のあった研究機関等に提供した(口絵-6:145k)

 

(2)地理調査
 熊木国土基本図課長ほか1名が,土木研究所職員等と共同で1月26日から1月29日まで,西宮市周辺の活断層調査を実施した。

 

(3)数値空中写真データと数値地図データの重ね合せによる被災建物の現況把握
 被災後のカラー空中写真を15μmピッチで数値化した画像データと,被災前のディジタルマッピングによる数値地図データを重ね合せ,被災建物の現況を調査・解析した。

 

(4)衛星データを用いた被災状況調査等
 宇宙開発事業団の地球環境観測委員会の下に設置された兵庫県地震災害調査プロジェクトチーム及び同データ処理解析タスクフォースの活動に参加し,測図部では以下の調査等を行なった。
ア) 「立体視衛星画像による被災状況判読」をテーマに,立体視衛星画像(SPOT衛星の写真画像)を用いて,被災状況を判読した。
イ)航空機MSSデータによる土地被覆分類を行なった。

 

(5)1万分1地形図建物ラスタデータの提供
 未公開の1万分1地形図建物ラスタデータを研究機関等に提供した。

 

(6)神戸市ディジタルマッピングデータの代替提供
 神戸市が国土地理院との共同作成事業により作成していた2千5百分1ディジタルマッピングデータは,神戸市都市計画課庁舎の損壊によりデータを取り出すことが不可能となったため,神戸市から各研究機関等への提供ができなくなった。このため,神戸市の了解を得た研究機関等に対して,測図部から代替提供を行なった。

 2)記者発表(測図部関連事項のみ)

(1)1月18日 災害状況の緊急空中写真撮影について(17日撮影分 火災,道路倒壊,液状化の状況)
(2)1月19日 災害状況の緊急空中写真撮影について(18日撮影分 地表に出現した地震断層)
(3)1月21日 災害状況の緊急空中写真撮影について(20日撮影分 家屋焼失・倒壊,地滑り状況)
(4)2月13日 震災復興用の空中写真撮影について (11日撮影分)

 3)次期修正刊行計画

 今回の緊急修正は,あくまでも緊急的な手段によって修正しているため,1万分1地形図及び2万5千分1地形図とも,平成7年度に従来の定期修正を行い,刊行する計画である。

 

むすびに

 今回の地震では,全く予想もしなかった大規模な災害が突然起こったにもかかわらず,緊急撮影では,被災地が「くにかぜ2)」の本拠飛行場である徳島基地に近かったことや,第3回撮影を除き,定常撮影作業の合間という好条件に恵まれ,これまでになく迅速な対応が図れた。また,これに加えて,関係機関ヘのいち早い情報の提供をめざして,部の総力を挙げて取り組んだ結果,新聞をはじめマスコミ各機関からの反響も概ね高い評価を得たものと考えている。しかし,全てについて満足できる結果が得られたわけではなく,防衛庁との事前協議の潤滑化をはじめ,撮影範囲検討のための被災地域の情報把握等,反省すべき点も多く残された。(なお,緊急時の撮影作業等については,今回の災害を契機に,防衛庁と国土地理院との間でワーキンググループによる検討を開始した。)
 また,1万分1及び2万5千分1地形図緊急修正についても,年度末という時期に加えて,補正予算の国会通過を待っての発注作業ということで,実作業期間が極めて短期間となったため,地図表現のための図式の検討や仕様の決定などは,実際に作業がスタートしてから後追い的に決めざるを得ない場面も多く,詳細事項は作業を進めながら決めてゆく状態であった。またさらに,外注作業の検定や監督・検査についても極く限られた期間内に実施しなければならなかったことから,監督・検査・センター検定など,関係機関との綿密な調整によりなんとか終了することができた。
 今後は,今回の貴重な経験を生かし,いつか再びこのような大災害が起こった場合にも更に迅速な対応ができるよう,測図部の緊急時体制について引き続き検討を重ね,問題点を解決しておくことが必要である。

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