最終更新日:2017年12月28日

国土地理院時報(2017,129集)要旨

A Prototype System for PPP Kinematic Positioning of Japanese GEONET Stations
 
地理地殻活動研究センター   宗包浩志
 
【要 旨】
 キネマティックGNSS座標解には時間分解能が高い(1~30秒)という利点があり,現在国土地理院で行われているGNSSデータの定常解析では困難である,地震が連続して発生した際のそれぞれの地震時地殻変動の分離や火山活動に伴う急速な地殻変動の監視に対して有効であると期待されている.そこで,精密単独測位法により電子基準点データから定常的にキネマティックGNSS座標解を生成するシステムのプロトタイプを試作した.本プロトタイプシステムでは,解析のタイミングに応じて超速報解,速報解,最終解の3種類の解が計算される.超速報解は,データ取得後6~12時間後,速報解は2日後,最終解では2週間後に座標解が算出される.座標解のすべてが,30秒間隔のキネマティック解である.生成された座標解の精度を評価したところ,すべての座標解で水平成分の座標再現性が1cm程度であることを確認した.このことは,地震時地殻変動については5mm程度の変動が抽出可能であることを示す.また,本プロトタイプシステムの座標解は,適切な参照基準点をとることにより,長期的な地殻変動の監視にも適用可能であることを確認した.
 
Disaster Response Activities of Geographic Department to the Typhoon Kompasu(1611) and Mindulle(1609), Typhoon Lionrock(1610)
 
応用地理部   災害対策班
 
【要 旨】
 応用地理部は災害対策班が中心となり,平成28年台風第11号・第9号及び第10号による被害状況を把握するために,推定浸水範囲図,土砂崩壊・堆積地分布図及びパノラマ写真を作成し,北海道の空知川,美生川及び札内川流域の洪水被害を調査し,政府調査団に職員を派遣した.
 また,鳥取県中部地震及び阿蘇山の火山活動に対して所要の活動を実施した.
 本稿ではこれらの取組について報告する.
 
Review and Conclusion of the Global Mapping Project:1992-2017
 
応用地理部   植田摩耶・安喰靖・笹川啓・宗包晃子・永山透
 
【要 旨】
 地球地図プロジェクト(Global Mapping Project)は,全球陸域を対象とした地理空間情報である「地球地図」を整備し,持続可能な開発,環境保全,災害の緩和に役立てることを目的に,最終的に世界184カ国/地域の地理空間情報当局(NGIA)が協働して取り組んだ国際プロジェクトである.国土地理院は,プロジェクト推進のため,地球地図国際運営委員会(ISCGM : International Steering Committee for Global Mapping)が設立された1996年から2017年3月のプロジェクト完了に至るまで一貫してISCGMの事務局を務め,プロジェクトの運営に関わった. 本稿では,地球地図プロジェクトの20年以上にわたる歴史と活動についての概要を報告する.
  
Crustal Deformation of the 2016 Central Tottori Earthquake Detected by GEONET and InSAR
 
測地観測センター   檜山洋平・川元智司・甲斐玲子・山口和典・髙松直史・佐藤明日花
測地部   宮原伐折羅・三浦優司・山下達也
地理地殻活動研究センター   矢来博司・森下遊
 
【要 旨】
 平成28年10月21日14時07分に発生した鳥取県中部の地震(マグニチュード(M)6.6)に伴い,電子基準点の観測データにより,鳥取県東伯郡湯梨浜町の電子基準点「羽合」が北北東方向に約7cm移動するなど,鳥取県周辺で地殻変動が確認された.この地殻変動は,GEONETの定常解析だけでなく,電子基準点リアルタイム解析システム(REGARD)によっても捉えられた.
 また,だいち2号の観測データを用いたSAR干渉解析の結果によれば,今回の地震の震央周辺に地殻変動の面的な広がりが見られ,水平方向では震央の北東で北東向き,北西で南東向き,南西で南西向き,南東で北西向き,上下方向では震央の北東及び南西で隆起,北西及び南東で沈降が検出された.
 政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会によると,今回の地震は北北西-南南東方向に延びる左横ずれ断層運動と評価されており,観測された地殻変動は,断層運動から予想される地殻変動と調和的である.
 本稿では,鳥取県中部の地震に伴いGEONET及びSAR干渉解析により観測された地殻変動,この地震に伴う電子基準点の成果改定について報告する.
 

Improvement of Orthoimage Productivity by Full-Automated Aerial Triangulation
 
地理地殻活動研究センター   大野裕幸
 
【要 旨】
 国土地理院は,1936年以降に撮影された大量の空中写真を保有しているが,オルソ画像として地理院地図等で提供しているのは1970年代以降の比較的新しいものが中心であり,その中には必ずしも品質が良好とは言えないものも含まれている.過去の空中写真は,現在とは土地利用が大幅に異なるケースも多いため,地図や測量の専門家であっても利用しにくく,専門知識を持たないユーザの利便性も考慮すると,オルソ化して地図と重畳できる状態で提供することが望ましい.
しかし,過去の空中写真をオルソ化するには空中三角測量という工程を経る必要があるため,一般に作業効率が悪く,過去のオルソ画像の整備はなかなか進捗しにくい状況にある.
そこで,空中三角測量をはじめとするオルソ画像の作成工程を,コンピュータビジョン分野で用いられている画像処理技術を導入することによって可能な限り自動化する特別研究に取り組んだ.このたび,その作業効率を大幅に向上させる手法の開発に成功したので,その詳細を報告する.
 

Release of Geospatial Information on Designated Emergency Evacuation Places
 
応用地理部   小島脩平・山本洋一・中澤尚・菊池修・稲澤容代・湯本景一・飯村元紀
 
【要 旨】
 国土地理院,内閣府及び消防庁は,都道府県・市町村等と協力し,災害対策基本法により市町村長が指定する指定緊急避難場所及び指定避難所の位置や名称等をウェブ地図上に表示できる「指定緊急避難場所データ」及び「指定避難所データ」の整備を進めている.
 このうち,指定緊急避難場所データについて,整備が完了した市町村のデータから国土地理院のウェブ地図「地理院地図」で平成29年2月22日から公開を開始した.同データは,ウェブやスマートフォンアプリ,GISソフトウェアなどで利用可能なデータ形式であり,かつ国土地理院コンテンツ利用規約に基づき利用可能なため,防災アプリケーションの開発等にも容易に利用可能である.
 本稿では,指定緊急避難場所データの整備の取組について報告する.
 

Basic Plan for the Advancement of Utilizing Geospatial Information (Cabinet Decision 24th March 2017)
 
企画部   永田勝裕・石関隆幸・内山裕一・池田彰弘・吉田健一・植田勲・海野岳彦
 
【要 旨】
 平成29年3月24日,地理空間情報の活用に関する施策の基本となる事項を定めた「地理空間情報活用推進基本法」の規定に基づき,地理空間情報の活用推進に関する政府の基本的な計画である「地理空間情報活用推進基本計画(第3期)」が閣議決定された.
 本基本計画は,第1期及び第2期の地理空間情報活用推進基本計画において形成された,基盤地図情報や準天頂衛星初号機の整備による日本独自の測位基盤を活用し,高精度で利用価値が高く,リアルタイムで利用が可能な地理空間情報をIoT(モノのインターネット)・ビッグデータ・AI(人工知能)等の先進技術と融合させることで,様々な社会課題の解決や新産業・新サービスの創出を目指すものである.
 そのため,政府は,本基本計画に基づき各施策の目標やその達成期間等について検討を行い,毎年度の進捗状況のフォローアップを実施するだけでなく,地理空間情報の活用をより戦略的に進めるため,重点的に取り組むべき施策を「シンボルプロジェクト」として選定することにより,取組の内容を具体的に示している.
 国土地理院は,誰もが利用可能な位置の基準である基盤地図情報や我が国の地図の基本となる電子国土基本図等を社会基盤として整備し,これに準天頂衛星システムを中核とした衛星測位情報や様々な高精度な3次元地理空間情報を,高い精度で位置の基準に整合させる仕組みの検討を行うことで,防災,交通・物流,生活環境,地方創生,海外展開等の幅広い分野で地理空間情報が高度に利活用される世界最高水準の「地理空間情報高度活用社会」(G空間社会)の実現を目指していく.
 

Installation of Control Points in Nishinoshima Island and Development of the Tide Observation Device using GNSS
 
測地部   植田勲・大森伸哉・大滝修
 
【要 旨】
 国土地理院は,我が国の領海及び排他的経済水域の外縁を根拠付ける離島の正確な位置情報を整備する施策を実施しており,該当する離島に順次三角点を設置している.
 平成25年11月からの噴火によって島が拡大し地形が大きく変化した西之島において,当施策の一環として平成28年10月に上陸し測量作業を実施した.
 また,離島の標高を決定するための潮位観測について,GNSS観測によって行う装置を開発したことで,従来の水圧計を用いる方法と比較して安全性・効率性が向上した.
 

Case Study on Development of Sea-land Combined Digital Terrain Data
 
地理地殻活動研究センター   岩橋純子
海上保安庁海洋情報部   松本良浩
 
【要 旨】
 国土地理院は主に陸域,海上保安庁は海域について広範囲な地形データを保有している.火山活動や津波,活断層等の調査を行うためには,陸域から海底まで一体となった地形データが求められる事象が近年増えている.陸域と海域の地形データは,地形図及び海図での高さの基準や,プロダクトのDEMメッシュの投影法・座標系が一般に異なっており,中~高解像度のデータの接合に当たっては,ノウハウの蓄積が必要と考えられる.そこで中縮尺の等深線ベクトルデータ(コンター)が主体のデータから50mメッシュDEMを作成した場合(薩南地域)と,高密度点群データが主体のデータから5mメッシュDEMを作成した場合(石巻~相馬地域)についてケース・スタディを行った.海陸の地形データの高さ補正については,東京湾平均海面とその地域における平均水面の差が得られる地域ではその値を使って補正し,得られない地域ではその地域における平均水面を標高ゼロとして海域データを高さ補正することが適当であることが確認された.海陸一体のデジタル地形データを試作した石巻~相馬地域では,震災時の津波の影響を受けた沿岸地形の様子が5mメッシュDEMの陰影図から明瞭に観察された.また,GISを用いて海陸をまたぐ集水域や断面図,面積高度曲線等を作成することも可能であり,土砂の流入の見積もりや地理研究など,様々な目的に活用できると考えられる.今後も,海陸一体の地形データ作成を行うことは有意義である.
 

Twenty-year Successful Operation of GEONET: What's Next?
 
測地観測センター   辻宏道・畑中雄樹・檜山洋平・山口和典・古屋智秋・川元智司
 
【要 旨】
 1996年に二つのGPS観測網を統合して生まれたGEONETは,運用20年の節目を迎えた.全国を約1,300点の電子基準点で覆う世界最大級のGNSS連続観測網は,測量,地殻変動観測,地震火山防災に不可欠なツールであるばかりでなく,i-Constructionや自動運転等の測位,天気予報等に役立つ社会インフラとなっている.ここではGEONETの歴史と成果,課題と展望を述べる.今後も地殻変動の連続的な監視にはもちろん,衛星測位がさらに進化しても,その性能を最大限に発揮させ,測位結果と社会を結びつけるために,GNSS連続観測網は必要である.
 

Integration and Publication of Landform Classification Data in Vector Tiles Format
 
応用地理部   吉田一希・飯田誠・小島脩平・清水雅行
 
【要 旨】
 国土地理院では,防災対策等に必要な土地の情報を提供するため,地形分類データを提供してきた.地形分類データは,利用目的別に作成してきたため複数の地形分類が存在した.また,地形の種別が多く専門的で,内容を把握するのが困難であった.これらを解消するため,複数の地形分類データをベクトルタイル形式で1つの地形分類に統合するとともに,地理院地図の機能で地図上をクリックすると地形分類ごとの説明をポップアップで表示させるようにした.これにより,整備範囲が拡大するとともに,地形について予備知識がなくても,土地の成り立ちや自然災害リスクが簡単に分かるようになった.また,自然地形と人工地形を2つに分けて公開することで,その土地が本来もっている潜在的な自然災害リスクと,人工的に改変工事がなされたことで発生しうる災害リスクとを見分けられるようになった.本稿では,ベクトルタイル形式による地形分類データの作成手法と公開について報告する.
 

Recent situation of GSI Maps
 
地理空間情報部   小島脩平・高野悠・川村拓弥・中山正渡・市木文康・高桑紀之
 
【要 旨】
 国土地理院では,国の基盤となる地理空間情報を整備し,それらをウェブ地図「地理院地図」を通じて発信している.また,利用者がこれらの情報を活用しやすくするために,継続的に地理院地図の機能改良や公開データの充実に努めている.本稿では,平成29年3月に実現した地下空間等の高さを持つデータの3次元表示をはじめとする地理院地図及び地理院地図Globeの改良並びに平成29年4月に地理院地図で公開した戦前の空中写真などの公開データの充実について報告する.
 

Collaborative Research on Mapping from 30cm-level Resolution Satellite Imagery
 
基本図情報部   髙橋祥・早坂寿人・中村孝之・南秀和
 
【要 旨】
 2014年8月,高解像度光学衛星WorldView-3が打ち上げられ,2015年2月より地上画素寸法最高31cmの衛星画像が一般に販売開始された.国土地理院ではこれまで高解像度衛星画像を用いた地図作成に関する研究を重ねており,本衛星についても同様の検証・検討を実施するため,2015年9月~2017年3月まで(株)NTTデータと共同研究を実施した.
 その結果,標定精度は地図情報レベル2500の制限値をほぼ満たす結果が得られた.また,明瞭に取得できる道路や建物の図化精度や,植生が少なく地表面を直接観測できる場合の等高線の高さは,ともに十分な精度を確保できることを確認した.その一方で,影・オフナディア角・B/H比(基線高度比)の条件によっては図化が困難な場合があり,それが図化精度にも影響することを確認した.判読性の高い画像にするための補正方法や,図化しやすいステレオペアの条件の決定が今後の課題である.
 

Accuracy Verification of Photogrammetry using UAV
 
基本図情報部   菅井秀翔・宮地邦英・中村孝之・南秀和・橘克巳
 
【要 旨】
 国土地理院では,無人航空機(UAV)を基本図測量(電子国土基本図の修正作業)に活用することを目的とし,SfM技術を用いた写真測量の精度検証を実施してきた.平成27年度に実施した精度検証では,固定翼型UAV及びマルチコプター型UAVを用いて,基準点数及び配置の影響並びに斜め撮影の有効性について検証を行い,SfMソフトウェアごとの傾向が異なるほか,斜め撮影の追加により高さ精度が向上することがわかった.平成28年度にマルチコプター型UAVを用いて実施した精度検証では,撮影の重複率や内部標定要素の事前計測の有効性について検証を行い,撮影に必要な重複率の検討及び事前計測した内部標定要素のSfM処理における取扱について注意が必要であることがわかった.精度検証で得られたこれら知見を基に,基本図測量での活用に向けて取組を進めていく.
 

Crustal and Surface Deformation Associated with the 2016 Northern Ibaraki Earthquake Detected by GEONET and InSAR
 
測地部   仲井博之・三浦優司・山下達也・撹上泰亮・宮原伐折羅
測地観測センター   島﨑久実・菅富美男
地理地殻活動研究センター   小林知勝・中埜貴元・宇根寛
応用地理部   吉田一希・飯村元紀
 
【要 旨】
 2016年12月28日21時38分に発生した茨城県北部の地震(M6.3)に伴い,茨城県常陸太田市の電子基準点「里美」が西南西方向に約3cm移動するなど,茨城県及び福島県内の複数の電子基準点で地殻変動が観測された.
 だいち2号が12月29日に緊急観測した合成開口レーダー画像の解析結果によると,震源から北北東の範囲で最大約27cmの沈降又は西向きの地殻変動が見られた.今回の地震は電子基準点の空白域で発生し,地震に伴う地殻変動が生じた範囲が比較的狭かったため,地殻変動の詳細は,だいち2号の解析結果によってはじめて明らかになった.また,この地震は,翌日に開催された地震調査委員会の臨時会に緊急観測の結果を提出した初めての事例となった.
 これらの地殻変動をもとに,断層面2枚で仮定した震源断層モデルを構築した.検出した地殻変動と構築した震源断層モデルは,政府の行う地震活動の評価や国土地理院が行う測量成果改定の検討に用いられた.また,SAR干渉画像に現れた位相不連続箇所で現地調査を行い,地表変位を確認した.
 

Revision of Leveling Survey Results on the Pacific Coast of Eastern Honshu
 
測地部   井上武久・大滝修・植田勲・山下達也
測地観測センター   白井宏樹・鈴木啓・古屋智秋・檜山洋平
 
【要 旨】
 平成23年3月11日14時46分に発生した平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(M9.0,最大震度7)の発生後も継続している余効変動の累積により生じた水準点の測量成果の乖離を解消するため,東北地方太平洋側を中心に水準測量を実施し,平成29年2月28日に水準点及び電子基準点(標高)の測量成果の改定を行った.
 本稿では,平成28年8月から12月に実施した水準測量の概要及びこれらの測量結果から東北地方太平洋側を中心に実施した測量成果の改定について報告する.
 

Revision of Leveling Survey Results on the Pacific Coast of Eastern Honshu
 
測地部   梅井迪子・栗原忍・石本正芳・若杉貴浩・川畑亮二
 
【要 旨】
 つくばVLBI観測局は,国内の地殻変動観測体制の強化を目的として,阪神・淡路大震災後の1998年に整備された.国土地理院構内に設置された32 mアンテナは,世界トップクラスの性能を有し,その後18年間に亘り,国内のみならず海外の観測局とともにVLBI観測を実施した.
 国際VLBI事業が主導する国際観測では,世界のVLBI観測局と協働で観測することで,国際地球基準座標系の構築や地球姿勢パラメータの決定などに貢献した.また,東日本大震災後の測量成果の改定時には,つくばVLBI観測局の観測データを基にして成果が算出された.さらに,つくばVLBI観測局は,共同研究により宇宙探査機の軌道決定や,天文学的研究といった測地学以外の分野においても大きな貢献を果たした.
 国土地理院は,つくばVLBI観測局のこれらの役割を継承しつつ発展させるため,次世代の観測システムに対応したVLBI観測局を茨城県石岡市に整備した.その後,新しい観測局の本格運用が開始されたことから,つくばVLBI観測局は運用を終了した.
 

Report on the 29th United Nations Group of Experts on Geographical Names
 
基本図情報部   中村孝之・水田良幸
 
【要 旨】
 平成28年4月25日(月)から29日(金)まで,タイ・バンコクの国連アジア太平洋経済委員会本部において,国連地名専門家グループ(UNGEGN)の第29回会合が開催された.国土地理院から本会合に参加したので,その概要を報告する.
 

Aerial photography of Northern Kyushu Heavy Rainfall Disaster in July 2017
 
基本図情報部   防災対策班
 
【要 旨】
 平成29年7月九州北部豪雨では,堤防の決壊や河道閉塞のほか,土石流や地すべりなど土砂災害が発生し,橋梁流失や路肩崩壊等の甚大な被害が生じた.
 国土地理院は,災害対策基本法(昭和36年法律第223号)における指定行政機関であり,責務として「災害に関する情報の収集及び伝達に努めなければならない」とされている.また,中央防災会議によって作成された防災基本計画(平成28年5月)において,国土地理院の役割は「航空機等による目視,撮影等による情報収集を行うもの」,「画像情報の利用による被害規模の把握を行うもの」とされている.
 このように国土地理院は,災害時における被災情報の収集の役割を担っている.九州北部豪雨による被害に関して基本図情報部では,従前の災害対応と同様に測量用航空機を用いて緊急撮影を行うとともに,新たな試みとして地方整備局の災害対策用ヘリコプターが撮影した画像による正射画像や3Dモデルの作成を実施した.本稿ではその取組について報告する.
 このほか,国土地理院が現地に派遣したUAV撮影チームに基本図情報部からも職員が参加し,緊急撮影を実施したため,併せて報告する.
 

Measure of the Geographic Department of GSI to the Northern Kyushu Heavy Rainfall Disaster in July 2017
 
応用地理部   小野里正明
 
【要 旨】
 応用地理部は,災害対策班が中心となり,平成29年7月九州北部豪雨の発災直後から8月中旬までの間に,政府調査団への職員派遣及び判読図作成等の取組を行ったので報告する.
 

Report on the 11th United Nations Conference on the Standardization of Geographical Names
 
基本図情報部   水田良幸・明野和彦
 
【要 旨】
 平成29年8月7日(月)から18日(金)まで,アメリカ・ニューヨークの国連本部において,第11回国連地名標準化会議が開催された.会議には,国家地名機関,地理空間情報当局,地名学者,外交官などからなる各国の代表者が参加し,地名標準化に係る活動報告をもとに議論が行われ,最終日には決議の採択が行われた.国土地理院から日本政府代表団の一員として本会議に参加したので,その概要を報告する.
 

Test Observation to Innovate Electric Tide Gauge
 
測地観測センター   七海仁美・大脇温子・菅原準
 
【要 旨】
 国土地理院では全国25験潮場で潮位の連続観測を実施し,取得した潮位データを土地の高さの基準の確認や地殻変動を監視する手段として活用している.測地観測センターでは潮位を観測するにあたり長年フロート式験潮儀を使用してきたが,現在潮位観測に関するシステム全体の見直しを進めている.現用のフロート式験潮儀をメンテナンスが容易である電波式験潮儀へ交換可能かどうかを検証するため,勝浦験潮場において試験観測を実施した.その結果,電波式験潮儀は現用の験潮儀と同等の観測ができることを確認したため,今後老朽化した験潮儀から順次電波式験潮儀に切り替えていく方針を定めた.ただし,電波式験潮儀とフロート式験潮儀の潮位差が一定となっておらず,潮位2,350mm及び3,350mm付近にピークを持つ分布となっている原因は不明である.そのため,今後はこの現象のメカニズム解明を進め,験潮場ごとの適切な設置調整方法を確立することが重要である.
 

Effect of LTE Signal on Geodetic GNSS Observation and its Mitigation
 
測地観測センター   佐藤明日花・三浦優司・中久喜智一・鈴木啓・三木原香乃・福﨑順洋・畑中雄樹・辻宏道
 
【要 旨】
 国土地理院が運用する電子基準点の一部において,2013年から信号強度が低下し,解析結果の上下成分に見かけの周期的な変動が検出され始めた.原因を調査したところ,LTE (Long Term Evolution)と呼ばれる携帯電話の高速データ通信サービスが2012年頃から全国で展開され,GNSSのL1帯付近の周波数帯(1.5 GHz帯)を利用し始めた時期と一致していた.そこで,見かけの周期的な変動をLTE (1.5GHz帯)信号の電波干渉による異常と仮定し,帯域フィルターやアッテネータ(減衰器)で信号を抑制し,電波干渉による影響の軽減を試みた.その結果,上下方向のみに発生する異常な変動が改善された.その後,解析結果に異常が認められた特定の電子基準点にアッテネータの導入を進めた.また,LTE信号の影響を受けにくいとされるGNSSアンテナを用いた試験観測を行い,有効性を検証した.
 

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