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地理院ホーム  > 刊行物・資料  > 国土地理院時報  >  国土地理院時報(2017,129集)目次  > 国土地理院時報(2016,128集)要旨 最終更新日:2016年12月28日

国土地理院時報(2016,128集)要旨

小特集:口永良部島噴火への対応

Responses of GSI to the Volcanic Activity of Kuchino-Erabujima Island
 
企画部   防災推進室
 
【要 旨】
 国土地理院は,災害対策基本法の指定行政機関(地方測量部等にあっては指定地方行政機関)として,大規模自然災害の発生時において,各府省庁,地方公共団体等の関係機関が行う防災対策及び国民の活動に資するため,災害に関する情報を適時,的確に収集し提供を行っている.口永良部島の火山活動に関しても,国土交通本省をはじめとする関係行政機関(以下「関係機関」という.)へ地理空間情報を提供した.本稿では,口永良部島の火山活動に関する国土地理院の主な対応について報告する.
 
Detection of surface changes associated with the eruptions of Mt. Shindake on Kuchino-Erabujima Island by using ALOS-2 (Daichi-2) data
 
測地部   三浦優司・和田弘人・仲井博之・山中雅之・山田晋也・撹上泰亮・上芝晴香
地理地殻活動研究センター   矢来博司・小林知勝・森下遊
 
【要 旨】
 国土地理院では,2015年5月・6月に発生した口永良部島新岳の噴火に際し,陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(以下「だいち2号」という.)で取得した観測データから地表変化と変動の検出を試みた.
 2015年5月29日の噴火では,噴火前後の解析結果において,画像の非干渉域が火砕流等によって火山灰に覆われた範囲と概ね一致した.また,噴火前後に島内では主だった地殻変動は見られなかった.噴火前後の画像の比較から,大きな地形変化は新岳火口付近に限られることを確認した.なお,噴火からわずか約3時間後にだいち2号による緊急観測が行われ,29日中に解析結果の情報を防災関係機関に提供した.上記の一連の対応は,発災時にだいち2号のデータを用いて迅速に解析し,防災機関に情報提供するという観測・解析・提供に至る一連の対応の素早さを示したケースといえる.
 
Monitoring of crustal movement by GNSS observation in Kuchino-Erabujima Island
 
測地部   安藤久・千早昭二・菅原準・針間栄一朗・瀧修一・池田祐希
測地観測センター   瀬川秀樹
 
【要 旨】
 国土地理院は,平成27年(2015年)5月に爆発的な噴火が発生した口永良部島(鹿児島県熊毛郡屋久島町)の火山活動に伴い,電子基準点による地殻変動監視体制を強化する目的で,GNSS連続観測が行えるGNSS火山変動リモート観測装置(Remote GNSS Monitoring System ,以下「REGMOS」という.)を,6月12日に火山噴火予知連絡会口永良部島総合観測班(以下「総合観測班という」.)の一員として現地入りし,REGMOS(M口永良部島)を設置し,GNSS連続観測による監視を強化した.
 本稿は,再噴火の可能性がある口永良部島でのGNSS連続観測による地殻変動の監視について,全住民が島外に避難している状況下におけるREGMOSの緊急設置作業とその観測結果について報告する.
 
Aerial Photography in response to the Volcanic Activity of Kuchino-Erabujima Island
 
基本図情報部 災害対策班
 
【要 旨】
 平成27(2015)年5月29日に発生した口永良部島噴火に関して,基本図情報部(以下「当部」という.)では,航空機による緊急撮影及び無人航空機(UAV)(以下「UAV」という.)による空中写真撮影を行った.本稿ではその取り組みについて報告する.
 
Preparation of Distribution Map of Volcanic Ejecta by Aerial Photo Interpretation in Kuchino-Erabujima Island
 
応用地理部   災害対策班
 
【要 旨】
 2015年7月14日及び9月11日に基本図情報部が無人航空機(UAV)で撮影した空中写真画像を用いて,噴火による火砕流及び大雨による泥流や崩落などを判読した.判読した手法と判読結果について報告する.
 
Responses of Geospatial Information Dept. of GSI to the Volcanic Activity of Kuchino-Erabujima Island
 
地理空間情報部   災害対策班
 
【要 旨】
 平成27年(2015年)5月29日に発生した口永良部島の噴火に関する各種地理空間情報の公開及び提供対応について報告する.
 
Responses of Kyushu Regional Survey Department to the Volcanic Activity of Kuchino-Erabujima Island
 
九州地方測量部
 
【要 旨】
 九州地方測量部は,国土地理院本院と調整を図りながら,被害状況を把握するための各種資料(空中写真,災害対策用図,簡易正射画像,写真判読図等)を大判出力し,鹿児島県や屋久島町の担当者に手渡しで届け,図の説明を行った.
 また,「各機関が設置している観測機器の配置図が欲しい」といった要望にも応え,気象庁と調整して作成,提供した.本稿ではその取り組みについて報告する.
 

平成27年関東・東北豪雨災害への対応

Responses of GSI to the Kanto-Tohoku Heavy Rainfall Disaster in September 2015
 
企画部   防災推進室
 
【要 旨】
 国土地理院は,大規模自然災害の発生時において救命・救助活動及び復旧・復興に寄与するため,各府省庁,地方公共団体等の関係機関へ地理空間情報を提供している.平成27年9月関東・東北豪雨においても,国土交通本省をはじめとする関係行政機関(以下「関係機関」という.)へ地理空間情報を提供した.本稿では災害の概要と国土地理院の主な対応について報告する.
 
Aerial photography of the Kanto-Tohoku Heavy Rainfall Disaster in September 2015
 
基本図情報部   災害対策班
 
【要 旨】
平成27年9月関東・東北豪雨による災害に関して,基本図情報部(以下「当部」という.)では測量用航空機「くにかぜIII」等による緊急撮影及び無人航空機(UAV)(以下「UAV」という.)による動画撮影を行った.本稿ではその取り組みについて報告する.
 
Public presentation of the Geospatial information related to the Kanto-Tohoku Heavy Rainfall Disaster in September 2015
 
地理空間情報部   災害対策班
 
【要 旨】
 平成27年9月10日に発生した平成27年9月関東・東北豪雨に関する地理空間情報部の災害対応について報告する.
 
Production of Presumed Inundation-Area Maps of Joso district in occasion of the Kanto-Tohoku Heavy Rainfall Disaster in September 2015
 
応用地理部   災害対策班
 
【要 旨】
 応用地理部は,災害対策班が中心となって,平成27年9月関東・東北豪雨に伴う鬼怒川の氾濫により甚大な被害を受けた茨城県常総地区の被災状況を把握するため,斜め空中写真の判読等を行い推定浸水範囲図を作成した.本稿ではその取り組みについて報告する.
 
Responses of Geography and Crustal Dynamics Research Center to the Kanto-Tohoku Heavy Rainfall Disaster in September 2015
 
地理地殻活動研究センター  地理情報解析研究室
 
【要 旨】
 平成27年9月関東・東北豪雨における鬼怒川洪水災害に際し,初動段階において応用地理部と協力して関東地方整備局防災ヘリによる撮影映像・画像や報道映像及び国土地理院が撮影した斜め空中写真等から,茨城県常総市付近の浸水範囲を判読・推定した.その浸水範囲の面積や浸水範囲内の建物数をGIS上で算出し,国土交通省の災害対策本部へ提供し,国土地理院のウェブサイトで公表した.また,ポンプ車による排水計画立案等に役立つ情報の提供を目的として,洪水に伴う浸水体積の推定手法を検討した.
 
Responses of Tohoku regional survey Department to the Kanto-Tohoku Heavy Rainfall Disaster in September 2015
 
東北地方測量部
 
【要 旨】
 平成27年9月関東・東北豪雨災害における東北地方測量部(以下「当部」という.)の体制や,関係行政機関及び被災自治体からの災害情報の入手,及び必要な地理空間情報の提供に関する災害対応時の取組について報告する.
 
Responses of Kanto Regional Survey Department to the Kanto-Tohoku Heavy Rainfall Disaster in September 2015
 
関東地方測量部
 
【要 旨】
 関東地方測量部は,鬼怒川の氾濫など甚大な被害が発生した平成27年9月関東・東北豪雨への対応として,体制を確保し,関東地方整備局をはじめとする関係機関へ各種地理空間情報を提供した. 本報告では,提供した地理空間情報及びその利活用事例を紹介する.
 


Development of a prototype of GEONET Real-time Analysis System: REGARD
 
地殻活動研究センター   川元智司
測地観測センター   檜山洋平・古屋智秋・佐藤雄大
東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター   太田雄策
京都大学防災研究所   西村卓也
東京大学地震研究所   等々力賢
 
【要 旨】
 近年の地震警報の発達は目覚ましく,地震発生後即時に地震規模(マグニチュード(M))を含む地震情報がもたらされるようになってきている.しかしながら,地震計から即時に推定される地震規模はM8を超えるような巨大地震においては頭打ちとなることが知られており,マグニチュードの飽和と呼ばれている.この問題は,リアルタイムキネマティックGNSS解析を用いて巨大地震によって発生する変位を捉え,有限断層モデルを即時推定することで改善することが可能である.今回,国土地理院が運用するGNSS連続観測網GEONETを用いて,リアルタイムで地震規模を推定するシステム(REGARDプロトタイプ)を開発した.このシステムは,リアルタイムGNSS解析による1Hz変位時系列の連続計算と,地震イベントの自動検知,短時間で実行が可能な全自動の断層モデル推定部からなる.今回,REGARDの性能を検証するため,平成15年十勝沖地震,平成23年東北地方太平洋沖地震,シミュレーションによる南海トラフ三連動型地震における実時間を想定した地震規模推定を試みた.その結果,これら全ての地震において,高い残差減少率(Variance Reduction)を示す断層モデルを地震発生から3分以内に地震規模が飽和することなく得ることが可能であった.さらに,断層面が一様でなく破壊領域も複数に分かれた複雑な震源となる南海トラフ三連動型地震についても,すべり分布モデルで正しい地震規模を得ることができた.これらの結果から,REGARDプロトタイプに実装されたスキームによって,M8クラスの震源規模を自動で精度良く得ることが可能で,これは既存の地震計データから即時推定される地震規模に見られる飽和を防ぐのに非常に有効である.
 これらの取り組みを通し,得られた知見を基に共用データベース構築のための検討を行った.
 
Ground surface deformation at Owakudani on Hakone Volcano detected with InSAR using ALOS-2 data
 
測地部   山田晋也・三浦優司・山中雅之・仲井博之・和田弘人・撹上泰亮・上芝晴香
地理地殻活動研究センター   矢来博司・小林知勝・森下遊
 
【要 旨】
 国土地理院は,宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」という.)が運用する陸域観測技術衛星「だいち2号」のデータを用いて,地表面の変動を干渉SARにより検出する取組を実施している.だいち2号は,高分解能モードで全国を網羅する定常的な観測を実施しているほか,火山活動の活発化などの緊急時には災害状況把握のための緊急観測を行う.
 2015年4月下旬から箱根山の火山活動が活発化したことに伴い,5月7日にだいち2号による緊急観測が行われた.国土地理院が解析した結果,大涌谷内のごく狭い範囲内で地面の変動が検出された.その後も変動の推移を把握するため,8月下旬頃まで平均週1回ペースでの高頻度な観測が実施された.国土地理院では,観測後速やかにSAR干渉解析を実施し,長期間にわたり直径200m程度の範囲内における変動を高頻度に検出した.火山活動の活発化からごく小規模な噴火を経て停滞するまでの一連の変動とその速度の変化を高頻度に捉えたことは,これまでにない画期的な事例であった.
 解析結果は,火山噴火予知連絡会や箱根火山防災協議会などに情報提供を行い,立ち入り規制等の判断材料として活用された.また,地理院地図を通して画像を閲覧できる形式でウェブサイトに解析結果を掲載した.
 
Three Open Policies of GSI Maps
 
地理空間情報部    出口智恵・伊藤裕之
 
【要 旨】
 国土地理院では,国の基盤となる地理空間情報を整備し,それらをウェブ地図「地理院地図」を通じて発信している.本稿では,「地理院地図」のこれまでの変遷を振り返るとともに,地理院地図から提供しているウェブ地図のデータ「地理院タイル」の活用推進を目的とした3つのオープン施策(オープンデータ施策,オープンソース施策,オープンイノベーション施策)について,最近の取組事例を織り交ぜながら紹介する.
 
Study on social and economic effect of mapping and surveying
 
地理地殻活動研究センター    下山泰志
 
【要 旨】
 伊能忠敬から始まり,明治時期の迅速図,さらには基本図と基準点をはじめとする近世からの地図・測量の技術・成果は,我が国の発展の基礎であり,その社会・経済活動にさまざまな効果をもたらしている.
 また,我が国は地殻,土地,気候等の特性から災害が多発する国であり,地図・測量は,地震等に備えた地殻変動の把握,災害に脆弱な土地を明らかにする点において,極めて重要な役割を果たしている.さらに,暮らし・経済への貢献という観点からは,カーナビなどの移動支援,i-Construction(建設現場,すなわち調査・測量,設計,施工,検査,維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいて,抜本的に生産性を向上させる取組であり,建設生産システム全体の生産性向上の取組)をはじめ,地図・測量の多くの利用分野が存在する.歴史文化・観光・教育などの面からも,歴史的・教育的題材としての活用,観光マップ等の利用など,地図の成果の活用を多方面で見ることができる.
 このように地図・測量が社会の様々な分野に効果を与えている一方で,それを国民が直接実感できる場面はそれほど多くない.そのため,この分野の重要性について,地図・測量の関係者が自負しているほどは社会で認知されていないことも事実である.その効果や重要性を広く知らせるための方策を検討し確立することは,地図・測量やその技術・成果の恩恵に対する社会の理解を定着させるためであることはもちろん,官民が行う地図・測量に関する様々な取組を継続的・発展的に行うためにも不可欠なことである.
 以上の点を踏まえ,平成29年度までの予定で地図・測量が社会・経済に与える効果について調査・検討しており,本稿は,その目的や手法,平成27年度の検討結果等を整理したものである.
 
Technical Description to Utilize Multi-GNSS for ICT Construction
 
測地観測センター    酒井和紀・山尾裕美・鎌苅裕紀・佐藤雄大・後藤清・古屋智秋・辻宏道
 
【要 旨】
 国土地理院では,平成23年度から平成26年度にかけて,国土交通省総合技術開発プロジェクト「高度な国土管理のための複数の衛星測位システム(マルチGNSS)による高精度測位技術の開発」(以下「マルチGNSS総プロ」という.)を行い,その中で情報化施工の一部で用いられているリアルタイム測位に,マルチGNSSを活用するための技術開発を行ってきた.その技術開発の一環として,リアルタイム測位を模した試験観測を行い,マルチGNSSを活用した際の効果を検証したところ,特に上空視界が限られた場所でマルチGNSSの効果が大きくなることが分かった.
 
Sophisticating Hazard Map Portal Site of Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
 
応用地理部    本嶋裕介・山本洋一・小島脩平・武藤雅知
 
【要 旨】
 国土地理院は,国土交通省水管理・国土保全局と協力して,「国土交通省ハザードマップポータルサイト(以下「ハザードマップポータル」という.)」を平成19年4月から運用している.
 国土交通省が平成27年1月に公表した「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」や平成27年9月関東・東北豪雨を受けて国土交通省が実施している「避難を促す緊急行動」を踏まえて,国土地理院では,国民が自分の住んでいる場所等の災害リスクを認識し,自然災害に関する知識と心構えを持つことができるようにするために,ハザードマップポータルをどのように改良すべきかを検討する「ハザードマップポータル高度化のための調査」を行った.ハザードマップポータルの認知度,活用状況,ニーズ,課題を把握するために,地方公共団体や一般国民,有識者に対してアンケートまたはヒアリングを行った結果,操作性の問題点や機能・情報追加に関する要望などを確認することができた.また,高度化のための参考となる事例調査として,海外の災害リスク情報提供サービスと先進的な都道府県のWebGISについて調査した結果,容易に災害リスクを確認できる機能など,参考となる有用な情報を得ることができた.そしてこれらの結果を踏まえて,ハザードマップポータル高度化のための具体的な改良案の検討を行った.
 この調査及び検討から,ハザードマップポータルの活用促進を早期に実現するためにハザードマップポータルの改良を行った.改良内容は,操作性の向上やスマートフォン対応を目的としたユーザインターフェースの改良,機能や情報の追加などである.
 
 
Arrangement of problems of geographic education and proposals to concrete actions by GSI to support its advancement
 
地理地殻活動研究センター    宇根寛
地理教育支援チーム
 
【要 旨】
 中央教育審議会では学習指導要領の改訂に向けた検討が進められており,高等学校社会科における「地理総合(仮称)」 の必履修化など,地理教育の充実, 強化が検討されている.また,防災において,自らの命と生活を守る観点から,地図や地理空間情報を用いて地域の特性を理解するための地理教育の重要性が高まっている. このような中,国土地理院においても,地理教育の支援の取組を組織化,体系化する必要があるとの認識のもと,平成27年11月に院内に「地理教育支援チーム」(以下「支援チーム」と いう.)を設置するとともに,院幹部と支援チームのメンバーによる「地理教育勉強会」を平成28年5月までに8回実施し,国土地理院における地理教育支援のあり方について議論を行った.その結果を同年6月に「地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言~国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために~(案)」としてとりまとめ,地理教育をめぐる現状と課題を整理するとともに,今後の地 理教育支援の具体的な取組について提言を行い,国土地理院のウェブサイトに公開した.国土地理院では,「地理教育の道具箱」の設置,教科書・教材出版社への説明会の開催,サマースクールの実施,出前 授業の実施などについて提言を実行に移している.
 
 
Establishment of Standards for Creating Easy-to Read Foreign-language Maps
 
基本図情報部   中村孝之,齋藤勘一,水田良幸
 
【要 旨】
 国土地理院では,観光先進国実現や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な開催のため,外国人にわかりやすい地図を作成するための標準として,地図に記載する地名等の英語表記ルール及び外国人にわかりやすい地図記号を検討し,平成28年3月に決定した.本稿では,検討経緯,決定した標準の概要,今後の普及方策などについて述べる.
 
 
Special Map Production for the Summits
 
基本図情報部   笹嶋英季
 
【要 旨】
 平成28年5月26日,27日に日本で開催された第42回先進国首脳会議である伊勢志摩サミット及び平成28年9月24日,25日に閣僚会議として開催された長野県・軽井沢交通大臣会合にあわせて作製した2種類の「サミット地図」についてその取組を報告する.
 
 

小特集:熊本地震への対応

Responses of GSI to the Kumamoto Earthquake
 
企画部   防災推進室
 
【要 旨】
 国土地理院は,大規模自然災害の発生時において救命・救助活動及び復旧・復興に寄与するため,各府省庁,地方公共団体等の関係機関へ地理空間情報を提供している.平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という.)においても,国土交通本省をはじめとする関係行政機関(以下「関係機関」という.)へ地理空間情報を提供した.本稿では災害の概要と国土地理院の主な対応について報告する.
 
 
Crustal deformation of the Kumamoto Earthquake detected by ALOS-2 InSAR images
 
測地部   上芝晴香・三浦優司・宮原伐折羅・仲井博之・本田昌樹・撹上泰亮・山下達也
地理地殻活動研究センター   矢来博司・小林知勝・森下遊
 
【要 旨】
 国土地理院は,平成28年4月に発生した「平成28年(2016年)熊本地震」(以下「熊本地震」という.)に際し,宇宙航空研究開発機構(JAXA)(以下「JAXA」という.)が運用する陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(以下「だいち2号」という.)で取得した観測データを解析し,地表変動の把握を行った.
 平成28年4月14日21時26分に熊本県熊本地方で発生したM6.5の地震以降,一連の地震に伴う地殻変動を把握するため,国土地理院が事務局を務める地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループ(以下「地震SAR解析WG」という.)は,JAXAに対し,だいち2号による多数の緊急観測を要請した.これらの緊急観測のデータを用いて,5月中旬にかけて継続的にSAR干渉解析を実施し,一連の地震に伴う地殻変動及び平成28年4月16日のM7.3の地震以後に生じた余効変動を検出した.解析の成果は迅速に関係機関へ提供するとともに,国土地理院の「平成28年熊本地震に関する情報」サイト(以下「熊本地震サイト」という.)で公表した.SAR干渉解析で求めた地表の変動量は,国土地理院が現地で実施した緊急GNSS観測の結果と整合的で,両者から,布田川断層の北側で最大約2mに及ぶ周辺と連続した緩やかな変位勾配を持つ沈降が生じたことが分かった.
 熊本地震は,1995年の兵庫県南部地震(M7.3)以降に国内で発生した最大規模の内陸型の地震であり,地殻変動が広い範囲に及んだ.だいち2号のSAR干渉解析で求めた詳細な地殻変動の情報は,地震活動の評価や基準点の測量成果停止及び改定の範囲の精査に活用された.
 
 
Small-displacement linear surface ruptures of the Kumamoto Earthquake detected by ALOS-2 SAR interferometry
 
地理地殻活動研究センター   藤原智・矢来博司・小林知勝・森下遊・中埜貴元・宇根寛
測地部   宮原伐折羅・仲井博之・三浦優司・上芝晴香・撹上泰亮
【要 旨】
 平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という)では,地下の断層運動に伴って地面が水平方向や鉛直方向に動くさまざまな変位が現れている.この地表変位を人工衛星からのレーダー観測を用いて面的かつ詳細に捉えることによって,地表では,震源の断層運動による地表変位が広域にわたって現れているだけではなく,変位量は小さくとも細かい線状の変位が数多くあることがわかった.これらは地表付近での小規模な断層運動による変位に類似したものであり,こうした地表断層の数は230程にも及んでいる.それらのうちいくつかは既知の活断層と位置や変位の向きが一致しているものの,その数を比べると今回新たに検出された地表断層の数の方がはるかに多いのが特徴である.地表断層は地域ごとに平行に集中して存在するなど走向や変位の向きが似たものが集中して存在しており,地域ごとにグループに分類できる.それらの走向や変位の向きは既知の活断層もしくは直交する共役断層と一致しており,地表断層が存在する地域ごとの応力場と密接な関連がある.検出された地表断層の成因は,熊本地震の震源となった主たる断層とその分岐した断層,もしくは本震や余震によって誘発された二次的な断層に分類できると考えられる.
 
 
Crustal Deformation of the Kumamoto Earthquake Detected by GEONET
 
測地観測センター   檜山洋平・川元智司・古屋智秋・甲斐玲子・山口和典・鈴木啓・菅富美男・嵯峨諭
 
【要 旨】
 平成28年4月14日21時26分以降に発生した熊本県を中心とする一連の地震活動(「平成28年(2016年)熊本地震」.以下「熊本地震」という.)に伴い,電子基準点の観測データにより,九州地方の広い範囲で地殻変動が観測された.特に,4月16日に発生したマグニチュード(M)7.3の地震では,熊本県阿蘇郡南阿蘇村の電子基準点「長陽」が南西方向に約98cm移動するなど非常に大きな地殻変動が確認された.この地殻変動は,GEONETの定常解析だけでなく, 電子基準点リアルタイム解析システム(REGARD)によっても捉えられた.また,この地震の発生後,一連の地震活動域を中心に余効変動が観測されており,地震発生から4ヶ月を経過した時点において継続している.
 本稿では,熊本地震に伴い観測された地殻変動,地震に伴い緊急に実施した電子基準点の傾斜の確認作業及びソーラーパネルの設置作業について報告する.
 
 
Responses of GSI to the Kumamoto Earthquake
 
地理地殻活動研究センター   矢来博司・小林知勝・森下遊・藤原智
測地観測センター   檜山洋平・川元智司
測地部   上芝晴香・三浦優司・宮原伐折羅
 
【要 旨】
 熊本地震では,国土地理院が運用するGEONETやだいち2号の干渉SARにより,地震に伴う地殻変動が詳細に捉えられた.これらの地殻変動に基づき,震源断層モデルの推定を行った.
 前震(4月14日,M6.5及び4月15日,M6.4)では日奈久断層帯の高野-白旗区間に相当する位置に震源断層が推定された.西に傾き下がる高角の右横ずれ断層で,滑り量は約1.1m,地震規模はMw6.2と推定された.本震(4月16日,M7.3)については布田川断層帯布田川区間とその東側延長部,及び日奈久断層帯の高野-白旗区間に相当する位置に震源断層が推定された.布田川区間に相当する断層面は北西傾斜,東側延長部は南東傾斜で,両者は直接的には連続していない.断層の滑り方向は右横ずれで,最も大きな変位が推定された布田川区間は顕著な正断層成分を伴っている.布田川区間では滑り分布モデルで最大約5mの滑りが推定された.推定された地震規模はMw7.1である.
 地殻変動から推定された断層変位や地震規模は,本震については,地震調査研究推進本部地震調査委員会による長期評価と概ね調和的である.一方,前震については断層変位方向は整合するものの,地震規模は長期評価に比べて小さい.
 これらの前震及び本震の震源断層モデルは,地震調査委員会や地震予知連絡会に報告され,熊本地震の地震活動の評価に活用された.
 
 
Revision of the Results of Control Points after the Kumamoto Earthquake
 
測地部   大滝修・井上武久・植田勲・山下達也
測地観測センター   山口和典・白井宏樹・鈴木啓・三木原香乃
 
【要 旨】
 熊本県付近を中心とする九州中部の広い範囲では,平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という.)に伴って顕著な地殻変動が発生した.そのため,この地域の基準点(電子基準点,三角点,水準点)は,位置が大きく変動し公共測量等で利用できないことが想定されたことから,地震直後の4月15日と16日の2回にわたって測量成果の公表を停止した.
 国土地理院では,これらの基準点の復旧測量に取り組み,5月19日,6月16日には電子基準点の測量成果を,8月31日には水準点と震源断層に近い三角点の測量成果をそれぞれ公表した.また,震源断層から離れた三角点の測量成果,三角点の新・旧測量成果の差(地殻変動量)から求めた補正パラメータ,補正パラメータによって改算した三角点の測量成果を9月12日に公表した.
 
 
Responses of National Mapping Department to the Kumamoto Earthquakes
 
基本図情報部   災害対策班
 
【要 旨】
 平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という.)では,広範囲にわたり土砂崩壊,地表亀裂が発生し,橋梁崩落や建物倒壊等の甚大な被害が生じた.
 国土地理院は,災害対策基本法(昭和36年法律第223号)における指定行政機関として「災害に関する情報の収集及び伝達に努めなければならない」とされており,また中央防災会議によって作成された防災基本計画(平成28年5月)においても,「航空機等による目視,撮影等による情報収集を行うもの」,「画像情報の利用による被害規模の把握を行うもの」とされている.
 そこで熊本地震による被害に関して,基本図情報部では測量用航空機「くにかぜIII」(以下「くにかぜIII」という.)等による緊急撮影・提供,応急復旧対策写真図及び基図の作成並びに提供を行った.本稿ではその取り組みについて報告する.
 
 
Responses of Geographic Department to the Kumamoto Earthquake
 
応用地理部   災害対策班
 
【要 旨】
 応用地理部では災害対策班が中心となって,平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という.)の被害状況について,撮影された空中写真から土砂崩壊地を判読する作業を行った.また,今回の地震により地表に発生した亀裂の状況を計測する目的で,航空レーザ測量を行った.本稿ではこれらの取り組みについて報告する.
 
 
Mapping of surface cracks derived from the Kumamoto Earthquake
 
応用地理部   吉田一希・関口辰夫
地理地殻活動研究センター   中埜貴元
 
【要 旨】
 応用地理部と地理地殻活動研究センターは,平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という.)発生後に国土地理院が撮影した空中写真等を用いて,地表の亀裂を判読し,亀裂分布図を作成・公表した.判読は,一定の取得基準のもと,複数人で空中写真が撮影されるごとに順次行った.一部地区においては,無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle)(以下「UAV」という.)により撮影された動画を用いた判読も行った.今回判読した亀裂は,地震による断層のずれが地表に現れたもの,斜面の崩壊等により生じたもの,地震動や液状化によって生じたもの等であり,現地で確認できるすべての亀裂を取得できている訳ではない.広域の被害状況の把握や復旧・復興計画の基礎資料として関係機関に配布し,地理院地図や「平成28年熊本地震に関する情報」サイト(以下「熊本地震」サイトという.)にて公開した.
 
 
Responses of Geospatial Information Department to the Kumamoto Earthquake
 
地理空間情報部   災害対策班
 
【要 旨】
 平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という.)に関して地理空間情報部が行った,様々な地理空間情報の公開・提供による災害対応について報告する.
 
 
Responses of Kyushu Regional Survey Department to the Kumamoto Earthquake
 
九州地方測量部
 
【要 旨】
 九州地方測量部は,国土地理院本院と調整を図りつつ,平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」という.)の発生直後から現地の地形を把握し被害状況を取りまとめるための各種資料を大判出力し,熊本県庁に設置された非常災害現地対策本部(以下「政府現地対策本部」という.)をはじめ被災した市町村の担当者に直接手渡しで届け,提供資料の説明を行った.また,提供時には測量や地図等に関する要望調査を実施した.その結果,「堤防補修を検討するための測量」や「出水期の住民避難を検討するための広域の地盤変動状況図」等の要望を受け,本院と連携して迅速に対応した.本稿ではこれらの取り組みについて報告する.
 
 

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