最終更新日:2015年12月28日

国土地理院時報(2015,127集)要旨

小特集:御嶽山噴火への対応

An effective synchronization method of GSI Tiles using a GSI Tile List
 
地理空間情報部  藤村 英範
 
【要 旨】
 電子地形図(タイル)をはじめとする基本測量成果を含み,政府オープンデータ戦略に基づいて国土地理院コンテンツ利用規約に従い提供されるウェブ地図用地理空間情報「地理院タイル」は,基本図(地形図),写真(オルソ画像),主題図,災害情報を含む1,000レイヤを超える情報セットとなっている.
 これら地理院タイルは,もっぱらインターネット提供により提供を行う方針となっており,情報普及課が運用する地理院タイル用ウェブサーバである「地理院地図サーバ」の可用性を確保しつつ,測量法第27条第2項に基づくインターネット提供を適切に実施する必要があった.このため,地理院地図サーバから提供する地理院タイル一枚一枚の所在情報である「地理院タイル目録」を整備し,提供実験に供している.
 地理院タイル一枚一枚の更新日付や MD5メッセージダイジェスト を記録した地理院タイル目録を利用することにより,地理院タイルのダウンロード及び同期を効率的に進めることができる.国土地理院が実施している,週あたり数万タイルに及ぶ基本測量成果の迅速更新の状況を反映するため,地理院タイル目録の更新は週次のタイミングで実施しているところである.
 さらに,地理院タイル目録を用いて実際に地理院タイルを効率的にダウンロードし,ダウンロードした地理院タイルを地理院地図サーバの最新の地理院タイルに効率的に同期できるプログラム(リファレンス実装) qdltc を作成し公開した.qdltc を用いると,電子地形図(タイル)である地理院タイル(標準地図)約5,000万タイルを7日間程度でダウンロードでき,週毎の最新の地理院タイルへの同期(約数万タイル)を7時間程度で実施することができる.
 
  本文[PDF:557KB]
Generating tile-based dataset from old aerial photo data.
 
地理空間情報部 髙桑紀之
 
【要 旨】
 国土地理院では,戦前から現在までの空中写真を保管し,公開している.このうち1974年以前に撮影された古いものについては,個々の写真を地図と重ねて見ることができず,撮影対象の位置などを特定することが難しかった.
 そこで昨今の高度な画像処理技術を活用して,これらの写真を簡便且つ広範囲に接合及びタイル化し,地理院地図上に重ねて表示できる手法を検討した.
 更に検討した手法を使って米軍が戦後撮影した空中写真(以下,「米軍写真」という.)について政令指定都市近辺(多くは中心部)をタイル化した.これにより,地理院地図上で既に公開されている1974年以降の写真と比較でき,時系列的に国土の変遷を見ることができるようになった.
 今後は,陸地測量部時代の空中写真についても今回検討した手法を適用してタイル化し,過去の空中写真のタイルデータを拡充していく予定である.
  本文[PDF:3,281KB]
Development of Web-Based Flood Simulation Search System at an Arbitrary Point
 
応用地理部   廣瀬勝・佐藤壮紀・稲澤容代・山本洋一
 
【要 旨】
 平成25年の水防法の改正で,地下街,高齢者等の要配慮者利用施設,大規模工場等について,避難確保計画又は浸水防止計画の作成,訓練の実施,自衛水防組織の設置等が規定された.これらを支援するため,国土地理院と国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水防企画室は,各地方整備局及び都道府県が整備する「洪水浸水想定区域図」を地理院地図上に表示し,任意の地点において洪水による浸水リスクを簡単に把握できる「地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)」を開発・公開した.
  本文[PDF1,502KB]
Development of geomagnetic variation models around Japan by applying Natural Orthogonal Component (NOC) method
 
測地部  阿部聡・宮原伐折羅
 
【要 旨】
 方位を知る方法には,古くから方位磁石が使用されてきた.方位磁石を用いると,北の方角を知ることができるが,方位磁石の指す方向は,地球磁場の北極である「磁北」で,地球の幾何学的な北極である「真北」とはわずかに異なる.真北と方位磁石の指す磁北の差は偏角と呼ばれ,方位を測定した場所ごとに異なる.さらに,磁北は時間に伴いその位置を変えるため,偏角は時間的にも変化する.
 国土地理院では,日本全国をカバーする地形図を作成し,各地形図にはその場所における偏角値を記載している.地形図は従来,図郭ごとに分かれた紙地図であったが,最近はデジタル化されてシームレスとなり,GNSS測位を用いることで地形図上の場所を容易に得ることが可能となった.方角も,カーナビやスマートフォンに搭載された磁気センサーを用いて容易に知ることができるが,磁気センサーの示す北「磁北」と地形図の北「真北」が異なることから,偏角の値を補正しなければ,地形図上で正しい方角を示すことはできない.様々な情報が電子化された社会においても,偏角値は依然として重要な地理空間情報の一つである.ただし,偏角値は,時間的・空間的に変化するため,必要な精度の偏角情報を社会に提供するには,地磁気観測を継続し,観測に基づいた正確な偏角値を更新し続ける必要がある.
 国土地理院では,日本全国の磁場分布とその永年変化を把握するため,1950年頃から地磁気測量を実施してきた.その成果は,10年ごとに作成される磁気図として公開されている.最新の磁気図は2011年に公開した磁気図2010.0年値で,今後は5年ごとに更新する.磁気図2010.0年値の作成では,空間的に離散的な地磁気の時系列データに対して,数学的な解析手法を用いて全国を網羅する磁場変化モデルを作成する「地磁気時空間モデル」が開発された.今回はこのモデルの時間分解能をより細かくするよう拡張し,全国9点の地磁気連続観測データを同化したモデルを開発した.精度評価では,モデルは,全磁力5nT程度,磁場のX,Z成分で5nT,Y成分で10nTの精度を持つことが確認された.
 
  本文[PDF:4,521KB]
Evaluation of interpolation method for geomagnetic values applied for development of geomagnetic charts of Japan
 
測地部  阿部聡・宮原伐折羅
 
【要 旨】
 国土地理院では,日本全国の磁場分布とその永年変化を把握するために地磁気測量を実施し,得られた磁場分布を磁気図として公開している.最新の磁気図は2011年に公表した磁気図2010.0年値で,磁場5成分(偏角D,伏角I,水平分力H,鉛直分力Z,全磁力F)の2010年1月1日における空間分布を示す図である.最新の磁気図では,日本全国の地磁気のモデル値を計算する「地磁気時空間モデル」を新たに作成し,これを用いて磁気図を作成した.今後はこのモデルを使用して,5年の更新間隔で磁気図を更新する.地磁気時空間モデルを用いると,任意の時期の任意の場所における磁場の変位を得ることができるため,これを加味することで,過去に地磁気測量を実施したことがある日本全国の一等及び二等磁気点上において磁場のモデル値を得ることができる.得られたモデル値は磁気点のみに存在し,点以外の場所では値が得られないため,隙間なく全国を網羅する磁気図を作成するためには,各磁気点におけるモデル値を空間補間することで,地磁気値が等間隔に配列したデータを作成する必要がある.しかし,この手法では,周囲のデータと可能な限り整合するよう配列データを作成するため,作成したデータと元の入力モデル値は完全には一致せず,残差が生じる.補間にあたっては,できるだけ残差を小さく,地磁気の空間分布を適切に表現する最適な空間補間手法を選択する必要がある.そこで,より精度のよい磁気図の作成を目的として,複数の手法について再現性の評価と一個抜き交差検証による精度評価を行い,最適な空間補間手法の検証を行った.
 
  本文[PDF:3,790KB]
Development of heli-image processing system
 
基本図情報部   宮地邦英・大野裕幸
 
【要 旨】
 国土地理院は,地方整備局等の防災ヘリコプターが撮影した映像を「統合災害情報システム」(以下,「DiMAPS」という)で地図と重ね合わせて表示させるため,国土交通本省で導入を進めている「ヘリコプター直接衛星通信システム」(以下,「ヘリサットシステム」という)で伝送された映像から静止画を切り出し,リアルタイムに地図と重なるオルソ画像に変換することができる「ヘリ画像処理システム」を平成26年度に開発した.
 その結果,一定の条件下で防災ヘリの撮影映像をDiMAPS上でリアルタイムに地図と重ね合わせて表示できるようになった.
 
  本文[PDF:2,917KB]
Revision of “Planimetric reports on the land area by prefectures and municipalities in Japan”
 
基本図情報部    塩見和弘・梅沢武・服部武志・齋藤勘一
 
【要 旨】
 国土地理院では,電子国土基本図の全国整備が完了したことを受け,平成元年11月以来,26年ぶりに「全国都道府県市区町村別面積調(めんせきしらべ)」(以下,面積調という)について,平成26年度から新たに電子国土基本図を基にした新たな方式でとりまとめ,国土地理院技術資料(E2-No.61)として公表したのでその内容を報告する.  
  本文[PDF:981KB]
Report on the 28th United Nations Group of Experts of Geographical Names
 
基本図情報部   中村孝之・笹川啓 ・水越博子
 
【要 旨】
 2014年4月28日から5月2日まで,米国ニューヨークの国連本部において,第28回国連地名専門家グループ会合が開催された.会合には,世界各国から地名を取り扱う国の機関,大学等の専門家らが参加し,各ワーキンググループ,各地域/言語部会,各国からのレポートを元に議論が進められた.国土地理院から本会合に参加したので,その概要を報告する.
 
  本文[PDF:786KB]

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