国土地理院時報(2015,127集)要旨
小特集:御嶽山噴火への対応
Responses of GSI to the Eruption of Mt.Ontake Volcano
企画部 防災推進室
【要 旨】
国土地理院は,大規模自然災害の発生時において救命・救助活動及び復興に寄与するため,関係機関へ地理空間情報の提供を行っている.御嶽山噴火に関しても,国土交通本省をはじめとする関係行政機関(以下「関係機関」という.)へ地理空間情報を提供した.本稿ではその取り組みについて報告する.
本文[PDF:488KB]
Aerial Photography and Airborne SAR Observation in response to the Eruption of Mt. Ontake Volcano
基本図情報部 災害対策班
【要 旨】
平成26(2014)年9月27日の御嶽山噴火に対する国土地理院基本図情報部の災害対応について報告する.
本文[PDF:1,177KB]
Responses of the Geospatial Information Dept. of GSI to the Eruption of Mt.Ontake Volcano
地理空間情報部 災害対策班
【要 旨】
平成26年9月27日に発生した御嶽山噴火に関する地理空間情報部の災害対応について報告する.
本文[PDF:671KB]
Detection of Deformation Triggered by Eruption of Mt. Ontake Volcano with InSAR Using ALOS-2 data
測地部 山田晋也・森下 遊・和田弘人・吉川忠男・山中雅之・藤原 智
地理地殻活動研究センター 飛田幹男・矢来博司・小林知勝
地理地殻活動研究センター 飛田幹男・矢来博司・小林知勝
【要 旨】
国土地理院は,2006年から2011年まで運用されていた陸域観測技術衛星「だいち」に搭載されているLバンド合成開口レーダーの観測データを用いて,全国の地盤沈下,地すべり及び火山地域を対象に定常的にSAR干渉解析を実施してきた.また,災害発生時には災害状況の把握等を目的として,緊急観測を実施してきた.
2014年5月に後継機である陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が打ち上げられた.2014年9月27日に発生した御嶽山の噴火に対して,定常運用前ではあったがだいち2号による緊急観測が実施され,この観測データを用いて地表変位を求める緊急解析を行った.解析結果は直ちに国土地理院のWebページに掲載するとともに,地理院地図上にSAR干渉画像を重ね合わせることができるデータを公開した.
2014年5月に後継機である陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が打ち上げられた.2014年9月27日に発生した御嶽山の噴火に対して,定常運用前ではあったがだいち2号による緊急観測が実施され,この観測データを用いて地表変位を求める緊急解析を行った.解析結果は直ちに国土地理院のWebページに掲載するとともに,地理院地図上にSAR干渉画像を重ね合わせることができるデータを公開した.
本文[PDF:1,153KB]
Response of Geodetic Observation Center to the Eruption of Mt.Ontake Volcano
測地観測センター 災害対策班
【要 旨】
測地観測センター災害対策班は平成26年9月の御嶽山噴火に際し,GEONET(電子基準点等)の緊急解析を行った.GEONETの解析結果は,メールやWebページで関係機関等へ情報提供した.また,御嶽山周辺で電子基準点現地調査を行い,観測点環境が良好であることを確認した.
Reconstruction of Soma tide station, Fukushima Prefecture, Japan
測地観測センター 佐藤雄大・田邊壽男・中野博美
【要 旨】
福島県相馬港に昭和48年(1973)に開設された相馬験潮場は,長期にわたり潮位の連続観測を行ってきたことで,土地の高さの基準を与える役割を果たすとともに,その潮位データは防災,研究等の分野にも用いられてきた.しかし,相馬港は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」により大きな被害を受け,特に襲来した巨大津波によって相馬験潮場は潮位観測設備を含む建屋全てが流失した.その後,国土地理院では潮位観測を速やかに再開すべく福島県相馬港検潮所において潮位観測装置を設置し,臨時の潮位観測を開始した.その一方で相馬験潮場を再建するための準備を進め,平成26年11月に建屋が完成し,翌12月から試験観測を開始した.新しい相馬験潮場は,従前と比べ装置,電源及び通信が強化されており,災害時においても安定した観測及びデータ通信を行うことができる.
本文[PDF:1,132KB]
Research of Leveling Error caused by mechanical characteristic of Electronic Level
測地部 澤田正典
【要 旨】
水準測量における季節的な誤差要因の発生メカニズムを探る調査研究を実施したところ,電子レベルの温度特性,コンペンセータのヒステリシス特性,そして水準測量用三脚の直射日光による変形等に起因するこれまでに未発見の偶然誤差及び系統誤差の存在を確認したので報告する.
本文[PDF:4,453KB]
Crustal and surface deformation of the northern Nagano earthquake in 2014 detected by InSAR using ALOS-2 data
測地部 森下遊・山田晋也・山中雅之・吉川忠男・和田弘人
地理地殻活動研究センター 矢来博司・中埜貴元・飛田幹男・小林知勝・中島秀敏・神谷泉
地理地殻活動研究センター 矢来博司・中埜貴元・飛田幹男・小林知勝・中島秀敏・神谷泉
【要 旨】
国土地理院は,大規模地震発生時に,地震に伴う地殻変動を把握するため,陸域観測技術衛星「だいち」のSARデータを使用して,SAR干渉解析を実施してきた.2011年5月にだいちは運用を終了したが,2014年5月にはだいちの後継機である「だいち2号」が打ち上げられ,再びSAR干渉解析に必要なデータを取得することが可能になった.
2014年11月22日に長野県北部を震源とする地震が発生した.地震に伴う地殻変動を把握するため,だいち2号の緊急観測を要請し,緊急解析を実施した.この地震がだいち2号にとって初めての地震に伴う地殻変動を捉えた事例となった.だいち2号はだいちよりも災害対応の迅速性が大きく向上しており,迅速にSARデータを入手することができた.SAR干渉解析結果から,地震に伴う地殻変動や地表地震断層等の地表変形の詳細を把握することができ,また,断層モデルの推定に貢献した.
2014年11月22日に長野県北部を震源とする地震が発生した.地震に伴う地殻変動を把握するため,だいち2号の緊急観測を要請し,緊急解析を実施した.この地震がだいち2号にとって初めての地震に伴う地殻変動を捉えた事例となった.だいち2号はだいちよりも災害対応の迅速性が大きく向上しており,迅速にSARデータを入手することができた.SAR干渉解析結果から,地震に伴う地殻変動や地表地震断層等の地表変形の詳細を把握することができ,また,断層モデルの推定に貢献した.
本文[PDF:3,799KB]
Advancement of Utilizing Location information code for Location-Based Services
測地部 土井弘充・大滝修・小門研亮・豊福隆史
【要 旨】
国土地理院では,地理空間情報を高度に活用する社会の実現に向けて,場所情報コードの活用推進を図っている.場所情報コードは,ある場所に固定されたモノを識別し,必要な情報を結び付けられるようにするためのコードであり,様々な位置情報サービスにおいて共通基盤としての利活用が期待される.
測地部では,平成22年度から26年度まで2期に渡って産学官横断的な共同研究を実施し,場所情報コードの仕組みを構築するとともに,公物管理や障がい者支援など様々な位置情報サービス分野への活用を検討してきた.また,位置情報基盤整備のためのガイドラインの整備や場所情報コード閲覧システムとそのAPIを試験公開するなど活用推進に取り組んでいるところである.
測地部では,平成22年度から26年度まで2期に渡って産学官横断的な共同研究を実施し,場所情報コードの仕組みを構築するとともに,公物管理や障がい者支援など様々な位置情報サービス分野への活用を検討してきた.また,位置情報基盤整備のためのガイドラインの整備や場所情報コード閲覧システムとそのAPIを試験公開するなど活用推進に取り組んでいるところである.
本文[PDF:2,091KB]
An activity for the promotion of geospatial information for disaster prevention - Public offering of portable application for personal use -
応用地理部 中澤尚・木村幸一・登坂昇
【要 旨】
応用地理部では,災害時に多くの人が利用する公共施設や緊急避難場所,避難所(以下「避難所等」という.)の情報,ハザードマップ情報などの防災に関する地理空間情報を広く活用できる防災地図共用データベース(仮称)(以下「共用データベース」という.)の構築を目指して,これに取り込むべき防災地理空間情報の検討,及びこれらの情報を用いて災害時等に住民や観光客等の安全な避難等を図るための防災アプリケーション(以下「防災アプリ」という.)の公募を平成26年4月に実施した.応募のあった防災アプリについては,7月,10月に2回の審査委員会を開催し,それぞれ機能の優れた防災アプリを選定し公表した.
また,選定した防災アプリの紹介を防災関連のイベント等で行うとともに,11月には和歌山県海南市の防災訓練に合わせて,選定防災アプリを使った避難誘導実証実験を実施した.
これらの取り組みを通し,得られた知見を基に共用データベース構築のための検討を行った.
また,選定した防災アプリの紹介を防災関連のイベント等で行うとともに,11月には和歌山県海南市の防災訓練に合わせて,選定防災アプリを使った避難誘導実証実験を実施した.
これらの取り組みを通し,得られた知見を基に共用データベース構築のための検討を行った.
本文[PDF:1,129KB]
UN General Assembly Resolution on Global Geodetic Reference Frame and contributions of GSI
測地部 宮原伐折羅
【要 旨】
国際連合は,平成27年2月26日,第69回総会第80回本会議において,地球規模の測地基準座標系に関して,加盟国全体で連携して維持することを決議した.これは,国際連合が測量分野においてはじめて行った総会決議である.決議は,測地基準座標系が社会・経済的に重要であることを認めて,途上国の能力開発に対して技術支援を強化すること,各国が自国の測地観測を行う施設を適切に維持・改良することを明記した.決議により,特に途上国において地球規模の測地基準座標系の重要性に認識が高まり,その導入の促進が期待される.国土地理院は決議成立に向けた取組みにはじめから参加し,決議の素案を作成する活動に参加するなど,決議の採択に貢献してきた.今後も引き続き着実に測地観測を継続することで地球規模の測地基準座標系の構築・維持に貢献するとともに,豊富な経験と先端の技術を生かしてGGRF未導入の国々に対して技術的な支援を行っていく.
本文[PDF:265KB]
Geomorphological Survey for Volcanic Disaster Mitigation "Mt. Niigata-Yakeyama"
応用地理部 坂井尚登・倉田憲
【要 旨】
国土地理院では,新潟焼山地域の火山防災地形調査を実施し,調査結果から火山土地条件図を作成し数値データ化を行った.本稿では,新潟焼山の火山防災地形調査と火山地形について報告する.
本文[PDF:4,069KB]
An effective synchronization method of GSI Tiles using a GSI Tile List
地理空間情報部 藤村 英範
【要 旨】
電子地形図(タイル)をはじめとする基本測量成果を含み,政府オープンデータ戦略に基づいて国土地理院コンテンツ利用規約に従い提供されるウェブ地図用地理空間情報「地理院タイル」は,基本図(地形図),写真(オルソ画像),主題図,災害情報を含む1,000レイヤを超える情報セットとなっている.
これら地理院タイルは,もっぱらインターネット提供により提供を行う方針となっており,情報普及課が運用する地理院タイル用ウェブサーバである「地理院地図サーバ」の可用性を確保しつつ,測量法第27条第2項に基づくインターネット提供を適切に実施する必要があった.このため,地理院地図サーバから提供する地理院タイル一枚一枚の所在情報である「地理院タイル目録」を整備し,提供実験に供している.
地理院タイル一枚一枚の更新日付や MD5メッセージダイジェスト を記録した地理院タイル目録を利用することにより,地理院タイルのダウンロード及び同期を効率的に進めることができる.国土地理院が実施している,週あたり数万タイルに及ぶ基本測量成果の迅速更新の状況を反映するため,地理院タイル目録の更新は週次のタイミングで実施しているところである.
さらに,地理院タイル目録を用いて実際に地理院タイルを効率的にダウンロードし,ダウンロードした地理院タイルを地理院地図サーバの最新の地理院タイルに効率的に同期できるプログラム(リファレンス実装) qdltc を作成し公開した.qdltc を用いると,電子地形図(タイル)である地理院タイル(標準地図)約5,000万タイルを7日間程度でダウンロードでき,週毎の最新の地理院タイルへの同期(約数万タイル)を7時間程度で実施することができる.
これら地理院タイルは,もっぱらインターネット提供により提供を行う方針となっており,情報普及課が運用する地理院タイル用ウェブサーバである「地理院地図サーバ」の可用性を確保しつつ,測量法第27条第2項に基づくインターネット提供を適切に実施する必要があった.このため,地理院地図サーバから提供する地理院タイル一枚一枚の所在情報である「地理院タイル目録」を整備し,提供実験に供している.
地理院タイル一枚一枚の更新日付や MD5メッセージダイジェスト を記録した地理院タイル目録を利用することにより,地理院タイルのダウンロード及び同期を効率的に進めることができる.国土地理院が実施している,週あたり数万タイルに及ぶ基本測量成果の迅速更新の状況を反映するため,地理院タイル目録の更新は週次のタイミングで実施しているところである.
さらに,地理院タイル目録を用いて実際に地理院タイルを効率的にダウンロードし,ダウンロードした地理院タイルを地理院地図サーバの最新の地理院タイルに効率的に同期できるプログラム(リファレンス実装) qdltc を作成し公開した.qdltc を用いると,電子地形図(タイル)である地理院タイル(標準地図)約5,000万タイルを7日間程度でダウンロードでき,週毎の最新の地理院タイルへの同期(約数万タイル)を7時間程度で実施することができる.
本文[PDF:557KB]
Publication of a draft manual on Multi-GNSS Surveying
測地観測センター 山尾裕美・鎌苅裕紀・万所求・古屋智秋・辻宏道・後藤清
【要 旨】
国土地理院では,平成23年度から平成26年度までの国土交通省総合技術開発プロジェクト「高度な国土管理のための複数の衛星測位システム(マルチGNSS)による高精度測位技術の開発」の研究成果や外部有識者による検討を踏まえ,GPS,GLONASS,Galileo及び準天頂衛星システムといったGNSSの信号を単独もしくは複数組み合わせて用いる測量により,新点である基準点の位置を定める作業方法を示した「マルチGNSS測量マニュアル(案) -近代化GPS,Galileo等の活用-」を制定した.
本稿では,マルチGNSS測量マニュアル(案)の概要等について報告する.
本稿では,マルチGNSS測量マニュアル(案)の概要等について報告する.
本文[PDF:954KB]
Evaluation of the image-based modeling software using photographs taken from UAV
基本図情報部 早坂寿人・大野裕幸・大塚力・関谷洋史・瀧繁幸
【要 旨】
マルチローター方式の無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle;以下「UAV」という.)を用いて,国営ひたち海浜公園において自律飛行による空中写真の撮影を行った.その後,撮影した写真から3種類の三次元モデリングソフトウェアを用いてそれぞれ三次元モデルを作成した.作成した三次元モデルの精度を確認するため,三次元モデルから作成したオルソ画像及び点群データと現地で観測した検証点データを用いて,各条件での精度を対比した.更に,得られた三次元モデルの視覚的評価を実施した.以上により,利用が進んでいる市販の3種類の三次元モデリングソフトウェアの精度検証を実施した.
本文[PDF:2,870KB]
Generating tile-based dataset from old aerial photo data.
地理空間情報部 髙桑紀之
【要 旨】
国土地理院では,戦前から現在までの空中写真を保管し,公開している.このうち1974年以前に撮影された古いものについては,個々の写真を地図と重ねて見ることができず,撮影対象の位置などを特定することが難しかった.
そこで昨今の高度な画像処理技術を活用して,これらの写真を簡便且つ広範囲に接合及びタイル化し,地理院地図上に重ねて表示できる手法を検討した.
更に検討した手法を使って米軍が戦後撮影した空中写真(以下,「米軍写真」という.)について政令指定都市近辺(多くは中心部)をタイル化した.これにより,地理院地図上で既に公開されている1974年以降の写真と比較でき,時系列的に国土の変遷を見ることができるようになった.
今後は,陸地測量部時代の空中写真についても今回検討した手法を適用してタイル化し,過去の空中写真のタイルデータを拡充していく予定である.
そこで昨今の高度な画像処理技術を活用して,これらの写真を簡便且つ広範囲に接合及びタイル化し,地理院地図上に重ねて表示できる手法を検討した.
更に検討した手法を使って米軍が戦後撮影した空中写真(以下,「米軍写真」という.)について政令指定都市近辺(多くは中心部)をタイル化した.これにより,地理院地図上で既に公開されている1974年以降の写真と比較でき,時系列的に国土の変遷を見ることができるようになった.
今後は,陸地測量部時代の空中写真についても今回検討した手法を適用してタイル化し,過去の空中写真のタイルデータを拡充していく予定である.
本文[PDF:3,281KB]
Development of Web-Based Flood Simulation Search System at an Arbitrary Point
応用地理部 廣瀬勝・佐藤壮紀・稲澤容代・山本洋一
【要 旨】
平成25年の水防法の改正で,地下街,高齢者等の要配慮者利用施設,大規模工場等について,避難確保計画又は浸水防止計画の作成,訓練の実施,自衛水防組織の設置等が規定された.これらを支援するため,国土地理院と国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水防企画室は,各地方整備局及び都道府県が整備する「洪水浸水想定区域図」を地理院地図上に表示し,任意の地点において洪水による浸水リスクを簡単に把握できる「地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)」を開発・公開した.
本文[PDF1,502KB]
Development of geomagnetic variation models around Japan by applying Natural Orthogonal Component (NOC) method
測地部 阿部聡・宮原伐折羅
【要 旨】
方位を知る方法には,古くから方位磁石が使用されてきた.方位磁石を用いると,北の方角を知ることができるが,方位磁石の指す方向は,地球磁場の北極である「磁北」で,地球の幾何学的な北極である「真北」とはわずかに異なる.真北と方位磁石の指す磁北の差は偏角と呼ばれ,方位を測定した場所ごとに異なる.さらに,磁北は時間に伴いその位置を変えるため,偏角は時間的にも変化する.
国土地理院では,日本全国をカバーする地形図を作成し,各地形図にはその場所における偏角値を記載している.地形図は従来,図郭ごとに分かれた紙地図であったが,最近はデジタル化されてシームレスとなり,GNSS測位を用いることで地形図上の場所を容易に得ることが可能となった.方角も,カーナビやスマートフォンに搭載された磁気センサーを用いて容易に知ることができるが,磁気センサーの示す北「磁北」と地形図の北「真北」が異なることから,偏角の値を補正しなければ,地形図上で正しい方角を示すことはできない.様々な情報が電子化された社会においても,偏角値は依然として重要な地理空間情報の一つである.ただし,偏角値は,時間的・空間的に変化するため,必要な精度の偏角情報を社会に提供するには,地磁気観測を継続し,観測に基づいた正確な偏角値を更新し続ける必要がある.
国土地理院では,日本全国の磁場分布とその永年変化を把握するため,1950年頃から地磁気測量を実施してきた.その成果は,10年ごとに作成される磁気図として公開されている.最新の磁気図は2011年に公開した磁気図2010.0年値で,今後は5年ごとに更新する.磁気図2010.0年値の作成では,空間的に離散的な地磁気の時系列データに対して,数学的な解析手法を用いて全国を網羅する磁場変化モデルを作成する「地磁気時空間モデル」が開発された.今回はこのモデルの時間分解能をより細かくするよう拡張し,全国9点の地磁気連続観測データを同化したモデルを開発した.精度評価では,モデルは,全磁力5nT程度,磁場のX,Z成分で5nT,Y成分で10nTの精度を持つことが確認された.
国土地理院では,日本全国をカバーする地形図を作成し,各地形図にはその場所における偏角値を記載している.地形図は従来,図郭ごとに分かれた紙地図であったが,最近はデジタル化されてシームレスとなり,GNSS測位を用いることで地形図上の場所を容易に得ることが可能となった.方角も,カーナビやスマートフォンに搭載された磁気センサーを用いて容易に知ることができるが,磁気センサーの示す北「磁北」と地形図の北「真北」が異なることから,偏角の値を補正しなければ,地形図上で正しい方角を示すことはできない.様々な情報が電子化された社会においても,偏角値は依然として重要な地理空間情報の一つである.ただし,偏角値は,時間的・空間的に変化するため,必要な精度の偏角情報を社会に提供するには,地磁気観測を継続し,観測に基づいた正確な偏角値を更新し続ける必要がある.
国土地理院では,日本全国の磁場分布とその永年変化を把握するため,1950年頃から地磁気測量を実施してきた.その成果は,10年ごとに作成される磁気図として公開されている.最新の磁気図は2011年に公開した磁気図2010.0年値で,今後は5年ごとに更新する.磁気図2010.0年値の作成では,空間的に離散的な地磁気の時系列データに対して,数学的な解析手法を用いて全国を網羅する磁場変化モデルを作成する「地磁気時空間モデル」が開発された.今回はこのモデルの時間分解能をより細かくするよう拡張し,全国9点の地磁気連続観測データを同化したモデルを開発した.精度評価では,モデルは,全磁力5nT程度,磁場のX,Z成分で5nT,Y成分で10nTの精度を持つことが確認された.
本文[PDF:4,521KB]
Evaluation of interpolation method for geomagnetic values applied for development of geomagnetic charts of Japan
測地部 阿部聡・宮原伐折羅
【要 旨】
国土地理院では,日本全国の磁場分布とその永年変化を把握するために地磁気測量を実施し,得られた磁場分布を磁気図として公開している.最新の磁気図は2011年に公表した磁気図2010.0年値で,磁場5成分(偏角D,伏角I,水平分力H,鉛直分力Z,全磁力F)の2010年1月1日における空間分布を示す図である.最新の磁気図では,日本全国の地磁気のモデル値を計算する「地磁気時空間モデル」を新たに作成し,これを用いて磁気図を作成した.今後はこのモデルを使用して,5年の更新間隔で磁気図を更新する.地磁気時空間モデルを用いると,任意の時期の任意の場所における磁場の変位を得ることができるため,これを加味することで,過去に地磁気測量を実施したことがある日本全国の一等及び二等磁気点上において磁場のモデル値を得ることができる.得られたモデル値は磁気点のみに存在し,点以外の場所では値が得られないため,隙間なく全国を網羅する磁気図を作成するためには,各磁気点におけるモデル値を空間補間することで,地磁気値が等間隔に配列したデータを作成する必要がある.しかし,この手法では,周囲のデータと可能な限り整合するよう配列データを作成するため,作成したデータと元の入力モデル値は完全には一致せず,残差が生じる.補間にあたっては,できるだけ残差を小さく,地磁気の空間分布を適切に表現する最適な空間補間手法を選択する必要がある.そこで,より精度のよい磁気図の作成を目的として,複数の手法について再現性の評価と一個抜き交差検証による精度評価を行い,最適な空間補間手法の検証を行った.
本文[PDF:3,790KB]
Development of heli-image processing system
基本図情報部 宮地邦英・大野裕幸
【要 旨】
国土地理院は,地方整備局等の防災ヘリコプターが撮影した映像を「統合災害情報システム」(以下,「DiMAPS」という)で地図と重ね合わせて表示させるため,国土交通本省で導入を進めている「ヘリコプター直接衛星通信システム」(以下,「ヘリサットシステム」という)で伝送された映像から静止画を切り出し,リアルタイムに地図と重なるオルソ画像に変換することができる「ヘリ画像処理システム」を平成26年度に開発した.
その結果,一定の条件下で防災ヘリの撮影映像をDiMAPS上でリアルタイムに地図と重ね合わせて表示できるようになった.
その結果,一定の条件下で防災ヘリの撮影映像をDiMAPS上でリアルタイムに地図と重ね合わせて表示できるようになった.
本文[PDF:2,917KB]
Revision of “Planimetric reports on the land area by prefectures and municipalities in Japan”
基本図情報部 塩見和弘・梅沢武・服部武志・齋藤勘一
【要 旨】
国土地理院では,電子国土基本図の全国整備が完了したことを受け,平成元年11月以来,26年ぶりに「全国都道府県市区町村別面積調(めんせきしらべ)」(以下,面積調という)について,平成26年度から新たに電子国土基本図を基にした新たな方式でとりまとめ,国土地理院技術資料(E2-No.61)として公表したのでその内容を報告する.
本文[PDF:981KB]
Report on the 28th United Nations Group of Experts of Geographical Names
基本図情報部 中村孝之・笹川啓 ・水越博子
【要 旨】
2014年4月28日から5月2日まで,米国ニューヨークの国連本部において,第28回国連地名専門家グループ会合が開催された.会合には,世界各国から地名を取り扱う国の機関,大学等の専門家らが参加し,各ワーキンググループ,各地域/言語部会,各国からのレポートを元に議論が進められた.国土地理院から本会合に参加したので,その概要を報告する.
本文[PDF:786KB]