最終更新日:2014年12月26日

国土地理院時報(2014,125集)要旨

小特集:平成25年(2013年)台風第26号による災害

Correspondence of the Geospatial Information Authority of Japan to Typhoon Wipha(1326)
 
企画部  防災推進室
 
【要 旨】
  国土地理院は,大規模自然災害発生時において救助活動及び復興に寄与するため,関係機関へ地理空間情報の提供を行っており,台風第26号での災害についても,国土交通本省を始めとする関係行政機関からの要請に応じた地理空間情報の提供を実施した.本稿では,初動時の活動を中心に上記の取り組みについて報告する.
 
  本文[PDF:963KB]
 
 
Aerial photography of Typhoon Wipha(1326)
 
基本図情報部  測量調査班
 
【要 旨】
  平成25年(2013年)10月16日に日本列島(特に伊豆大島)に被害をもたらした台風第26号における被災発生直後からの国土地理院基本図情報部の災害対応について報告する.
 
  本文[PDF:1,149KB]
 
 
Damage Information Aggregation of Typhoon Wipha(1326)
 
応用地理部  災害対策班
 
【要 旨】
  応用地理部は,台風第26号被災状況の把握のため大島町元町地区ほかの土砂流出範囲の空中写真判読を行い災害情報の共有に資するとともに,大島地区のデジタル標高地形図の作成や被災状況調査等を行った.
 
  本文[PDF:1,326KB]
 
 
Public presentation of the Geospatial information by Typhoon Wipha(1326)
 
地理空間情報部  災害対策班
 
【要 旨】
  地理空間情報部では,被災地区における既存の空中写真を関係機関提供用として準備し,合わせて,地理院地図から災害情報共有マップとして撮影した空中写真等の地理空間情報を公開した.
 
  本文[PDF:1,459KB]
 
 
Responses of the Kanto Regional Survey Department of GSI to the Typhoon Wipha(1326)
 
関東地方測量部
 
【要 旨】
  関東地方測量部は,東京都大島町にて大規模な土石流を発生させた台風第26号に伴う記録的な大雨による被災に対応するため,体制を確保し,関係行政機関へ各種地理空間情報を提供すると共に,政府調査団に参加し現地調査を実施した.
 
  本文[PDF:1,223KB]
 


 
Analysis of Topography Related to Large Scale Landslides Disaster Triggered by Typhoon Wipha (1326) in Izu-Oshima Island, Tokyo
 
地理地殻活動研究センター  中埜貴元・岩橋純子・小荒井 衛
 
【要 旨】
  地理空間情報部では,被災地区における既存の空中写真を関係機関提供用として準備し,合わせて,地理院地図から災害情報共有マップとして撮影した空中写真等の地理空間情報を公開した.
 
  本文[PDF:2,938KB]
 
 
Estimation of the Horizontal Positional Accuracy of Geospatial Data
 
測地部  小清水寛・村上真幸
 
【要 旨】
  測位情報精度の更なる向上への期待を背景として,測位情報を用いたサービスの更なる高度化へ向けた取り組みが活発になっている.例えばITS(高度道路交通システム)サービス分野では,誰もが共通に利用できる高精度地図(オーソリティマップ)を利用した各種運転支援サービスが検討されている(ITS Japan, 2013).今後,測位情報とペアとなるべき地図の平面位置正確度に関する情報開示が,今まで以上の詳細さで求められると予想される.
  地図を描画するための幾何情報が収録されている地理空間情報の位置正確度については,公共測量の作業規程の準則(国土交通省, 2013)において標準偏差と呼ばれる指標の制限値が設定されている.縮尺が1/2500に相当する地図表現精度を有する数値地形図データに対する平面位置の標準偏差は,新規測量の場合には1.75m以内,修正測量の場合には2.50m以内と規定されている.
  しかしながら,この規定値をそのまま地理空間情報の位置正確度とするには問題がある.まず,標準偏差と呼ばれる指標の従う確率分布が明示されていない.さらに,上記制限値は公共測量の実態や他国の制限値と比べて大きすぎるのではないかという問題提起がなされている(村上ほか, 2010).
  そこで,米国連邦地理データ委員会(FGDC)の位置正確度策定基準(FGDC, 1998)に影響を与えたGreenwalt-Shultz(1968)による二次元正規分布の考察結果を用いて,指標の明示的な定義を与える.さらに,縮尺1/2500相当の数値地形図データのサンプル集合を対象として,指標の実勢値(平均値や実質的な制限値)を大まかに見積もる調査を実施する.
 
  本文[PDF:1,704KB]
 
 
A tool for reduction of atmosphere-related noises included in an InSAR image, incorporating a numerical weather model
 
地理地殻活動研究センター  小林知勝・石本正芳・飛田幹男
測地観測センター  矢来博司
 
【要 旨】
  干渉合成開口レーダー(InSAR)画像に含まれる大気遅延誤差は,微小な地表変位を抽出する際に,大きな誤差要因となる.本報告では,SAR 干渉画像内に含まれる大気遅延誤差を,数値気象モデルを用いて低減処理するために開発された計算プログラムツールの概要を紹介する.本処理ツールの特徴として,1) 数値気象モデルを利用した大気遅延誤差モデルの構築が可能,2) 波線追跡法の適用によりマイクロ波の屈折を考慮した位相遅延量の精密計算が可能,3) 数値気象モデルデータの前処理,位相遅延量計算,誤差低減処理済InSAR画像作成の一連処理を一括して実行可能,4) 新GSISARと高い親和性を持たせた入出力インターフェースの実装,等が主に挙げられる.実データへの適用を試みたところ,数値気象モデルを用いることにより,大気遅延誤差の低減効果が有意に見られることが示された.大気-標高相関法では,誤差低減の効果が薄いInSAR画像にも,効果的に機能する場合があることが示された.
 
  本文[PDF:1,813KB]
 
 
Provision of Digital Topographic Map 25000 (Evaluation Version)
 
基本図情報部  下山泰志・中村孝之・中島最郎
地理空間情報部  藤村英範
 
【要 旨】
  電子地形図25000の新しい内容・表現を広く知っていただくことを目的として,試用版を平成25年6月中旬から1か月間,無償で提供した.併せて,国土地理院の提供しているプロダクトを今後さらに使いやすくするための検討の参考とするため,試用版の利用者に対し電子地形図25000や地理院地図などについてアンケート調査を実施した.本稿では,試用版提供の経緯,提供内容,ダウンロード状況,アンケート結果と今後の対応等について報告する.
 
  本文[PDF:3,870KB]
 
 
Release of GSI Maps
 
地理空間情報部  北村京子・小島脩平・打上真一・神田洋史・藤村英範
 
【要 旨】
  平成25年10月30日に電子国土Web.NEXTを「地理院地図」として正式公開した.地理院地図は,国土地理院が提供するウェブ地図である.地図や空中写真,主題図等をウェブブラウザでシームレスに表示できるほか,手持ちの地理空間情報の重ね合わせ表示,作図や情報共有も可能である.国土地理院では,平成15年の電子国土Webシステム公開以来約10年にわたってウェブ地図サービスを継続してきた.開始当初,こうしたサービスは先進的な取り組みであった.そのため,電子国土Webシステムとして国土地理院が独自に開発したシステムを利用してきたが,近年はウェブ地図に関する技術が一般化し,業界標準の技術が確立してきている.地理院地図以降は,オープンソースソフトウエアの利用及び業界標準のデータフォーマットの利用を更に進め,業界標準のデータを配信し,ウェブブラウザ用のみならずスマートフォン用やPC用の地図表示ライブラリからデータを利用していただけるようになった.本稿では,地理院地図の技術的事項及び利用規約やアプリケーション開発状況等地理院地図の関連事項全般について報告する.
 
  本文[PDF:2,050KB]
 
 
Three Dimensional Indoor GIS Dataset Made from Design Drawings, and Its Problems
 
地理地殻活動研究センター 乙井康成・神谷泉・小荒井衛・中埜貴元
 
【要 旨】
  都市域における避難計画を検討する上で,地下街を含む公共的屋内空間は屋外同様に重要であり,浸水シミュレーションにおいても,少なくとも屋外と同程度の精度を有するGISデータが必要となる.設計図等の既存資料の活用により,効率的に屋内空間の三次元GISデータを作成できることを実証するため,避難計画策定や浸水シミュレーションに適用可能な屋内空間の三次元GISデータの基本的な仕様案を検討し,国土地理院庁舎とつくばエクスプレス南流山駅舎を対象に,その仕様案に基づいた屋内空間の三次元GISデータの試作と,GNSS及びトータルステーション測量による精度検証を行った.その結果,設計図等の既存資料から,1:2,500都市計画基本図と同程度である「最大誤差が概ね1m以内」の精度で屋内空間の三次元GISデータを作成できることを確認した.また,現地調査により設計図と現況が適合しない部分を修正するとともに,トータルステーション測量により設計図に座標値及び標高値を付与することで,浸水シミュレーションに必要な床面,壁面,天井面等で構成される屋内空間の三次元GISデータを,水平位置30cm程度,標高20cm程度の精度で作成することができた.さらに,今回の試作においては,設計図の活用により,トータルステーション測量の半分程度の作業量でデータを作成できることが分かった.データ試作で得られた知見を元に,設計図等を使用した効率的な屋内空間の三次元GISデータ作成方法に関するマニュアル案を作成し,ウェブページで公開する.
 
   本文[PDF:3,131KB]
 

The activities releted to GGIM by UN-led and contributions of GSI
 
企画部  野尻琢也・坂部真一
 
【要 旨】

  国際連合では,地理空間情報の様々な分野での活用を促進するため,地理空間情報管理という取組を立ち上げ,「地球規模の地理空間情報管理に関する国際連合専門家委員会」を設置した.
  国土地理院では,当委員会内に設置された「持続可能な開発のための地球地図」作業部会の座長を務める等,各国の地理空間情報当局や関係する国際機関等と連携しつつ,この活動に積極的な貢献をしている.

   本文[PDF:983KB]
 

Publication of multicolored 1:25,000 topographic maps

応用地理部  応用地理部 根本正美・関崎賢一・大桃浩一・木村幹夫・塚﨑靖久
  
【要 旨】
  国土地理院では,多色刷の2万5千分1地形図の刊行を2013年(平成25年)11月1日に開始した.電子国土基本図を活用する多色刷の2万5千分1地形図は,これまでの3色刷に比べて情報がより詳細になるとともに,多彩な色を使って表現している.多色刷の2万5千分1地形図の概要,特徴等の他,刊行に至った経緯,側面,背景等を報告する
 
   本文[PDF:4,006KB]
 

Public release of the GSI Maps 3D on the Internet

地理空間情報部  髙桑紀之・大木章一・藤村英範・岡安里津
応用地理部  佐藤壮紀

【要 旨】

 地形図等では等高線を用いて地形を平面上に表現しており,地形を理解するには一定の判読力が必要である.そこで地理院地図から配信している地図タイルや標高タイルを利用して,Webブラウザ上で日本全国どこでも任意の視点から立体化した地図を見ることができ,且つ3Dプリンター用のデータも作成できる「地理院地図3D」サイトを構築し,誰でも地形を直感的に理解できるようにした.
 地理院地図3Dは,ユーザーが地図上で選択した任意の場所,範囲の標高タイルを取得し,WebGLと呼ばれる技術で立体モデルを作り,その地表面に,該当する標準地図や電子国土基本図(オルソ画像)を貼り付けて表示する.この立体化の処理過程にはWebGLやHTML5のCanvasを始めとする最新のインターネット技術を利用しており,それら新技術特有の技術的課題に取り組みつつ,3Dプリンター用データとして出力する機能については,ファイルフォーマットなど外部の専門家などの技術的助言を受けつつ実現した.
 今後は,ダム,橋梁等の社会資本を地理院地図3D上で表示し,その管理に資するような機能改良をしていく予定である.

  
本文[PDF:2,267KB]


 

Revision of Altitudes of Triangulation Points -Publication of Altitudes More Consistent with Survey Results of Benchmarks -

測地部  小門研亮・佐藤雄大・松村泰敬・影山勇雄・山際敦史

【要 旨】

 国土地理院では位置の基準として三角点を全国に設置し,緯度・経度や標高等を測量成果として提供している.
 三角点の中には,設置以降,標高成果を更新していない点や更新時期の古い点があり,これらの点では長年の地殻変動等の影響が標高成果に反映されておらず,電子基準点や電子基準点を既知点としたGNSS測量によって成果を更新した三角点(以下,「電子基準点に準拠した三角点」という.)等との間に標高成果の乖離(以下,「標高不整合」という.)が生じている.
 この標高不整合を解消するため,平成20年度以降,北海道,紀伊半島及び東北地方で三角点の標高成果改定を実施したが,その他の地域について標高不整合が解消されていない.そのため,標高成果改定をこれまでに実施していない地域について,GNSS測量の結果をもとに標高補正パラメータを作成し,パラメータを用いた補正計算を実施した.また,併せて一部離島を除く全国の三角点についてジオイド・モデルの改定に伴う標高補正等を実施し,より水準点の成果と整合した標高成果に改定した.
 本稿では,三角点の標高成果改定における計算手法や得られた成果について報告する.

   
本文[PDF:2,046KB]
 
Updating of Fundamental Geospatial Data
 
基本図情報部  渡部金一郎・宮之原洋・石山信郎
 
【要 旨】
 基盤地図情報は,平成19年に成立した地理空間情報活用推進基本法で規定され,国土地理院が中心となって整備を進めている地理空間情報である.都市計画区域については地図情報レベル2500で,都市計画区域外については地図情報レベル25000で整備を進め,平成23年度に概成し,平成24年度より更新を行っている.基盤地図情報の整備に当たっては,国土地理院で2万5千分1地形図の内容を電子化して整備した電子国土基本図(地図情報)を活用したが,これは精度が地図情報レベル25000であることから,都市計画区域外は問題がないが,都市計画区域においては基準を満たさない.そのため,市町村の整備した都市計画基図等をもとに地図情報レベル2500の基盤地図情報を新たに作成した.その上で,電子国土基本図(地図情報)について,都市計画区域内で地図情報レベル2500の基盤地図情報に置き換える一体化処理を平成24年度に行い,より高精度な情報とした.これにより,地図情報レベル2500と地図情報レベル25000の境界で途切れることなくシームレスに,かつ基盤地図情報・電子国土基本図を同時に更新することが可能となった.ここでは,基盤地図情報の更新に係る状況について,紹介する.
 
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Aerial Photography of Nishinoshima Island by the survey aircraft “Kunikaze” and DEM and Orthophoto generation in response to its volcanic eruption
 
地理地殻活動研究センター  飛田幹男・神谷 泉・中埜貴元・岩橋純子
基本図情報部  大角光司
地理空間情報部  高桑紀之
 
【要 旨】
 平成26年3月22日に続き7月4日に,無人機(Unmanned Aerial Vehicle:UAV)を用い,東京都小笠原村西之島の空中写真を自動撮影した.複数の空中写真間の画像マッチングにより,カメラの撮影位置を推定し,三次元形状を復元する写真測量ソフトウェアを用いた解析を行い,オルソモザイク画像,数値標高データを作成した.得られた画像・データを分析することで,面積,体積,平均標高やその変化を求めた.また,地形判読図,赤色立体地図,立体図,立体模型の作成にも活用された.3月の撮影で得られた知見・経験・課題に基づき,撮影コース,撮影方法,解析方法の改善を行うとともに,機体位置補正手法及びシャッタータイミング補正手法を開発し,地形計測精度を向上し,解析時間を短縮した.
 
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