国土地理院時報(2012,123集)要旨

Development of the GPS Analysis Strategy in Asia-Pacific Region
 
測地部  鈴木 啓・宮原伐折羅
 
【要 旨】
  アジア太平洋地域地殻変動監視事業は,国連アジア太平洋地域地図会議の傘下に置かれたアジア太平洋GIS基盤常置委員会(PCGIAP)の調整・仲介のもと,アジア太平洋地域における防災・減災計画を目的とした国際測地共同観測として2006年度(平成18年度)から実施している.この事業では,アジア太平洋地域の地殻変動を監視するとともに,同地域の基準座標系(Asia-Pacific Reference Frame;以下,「APREF」という.)の構築に貢献することを目指している.本事業では,国土地理院が設置し,運用する観測点を含むアジア太平洋地域のGPS観測点を定常的に解析するため,2010年度(平成22年度)にGPS解析支援システム(GPS 解析ソフトウェアにBernese(Astronomical Institute, University of Bern,2007)を搭載)を導入した.安定した測位解を定常的に得ることを目的として,GPS解析支援システムによる解析戦略の構築を行った.
  アジア太平洋地域における観測網は,数百kmから数千kmにおよぶ長距離基線から構成されるため,長距離基線において安定した測位解が得られるよう,解析戦略を検討した.また,検討した解析戦略を基に過去データの解析を実施し,解析結果を評価するとともに,地震に伴う地殻変動に対する検出精度についての検証を行った.
 
  本文[PDF:1,705KB]
 
Magnetic Charts for the epoch 2010.0
 
測地部  植田 勲・阿部 聡・後藤勝広・海老名賴利
東北地方測量部  石倉信広
中部地方測量部  田上節雄
 
【要 旨】
  国土地理院では,1939年から地磁気測量を開始した.1949年からは日本全国を対象とし,現在に至るまで,60年以上にわたり全国で地磁気測量を実施している.その成果として,1970年から10年ごとに日本の磁場分布を表した「磁気図」を作成している.特に,磁場成分のひとつである偏角は,地理空間情 報と方位磁針を結びつけるために不可欠な情報であり,様々な分野で活用されている.今回,その偏角の地理的分布も表現した磁気図の最新版となる2010.0年値を作成した.2010.0年値からは,新たに開発した「地磁気時空間モデル」を採用した.このモデルでは,自然直交基底法という数学的な手法を用いて,良質な連続観測データから,時間的に不連続な観測しか行われていない観測点のデータを連続化することにより,各磁場成分の時間変化と空間的な変化を推定することができる.このため,任意の年単位での磁気図を作成することが可能となった.磁気図の精度評価の結果,一部の磁気異常地帯を除いて,偏角・伏角で10′,全磁力・水平分力・鉛直分力で100nT以内の精度を有することがわかった.
 
  本文[PDF:1,384KB]
 
Analysis of Sea Level Change with Continuous GPS Stations at Tide Gauges
 
測地観測センター  三浦優司・川元智司
 
【要 旨】
  近年,地球環境問題の中で,温室効果ガスの上昇による地球温暖化のシナリオがあり,海面変動の監視は,重要な課題となっている.日本の長期的な海面変動を把握する上での課題が,潮位観測施設(以下,「験潮場」という.)で取得した潮位データには,潮位の変動と験潮場の地盤上下変動の2つの影響が混在しているという点である.長期的な海面変動を評価する場合,潮位データから験潮場の地盤上下変動の影響を補正し,国際地球基準座標系ITRFを基準とした潮位の変動として海面変動量を評価する必要がある.そのような背景から,国土地理院では,1995年頃から宇宙測地技術を用いて験潮場の地盤上下変動を補正し,海面変動成分のみを抽出する検討を実施してきた(国土地理院, 1996).2002年には,験潮場にGPS連続観測点を設置し,験潮場の地盤上下変動をITRFに準拠した座標値として取得できるようになった(験潮場に取り付けられたGPS連続観測点のことを,以下,「GPS-P点」という).
  今回,川元ほか(2009)の手法を用いて,GPS-P点を用いた験潮場の地盤上下変動の除去の他に気圧補正,潮汐補正を行った潮位データを作成し,GPS-P点設置時からの海面変動量の算出を試みた.算出した結果,日本の海面変動トレンドは全験潮場平均で1.1mm/yearであり,最近の研究報告にある全球的な海面変動トレンドとも調和していた.また,各験潮場の海面変動トレンドには地域分布が見られ,日本海側では1mm/yearから3mm/yearの海面上昇の傾向が見られたが,静岡県西部から四国にかけての太平洋側では,海面下降の傾向が見られた.考察の結果,太平洋側の海面下降の傾向の要因として,黒潮の影響が大きく関わっていることが分かった.特に黒潮大蛇行時に神奈川県から四国にかけての7験潮場では明瞭な潮位変化が確認された.一時的に潮位データが変化すると,変化量の大きい潮位データが影響して海面変動トレンドが変わってくることから,黒潮大蛇行といった海流の流路変化に注意すべきである.
 
  本文[PDF:2,206KB]
 
Characteristic of Disaster Triggered by the Nagano-Niigata Border Earthquake
 
地理地殻活動研究センター  中埜貴元・小荒井 衛・乙井康成・小林知勝
 
【要 旨】
  2011年3月12日に長野県と新潟県の県境付近で発生した地震(M6.7)では,斜面崩壊や地盤変状,構造物被害等が多発した.それらの被害をマッピングすると,大局的な分布に偏りがあるように見えたため,現地調査を行うとともに,主に斜面崩壊・地盤変状箇所と地形・地質,想定される活断層の位置, 干渉合成開口レーダー(干渉SAR)で捉えられた干渉縞等をGIS上で重ね合わせて,それらの関連を検討した.
  その結果,地盤変状,斜面崩壊等の被害は,信濃川(千曲川)流域とその左岸の山間地域及び志久見川西側の栄村山間地で多発しており,想定される震源断層(逆断層)の上盤側で,かつ干渉SARで検出されたM6.7の本震とその約30分後に発生した最大余震(M5.9)による地殻変動発生領域に分布していることが分かった.道路の変状・亀裂等の地盤変状のほとんどは,盛土等の重力性変状で説明可能であったが,一部,黒澤ほか(2011)が地表地震断層として報告している箇所や十日町市の大厳寺高原キャンプ場の駐車場では,テクトニックな変動の可能性も示唆された.津南町大井平地区から亀岡地区にかけての宮野原断層周辺では,断層線に沿って地すべりや盛土の重力性変状等の集中が見られ,その活断層自体が能動的に活動していなくても,活断層近辺に斜面崩壊や地盤変状等が集中する傾向があることが示された.その他,建物倒壊被害は,栄村の千曲川沿いの狭い段丘上かつ本震と最大余震によるSAR干渉縞が重合する集落に集中しており,地形や余震の影響が示唆された.
  以上の特徴は,従来から指摘されている「逆断層の上盤側で被害が大きい」という現象と一致するとともに,干渉SARで捉えられるような地殻変動領域で被害が多く発生する可能性を示唆している.
 
  本文[PDF:7,577KB]
 
Report on the 26th United Nations Group of Experts of Geographical Names
 
企画部  金子純一
 
【要 旨】
  2011年5月2日から6日まで,オーストリア国ウィーン市にある国連施設において第26回国連地名専門家グループ会合が開催された.会合には,世界各国から地名を取り扱う国の機関,大学等の専門家らが一同に会し,各ワーキンググループ(以下、「WG」),各地域/言語部会,各国からのレポートをもとに議論が進められた.議事の合間に,国際機関から地名に関する取り組みについての講演があった.
  国土地理院は,本会合に参加したので,その概要を報告する.
 
  本文[PDF:367KB]
 
Land Condition Map of Ontakesan Volcano
 
応用地理部  関口辰夫
地理地殻活動研究センター  山岸 登
 
【要 旨】
  国土地理院は,火山地域の防災の基礎資料として,2009年度に火山土地条件図1:25,000「御嶽山」の作成作業を行った.本作業は初の試みとして,製版・印刷図ではなく数値化によって直接デジタルデータの作成という方法を採用した.翌年の2011年には長野県及び岐阜県において現地説明を実施し,同年8月にホームページで本図を公開した(図-1).
  御嶽山は中部地方に位置する円錐形の火山で1979年に突如噴火した活火山である.1984年には長野県西部地震によって斜面崩壊や岩屑なだれが発生し,山麓に大きな被害を出した.また,2006年以降も噴気活動がみられる活動的な火山である.このような御嶽山の特徴的な地形を空中写真判読と現地調査及び文献調査によって,火山土地条件図と解説書を作成したので本稿ではその内容について述べる.
 
  本文[PDF:8,009KB]
 
Basic Plan for the Advancement of Utilizing Geospatial Information (Cabinet Decision 27th March 2012)
 
企画部  南 秀和・安藤暁史・大塚孝治・菅原友恵・小野 康・瀧 繁幸
 
【要 旨】
 平成24年3月27日,地理空間情報の活用推進に関する政府の基本的な計画である「地理空間情報活用推進基本計画(以下,「新基本計画」という.)」が閣議決定された.この計画は「地理空間情報活用推進基本法」(以下,「基本法」という.)の規定に基づき策定されるもので,平成20年4月に策定されたこれまでの「地理空間情報活用推進基本計画」(以下,「前基本計画」という.)を一新するものである.
 新基本計画は,前基本計画に引き続き,地理空間情報高度活用社会(G空間社会)の実現を目指して,これまでに達成された多くの成果を踏まえつつ,それらを更に発展させるため,また,この間の情報通信技術や測量技術の進展,東日本大震災の発生など,様々な社会情勢の変化による課題を解決するため,「GISに係る基盤整備」及び「衛星測位に係る基盤整備」の継続に加えて,新たに「地理空間情報の社会へのより深い浸透と定着」及び「東日本大震災からの復興と災害に強く持続可能な国土づくりへの貢献」を加えた4つの柱を中心に,平成28年度末までの5年間を計画期間として推進することとされている.
 今回の計画策定にあたっては,政府の「地理空間情報活用推進会議」(以下,「推進会議」という.)の枠組みのもと,産学の幅広い声を取り入れつつ各府省が協力して検討が行われたものであり,国土地理院は,推進会議の事務局として,また,地理空間情報に関する国家機関として,計画の策定を主導してきたことから,今後とも引き続き,計画の着実な実施に向けた様々な取組を推進していくこととしている.
 
  本文[PDF:597KB]
 
Efforts of Geospatial Information Authority of Japan in Geospatial EXPO2012
 
企画部  伊藤広治・安藤暁史・小島 泉・勝俣圭一・菅原友恵
 
【要 旨】
 「G空間EXPO2012」が平成24年6月21日(木)~23日(土)の3日間,パシフィコ横浜で開催された.これは,地理空間情報(G空間情報)が更に高度に活用される社会の実現を目指し,G空間情報の構築・整備・利活用など,技術や製品,サービス等の発表の場として2010年に産学官が連携して開催した「G空間EXPO」に続く第二弾として位置づけられるものである.
 「G空間EXPO2012」では展示会及び講演・シンポジウムが行われ,展示会には147の出展者から378小間の出展があり,ビジネス層だけでなく,子どもから年配の方まで幅広い世代が楽しみながら「G空間社会」に関する理解を深められるよう,わかりやすい展示が行われた.また,講演・シンポジウム等は,様々な団体により21のテーマで開催され,研究発表や最新技術の紹介等が行われた.3日間を通した展示会の入場者は18,143人(延人数),講演・シンポジウム等の参加者数3,695人であった.
 国土地理院はこれまでも,地理空間情報の活用推進を最重点項目と位置付け,様々な施策を実施してきている.「G空間EXPO2012」は,その施策の意義や重要性を紹介する絶好の機会であることから,展示やシンポジウムなど数々のイベントを開催した.本稿では,その取組内容について報告する.
 
  本文[PDF:906KB]
 
Methods to Produce Tiled Maps and their Application
 
地理空間情報部  小清水寛・高桑紀之
 
【要 旨】
 国土地理院が整備する地図画像,写真画像等の種類・解像度・投影法・形式は多様である.これらオリジナルデータは,例えば地図であれば図葉単位で仕切られ,場合によっては整飾等を付したうえで,閲覧に供される.オリジナルデータを印刷して紙として取り扱う分にはこのような提供方法が最善であると思われるが,デジタル化された情報としてWEBブラウザ上で表示する場合において,様々な縮尺レベルで,シームレスに閲覧したいという一般ユーザの新たなニーズに応えることが出来ない.そこでオリジナルデータを,画像をタイル状に並べた,WEBブラウザ上での表示に適した形式に変換する必要がある.本報告では,様々なWEB地図表示サービスのデファクトスタンダードとなっており,電子国土Webシステム Version4でも採用されている配信タイルデータの仕様について明確にしたうえで,多種多様なオリジナルデータからタイル状データを作成する原理(共通の仕組み)について記述する.次いで,この原理を様々な種別のオリジナルデータに適用したタイル状データ作成事例を記述する.最後に,オリジナルデータからタイル状データを作成する上での中間成果品を利活用することによって新たな形式の地理空間情報サービスを編み出し,ユーザニーズの発掘に結びつけた事例についても応用として紹介する.
 
  本文[PDF:1,154KB]
 
Development of the dataset, Based on old map of ZINSOKUSOKUZUGENZU
 
応用地理部  安部雅俊
 
【要 旨】
 平成23年東北地方太平洋沖地震では,広範囲にわたり液状化が発生し,甚大な被害をもたらした.旧河道等の液状化が起こりやすい地形の位置を事前に把握することが防災対策として有効である.
 そこで,液状化の予測判定に資することを目的にし,明治初期に作成された第一軍管地方二万分一迅速測図原図(以下「迅速測図原図」という.)から河川等の液状化に関連する面型のGISデータとして地物を抽出し,防災地理情報を作成したので報告する.
 防災地理情報の作成における,迅速測図原図の標定には,昭和40年代からの写真測量により作成された2万5千分1地形図(以下「旧版地形図」という.)を位置の基準とし標定点を設定し,Affine変換処理にて幾何補正を行った.
 原典資料である迅速測図原図の持つ,位置的なズレなどの問題を,ほぼそのまま継承している,という問題点はあるが,液状化の可能性判定の資料として十分に活用できる.また,現在の地図と重ねて表示するだけでも,過去の河川や土地利用の状況を理解しやすいものとなっている.
 
  本文[PDF:831KB]
 
Tornado disaster of Tsukuba City on May, 2012
 
地理地殻活動研究センター  小荒井衛・岡谷隆基
 
【要 旨】
 2012年5月6日午後12時30分頃から,茨城県筑西市,常総市,栃木県真岡市で相次いで竜巻が発生した.特に常総市で発生した竜巻は,つくば市北条地区の商店街を直撃し,死者1名のほか,家屋の被害や電柱の倒壊など激甚な災害がもたらされた.国土地理院では,被災状況の把握のため,5月7日に茨城県つくば市,栃木県真岡市,益子町における被災地域の空中写真撮影を実施し,撮影された写真を公開した.つくば市内の竜巻被害について,空中写真判読により被害状況を把握し,建物被害を3ランクに区分した.空中写真判読では上空から見た被害状況しかわからないため,被災建物判読としては過小評価になるが全壊建物と大規模半壊建物の分布状況を早急に知るには有益である.また,竜巻通過経路を詳細地形データと重ね合わせることで,地表や建物の被害状況に地形が何らかの関与をしている可能性を示唆することが出来た.
 
  本文[PDF:856KB]
 
Report on the 10th United Nations Conference on Standardization of Geographical Names
 
企画部  金子純一
基本図情報部  笹川 啓
 
【要 旨】
 2012年7月31日から,アメリカ・ニューヨーク国連本部において第10回国連地名標準化会議が開催された.会議には,国家地名委員会,地理空間情報当局,地名学者(地理,地図,言語など),外交官からなる各国の代表者らが一同に会し,地名標準化に係わる活動報告をもとに議論が行われた.前回会議以降の5年間の各国や作業部会における地名標準化活動に焦点が当てられ,最終日には,決議が採択された.
 国土地理院は,日本政府代表団の一員として同会議に参加したので,その概要を報告する.
 
  本文[PDF:430KB]
 
The Project of Auxiliary Control Point for Recovery and Reconstruction in response to the Great East Japan Earthquake
 
測地部  後藤清・飯村友三郎・日下正明・野神憩・柏木雅志・岩田和美・井上武久・田村孝・河和宏・沼川邦男・木村俊明
関東地方測量部  川本利一・小板橋勝・松尾健一・大滝護・加古孝範
 
【要 旨】
 東日本大震災により被災した地域の道路整備や土地区画整理等の災害復旧工事及び土地の境界復元等のために必要な,復旧・復興補助基準点の設置及び既設公共基準点等の改測を平成23 年度第一次補正予算により実施したので,その概要を報告する.
 
  本文[PDF:1,337KB]
 
Report of Advisory Committee on Digital Japan Basic Maps
 
基本図情報部  下山泰志・齋藤勘一
 
【要 旨】
 国土地理院では,今後の国土の基本的な情報のあり方を検討するため,平成24年2月に学識経験者等からなる「電子国土基本図のあり方検討会」(以下,「検討会」という.)を設置し,その後3回の会議を経て,7月23日に中間提言が取りまとめられた.この提言では,電子国土基本図が利用者にとって価値ある使いやすいものとなるよう,電子国土基本図のデータの取得,表現,提供,活用の観点から今後の方策が示されており,これを受けて刊行された「数値地図(国土基本情報)」や「電子地形図25000」の内容は,この提言を踏まえたものとなっている.本稿では検討会における取り組みについて,中間提言を中心として報告する.
 
  本文[PDF:2,920KB]
 
Publication of Digital Map (Basic Geospatial Information)
 
基本図情報部  長谷川裕之・石山信郎
 
【要 旨】
 平成24年7月末から刊行を開始した数値地図(国土基本情報)は,国土の基本的な情報として,行政区画・道路・鉄道・建物等の地図情報,居住地名等の地名情報,標高等を1 つにまとめた地理空間情報である.この情報は,情報の更新に応じて日々内容が新しくなる,新たな形態で刊行するものである.
 また,地理情報システム(GIS)などを用いて,必要な情報を選択したり,他の情報と重ね合わせて利用することが可能なものである.本稿では,数値地図(国土基本情報)のデータ項目及び統合の際の基本的な考え方について報告する.
 
  本文[PDF:692KB]
 
Publishing of Digital Topographical Map 25000
 
基本図情報部  大野裕幸・鈴木禎子・石山信郎
 
【要 旨】
 国土地理院は,我が国全域をカバーする最大縮尺の地理空間情報データセットである「電子国土基本図」等のデータをまとめたベクトルデータの測量成果として平成24 年7 月30 日から数値地図(国土基本情報)の刊行を開始した.
 数値地図(国土基本情報)は,オンライン提供を基本としていることから,従来の測量成果に比べて国土の主要な変化を迅速に反映させた測量成果として,日々新しい情報を提供することができる.しかし,数値地図(国土基本情報)を地図データとして利用するには特別なソフトウェアを用いる必要がある.そこで,国土の主要な変化を迅速に反映した地図情報をより手軽に利用できるよう,地図情報レベル25000 の画像データの測量成果として「電子地形図25000」(以下,「電子地形図」という.)のオンラ イン刊行を平成24年8月30日から開始した.
 電子地形図は,オンラインで刊行するメリットを最大限に活かし,購入者の使用目的に応じて地図の表示範囲やサイズ,一部の地図記号の表示色や地図表現を自在に選んで地図を作成することができる.また,あらかじめ用意した画像を用いるのではなく,購入者からの受注後に電子国土基本図データベースから画像の生成を行うため,常に新鮮な内容の地図画像を提供できることも特徴である.
 本稿は,この新しい測量成果である「電子地形図」のコンセプトやスペック,さらに提供システムの開発内容についてまとめたものである.
 
  本文[PDF:1,415KB]
 
Making Volcanic Base Maps by Fundamental Geospatial Data
 
応用地理部  山田陽子
 
【要 旨】
 国土地理院では, 火山防災計画の策定や噴火時の緊急対策等の基礎資料として,火山基本図を整備している.
 火山基本図は,活動的な火山や今後活動が予想される火山などを対象に,昭和55 年から作成している縮尺1/5,000 又は1/10,000 の大縮尺地図である.従来は写真測量により作成し,印刷図として刊行していたが,平成22 年度の「栗駒山」と平成23 年度の「箱根山」の作成においては,地理空間情報の位置の基準となる基盤地図情報等の既存の測量成果を利用して作成し,画像データで公開することにより作業の効率化を図った.
 
  本文[PDF:1,248KB]