非ActiveX型電子国土Webシステムの構築

Improvement of Digital Japan Accessibility Without Plug-in System

地理情報部  大野裕幸
Geoinformation Department  Hiroyuki OHNO

要旨

 国土地理院は、平成15年から、電子国土を利用するツールとして「電子国土Webシステム」を提供している。電子国土Webシステムは、利用者の端末上で、複数のドメインに置かれた上乗せ情報を基盤地図の上に直接重ね合わせて描画することができる。この地理情報の強力な共有機能は、プラグインという実装形式を採ることによって実現されている。しかし、特にInternet Explorerのプラグインの実行方式である「ActiveX」は、悪意を持った者による攻撃手段として利用されやすいという弱点を持っている。そのため、セキュリティ上ActiveXによるプラグインの実行を認めないというポリシーを採っている者が相当数存在し、電子国土の利用にあたっての障害となっていた。
 そこで、ActiveXを一切使用しない方式で電子国土にアクセスすることを可能にする「非ActiveX型電子国土Webシステム」を構築することによって、これを打開することとした。
 構築にあたっては、一切のActiveXを使用しないことを前提とした。インターネットのスクロール地図サービスの多くが、プラグインをインストールする必要がないAJAXといわれる方式を使用しているが、これはActiveXを使用することが前提であることから、本システムではAJAXをも使用することなくJavaScriptとサーバ環境のみによって、プラグイン方式の電子国土Webシステムが持つ地理情報の強力な重ね合わせ機能を提供することを目指した。
 ところで、プラグイン方式の電子国土Webシステムでは、クライアント側で処理のかなりの部分を行うことによってサーバ資源を小さくすることに成功した。しかし、ActiveXを一切使用せずに複数のドメインに置かれた地理情報の重ね合わせ表示を実現するには、ブラウザのセキュリティ機能による制約を避けるため、サーバ側にドメイン間の処理を仲介する機能を置く必要がある。これは、サーバ側に大きな負荷をかける方式であり、サーバ側の負荷軽減のための工夫が最大の課題となった。
 非ActiveX型電子国土Webシステムは、平成18年11月15日からβ版として運用テストを開始した。ここでは、本稿執筆時点の最新バージョンであるβ1.44版について非ActiveX型電子国土Webシステムの全体像と設計方針についてまとた。

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