GPSアンテナ位相特性の検定とその課題

GPS Antenna Calibration and Its Issues

測地部   田中愛幸・加川 亮・川原敏雄・辻 宏道
Geodetic Department   Yoshiyuki TANAKA, Akira KAGAWA,Toshio KAWAHARA, Hiromichi TSUJI

要旨

 国土地理院では、2002年(平成14年)度より電子基準点データの一般公開を開始し、いつでもどこでも位置情報を提供するための基盤整備をさらに一歩押し進めた。それに伴い、電子基準点と利用者側受信機との間で行われる各種GPS測量の精度管理が重要となってきた。本稿では、今後増加が見込まれる異機種間のGPS観測における誤差要因となるアンテナ位相特性の問題を取り扱う。
 異機種間観測では、アンテナの位相特性が互いに異なることによって測位誤差が生じるため、国土地理院では、米国の測地測量局(National Geodetic Survey)の公開する位相特性の補正値を使用してきた。これは基準点測量の精度がNGSの補正値が求められた環境(日本とは異なる気象条件や衛星配置、アンテナピラーの構造、独自の解析ソフトウェア等)に依存していることを意味する。そこで、この補正値の是非を検証するため、国土地理院においてほぼ同様の検定を実施し、NGSの結果と比較した。
 代表的なアンテナに対して調査した結果、位相特性は、おおむねNGSのものと一致したが、同時に問題点も明らかになった。位相特性は、検定に使用する架台の影響を受けやすく、アンテナによってはNGSとの較差が1cmを越える機種が存在することが確かめられた。また、実際の観測データを使用して補正効果を比較したところ、NGSの補正値との差が数mmの場合でも、測位結果が数cmの差に拡大される場合があることが分かった。この結果、位相特性を検定手法によらず「一意に」決定することが重要であり、その際には実際の測量の状況を考慮することが必要である。

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