合成開口レーダ解析モデルに関する研究
研究課題事後評価書
(評価委員が記入)
提案課・室名 問合せ先 |
課・室名 : 地理地殻活動研究センター宇宙測地研究室 TEL: 0298-64-8342 FAX: 0298-64-2655 代表担当者: 宇宙測地研究室 中川弘之 |
研究課題名 | 合成開口レーダ解析モデルに関する研究 |
予算 | 地理地殻活動の研究に必要な経費 特別研究経費 (総額) 5,992 千円 |
研究期間 | 平成10 年4 月 ~ 平成 13 年 3 月 ( 3 年間) |
分科会委員 | 〇竹本修三 川崎一朗 河野宣之 |
1.成果の概要 | 干渉SAR技術は地震や火山活動などに伴う地殻の多次元的な変動パターンを可視的に表現できる画期的な技法であるが、この技法で高精度の3次元的な変動パターンを得るためには、データ取得及び解析の過程で、まだ解決しなければならない数多くの基礎的な問題が存在する。本研究では、 (1)干渉SARに及ぼす水蒸気遅延の影響を調べ、水蒸気遅延の鉛直方向の補正法を開発した。 (2)干渉SAR技術は膨大な量の画像データを相関処理するため、これまでWSを用いて解析が行われていたが、本研究では国土地理院が開発した干渉SAR解析ソフトをLinuxを用いてPCに移植し、PCを用いて解析ができるようにした。 (3)平成10,11年に行われた航空機によるリピート・パス干渉SAR実験で得られたデータを解析し、干渉縞が現れなかった原因として、2回の観測の間で偏流角が17度もずれていたためであることを明らかにした。 |
2.当初目標の達成度 | 当初目標の1つにあげられていた「GPSデータを用いた干渉SAR変動データの鉛直・水平成分への分離」については十分な成果が得られなかった。しかし、「高速処理のためのデータ処理技術の改良と処理ソフトウェア開発」及び「航空機によるリピート・パス干渉SARの可能性の調査」に関しては、上記(2)、(3)のように、今後の研究に繋がる成果を得ているので、研究全般としての当初目標の達成度は5割程度である。 |
3.達成度が不十分な場合の要因分析 | GPSデータを用いた干渉SAR変動データの鉛直・水平成分への分離に関して十分な成果が得られなかった要因は、干渉SARで期待される変動スケールに対してGEONETの点間隔が長すぎるため、単純な空間補間では干渉SARデータと比較できるスケールの変動パターンが得られなかったことが主な原因である。 |
4.成果公表状況 | 国内学会誌1篇、部内報告書3篇という成果発表は決して多くないが、この研究の後続として「干渉合成開口レーダの解析技術に関する研究(平成13~15年)」が進行中なので、その成果とも合わせて国際誌に発表されることを期待する。 |
5.成果活用の見込み | PCを用いて干渉SARデータを高速解析処理できる環境が整ったことは、今後、地震予知や火山噴火予知などの研究に干渉SAR技術が一層活用される途を開いた。また、航空機リピート・パス干渉SARにおいて、これまで見過ごされてきた偏流角の影響の重要性を明らかにしたことは、今後同種の実験観測を実施する際の指針となりうる。 |
6.残された課題と新たな研究開発の方向 | GPSと干渉SARの組み合わせにより、3次元的な変動分布を求める手法の開発については、本研究で事業や技術開発に反映できるだけの成果が得られていない。しかし、重要な課題であるので、今後も研究を続ける必要がある。航空機を用いたリピート・パス干渉SARについては、有意な干渉SAR画像を得るうえで、航空機の軌道・姿勢制御などの問題点が残っている。今後、航空機関係の研究機関とも協力し、これらの問題点を明らかにすることが望ましい。 |
7.その他、課題内容に応じ必要な事項 | 特になし。 |
総合評価 1.十分な成果 〇2.一部不満足 3.部分的成果 4.失敗 |