東海地方の地殻変動の把握手法の高度化に関する研究

新規研究課題提案書

(課題提案者が記入)
提案課・室名
問合せ先
課・室名 : 地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室
所在地:茨城県つくば市北郷1番
TEL:0298-64-6925  FAX:0298-64-2655
担当者名(代表):村上 亮
研究課題名 東海地方の地殻変動の把握手法の高度化に関する研究
研究制度名 特別研究
研究期間 平成14年4月 ~ 平成17年3月 (3年間)
1.課題分類 (3)防災・環境保全に貢献する研究開発
(4)地球と国土に関する科学に寄与する研究開発
2.研究開発の背景・必要性 東海・中部地方は、フィリピン海プレートの沈み込みによる地殻歪がすでに相当に蓄積し、近い将来にM8クラスの地震が発生することが予測されている。
平成13年1月26日中央防災会議において、特に東海地震については、大規模地震対策特別措置法の成立以来四半世紀が経過しており、その間の観測体制の高密度化・高精度化や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえて、地震対策の充実強化について検討するよう総理大臣より指示があった。これを受けて平成13年6月19日中央防災会議において、従来より西に広がった震源域が想定された。
同地域では、微小地震活動が最近になって顕著に低下し想定東海地震発生との関連が詳細に検討されている。
一方、国土地理院のGPS連続観測でも想定震源域のやや西側でプレート境界が2001年3月頃からゆっくりと滑り始めていることが明らかとなった。この現象は想定東海地震においてはじめて観測された前兆につながりうる重大なものであり、直ちに地震予知連強化地域部会、東海地震判定会委員打ち合わせ会等で詳細に検討され、今後の推移を厳重な注意を持って見守ることが重要であると指摘されている。
3.研究開発の目的・目標 この施策は、東海・中部地域におけるGPS観測網による地殻変動検出手法を高度化し、検出限界レベル、観測の信頼性を向上させ、微小な地殻変動の変化を捉えて想定東海地震の防災に貢献することを目指すものである。
具体的には東海地域西部において観測点間隔25kmのGPS観測網を10km間隔に高密度化し、かつ検出限界レベルを現在の15mmから7mmに改善する。
4.研究開発の内容 東海・中部地方の詳細な地殻変動把握能力の向上のため、
  1. 展開されている既存のGPS連続観測網を増設し空間分解能を上げる、
  2. 地すべり、地盤沈下等の影響の有無を調査する、
  3. 衛星搭載合成開口レーダーにより広域に地殻変動をモニターし、発生すればGPS観測で捉えられない可能性のある局地的前駆的な変動を監視することによって、総合的に想定東海地震に関係する可能性のある地殻変動検出手法を高度化する。
5.研究開発の方法、実施体制  研究では、以下の項目について関係部局と連携しながら、整備、開発を行う。
  1. 展開されている既存のGPS連続観測網を増強する。(◎)
  2. 地すべり、地盤沈下等の影響の有無を調査する。
  3. 衛星搭載合成開口レーダーにより広域に地殻変動をモニターし、発生すればGPS観測で捉えられない可能性のある局地的前駆的な変動を監視する。
これらを総合して、東海地方の地殻変動検出能力を向上させる。
地理地殻活動研究センター地殻変動研究室の村上(室長)以下が主として研究を担当するが、必要に応じて他の部局とも協力して実施する。また、上記項目のうち◎については、測地部、測地観測センターと協力して開発を進める。
6.研究開発の種類 1.基礎研究 4.観測・調査
7.現在までの開発段階 国土地理院の既設の電子基準点網の成果を利用する。
また、本提案課題に先行して総合技術プロジェクト「地殻活動観測データの総合解析技術の開発」において開発した連続データの解析手法及び特別研究「火山性地殻変動のダイナミックモデルの構築に関する研究」において開発した時間変化を含めた地殻変動データのインバージョン技術を活用する。
なお、これらの既存成果を利用して、想定東海地震震源域の西側の非定常地殻変動の存在を検出したが、この現象をさらに詳細に理解するための手法の開発を本研究で実施する。
8.想定される成果と活用方針 本施策により、想定東海地震発生までの物理過程の理解が深まり、多様な前駆的な変動の検出の可能性を高め、想定東海地震の防災計画に本成果が活用されるものと考えられる。
9.研究に協力が見込まれる機関名 気象庁、防災科学技術研究所、産業総合技術研究所(地質調査総合センター)、大学等の研究者と地震予知連、学会等で情報・意見を交換するほか、地震、傾斜等関連のデータを交換して、本研究に利用する。
10.関係部局等との調整 国土地理院内においては、測地部、測地観測センター等と連携している。また、大臣官房技術調査課、防災対策室とも密接に連絡をとり、成果の速やかな利用に資することとしている。
11.備考 特になし。


図:東海地方の地殻変動の把握手法の高度化に関する研究