火山モニタリング手法の高度化に関する研究

新規研究課題提案書

(課題提案者が記入)
提案課・室名
問合せ先
課・室名:地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室
所在地:茨城県つくば市北郷1番
TEL:0298-64-6925   FAX:0298-64-2655
担当者名(代表):村上 亮
研究課題名 火山モニタリング手法の高度化に関する研究
研究制度名 特別研究
研究期間 平成14年4月  ~ 平成17年3月 (3年間)
(1)課題分類 (3)防災・環境保全に貢献する研究開発
(4)地球と国土に関する科学に寄与する研究開発
(2)研究開発
 の背景・必
 要性
2000年には、有珠山噴火、三宅島噴火、神津島周辺の火山性活動に伴う群発地震活動、磐梯山、北海道駒ケ岳の活動等、火山噴火や火山活動が相次いで発生し、安全・安心の確保に関する国民の関心が非常に高まっている。
本課題に先行する「火山性地殻変動のダイナミックモデルの構築に関する研究」において、実践的に有珠山・三宅島の活動の解析を行い、活動のメカニズムを理解し防災に応用するうえで、一定の実際的成果が達成できたと考えているが、その経験を通じて、観測、解析体制を改善すべき要素もかなり明確となってきた。
観測については、活動開始以前から火山周辺の稠密な観測網の充実させておくとともに周辺の観測網との整合性を確立しておくこと、活動開始後の降灰、停電、通信途絶などの障害に強いシステムであること、合成開口レーダー、空中写真等の面的観測を高頻度に実施する必要があることなどが明らかとなった。解析については、活動以前の定常的な地殻変動を把握しマグマ溜りの位置や、弱面の存在をあらかじめ特定しておくこと、傾斜、地震など他の観測データを速やかに入手し、総合的な解析を行うことが重要であることも明確となった。
本課題では、これらの要素を改善して、具体的な火山を対象として実用に耐えるモニタリングシステムを構築し、その有効性を実証することを目指すものであり、安全・安心な国土の実現への国民の期待に応えようとするものである。
(3) 研究開発
 の目的・目
 標
本課題の目的は、各種地殻変動観測を組み合わせてできるだけリアルタイムに火山の変動をモニターし、変化に応じて時々刻々物理モデルを修正し、可能な場合には活動の推移を予測する、実用的な使用に耐える火山モニタリングシステムのプロトタイプを構築することを目的とする。
(4) 研究開発
 の内容
将来の実用的な総合火山監視システムの可能性を探るため、従来からの研究の蓄積により構造が知られており、比較的近い将来活動が予測される伊豆大島を対象とし、リアルタイムで地殻変動を主体とする火山総合モニタリングシステムを構築する。

システムは次の要素技術、要素システムから構成される。
  • GPSによる稠密観測網の稠密化・解析のリアルタイム化
  • 衛星・航空機による高分解能面的地殻変動解析の高速化
  • 地殻変動データおよび他の関連データから準リアルタイムでモデルを構築する手法の高度化、活動の推移の予測を行うシミュレーション技術の高度化

実際の応用を想定して構築したシステムを試験的に運用する。この試験運用において明らかになる問題点に対処する改良をシステムに加え、他の火山にも適用可能な実用的モニタリング手法を開発する。なお、システムには地震・傾斜など他機関がリアルタイム運用しているデータも利用して総合的に火山活動をモニターする機能を持たせる。

(5) 研究開発
 の方法、実
 施体制
研究では、以下の項目について関係部局と連携しながら、整備、開発を行う。

◎伊豆大島の観測網整備(GPS)
◎リアルタイム測位計算手法の高度化
○リアルタイムモデル構築手法の高度化
○火山活動シミュレーションの高度化
○航空機合成開口レーダー(別途予算要求検討中)、衛星合成開口レーダー(宇宙開発事業団と協定に基づく協力)を利用した面的変動把握手法の高度化
○伊豆大島の噴火パターンの分類に関する調査
○モデルに基づく活動予測手法の高度化に関する研究

これらを総合して、モニタリングシステムを開発・構築する。地理地殻活動研究センター地殻変動研究室の村上(室長)、小澤(主任研究員)、西村(研究員)が主として研究を担当するが、必要に応じて他の研究員も協力して実施する。また、上記開発項目のうち◎については、測地部、測地観測センターと協力して開発を進める。

(6) 研究開発
 の種類
1.基礎研究 4.観測・調査
(7) 現在まで
 の開発段階
本提案課題に先行して「火山性地殻変動のダイナミックモデルの構築に関する研究」を実施し、GPSのリアルタイム解析技術、物理モデル構築技術、時間発展インバージョン技術を研究・開発した。また、別途実施中の総合技術プロジェクトにおいて、有限要素法プログラムを拡張し、広域応力場におけるダイクの形成のシミュレーションに応用可能な基礎部分が開発されている。
(8) 想定され
 る成果と活
 用方針
対象とする伊豆大島において、火山変動モニタリングシステムのプロトタイプとしての有効性が確認された場合、全国の火山への実用的な展開を想定している。また、伊豆大島は、現在でも、次の噴火の準備段階としての活発な地殻変動が続いており、これについての理解を深めることは火山学の発展に貢献する。 │
(9) 研究に協
 力が見込ま
 れる機関名
気象庁、防災科学技術研究所、産業総合技術研究所(地質調査総合センター)、宇宙開発事業団、大学等の研究者と火山噴火予知連、学会等で情報・意見を交換するほか、地震、傾斜等関連のデータを交換して、本研究に利用する。
(10) 関係部局
 等との調整
国土地理院内においては、測地部、測地観測センター等と連携している。また、大臣官房技術調査課、防災対策室とも密接に連絡をとり、成果の速やかな利用に資することとしている。
(11) 備考  特になし

火山モニタリング