講評

○高木委員長
 事後評価書は地理分科会からのものを委員会のものとする。
 全体的には、もう少し地理院としての方向性として、森羅万象を扱う意気込みが欲しい。何でも集め、データベース化や他とリンクすることを行い、自由に使えるように努力していただけるといい。少し縦割で固まり過ぎているのではないか。我々が一番わからないのは、地理院全体のことを評価するのか、個々の研究を評価するのかということ。地理院の役割をもう少しディスカッションし、評価できるよう、次年度に向けてもう少しきちんと方向性を出してほしい。
○立花委員
 国土地理院はもっと自分たちの役割の大きさ、本来あるべきファンクションの大きさというものを自覚して、かつそれを利用すべきだと思う。あらゆる情報というのはどこかに必ず座標軸というか、そういうものが必要である。最も有効な座標軸は、一つは時間軸で、もう一つは地理軸である。そして、その座標軸をもとにしたときに、この社会が持っているあらゆる情報が見えてくるような情報基盤というのを本来つくるべきだ。
 例えば国土地理院のデータベースをもっと拡大して、あらゆる行政が持っている情報を地理というものをベースにして、そこから全部情報を発信できるようなフレームワークを作る。それは、国土地理院が森羅万象全部自分のところへ情報を集めるというスタイルではなくて、全部電子的なリンクでやる。それをやるということをどこかが決め、全省庁が協力するとなれば、そんなに金がかからず、人手もかからずに非常にいいものができる。その情報バンクにアプローチすれば、いろいろものが情報的に見えてくるという、そういう一番の基盤づくりを国土地理院はできるのではないか。それぐらいの戦略性を持って将来性を見ればいいのではないか。
 実際の研究題目として、そういう大情報データベースを作るというのは、それをどう構築するかなどを研究テーマに掲げて、予算をとり、走り出したら、走り出した方が勝ち。あらゆる省庁が、これを利用して、自分たちの情報公開もやらなければならないというようなことが自然にできるわけである。そういうものができると、今度いろいろな人がそこを見たときに、個々の行政官庁、研究機関などが持っている情報の優劣、その出し方、それらが一挙に比較でき、日本全体の情報の利用度、練度、そういうものが一挙に上がる。そういう最大の知的骨格づくりを国土地理院はできるのではないかと考える。
 その前提として、地理情報というのはそもそもどのようにあるべきなのか、どう社会的に保有されて、利用されるべきなのかという、地理情報を根本的に考えるということを戦略的な研究目標の一つとして考えて、国土地理院の中にはそういうことを常に考えている戦略的な研究部門があるというようにして、かつそれを発信していく。そういうことが必要ではないか。
○大森委員
 今立花さんが言われたところに基本的には尽きると思う。もう少しかみ砕いて言うと、21世紀の地理院はどうあるべきかということだと思う。そういう中で個別の課題は多分それなりにやられているだろうと思うが、立花さんの言われた大きいフレームワークを作り、それをどういうふうに構築していくかというのが最大の研究課題になるのではないか。
 それから、そのフレームワークを構築していくときに、どのデータをきちんと集めるのか。そして、集めたデータは少なくとも管理し、あるいは情報提供を含めてやっていく。それ以外にいろいろなデータがふぞろいでできているであろうから、それはリンクするような形で集める。全国必要な最小限のデータというのはどれで、他になければ自分のところで作り上げるぐらいのものをきちんと確保し、そういうものを作り上げていく、その辺のことを考えていかないと、事業の拡大ということにはなっていかないのではないか。
○竹本委員
 この委員会は最近5カ年間の地理情報取得・解析に関する研究について評価する委員会である。その枠で考えると地理院の中に研究職ができて、まだ間もないなど、いろいろな制約がある中で、よく頑張ってきたというのが我々一致した意見で、大変よく評価できる。
 今後やってほしいことは、4ページの評価書2のところに、新たな情報の開拓ということが書いてあるが、従来2次元の上での情報をやってきて、そこでは成果を上げてきたけれども、今後は空間的に3次元、さらに時間の項目も入れて4次元での情報を得るための研究開発をさらに精力的に進めてほしいというのが希望である。
○白川委員
 この評価委員会の位置づけは何だろうという議論の中で、地理院がどういう方向で動くのかというのが一つ大きな課題としてあるのではないか。それに新しい方向観の中で個別に取り組むべきものをどうするか、どう評価するかという、むしろ二層構造で見た方がいいのではないか。どちらかというと、個別の方から走ってきて、我々から言うと、上の層の話をしたいところでもやもやとしているぎこちなさが出ているのではないかなという感じがする。
 地理院で何でもできるということはしょせん無理だと思っている。特にGISがこれだけ脚光を浴びているのは何なのか、単にディジタル化とか、衛星精度が上がったということではなくて、それをベースにしてこの分野が物すごいビジネスになるということだと思う。ビジネスというのは単に金を稼ぐという意味ではなくて、新しい世界が出てくるということですごく脚光を浴びているのだと思うのだが、そうすると、立花さんは座標軸という言葉を使われたが、私はプラットホーム作りかと思う。キーとなるところは地理院がやる。あとは、いろいろなところがやっている森羅万象のマッピングを、産官学を含めたトータルでどこにどういうデータがあるというのをうまくリンクしていくというところから取っかかっていくと割と道はあるのではないか。
 最終的にいろいろな人がこのプラットホームをのぞくことによって、何かができるという感覚ができれば、何でもかんでも地理院がやるという必要はないと思う。その中で地理院としての重点ポイントを我々のような素人でもわかりやすくしてもらうと、場合によっては、地理院の組織自体も変えていくんだ、研究体制を変えていくんだという議論にもつながるのではないかという気がする。
○細村委員
 地理データに関してだが、特に地形データだけに地理院としてはこだわっているわけではないと思う。一番典型的なのが地球地図だと思うが、地球地図の場合には2次元のデータとしては土地利用図、植生図、土壌図、そういうものを考えておられる。ということは、そのようなデータについても集めるという枠組みができているのではないか。地形データに今まではこだわっていたが、地球地図、環境地図という形で、そのようなデータもどんどん取り込んでいくという形に持っていった方がいいと思う。
○横山委員
 国立天文台では発足当初、運営協議委員会、専門委員会など外部委員が半分の委員会がわっとでき、何でこんなうるさい人たちが来るのだろう、一々小骨が刺さるような運営ではやっていけないという不満もあった。しかし、10年たってみると物すごく私は機能したと思う。大学の先生方が何を考え、何を望んでいるか、我々はいかに井の中のカワズでやっていたかということがよくわかる。
 人の批判が聞ける、こちらの弱点を出せる、どちらもいいことで、今後もこういう外部の方を交えた評価、検討のシステムは、ぜひ工夫してうまく機能するようにしてほしい。
○立花委員
 言い忘れたが、21世紀の情報化時代においては、情報の所在そのものがマッピングの最大の対象になる。内容を含めた情報の所在をマッピングすれば、それこそ社会的な見取り図になる。それが先ほど私が言った座標軸、それはそのまま情報化社会のプラットホームになるというのは、結局そういうことだと思う。ここは、そういうことをできるところだということだ。
○高木委員長
 研究については最初の方からよくやられているが、それ以外に注意や要望がいろいろあるので、その辺を多少参考にしていただければと思う。