平成11年度第1回国土地理院研究評価委員会講評

〇高木委員長
 五箇年計画全体に関しては、技術的な面が主にリストアップされていて、もう少し戦略的な面の研究が要るのではないか。また、研究開発と事業との関連などストーリーが少し見えにくい。前書きのあたりから動向を説き起こし、使命、五箇年計画となっているが、動向と基本的課題をうまく結びつけるなど、もう少しストーリーがあった方がいい。それから、国際協力をうたっているのだから、もう少し具体的に、どのように国際協力するのかを書かれたらどうか。
 これだけを見ていると、各研究項目に対する背景がわかりにくいので、横の連絡をとり、特に戦略的な面では、21世紀に向けての国土地理院のあり方などを含め、研究開発するという方向でまとめるといい。

〇白川委員
 もう少し戦略性があった方がいいという議論があった。6ページから7ページにかけて、2項「測量技術の革新と社会・経済の動向」の部分で、大きな流れとか今後のいろいろな部門から要請されることが書かれている。そして、3番目の「国土地理院の研究開発の使命」からその次の五箇年計画策定の視点となり、8ページ下の1)、2)、3)では、来年でも10年後でも10年前でも使える文言が書かれている。ここに連続性がなく、ここから読むと、この計画が、どうして個別に出てきたのかという感じがする。
 こういう技術的な進展と世の中の背景や動向があるから、今までを反省した上で、この点が欠けているとか、こちらに方向を切りかえる。つまり、今まではこういう方向で来たが、こういう舵取りを切った結果、この項目はやはりやらなくてはいけないというふうでないと、戦略性が見えない。それから、方向を切りかえたが、やることは前から決めてあったととらえがちになるので、そこは、どのように方向を変えるというような、差分の意味が出るべきではないか。

〇大森委員
 企画部長、測地部長、測図部長、地理調査部長、地図部長、だれがどういうことを担当しているのかわからないが、もっと構造を変えるつもりはないのか。つまり、その辺をも見越して、どうあるべきかということを検討するような研究を、企画室あたりで行政的に考えるというよりも、あるべき姿を研究として考えていく。思い切って改組するぐらいの、そんな意気込みが感じられるようなのが21世紀を目指す地理院ではないか。そういう意味での研究がこの中にあまり感じられなかった。

〇横山委員
 地殻変動と宇宙技術と地図情報、3つの流れで研究を進めるということで理解している。そういう区分をした瞬間に、その区分は多分陳腐化するので、今日の3つの計画も、3つの顔を立てたということではないかと思う。別の視点からすれば、まとめられるものもあるだろう。あまりそういう区分にとらわれないでやるということが大事である。

〇細村委員
 あまりにも技術的な話が多くて、細かいところにとらわれているという感じがする。もう少し広い視野で研究全体を眺めていく姿勢が必要だ。

〇川崎委員
 何となく日本海側に住んでる人間は、中央の人から無視されてるという印象をいつも受けている。国民から愛されるようになるには、やはり日本海側に住んでる人にも存在感がわかるような、違う視点から言うと、山とか離島というのは変動が集中する場所で、そういう意味でも重要である。例えば飛騨を例にすると、人間が行けないようなところで、こういうデ-タを使えば、このようなことがわかるというと、国土地理院はこんな北陸のことも気にしてるんだと、二重の効果があると思う。

〇高木委員長
 事前評価は、今年で一番推すとすると、GPS連続観測による上下地殻変動検出手法開発に関する研究である。応用範囲も広く、たくさんのデ-タがとれていて、成果が出やすいのではと思われる。しかし、名前が少しパンチがきかないので、少し手直しが必要かと思う。
 干渉SARについては、地盤沈下にターゲットを絞ってやるならいいのだが、手法自体は既にいろいろとやられているのではという感じである。
50mメッシュについては、大学の研究者は、データをもらってそれを種にいろいろ研究を始めている。そういうところをサーベイし、使える研究はどんどん使う。そして部分的にやってうまくいきそうだとなったら、地理院で全国的にそのデ-タを作る。もっと大学と連携をとったらよいという意見である。