GPS連続観測による上下地殻変動検出手法開発に関する研究

新規研究課題提案書

提案課・室名
問合せ先


 
課・室名:地理地殻活動研究センター地殻変動研究室
所在地:茨城県つくば市北郷1番
TEL:0298-64-6925  FAX:0298-64-2655
担当者名: 村上 亮
研究課題名 GPS連続観測による上下地殻変動検出手法開発に関する研究
研究制度名 特別研究
研究期間 平成12年4月 ~ 平成15年3月
(1) 課題分類
 
「安全と安心の確保」
 
(2) 研究開発の背景・必要性
 
全国約1,000点のGPS連続観測網のデータの水平成分を高度に解析することによって、我が国で進行している地殻変動の詳細な状況、プレート運動に関する知見等が得られている。また、1994北海道東方沖地震、1994三陸はるか沖地震、1995兵庫県南部地震等を始めてとするマグニチュードが6以上の地震の断層運動にともなう地殻変動を検出し、それらの発生メカニズムの解明に資するデータを提供したほか、伊豆半島東方沖や岩手山の火山活動に関連する地殻変動を捉え、発生メカニズムの解明等を通じて火山防災にも寄与している。しかし従来は、地殻変動のうち水平成分の解析が主体であり、本来3次元的情報であるGPSの観測量の全てを有効に利用できていない。これまで上下方向の地殻変動は主に水準測量によって検知されてきたが、費用と観測に時間を要することから、実施区域や繰り返し周期が限られ我が国で進行している上下地殻変動を全て理解していないおそれがある。
この研究では、全国にほぼ均一に配置されているGPS連続観測データを用いて、全国の上下方向の地殻変動の進行状況を解明する手法を開発するものであり、この手法が確立すれば、我が国で進行している地殻変動の全体像を把握する上で、格段の進歩をもたらす上、地震や火山活動の防災面への一層の貢献が期待される。さらに験潮データとの比較による海面上昇の検出、地盤沈下モニタリングへの応用も可能であり、地球環境の変動のモニタリング手法の高度化に資する。
(3) 研究開発の目的・目標
 
  • 各種の時系列データ解析手法およびGPSの誤差要因を比較検討し、GPS観測データから上下地殻変動の傾向を抽出する手法を開発する。
  • それらを、従来の水準測量及び験潮により知られている上下地殻変動分布と比較する
  • 推定されたデータを、水平地殻変動から推定された地殻変動モデル、第四紀の長期地殻変動等、関連するデータと比較対照し、推定データの妥当性を検討する。また、これらの結果を参照し不動点の選定に関して最良の方法を確立する。
  • 御前崎のGPSによる新しい連続高精度比高観測のデータに手法を適用し、年四回の水準測量結果と比較することによって手法の精度を確認する。必要に応じて修正を経て上下地殻変動を抽出する手法を完成させる。
(4) 研究開発内容
 
GPSによる上下成分の座標値は、水平成分に対して、数倍程度のばらつきを有するほか、アンテナ周囲のマルチパス、採用する衛星の高度範囲、アンテナの物理的・物性的定数の変化等に敏感に影響され、真の地殻変動情報を抽出することを難しくしている。この研究では、これらの誤差要因の性質を明らかにし、可能な限り正確な上下地殻変動情報を取り出す手法を開発する。また、得られた成果から、地球力学的な議論を行い、テクトニクスの理解、防災面への応用等に資する情報を得る。
(5) 研究開発の種類
 
1.基礎研究 3.技術開発
(6) 現在までの開発段階
 
3.その他(萌芽的段階)
  • 現在は、水平方向の地殻変動を抽出する技術を開発中であり、これをある程度利用できると考えている。
  • 上下方向の解析も、予備的に実施しているが、成果を期待させる面がある一方で、アンテナ周囲のマルチパス、採用する衛星の高度範囲、アンテナの物理的・物性的定数の変化等に敏感に影響される等上下成分特有の困難な要素も明らかになった。
(7) 想定される成果
 
この研究によって、
  1. 我が国で進行している上下地殻変動の全体像の把握
  2. 験潮との比較による海面上昇の検出への基準データの提供
  3. 地番沈下モニタリングへの応用
  4. 地形学的、地質学的手法により得られる上下地殻変動長期傾向との比較による我が国のネオテクトニクスの詳細な解明等が、期待される
(8) 研究に協力が見込まれる機関名
 
特に、特定の機関は想定していないが、研究が進展してゆく段階で、傾斜、重力等の地殻変動の連続観測を実施している機関、例えば、大学、気象庁、国立防災科学技術研究所等とは、データの交換、比較討論を実施してゆくことが予測される。
(9) 関係部局等との調整

 
研究の進展については、河川局災害対策室に随時報告する予定である。また、非専門家等の利用が可能なレベルまでシステムが完成した場合には、それらの普及を図るため、省内関係部局と連携することが考えられる。 
(10) 備考
 
特になし。
 
GPS連続観測による