最近5年間の国土地理院の地殻変動研究

平成11年2月12日
国土地理院研究評価委員会
測地分科会資料

1. 概要

国土地理院は、前身である旧陸地測量部時代から百年以上にわたって、それぞれの時代における最高の技術を用いて我が国の国土を繰り返し測量し、その成果は国土の開発・保全、防災、地球科学の発展等に多大な貢献をしている。そのなかでも、高精度な繰り返し観測や、最近高度に発達した高空間分解能連続観測から得られる地殻変動のデータは、地震、火山活動その他の地球の変動現象の物理過程に関する我々の理解を飛躍的に高め、地球科学の発展に大きく貢献したほか、それらの災害から国民を守るための実用的な防災情報としても重要な役割を果たしている。

この重要な使命に十分に応えるため、国土地理院は従来から測量および地殻変動に関する様々な研究・開発を実施している。その範囲は、測量の手法の開発、測量成果の解析手法の開発等多岐にわたっている。

国土地理院は、自らが測量実施機関であるという特徴を最大限に生かし、地震・火山活動に伴う地殻変動を測定し、発生した現象の物理的描像を明らかにしてきた。また、測量に関する国家機関として最新の測量手法の開発も行っている。それらの成果は、高精度かつ効率的な地殻変動観測の実施するための技術としても応用され、例えば、GPSや干渉合成開口レーダーの導入は、地殻変動研究に大きな効果を上げている。さらに、観測手法の進化により質・量ともに飛躍的進歩を遂げた観測データから、さまざまな情報を読みとるための解析技術に関しても積極的な開発研究を実施している。また、最近では測地学審議会の建議においてもその重要性が指摘されている地殻変動シミュレーションにも着手し、手法の開発を行っている。一方、測地学的手段以外にも地形学的手法などを利用した地殻変動に関する多彩な研究を実施している。

この資料では、最近の5ヵ年間に国土地理院が実施した地殻変動に関する研究の成果およびそれらに基づく今後の展望について、以下の項目に整理して紹介する。

なお、個別には示さないが、これらの研究には国土地理院独自で実施したもの以外に、共同研究で実施したものも数多く含まれている。
  1. 個別の地震・火山活動の物理過程解明に関する研究
  2. 観測技術の高度化に関する研究
  3. 解析技術の高度化に関する研究
  4. 変動現象・テクトニクスに関する新しい発見
  5. 地殻変動シミュレーションに関する研究
  6. 測地学以外の手法による地殻変動研究