第3章 測量技術者の資格制度の在り方

(1)現状と問題点

 測量法では、基本測量及び公共測量の精度を確保する観点から、測量士・測量士補の国家資格制度を設けている。
 技術者として基本測量又は公共測量に従事する者は、国土地理院に登録された測量士又は測量士補でなければならない。測量士は、測量に関する計画を作製し又は実施し、測量士補は、測量士の作製した計画に従い測量に従事することとされている。
 また、測量業者は、その営業所ごとに測量士を一人以上置かなければならないこととされている。
 平成9年12月末現在、国土地理院に登録されている測量士は173,300人、測量士補は363,307人となっている。測量士及び測量士補の年別登録者数は、近年、増加傾向にあり、平成9年の登録者は測量士が3,900人、測量士補が12,800人となっている。
 測量士、測量士補となるには、一定の学歴と実務経験又は国土地理院長の実施する試験に合格することが必要である。
   
    <測量士となる資格(法50条)>

┌─○学歴・経験による資格─┬─大学で測量を履修し卒業  + 1年以上の実務経験
│ │
│ ├ 短大等で測量を履修し卒業   + 3年以上の実務経験
│ │
│ │ 建設大臣指定の養成施設で測量士補 + 2年以上の実務経験
│ │ に必要な知識・技能1年以上修得
│ │
│ └ 測量士補である者 + 建設大臣指定の養成施設で建設大臣指定
│                   の科目について高度の知識・技能を修得

└─○測量士試験に合格
    <測量士補となる資格(法51条)>

┌─○学歴・経験による資格─┬─ 大学で測量を履修し卒業
│ │
│ ├ 短大等で測量を履修し卒業
│ │
│ └ 建設大臣指定の養成施設で測量士補に必要な知識・技能を1年以上修得

└─○測量士補試験に合格



 測量士・測量士補制度には、次のような問題点が指摘されている。
 a.測量士・測量士補の役割
 現行の制度では、測量士・測量士補は、専門技術を要する測量の実務者として業務を行うこととなっているが、測量の専門技術として重要な工程管理、品質管理、品質評価等が資格者の役割として明確になっていない。
 b.学歴中心の資格制度
 現行の制度では、大学等で測量学を履修し、卒業すれば測量士補の資格が与えられ、また、大学等で測量学を履修し卒業した上で測量に関する実務経験を積むことにより測量士となる資格が与えられる。
 このような資格制度は、大学等の卒業者数が少なかった昭和20~30年代には適切であったと思われるが、現在のような高学歴化の時代においては、大学により測量教育の内容が大幅に異なり、卒業者間に測量に関する知識の格差が生じている。このような状況から、現行制度のように大学等の卒業を条件として資格を与える制度では、測量技術の進展に的確に対応できない測量技術者を生むおそれがある。
 また、測量士・測量士補制度のように学歴及び実務経験のみで与えられる資格は、我が国の国家資格の中では少数である。

(2)今後の測量技術者の資格制度の在り方

 公共測量等の測量成果の品質管理に、測量士・測量士補の資格登録制度が大きく寄与してきたといえるが、公共測量の品質確保の基本的考え方等を踏まえ、今後の測量技術者の資格制度を次のようなものにするべきである。
 a.測量技術の進展に的確に対応した技術者資格は、今後とも必要である。一方、高度な測量技術を要する測量を実施し、測量成果の品質管理等に責任を持つ高度な技術者資格が求められている。このような高度な技術に対応できるように、現行の測量士・測量士補の資格体系を見直す。
 b.資格者の技術水準を客観的に判定するため、試験を重視した制度とする。
 c.測量技術者の技術水準の維持を図るため、登録更新制度又は講習制度を検討する。
 d.国の行政事務の簡素化・効率化を図るため、測量士・測量士補の試験及び登録の実施に関する事務を民間機関に委ねることを検討する。