角度を測る器械

角度を測る器械

画像:カールバンベルヒ一等経緯儀

カールバンベルヒ一等経緯儀


では、三角測量の主役である角度を測る器械はどんなものでしょうか。

ここにあるのは、「カールバンベルヒ一等経緯儀」と呼ばれるドイツ製の水平角を測る器械です。その精度はすばらしいもので、堅ろう無比であったといわれます。

画像:当時の器械運搬の様子

当時の器械運搬の様子


運搬箱を含めた総重量は約60kgもあり、「やぐら」の材料や食料などとともに運搬には、相当苦労したようです。

 

三角測量の困難な様子について、大正11年の雑誌「武侠世界」には、日本アルプスの登攀記録とともに陸地測量部員の遭難記録がいくつか掲載されていて、大正6年の知床半島「海別岳の遭難」では、9月29日の猛烈な暴風雨で雨漏りの後、天幕を飛ばされ気温の低下が測量手ら(当時は測量技術者のことを、測量師・測量手と呼んでいた)を襲い、三日間天候の回復がなく、飢えと寒さのため死を覚悟して信号用の旗を立て、これまでの測量結果である手簿と一同の遺書を測旗に包み竿に結びつけたとあります。幸い数日後の10月4日には、天候が回復し九死に一生を得たようです(北海道登山小史 高澤光雄)。

いずれにしても、技術の未熟と装備の不備のため幾多の困難に見舞われたと思われますが、その後の測量・地図作成の基本となった、一等三角点(補点を含む)の測量は、大正2年にはひととおりの完成をみました。