第19回全国児童生徒地図優秀作品展 ご挨拶(連絡協議会長)

第19回全国児童生徒地図優秀作品展 ご挨拶(連絡協議会長)

災害と地図

 東日本大震災から5年の歳月が流れる。2011年3月11日をきっかけに、日本人は自然の脅威をあらためて知り、防災意識も高まったかに見えた。にもかかわらず、洪水・土砂崩れ、火山の噴火・雪害等々、続発する自然災害を前にして、防災は後手に回っているようにも思う。

 

 第19回全国児童生徒地図優秀作品展大臣表彰には、災害関連の次の2作品が選ばれた。

  • 国土交通大臣賞 「危県!”広島県 県内ワーストワン広島市!”」
    • (広島市立大州中学校3年 熊谷彩さん)
  • 文部科学大臣賞 「長野県神域断層地震~立体図で活断層を見る~」
    • (岐阜県立大垣北高等学校2年 山口愛加さん)

 熊谷さんの作品は、一昨年の広島豪雨による土砂災害をテーマにした「危県!広島県…」であり、立体地図に風化花崗岩地域の宅地化の分布に被災地を重ね合わせたものである。

 岐阜県の山口さんも、一昨年の長野県神城断層地震をテーマに、活断層を平面地図と立体地図に表し、自身の住む大垣の近くにある池田山断層についても地図化したものである。

 2つの作品は、防災意識の向上を願っている点でも共通している。

 また各地区の優秀作品の中にも防災・安全をテーマにしたものが目立ったように思う。

 

 私の勤める学校の校長室には、壁面に3種類の地図がパネルにして掛けてある。

[1]鳥取県全体が納まる1/5万の地形図と
[2]鳥取市主要部(1/1.6万)の地図
([1]と[2]には生徒の住所に、学年毎に色を変えた“まち針”が挿してある)
[3]鳥取御城下全図(安政6年作成) に加えて、
[4]住宅地図も常備している。

[1]・[2]・[4]は、災害発生時、緊急時に地図のある校長室が対策本部になり、生徒の安全と命を守ることにもつながるものでもある。災害の予防、緊急時・災害時の対応に、地図・地形図の果たす役割は大きく、重要かつ基本的常備品であると思う。

 

 「災害は忘れた頃にやってくる」という言葉もあるが、災害は「人間社会への警鐘」でもあろう。自然に畏敬の念を忘れず、自然との共生をめざす心をもち、真摯に地図と向き合うことで防げる災害もあるのではないのだろうか。

 また、災害時に一枚の地図が手元にあることによって、救援・救助などに役立つのではないかと思いながら、校長室の地図と対峙しつつも出番がないことを願っている。

 

  平成28年2月
    全国児童生徒地図作品展連絡協議会
      会長 小山 富見男