測量・地図ミニ人物伝:沼尻墨僊

「測量・地図ミニ人物伝」 

 

沼尻墨僊
(1775-1856)

 

画像:沼尻墨僊

「傘式地球儀」(土浦市博物館パンフレットより)

 

 沼尻墨僊(ぬまじりぼくせん)は茨城県土浦の人で、地理学を研究し、「地理書」を書き、世界地図の模写と傘式の地球儀を作成したことで知られています。

 

 沼尻は、土浦の旧家(きゅうか)の9番目の子として生まれました。すぐに町医者であった沼尻家の養子(ようし)となりました。
 父は病気がちであったことから、若くして着物の仕立て屋商売にせいを出し、孝行につとめたといわれます。こどものころから、勉強が好きで、いつのころからか地理学にきょうみを持ち、研究書などを書いていますが、だれが先生であったかは明らかでありません。
 26歳の年には、世界各地について書いた地理学の研究書、「地球万国図説」を書きました。

 

 彼が作った傘式地球儀ですが、12本の骨と長さが40センチメートルほどの棒を持つもので、傘を開くように片方を押し上げると地図が開く仕掛けになっています。現在残っているのは、安政 2年(1855)に作られたもので、土浦市博物館に展示されています。

 

 この地球儀は、江戸や大阪にも送られ、各地の大名にも届けられ、ひょうばんがよかったといいいます。また、彼は寺子屋の先生もしていましたから、土浦周辺からやってきた多くの生徒の前では、書のほか、この地球儀を使用して地理を教えたのでしょう。
 本人も書や絵画もたしなみ、父母への孝行によって土浦藩から二度の賞を受ける真面目な地理学者であり、教育者でした。