地理空間情報社会を支える基盤の確立

 国内の自動車2,200万台にカーナビゲーションシステムが搭載され1)、毎月のべ数百万人がインターネット地図検索サービスを利用する2)など、近年の我が国において、電子地図を利用したITサービスの普及が急速に進んでいる。加えて、平成19年からは、緊急通報に係る位置情報取得に必要な機能として3)、新規に販売される携帯電話機種のほとんどにGPSが搭載される見込みであり、電子地図は今後も利用が拡大するものと見込まれる。


 様々な情報をITによって地図に関連づけて管理・解析する地理情報システム(GIS)は、必要な情報を見つけやすく、また、情報の内容を直観的に理解しやすい点で優れている。国民の安全で豊かな暮らしを守り、国際競争に耐えうる高度で効率的な経済社会を構築するために、人々の暮らしや行政の場において電子地図やGISが大いに活用されることが期待される。


 国土地理院は、地図や測量に関する技術力をベースに、政府関係部署と協調して、地理空間情報*の共有化・高度利用を推進する役割を担ってきた。また、地理空間情報の最も基本となる位置基準を規定し、また、国土の形状変化を一定のスケールで把握し地図情報にして発信している。さらに、位置情報の生産行為の多くを占める国の機関や地方公共団体の行う測量、すなわち公共測量に対して、測量法に基づき指導・調整を行っている。

 これらの政府における役割を基に、国土地理院は地理情報システム関係省庁連絡会議の事務局として行政におけるGISの普及を推進してきた。また、平成12年からは産学官民が持つ様々な地理空間情報が共用される「電子国土」構想を提唱し、これを実現すべく、プラットフォームとして「電子国土Webシステム」を提供してきた。平成18年6月に地理空間情報活用推進基本法案が国会に提出されるなど、地理空間情報の活用への機運が一層高まる中、平成18年度後半から平成19年度にかけては、これまで数年間取り組んできた施策を深化・融合する時期にある。


 また、増大する地理空間情報への需要に対し、国土の位置・形状の変化を遅滞なく効率的に把握するために、平成12年から人工衛星の利用に関して宇宙航空研究開発機構(JAXA)(開始当時は宇宙開発事業団(NASDA))との共同研究を推進してきた。


 防災に関しては、平成13年から災害対策基本法による指定行政機関として、GIS技術、測量技術や地殻変動の観測技術等を使った施策、災害対応を推進し、改善を続けてきた。


 これらの数年来取り組んできた施策が、国民の暮らし、安全を着実に支え、地理空間情報社会の構築に貢献できるよう、平成19年度は、以下の3点を重点的に推進する。


1.地理空間情報の高度な活用の推進
2.大規模災害への備えの強化
3.宇宙技術を用いた地球観測基盤の確立

参考資料

1)平成18年版情報通信白書、総務省編、平成18年7月
2)地図検索見やすく・詳しく、YOMIURI ONLINE、平成18年6月18日
3)携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能に係る技術的条件の策定
  (情報通信審議会からの一部答申)、総務省報道資料、平成16年6月30日