平成16年度国土地理院重点施策 総説

電子国土の実現を目指して

いつでもどこでもだれでも
位置情報・地理情報を利活用できる社会の実現

平成16年度は第6次基本測量長期計画(実施期間:平成16~25年度)の初年度にあたる。この新計画では、いつでも、どこでも、だれでも位置情報・地理情報を利活用できる社会の実現を目標とし、これを具現化する政策として「電子国土」の構築とその利活用を推進することとしている。

 「電子国土」とは、各種の位置情報や地理情報について、その変化を可能な限りリアルタイムに取得し、統合利用できるようコンピュータ上に現実の国土を再現するものである。電子国土上において国土の変化を事前に予測できれば、意思決定に伴うリスクを軽減できる。また、環境アセスメント、景観シミュレーション、防災情報の提供等、行政での利活用から、観光ガイド等の個人利用まで、電子国土の活用範囲は非常に大きなものが期待できる。

 電子国土は、国土に係る情報を幅広く統合する必要がある。国土地理院は、電子国土の中で、まず基礎的な位置情報と地理情報を提供するとともに、インターネット上で電子国土を実現する「電子国土Webシステム」を運用する。また、国土に関する種々の情報を保有する他機関に対し、電子国土への参加を呼びかけて、その充実を図る。

 位置情報に関しては、全国1.200点余の電子基準点からリアルタイムデータを配信し、いつでも、どこでも、だれでも高精度な位置情報を利用することのできる位置情報基盤を実現し、公共測量等で広く使用できるよう仕様の標準化を行う。また、電子基準点の連続観測データの解析によって、日本列島が常時動き続けていることが明らかになったことから、国家基準点については、地殻変動を考慮した成果を更新し、公共測量等への使用に際しては常に最新の値を提供できるように努める。

 地理情報に関しては、図葉単位で更新していた方式から、変化の発生に対応して、個々の変化情報ごとに更新する方式へ移行する。これにより、全国のシームレスな地形図データベースが、常に新鮮な情報で維持管理されることとなり、いつでも、どこでも、だれでも新鮮な地理情報基盤を利用することのできる環境が実現する。

 平成15年7月から一般公開した電子国土Webシステムについては、機能向上を図るとともに、参加機関の拡大によるデータの充実を推進し、現実の国土変化を反映した電子国土としての目標に近づける努力を、不断に続けていく。

 一方、汎用的な電子国土Webシステムと並行して、防災、環境、観光等の行政課題に電子国土を活用する仕組みの構築についても、重点的に対応していく。

 国民の安全・安心の確保については、平成15年6月に開設した国土交通省の防災情報提供センターでも、平成16年度より電子国土Webシステムが組み込まれる予定であり、その充実を図る。また、東南海・南海地域等における地殻活動監視の強化や防災地理情報等の充実を図る。

 政府は、日本を訪れる旅行者の増加に向け、「観光立国行動計画」の策定を行った。また、国土交通省においては、公共事業実施に美的視点を求めて「美しい国づくり政策大綱」の策定を行った。これら施策への地理情報の貢献として、過去から現在に至る国土の歴史的変遷を知り、日本の国土を見直すためのデジタルアーカイブや全地球規模のデジタル地理情報の整備とともに地球環境問題等の解明に貢献するための地球地図の整備を推進する。

 このように、「電子国土」の構築を通して、いつでも、どこでも、だれでも位置情報・地理情報を利活用できる社会を実現するため、平成16年度は以下の4項目について重点的に取り組む。

 1 位置情報基盤・地理情報基盤の構築
 2 電子国土の共有化・システム化の推進
 3 電子国土を活用した国民の安全・安心の確保
 4 環境・観光等への利活用を目指した電子国土の時間的・空間的拡張