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第11章 製品仕様書

11.1 意義と適用範囲

 

11.1.1 意義

 
  製品仕様とは,空間データが作成される際の論議領域を示す仕様である。また,利用の場面でいえば,利用しようとする空間データが,いったいどのような目的で,どんな品質であるかを明確にし,それが実際利用可能か判断する材料を与えるものである。
  製品仕様は,製品仕様を満足するものができれば,作成手法は問わない仕様である。従って,その時の最新,最良の方法で空間データを作成することができる。その代わり,品質に関しては,明確に規定する必要がある。作成方法の詳細や作成側での品質管理体制を明確に示すことによっても品質を担保することができるし,品質確認報告書にその品質確認方法とともに品質を明示してもよい。
製品仕様には,まず目的を明記しなければならない。施設管理のためなのか,空間解析のためなのか,そして,それはGISのどのような機能によって実現するのかなど明確に記載しておく。これによって,その目的以外の地物作成が含まれているかどうかが明確になる。
  製品仕様にはその空間データに含まれる地物の定義とともに品質要求を詳細に記載しなければならない。これによって該当する空間データの内容が明確になり,異なる空間データがある場合,それらの違いが明確になる。
 

11.1.2 適用範囲

 

 製品仕様書は,空間データを作成又は交換する際,その基準となる論議領域を明確とする製品仕様書に記載されるべき事項をまとめたものである。
 製品仕様書は,JSGI2.0に準拠した空間データについて,その論議領域を定義する際,必要最低限の事項を規定したものであり,準拠していない空間データについては,製品仕様書の適用範囲外である。

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11.2 改訂の経緯

 

JSGI2.0は,第1版では収録しなかった製品仕様書を,新たに項目として追加した。
 ISO/TC211において,製品仕様書に該当すると考えられるISO 19131 Geographic information ― Data product specificationsが存在するが,ドラフトが作成されていないため,今回は引用・参照していない。
 一方国内においては,1996年度から1998年度にかけて実施した官民連帯共同研究「GISの標準化に関する調査」研究においては検討されており,1999年3月には,製品仕様書作成マニュアル第1版を作成した。その後,1999年度から2001年度にかけて実施している共同研究「地理情報標準の運用に関する研究」において検討した結果,製品仕様書に記載されるべき事項を規定してJSGI2.0に収録した製品仕様書と,実際に製品仕様書を作成する場面を想定してその手順や留意点について記載した,製品仕様書作成マニュアルを,それぞれとりまとめた。

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11.3 製品仕様書の内容 

 
標準は,製品仕様書に記載すべき事項を規定したものである。JSGI2.0の他の項目と同様の様式でまとめられている。また,その内容自体,JSGI2.0の他の項目の引用となり,実質的に記載すべき事項の羅列になっている。製品仕様書を実際に作成する場合は製品仕様書の他,製品仕様書作成マニュアル及びJSGI2.0の他の項目を参照のこと。
製品仕様書で規定している記載項目は以下のとおりである。
・製品仕様識別
・製品の目的
・地理的範囲
・時間的範囲
・参照系(空間参照系,時間参照系など)
・応用スキーマ(地物定義)
・符号化仕様
・品質要求
・品質評価
・メタデータ
・その他オプション
 

11.3.1 製品仕様識別

 
製品仕様書識別とは,その製品仕様書を一意に識別するための情報である。すなわち,製品仕様書の名称,作成者,作成年月日などの事である。
 

11.3.2 製品の目的

 
 空間データを作成目的を明記する。どのような目的で,その空間データを作成するのか,そして,どのように利用するのかを明確に記載する。同じ名称の地物であっても,その利用される目的によって自ずと定義や構造が変わる。ここでは,個々の地物定義がどのような立場から行われたか理解できるように総括的な目的を記載する。
 

11.3.3 地理的範囲

 
 該当する空間データの空間的な範囲である。記述は自由形式であり,範囲を囲む座標列でもよいし,東西南北の座標の最大最小の値で示すこともできる。また,地名で範囲を規定したり,ある線上地物の幅100m内といった表記でもよい。また,該当範囲をカバーする小縮尺図に範囲を記入した図面を添付してもよい。
 なお,標高に関しても範囲を規定する必要がある場合は,明記する。
 

11.3.4 時間的範囲

 
 空間データの時間的範囲を記載する。主として○○年○○月○○日時点のデータといった表記になる。時間属性を意識した空間データが作成される場合には,○○年○○月○○日から○○年○○月○○日までと実際の時間的範囲を記載する。
 

11.3.5 参照系(空間参照系,時間参照系など)

 
 空間参照系では,基準となる座標系を明記するとともに標高に関して別途明確にする必要があれば,それも記載する。平面直角座標系の場合は,その系番号と標高の基準となる東京湾平均海面高又は水準原点に関して明記することになる。また,座標値の有効桁数についても言及する。
 時間参照系では,日本標準時と記載する。
 その他,使用する単位系についても記載する。
 

11.3.6 応用スキーマ(地物定義)

 
 基本的には,データ集合に含まれる各地物の構成をUMLのクラス図で表現する。また,クラス図の補完的資料として地物要件定義を作成し,地物の詳細な内容を記述する。ただし,この地物要件定義は必須ではない。
 

11.3.7 符号化仕様

 
 JSGI2.0においては,符号化仕様としてXML文書を推奨している。このXML文書作成のためのタグセットを定義した,DTD又はXMLスキーマを記述しなければならない。また,できれば各地物ごとのサンプルを作成し,作成者に提示することで符号化仕様がより理解されやすくなる。
 

11.3.8 品質要求

 
 個々の地物に要求される品質を明記する。表記の方法としては,個々の地物ごとに記載してもよいが,地物の種類が多い場合には,地物を品質により類型化したのち,地物類型ごとに表記してもよい。また,合否判定のための品質基準も明記する。
 

11.3.9 品質評価

 
 作成された空間データの受け入れ検査手法を明示する。直接評価手法を採用してもよいし,作成仕様を引用資料として採用した場合,その仕様に基づいた間接評価手法を採用してもよい。
 

11.3.10 メタデータ

 
 メタデータは,空間データ作成前に記入できる項目と,作成後品質評価の結果を記入する項目がある。それぞれ,JSGI2.0のメタデータ仕様により記載する。
 

11.3.11 その他オプション

 

 製品仕様書には,前述の他に地名辞典,描画カタログの仕様を含めてもよい。その他必要に応じて,各種仕様を定義してもよい。

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11.4 製品仕様書の例

 

11.4.1 製品の概要

 
1) 製品の目的
本仕様書に基づき作成される空間データは,地理情報システムで使われる基礎データであるとともに,空間データを正しい位置に配置するための骨格データとしても使用されることを目的とする。
2) データの地域的範囲
  作成する空間データの範囲は,○○県○○市全域とする。
3) データの時間的範囲
   作成する空間データは,原則としてB.1.7.2の貸与資料の作成日付とする。
4) 座標系
   座標系及び計測単位は以下のとおりとする。
 :日本測地系2000(Japanese Geodetic Datum 2000)
 平面位置座標の種別:平面直角座標第○系
             (平成14年国土交通省告示第9号)
 標 高 の 基 準:東京湾平均海面高 日本水準原点を基準とする高さ
 単       位:メートル(小数以下2位)
 空 間 座 標の次元:2次元
 時 間 の 基 準:日本標準時
 

11.4.2 取得するデータの内容

 
1) データ項目
   取得する空間データは,以下のものを対象とする。
No. 地物タイプ名称 地物クラス名称
1 市区町村 Sichouson
2 大字・町丁目 Ooaza
3 街区 Gaiku
4 道路線 Dourosen
5 鉄道線 Tetudousen
6 Eki
7 鉄道敷 Tetusiki
8 都市公園 Tosikouen
9 学校敷地 Gakkou
10 神社・寺院境内 Jinjyajiin
11 墓地 Boti
12 その他場地 Bati
13 河川 Kasen
14 湖池など Kosyou
15 海岸線 Kaigansen
16 公共建物 Koukyoutatemono
17 基準点 Kijyunten
 取得するデータの要件は,要件定義の一部を示すが,実際にはすべての地物に関して作成する。

取得項目定義書
作成日:2000年  月  日
作成者:__________________
地物名称 市区町村(Sikuchouson)
地物定義 市区町村の行政区域の境界線
空間属性
名称 定義 品質評価資料 位置正確度 個数
Sikuchouson 境界線     1
時間属性  
主題属性
名称 定義 単位 値域 様式 個数 品質評価資料 関連属性
Sikuchouson_Kai 境界線の種別 整数   列挙   1    
                 
                 
                 
主題図形
名称 関連する主題属性の名称 描画コード
     
地物関連
名称 定義 含まれる地物名称 地物関連
順序
影響する
地物属性
         
地物の地域的範囲  
地物の用途・使用法 画面または出力図上で行政区域が明確に視認できるようにする。境界種別により線種を決定する。
その他 事実上,表現するのみで特に使用しない。

列挙地物属性/地物属性値
地物タイプ名称:市区町村(Sikuchouson)
属性名称: Sikuchoson_Kai
属性値ラベル 属性値コード 属性値定義
都道府県界
北海道の支庁界
郡市・特別区界
町村・指定都市区界
町丁目・大字界
小字界
 
1
2
3
4
5
6
 
 

2) データ構造
作成する空間データの取得形態及び付加する属性については,以下のとおりとする。この例では,一部のみ掲載する。
市区町村, 大字・町丁目, 街区

市区町村, 大字・町丁目, 街区

3) 品質
  作成する空間データの個々の品質は,別紙3(品質要求及び確認方法定義書)に示す品質を満足するものとする。
 

11.4.3 品質確認方法

 
  取得した各項目については,別紙3(前掲)に定める方法に従い品質確認を行い,その結果をまとめて,品質確認報告書を作成するものとする。
 

11.4.4 メタデータ

 
  メタデータは,コアメタデータに基づき作成するものとする。
 

11.4.5 符号化

 
1) ファイル仕様 
データ集合,別紙符号化仕様書に基づき記録媒体に記録する。
2) 記録媒体
  データ集合,メタデータは,光磁気ディスク(640MB)に格納する。
 

11.4.6 成果品

 
 当製品は以下のものから構成される。
・データ集合          一式
・品質確認報告書       一式
・メタデータ           一式
 

11.4.7 その他の事項

 
1) 特殊用語の定義
用語に関しては,本仕様書に定めるものを除き,JSGI2.0の用語を準用する。
2) 参考とする資料
  数値データの取得のために以下の資料を使用,または参考とする。
 1/2500国土基本図
 1/2500都市計画図
 1/2500数値地形図
 1/10000地形図
 数値地図10000(総合)
基準点データ
○○土木事務所管内図
 字界図
品質要求及び確認方法定義書のサンプルを提示する。

11.5 今後の課題

 

  製品仕様に関しては,2001年10月のアデレードにおけるISO/TC211の総会で新規項目として正規に採用された。
製品仕様と製品仕様書の使い分けに関しては,ISO/TC211において使い分けていないが,我が国では,製品仕様が製品に要求される要件の概念であり,製品仕様書がそれを現実に表現した文書であることとしている。
今後ISO/TC211において検討されるものがどういったものであるか注視していくとともに,製品仕様書との整合性を図っていく必要がある。

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