宮城県北部地震による低地の家屋被害と土地条件

調査の目的と対象

国土地理院では地震や洪水などの大きな自然災害が起こる度にその災害の状況と土地条件の関係を検証してきた。今回も7月30日から8月1日にかけて、全般的な被災状況の調査を行ったが、その中で家屋被害の著しかった河南町広淵地区(調査地域図(JPG:42KB))について詳しい調査を行ったので、その結果を報告する。

調査地の土地条件

広淵地区は石巻西部の海岸平野の最も奥に位置する低地である。海岸平野には海岸に平行に5~6列の砂堆がみられ、広淵地区の大部分はその最も北側の砂堆上に発達する。広淵地区の東南部の砂押は、大正元年につくられた地形図(5万分1地形図「松嶋」(JPG:99KB))では田圃であり、家はまだ1軒もなかった。同じ図で広淵地区の北方には広淵沼があり、1921~1928年に干拓された。その時に入植した農民が砂押に住むようになったということである。
砂押地区の建物は水田に盛り土をして50年位前に建てたものが多い。広淵地区内の他地区に比べ、1軒ごとの敷地が狭く、道路も碁盤の目のように規則的である。倒壊はしていないものの、家が傾いていて、危険でもう住めないものもある。路上に瓦が落ちていたり、ブロック塀が倒れていたりしたものも多い。(家屋被害写真)砂押地区の西半部(砂押地区の約半数)で数えたところ、被害の大きい建物は55%(家屋被害率グラフ(JPG:24KB))をしめていた。
柏木と町地区は古くからあった街道沿いの街で、砂堆上に位置する。柏木地区東部と町地区中央部では被害の大きな建物は8%(家屋被害率グラフ(JPG:24KB))と、砂押地区の被害と比べて明らかに少ない。

まとめ

家屋の被害が大きかった河南町の広淵地区の一部について、異なる土地条件にある家屋の被災率の違いを調査した。上述したように被害の大きい建物の比率が盛り土の上に家を建てた砂押地区の方が明らかに大きい。また、瓦屋根の家では砂押地区が8割を越える被災率であるのに対し、他の地区では2割と比率が逆転する。このように広淵地区だけを取ってみると、盛り土と砂堆という土地条件の違いが被災率の差になって表れたということは明らかであるが、このことを一般化するには慎重な検討が必要であろう。

宮城県北部地震の被害状況について