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SARによる有珠山地殻変動 国土地理院

3D 面的三次元変動が見られます。
変動速度もわかりました。
注意:これは従来の「干渉合成開口レーダー」による変動検出ではありません。新しい「合成開口レーダー画像のマッチング」による変動検出の実例です。  とにかく結果を見たい方はここ
2000年06月12日作成 by 国土地理院 地理地殻活動研究センター

SAR(合成開口レーダー)画像のずれ

 人工衛星RADARSATに搭載された合成開口レーダー(SAR;Synthetic Aperture Radar)の画像の位置ずれを計測しました。通常の計測手法では,1ピクセル(画素)単位(約5~7m)でしか,ずれを計測できません。しかし,高精度画像マッチング技術を使えば,約0.1ピクセル単位でずれを計測することができます。どうぞ2つのマッチング画像をご覧下さい。
有珠山の西側から撮影した画像 有珠山の東側から撮影した画像
クリックすると拡大表示できます 有珠山 クリックすると拡大表示できます
2000年4月5日に対する
4月29日の画像のずれ
2000年4月2日に対する
4月26日の画像のずれ

図の説明:図はそれぞれの点がどれだけ移動したかを示しています。黄色の点はずれの計測点で,そこから伸びるピンクの線は画像のずれを示しています。画像のずれ(ピンクの線)は20倍に拡大してあります。図の縦方向は,人工衛星の飛行方向であり,南北方向から約10度傾いています。縦方向の画像のずれは,この方向の地殻変動そのもの(ただし20倍)に対応します。一方,横方向の画像のずれは,この向きの地殻変動と上下(鉛直)方向の地殻変動を加えたもの(ただし20倍)です。

さらに詳しい説明:黄色の点の間隔は25ピクセルです。もし,この長さのピンクの線があると,(25ピクセル÷20倍=)1.25ピクセルの変動があったことになります。1ピクセルは約6mですから,(1.25×6m=)7.5mの変動に相当します。上下変動の場合には,原理的にこれに係数約1.4をかける必要があります。さて,変動がないと予想されるところでも,図上5ピクセル(実際には0.25ピクセル)しかノイズはありません。これは水平変動で1.5m,上下変動で2.1mに相当します。一言でいえば変動検出の精度は約2mということができます。

三次元化処理

 横方向の画像のずれには,この方向(ほぼ東西方向)の地殻変動と上下変動が混じっており,1枚の画像だけから,これら2つを分離することはできません。しかし,違う方向から撮影した2つのマッチング画像があれば,三次元化の処理を行うことによって,三次元の情報(上下変動,東西変動,南北変動)を取り出すことができます。

2枚のずれ画像を三次元化処理すると下を見てねこうなります
上下成分 南北成分 東西成分 水平ベクトル表示
クリックすると拡大表示できます(約380KB) クリックすると拡大表示できます(約380KB) クリックすると拡大表示できます(約380KB) クリックすると拡大表示できます(約24KB)

※左の3枚の図では,変動の場所を地形図上に表示するため,変動量が約4mより小さいところの色は表示されていません。色がないところでも変動(約4m以下)がある所もあります。

速度も推定できます(4月2日から4月5日にかけての平均変動速度)

 観測量は4つ(西側からの縦方向と横方向,東側からの縦方向と横方向),推定量は3つ(変動ベクトルの上下,南北,東西成分)です。余った自由度1を有効活用しましょう。
 各点において,「変動速度ベクトルが,変動ベクトルに比例する」と仮定します。つまり,4月2日から4月5日(2.5日間)にかけての変動速度は,4月2日から4月26日の総変動ベクトルと平行で,速度の大きさは総変動ベクトルの大きさに比例すると仮定します。また,この比例係数は,画像内のすべての点で同一と仮定します。こうすると,画像全体では自由度が「点数-1」だけ残ることになり,最小二乗推定が可能です。
 この仮定のもと,最小二乗法で,2.5日間(4月2日から4月5日)の平均的な変動速度を得ることができます。

 変動速度分布図は割愛させていただきますが,変動速度の大きな場所では,隆起速度3.3m/日南北方向に開く速度2.7m/日になることがわかりました。

体積変化も推定できます

 このように三次元の地殻変動が面的に把握できると,この地域の体積変化(主に隆起に伴う膨張)が計算できます。

 4月3日から4月27日までの体積変化は,+2.29E7 (立方メートル)
 4月5日から4月29日までの体積変化は,+1.43E7 (立方メートル)

※2.29E7 (立方メートル)は,2,290万立方メートルのことです。
※有効数字は小数点以下1桁ですが,後続の計算のため1桁多く示しています。

 これらから,4月3日から4月5日までの体積変化は,+0.86E7 (立方メートル)
となり,この期間(2.5日)で割ると,この2.5日間の体積変化率は,
          +340万立方メートル/日
となります。

わかったこと(まとめ)

 4月2日から4月26日にかけての隆起量は最大で22mである。北方向への変動の最大は12m,南方向では7mである。東西にも数mの変動は認められるが,南北に比較すると変動量は小さい。

 4月2日から4月5日にかけての隆起速度は3.3m/日,南北に開く速度が2.7m/日になる場所がある。

 4月3日から4月27日までの体積増加は,2300万立方メートル,また,4月3日から4月5日までの平均の体積変化率は,+340万立方メートル/日

もっと画像を

三次元変動ベクトルの立体表示
動画(1,723KB)
上下成分の部分拡大
(139KB)
南北成分の鳥瞰図
(212KB)
クリックすると拡大表示できます クリックすると拡大表示できます クリックすると拡大表示できます

 

この手法の利点は,

 雲,霧,噴煙等の影響をうけることなく,また,危険地域に立ち入ることなく,繰り返し行われる衛星観測データを利用して,広い範囲の地殻変動を面的に監視できることです。
 干渉合成開口レーダーではとらえられないほど地形が大きく変形してしまった場合には,有効です。また,容易に地殻変動の三次元成分すべてを得られるのも特徴です。同時に変動速度も推定できます。

この手法の欠点は,

 精度が2m程度であることです。一方,干渉合成開口レーダーの場合には,数センチから数ミリの精度です。 
 時間分解能は高くても2,3日です。一方,GPSではほぼ連続的に変動がわかります。
 衛星で取得されたデータは,専用の施設や多くの人手を介して研究者の手に届きます。この時間と,研究者が解析する時間を合わせると,通常,2~3週間は時間がかかります。もちろん,通信網を整備する等の改善策を施せば,この欠点を小さくすることは可能です。

正確な時刻は,

 精度の高い議論のためには,時刻まで必要でしょう。このホームページの本文や図の表現が,世界時と日本時にどう対応するかを示します。4月2日と5日の間は,2.50日ですね。

このホームページの表現 UT(世界時) JST(日本時)
4月2日 2000/04/02 20:37 2000/04/03 05:37
4月5日 2000/04/05 08:37 2000/04/05 17:37
4月26日 2000/04/26 20:37 2000/04/27 05:37
4月29日 2000/04/29 08:37 2000/04/29 17:37
この研究で用いている人工衛星データは、国土地理院と宇宙開発事業団の共同研究のために宇宙開発事業団より提供されたものです。

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