緊急現地災害調査報告

はじめに

 梅雨前線の停滞による集中豪雨で、平成16年7月13日、新潟県三条市、見附市周辺において堤防の決壊による浸水により甚大な被害が発生した。地理調査部では、7月14日に災害対策班を設 梅雨前線の停滞による集中豪雨で、平成16年7月13日、新潟県三条市、見附市周辺において堤防の決壊による浸水により甚大な被害が発生した。地理調査部では、7月14日に災害対策班を設置し、浸水範囲を早急に把握すべきとして7月15日から緊急現地災害調査を実施した。置し、浸水範囲を早急に把握すべきとして7月15日から緊急現地災害調査を実施した。

1 .調査目的

 水害時に、人命救助、二次災害防止、復旧対策を行う上で、被害箇所、浸水範囲などを迅速に把握することは極めて重要である。しかし、被害箇所などは、町名など活字として提供される場合が多く、地図化されていないために被害状況が把握しにくい。地理調査部では、先ず浸水範囲を把握し、地図化してインターネットで速報的に提供することを目的とした。

2.調査期間

平成16年7月15日(木)~7月17日(土)

3.調査者

杉山正憲・根本光一・川島 悟・渡邉哲也

5.調査結果の概要

  三条地区
  五十嵐川左岸で被害が大きかった。三条市曲渕付近の堤防(川が下流に向かい左へカーブする場所)が約130mに渡って決壊した。濁流は西方に向かい、三条市街地から地盤の低い栄町にかけて南に約5km流下したため、三条市及び栄町では甚大な被害が発生した。被災後2日経過していたため、浸水の痕跡は南では鱈田川付近、西では直江排水路付近までしか認められなかった。五十嵐川右岸では、信越本線「ひがしさんじょう」駅南方の三竹、田島から神明町にかけて浸水の痕跡が認められたが、神明町から下流では認められなかった。

  中之島地区
  中之島町と見附市の境を流れる刈谷田川下流部(中之島付近)左岸の堤防が約50mに渡って決壊した。流出した水は、北陸自動車道中之島見附IC北方1km付近から信濃川まで(約9km)到達した。また、中之島川では堤防が2箇所決壊したが、現地では1箇所のみ確認できた。中之島町の面積の1/2以上(ほとんどが水田)が浸水した。堤防が決壊した付近は中之島町の中心部であったため、右岸側の溢水による家屋の被害とあわせ、甚大な被害が発生した。

  見附地区
  見附市街地東方約4km、刈谷田川と稚児清水川の合流部及びその周辺で堤防が3箇所決壊した。流出した濁流は刈谷田川左岸を西方に進み、明晶町、名木野町、熱田町を流下して長岡市東北部に達した。このため、刈谷田川左岸側の集落に被害が発生した。また、長岡市東北部を流れる猿橋川左岸の堤防が決壊し、猿橋川に流入するいくつかの小河川の氾濫水と、刈谷田川から流入した氾濫水とが合流し、水田が冠水するなど被害が広範囲となった。

6.被災地区と周辺の地形

  三条地区
  信濃川、五十嵐川などによって形成された氾濫平野と自然堤防からなる。両河川沿いには自然堤防が帯状に分布し、三条市はこの自然堤防上に発達した集落を中心に発展してきた。最近では市街化が進み、周辺に住宅建設などによる盛土地が拡大しており、現在では街全体が五十嵐川に二分された形となっている。標高は7m~10mで、北方に向かって緩く減じている。市街地東方の堤防決壊により流出した水は、一旦南方に進行したが、南方の山地に向かって傾斜が増していることから西方に進行し、さらに進路変えて盆状に低地の広がる栄町まで達した。

  中之島地区
  信濃川、刈谷田川などによって形成された氾濫平野、自然堤防、後背低地からなる。刈谷田川沿いには自然堤防が帯状によく分布しており、下流の左岸には水はけの悪い後背低地が分布している。自然堤防は周囲より2m~3m程度高いために集落が立地している。低地の標高は10m~15m程度で、北方に向かって緩く減じている。中之島市街地付近の堤防決壊により流出した水は、刈谷田川に沿って流下し信濃川合流点まで到達した。北陸自動車道から北方の河川沿いの中西までの自然堤防上の集落は、現地を見る限り被災しなかったが、そこから下流に分布する自然堤防上の集落は、地盤が低いために被災した。また、真野代新田から北東に約4km帯状に分布する自然堤防上の集落は浸水を免れている。

  見附地区
  中之島地区の東南部にあたり、地形的には中之島地区と同様であるが、見附市街地から東方には、刈谷田川沿いに低位面から高位面までの段丘が発達している。見附市街地は刈谷田川が形成した自然堤防と旧河道の盛土地に発達している。市街地での浸水箇所(豪雨による排水不良)は旧河道上の盛土地であった。市街地東方の堤防決壊により流出した水は、段丘を避けて谷底平野を流下した。しかし、市街地の南に分布する低位段丘及び自然堤防は浸水した。
  長岡市を流れる猿橋川の堤防決壊箇所周辺は、信濃川の形成した氾濫平野、自然堤防、後背低地からなる。標高は15m~17m程度で、地区の西方は盆状の低地となっている。ここに小河川が集中しているため増水による氾濫となった。
  問い合わせ先
      国土地理院  地理調査部  企画課長補佐  北原敏夫  TEL : 029-864-5918(直通)